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稲葉敦志氏が語る新規タイトル成功の秘訣
【GDC 2005】

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●『大神(OKAMI)』開発状況が明らかに


▲人材育成優先、タイトル優先、ブランド優先の3つのケースを、みずからが関わったタイトルを例に紹介した。
 

 ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス(GDC)2005"で、クローバースタジオの稲葉敦志プロデューサーが"おもしろみのあるゲーム作りへの道"と題した講演を行った。『鉄騎』や『ビューティフル ジョー』など、ユニークなオリジナルタイトルを成功に導いてきた同氏が、各タイトルのケースを例にその秘訣を語ったのだ。


 稲葉氏によると、『ビューティフル ジョー』は"人を育てることが優先のプロジェクト"だったという。同ゲームのディレクターである神谷英樹氏を見込んだ稲葉氏は、「彼が成長することが、僕らの利益につながる」と考えて、たみや氏に新規タイトルの開発を一任した。しかし、開発チームは稲葉氏が与えた12ヵ月という期間をすべてトライアル(試行錯誤)に費やしてしまう。開発資金を工面し進行を管理するプロデューサーにとって、スポンサーとの約束の期間が守れないのは頭の痛い話だが、その長いトライアル期間を経た結果、"VFXパワー"という新たなアイデアが生まれた。稲葉氏はこのアイデアがゲームの"変革点"だと感じ、その瞬間「このゲームは勝てる」と思ったという。そして、この時点で開発チームに「これはおもしろい!」とはっきり告げてアイデアを膨らませていくよう指示をした。その後の開発は流れるように進み、『ビューティフル ジョー』はみごとにヒット。神谷氏はディレクターとして大きく成長した。通常、人を育てることを優先したプロジェクトは失敗もある程度計算の内だが、その中でおもしろくて売れるタイトルができたのは「すごく幸せなケース」だそうだ。

▲アメリカでの講演のため、講演内容はすべて英語に訳された。ここでもVFXパワーが"Turning Point(変革点)"だったことなどが書かれている。


 これに対し、『鉄騎』は"タイトルが優先のプロジェクト"。人を育てる余裕はなく、最悪、「これに関わった人が潰れてもしかたがない」というほどの大きな賭けだった。オンラインに対応させることをスタッフにも十分に知らせないまま発言し、「あとから追いつく」形で開発を進行。そんな中でも、「新しい要素を入れすぎると、作り手も遊び手も混乱する」ことに気を配り、オンライン版をわけて発売した。専用の大型コントローラーをつけて約20000円と一般的なソフトに比べてかなり高い価格設定だが、売れてもそれほど利益は出なかったらしい。それでも、結果的にプロジェクトは黒字で「誰も不幸になっていない」。稲葉氏は、『鉄騎』のプロジェクトは「僕らはこんなおもしろいことを世に出すことができた。だから、ほかの人たちももっとおもしろいことをやろうよ」というメッセージだったと述べた。

 

▲『鉄騎』(英語名は『Steel Battalion』)についてのスクリーン。開発当時、Xboxはまだニューハードで、売れ行きが読めないリスクもあった。


 3つめのケースとして、稲葉氏は現在開発中のプレイステーション2用ソフト『大神(OKAMI)』を例に挙げ、"ブランドが優先のプロジェクト"について語った。『大神』は、新しいものを作るというコンセプトで立ち上がったクローバースタジオが、初めて挑むオリジナルタイトルである。稲葉氏はこのタイトルに同社のブランドを賭け、「人を成長させながらもタイトルを成功させなければならない、難易度の高いプロジェクト」と語った。そして、トライアル期間中に作った同ゲームのムービーを初公開。これを見たうえで、「"大自然の中で大神が成長していくいままでにないゲーム"をテーマにしていたが、リアルタッチの画面にするとあまりおもしろくなかった」と感想を語った。そこで、デザイナーから墨絵を使ったグラフィックが提案され、どこにもないグラフィックが実現。稲葉氏は、これを"変換点"として捉えたという。このタッチだけでも新しいゲームはできるが、さらなる進化が必要と感じた稲葉氏はさらに新しいアイデアを追求。その結果、同ゲームは「このあいだ3つの"変換点"を超えた」そうだ。

 

▲リアルタッチのから(左)、墨絵のタッチへ(右)。『大神』の最初の変換点はグラフィックでの大幅の方針転換だった。なお、クローバースタジオでは『大神』のほかにもブランド優先のプロジェクトを走らせているとのこと。


 講演の中では、この"変換点"という言葉が何度も登場した。稲葉氏は、自身の経験からおもしろいゲームができるときは「おもしろいアイデアが、おもしろい遊びに変わるかどうかの"変換点"がある」と述べている。逆に、「これがないプロジェクトは失敗する」とも言っている。アイデアを試行錯誤して具体的な遊びにしていく過程は開発チームにとってももっとも苦しい時期という。しかし、それを乗り越えて"変換点"を迎えたと感じたとき、開発チームに責任を持って「おもしろい」と伝えてあと押しするのがプロデューサー役目であるそうだ。これに反して、プロジェクトが間違った方向に行きそうなときは傷が浅いうちに引き戻してあげることも大切だという。


 最後に稲葉氏は、「いまは人でもタイトルでもブランドでもなく、"マーケット(市場)"が優先のタイトルが多いと思います。決して悪いことではありません。でも人間は飽きっぽいから、いま売れているのと同じものばかりを作っていくと、結果的に市場を小さくしてしまうと思うんです」と述べ、続編やヒット作に似た内容のタイトルが多いと言われる現在のゲーム市場に対して警鐘を鳴らした。そして、「これからのゲーム市場のために元気のある芽を育てていかなければなりません。僕たちといっしょにがんばっていきましょう」と、参加した開発者たちに市場を広げる新しいゲームの開発を呼びかけた。

▲人気のあるジャンルや暴力、性的な刺激に頼ったゲームばかりでは、ユーザーが飽きて市場が縮小してしまう。市場を活性化させるオリジナルタイトルを作り、"innovative(刷新的)"であれというのが稲葉氏のメッセージだ。

 

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