学生向けのCGコンテストで水口哲也氏がゲーム作りの秘訣を披露!
●ゲーム開発に賭ける飽くことなきこだわりとは?
7月22日〜23日の両日、埼玉県・SKIPシティにて"第1回TIGRAF(ティーグラフ)ユースコンテストU-23"が開催された。このイベントは、"世界に通じるCGクリエーターの育成"を目的に開催されたもの。コンテストには23歳以下によるCG作品164点が集結し、最優秀作品を目指してしのぎを削った。また、会期中は未来のCGクリエーターを目指す若者向けに"スペシャルセミナー"が開催。キューエンタテインメントの水口哲也代表取締役や、CG業界の第一人者であるポリゴン・ピクチュアズの塩田周三代表取締役などにより講演が行われたのだ。
▲セガからユナイテッド・ゲーム・アーティスツを経て、キューエンタテインメントを設立。『セガラリー』シリーズや『スペースチャンネル5』、『Rez』など数々の名作を手がける。 |
スペシャルセミナーの口火を切った水口氏は、"ゲームクリエーターから見た必要な人材象とキャリアパスについて"というテーマで講演。ゲームの映像を交えながら、まずは『セガラリー』シリーズなど、自身が手がけてきたソフトを紹介した。なかでもいちばん時間が割かれたのが、'99年に発売された『スペースチャンネル5』。「『スペースチャンネル5』では、"アクション"→"リアクション"というレスポンスのなかで、いかに化学反応を生じさせるかがキモでした」、「シンプルであればあるほどゲームはおもしろい。『スペースチャンネル5』は記憶力と反射神経のゲームなのですが、シンプルさを積み上げて、いかにおもしろくするかを追求しました」などと開発秘話を話してくれた。さらに、キャラの動きというものが大きな要素を占める『スペースチャンネル5』では、"どうしたら人を笑わせられるか?"ということテーマに、パントマイマーを講師に招いて、スタッフにパントマイムの勉強をさせたという。「物事には、ひとつひとつ理由があり、笑いにも要素があります。"人はなぜ笑うのか?"というのをしっかりと分析できるわけです。モノを作るときには、そういう理由をひとつひとつちゃんと知らないといけない。けっきょく、パントマイムの勉強は半年くらい続けたわけですが、最終的に多くのスタッフが笑いのツボを理解してくれましたね」。そのことにより、キャラにどういう動きをさせるべきか、スタッフのあいだに共通理解ができたという。そんな試行錯誤の末に、ヒロインの"うらら"
は2年間という時間をかけて完成された。そんな努力の甲斐があってか、うららはゲームに収まりきらないくらいの魅力的なキャラになったわけだ。妥協を見せない水口氏のゲーム開発にかけるこだわりぶりは、来場者にとって何よりの勉強になったようだ。
▲MTVのCMにも出演することになったうらら。男性にも女性にも受けるように、何回もリサーチを重ねた上に、キャラは生まれた。 |
●ゲームの本質は"おもしろいこと"
引き続き水口氏はモノ作りのための心得をスピーチ。「映像はひとつのことのために存在します。それは人を楽しませたり、気持ちよくさせることです。いくら映像がかっこよくても、中身がつまらなければゴミのようなものです。ゲームの本質は"おもしろいこと"。"おもしろさ"を理解するためには、人間の本能を知らなければならないわけです。そのおもしろさを表現するためにはなにが必要か……。それは、"見えない演出力"だと思います」。さらに、クリエーターを目指す若者に向けてつぎのように続けた。「"なぜゲームを作りたいのか?"というのを真剣に考えるべきです。動機や目的などをちゃんと考え抜いたほうがいい。その過程で、自分とゲームの相性がよくないのであれば、ほかの表現手段を取るという道もあるでしょう。自分のなりたいイメージは何かということをつねに考えて、自分に足りないものを見極めてください。それに対して一生努力をする。それあるのみです。"創造し続けることに自分の人生を投ずる覚悟はあるのか"、ということを考えてください」。
▲新機軸のシューティング『Rez』のテーマは「ゲームでどれだけ人を気持ちよくできるか?」だったという。『スペースチャンネル5』と合わせて、水口氏のゲーム哲学が見えるような気がする。 |
最後に、「ゲームは経験のデザインです」という言葉で講演の幕は閉じた。クリエーターを目指す者にとって、水口氏のゲーム作りに対する思いは、何よりの刺激になったのでは? こうなると、水口氏の新しいゲームを早く見てみたい!
▲集団においては、オール4のスタッフが集まるよりもより、ほかはすべて"1"だけど、ひとつだけでも"5"があるスタッフが集まったほうが、いいものができる可能性があるという"がんばれベアーズ理論"を披露。 |
▲質疑応答では「水口さんの会社で欲しい人材は?」との質問が。それに対し水口氏は「いまは会社の規模がまだ大きくないので、オールマイティーな人材を捜しています。経験値と貪欲さで判断していますね」とのこと。 |
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