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新たなジャンルのアドベンチャーゲーム『TRICK×LOGIC(トリックロジック)』
【プレイ・インプレッション】

2010/7/22

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●感じるのは達成感か敗北感、そしてミステリ作家のスゴさ

 

 『弟切草』や『かまいたちの夜』といった読むゲーム“サウンドノベル”シリーズを生み出したチュンソフトが、また新ジャンルのアドベンチャーゲームを生み出した。今回挑むのはミステリ小説。プレイヤーは、7名の著名推理作家が作り上げた10篇の謎に挑むことになる。ミステリ小説を読むというオーソドックスなジャンルに隠された大きな仕掛け。本でもサウンドノベルでも味わえない、新たな魅力を持つ同作に、本誌クロスレビューなどでもおなじみのフリーライター、世界三大三代川が挑戦。そのインプレッションをお届けする。

 

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●本気で挑む推理小説

 

 このゲーム、イライラする。と言いながらも、決して操作性やゲームのテンポが悪くてイライラするわけではない。むしろ、インターフェースは丁寧だし、テンポもいい。では、何がイライラするのか。……事件が解けないのである。当然と言えば当然か。いまを代表するミステリ作家が本気で書いた推理小説なんだから、そう容易く解けるわけがないのだ。これまでそれなりに推理小説を読んできたし、それなりに推理マンガも読んできた。しかし、いわゆる読者に犯人を推理させる“犯人当て”形式のものに本気で挑んだことはなかった。おそらくこれを読んでいる方の多くも、小説やマンガを読みながら、「ああ、こいつが犯人だろうな。この辺がトリックなんだろうな」という漠然とした推理をしながら、犯人が明らかになる解答編へと進んでいったのではないだろうか? しかし、そんな漠然とした推理ではなく、きっちりと、理路整然とした推理で犯人を当てないとクリアーできないゲームが、今回紹介する『TRICK×LOGIC(トリックロジック)』だ。

 

 『TRICK×LOGIC(トリックロジック)』は、『かまいたちの夜』などのサウンドノベルで知られるチュンソフトの新作アドベンチャーゲーム。文章を読むというゲームスタイルはサウンドノベルと共通ながら、大きく異なる点も多い。まず第一に、本作には選択肢による分岐がない。そして、場面ごとの音や映像による演出がない。純粋な推理小説をゲーム内で読むと考えるとわかりやすいだろう。また、ゲームの目的も単純明快。ゲームに収録された推理小説を解き明かすということだけだ。ただし、解決方法はゲームならでは。小説の中から真相につながると思われるキーワードを見つけていき、プレイヤーの推理のもとで複数のキーワードを組み合わせていくと、これが真相ではないかと思われる仮説が生まれる。その仮説を事件解決に必要な調書に当てはめ、トリックや犯人を見事に言い当てていればクリアーとなるのである。実際にゲームをプレイすればわかりやすいのだが、文章ではなかなか伝えづらいのも事実。ちょっと例を出させていただこう。

 

 たとえば、“自分の部屋に大事なお菓子を隠しておいたのに、外出中に誰かに食べられてしまった。外出中に家にいたのは、母、姉、弟の3人。しかし、3人は部屋に入れるわけがない。なぜなら部屋には鍵をかけておいたのだから。”……という事件が起こったとする。この物語を一度通読したあと、真実にたどりつくための調書が示されるのだが、その調書には、あらかじめ解くべきポイントが書いてある。この事件で言えば、こういった調書だ。

 

(1)犯人はどうやってお菓子の隠し場所を知ったのか

(2)犯人が鍵付きの部屋に入った方法を示せ

(3)犯人は誰か?

 

 これらの事前に示された問題に対する答えを、文章内のキーワードを組み合わせて見つけていくのだ。こう書くと、「文章から答えを見つけるだけでしょ? 簡単そう」と思われる人がいるかもしれない。しかし、そんな簡単なわけがない。なぜならゲーム内に収録された小説は、すべて著名ミステリ作家の書き下ろしなのだ。

 

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●自信を打ち砕くミステリ作家の力

 

 我孫子武丸、綾辻行人(※辻はしんにょうに点ふたつ)、有栖川有栖、竹本健治、麻耶雄嵩、大山誠一郎、黒田研二。さすがに推理小説を読まない人でも、ひとりくらいは名前を知っているのではないだろうか。『TRICK×LOGIC(トリックロジック)』に収録されている小説を手掛けたのは、この7人。全員が推理小説で著作を持っている本格ミステリ作家だ。これらの大御所が書いた推理小説を解くのは容易ではない。ただ小説を読み、ひとりで推理をして解くのは、長年のミステリファンでも苦しむだろう。……とはいえ、それがゲームになると多少なりとも難度は下がる。なぜならば、あらかじめ事件のポイントとなる調書が示され、さらには怪しいと思われるキーワードもピックアップされ、推理の土台が用意された状況になっているのだ。いわば、推理小説を読み解くための“How to”が示されているような状況。……とすれば、あと必要なのは、事件のトリックを暴くためのプレイヤーの推理力だ。

 

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 本作に興味がある方は、それなりに推理力に自信を持っている方が多いのではないだろうか。自信とまではいかなくても、アドベンチャーゲームは好きだし、ちょっと苦しむかもしれないけど、きっと解けるはずと考えているかもしれない。かくいう筆者もそう思っていた。そして痛感した。“ミステリ作家はスゴい!”と。

 

 『TRICK×LOGIC(トリックロジック) Season1』には、4つの小説と、解決編のない推理編だけを収録した1篇の全5話を収録している。それぞれに難度が異なり、事件ファイルNo.1から順々に難度も上がっていくため、徐々に苦しめられていくのだが、事件ファイルNo.4の大山誠一郎による『切断された5つの首』は、プレイしながら心底困り果てた。たいていのプレイヤーは、まず小説を読んでいく段階で、ある程度「ここが怪しい」と推理をするだろう。そして小説を読み終わった段階で、その怪しいと思った箇所を足がかりに推理していくわけだ。しかし、『切断された5つの首』では、その推理をすべて否定された段階からスタートする。ネタバレになるので詳しくは書けないが、足がかりの一切を消された絶望感たるや……。

 しかも、筆者はそのままがんばって推理をしたのだが、ある程度の段階でその推理がまったく間違っていたことを思い知らされた。さらに、エピローグには悩んだ筆者をあざ笑うかのような一節が……(あざ笑われるというのは筆者の被害妄想)。大山誠一郎の手の平ですべて転がされていたかと思うと、悔しくて悔しくて、思い出してもイライラしてくる。……だが、納得せざるを得ないのだ。真相へのすべての糸口は作品内で示されているというのは、良作ミステリの条件のひとつと言われる。本作に収録された推理小説は、すべて作品内で推理が完結できるもの。『切断された5つの首』も同様だ。答えがわかったうえで再度小説を読み直すと、本当にすべての答えが示されている。だからこそ余計に悔しく、ミステリ作家はスゴいと心底思えてくるのである。

 

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 悔しさを超え、見事にノーヒントで真相を推理できたとき、どんなアドベンチャーゲームよりも大きな達成感が味わえる。筆者は、悩みに悩んで、時間をかけながらとある事件ファイルでこの達成感を味わった。ぜひこれを読んでくださっている方も、自身の推理力を試してほしい。個人的には、事件ファイルNo.4でもこの達成感を味わいたかった……。 ちなみに、本作には全体を通じて語られるストーリーがあったり、どうしても解けない人のためのヒントなどがあったりと、もっともっといろいろな要素がある。それらの詳細はこちらの記事を読んでいただければ幸いだ。

 

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 また、事件ファイルNo.5(問題編&解答編)〜事件ファイルNo.10までを収録した『Season2』も9月16日に発売される。各事件ファイルは独立したものなので、『Season2』から遊んでも楽しめるが、まずは『Season1』から遊んでみてはいかがだろうか? 推理力に自信のある人は、ぜひ本作に挑み、達成感……もしくは敗北感を味わってほしい。
 

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text by 世界三大三代川

 


著者紹介
世界三大三代川

週刊ファミ通編集部出身のフリーライター。ファミ通.comで『TRICK×LOGIC』の特設サイトを担当し、“ファミ通ミステリー研究会”にも所属することに。物事をうがって見るくせに、推理小説などにはコロッと騙されるタイプ。

 

 

TRICK×LOGIC(トリックロジック) Season1

■機種:プレイステーション・ポータブル

■メーカー:ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパン

■発売日:2010年7月22日発売

■価格:2980円[税込]

■テイスト/ジャンル:サスペンス/アドベンチャー

■備考:『シーズン1』のPS Store ダウンロード版は2380円[税込]、6〜10話の推理編は各400円[税込]( 解決編は、各推理編発売翌週以降に無料ダウンロード可能)、エグゼクティブプロデューサー:中村光一、開発:チュンソフト


※『TRICK×LOGIC(トリックロジック)』公式サイトはこちら

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