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どうしてこうなった!? ディレクター、横尾太郎氏が語る『NieR』の秘密

2010/5/27

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 週刊ファミ通6月3日号の殿堂コーナーで掲載した『NieR』のディレクター、横尾太郎氏のインタビュー。その誌面では収まり切らなかった内容を加え、完全版インタビューとしてここでお届けします。ネタバレを含むのでご注意ください!

 

▲ディレクターの横尾太郎氏(キャビア)。シャイなため、仮面をつけています。

 

●『NieR』が生まれたキッカケ

 

 

−−そもそも『NieR』がスタートしたキッカケは?

 

横尾太郎(以下横尾) 経緯としては、最初、キャビアからスクウェア・エニックスの齊藤プロデューサーに、小ぢんまりとしたゲームの企画書を持っていったんです。そのとき齊藤さんから、「『ファイナルファンタジー』シリーズや『スターオーシャン』シリーズのような、もっと壮大なRPGを作ろう」というお話しをいただいて。それから企画を考えて、プロトタイプとなるようなものを作っていたんですけど、しばらく経つと齊藤さんから、「バリバリのアクションをベースにしたゲームを作ろう」と、話しが変わりまして(笑)

 

−−RPGを想定してスタートして、アクションにしよう、と言われたときは戸惑ったのでは?

 

横尾 齊藤さんは「バリバリのアクション」とおっしゃったけれど、もしかしたら、「やっぱりRPGを」とおっしゃるかもとも思ったので、わりと聞き流していました(笑)人が出てきて斬っていくという内容にしておけば、どっちに転んでも大丈夫だろう、くらい大雑把に考えていて(笑)。でも、けっきょく、齊藤さんは最後までアクションゲーム、とおっしゃられたので、最初から完全なアクションを目指していたら、もう少し違った内容のゲームになっていたかもしれませんね(笑)。当初、RPGとおっしゃられたのは、『ドラッグ オン ドラグーン』では、街などの要素がなかったので、『NieR』では街を作って、そこで買い物ができるようにしたりして、華やかにしたいという考えだったらしいんです。いまの『NieR』に街などが残っているのはその名残でもあるんです。

 

−−横尾さんの中では、こんなゲームにしたいという意向はあったんですか?

 

横尾 いえ、あまりありませんでした。こちらは開発会社なので、プロデューサーのリクエストに応えつつ、その範囲内で自由に作れればいいかなという気持ちはありましたけれど。『ドラッグ オン ドラグーン』では、ヒドイ物語はやり尽くしたので、もっと違うタイプのものを、とも考えていました。

 

●Dエンディングについて

 

−−エンディングのお話をお聞きしたいのですが、Dエンディングにいたる最後の仕掛けは、当初から考えていたんですか?

 

横尾 はい。ただ、齊藤さんには反対されると思って、しばらくは黙っていました(笑)。「もういい加減言わないとマズイ」というタイミングで意を決してお話しすると、意外にもサラッとオーケーが出たので、拍子抜けしましたが(笑)。今回、齊藤さんには、自由にやらせていただいて本当に感謝しています。齊藤さんは、横尾さんをコントロールするのは途中でムリだと思ったらしく、「横尾さんの作りたいゲームを作ってもらおう」という考えにシフトしたと言っていましたが(笑)。もちろん、言われたことは必ず守るんですよ? でも、言われてないところを自由にやっちゃうんです(笑)。

 

−−なるほど(笑)。Dエンディングの仕掛けは、ユーザーからの反応も、怖くはなかったですか?

 

横尾 そもそも『NieR』には、変なゲームを作りたいという野望があって、そういうゲームでよろこばれる方もいらっしゃるでしょうけど、そう思わない人も多いと思っていました。力の入れかたのバランスもおかしいゲームですし、最後のあの仕掛けを含め、もっといろいろと賛否両論あるかと思っていたんです。でも、好意的な意見が多くて、うれしいを通り越して、困惑しているという感じです。ユーザーの皆さんに対しても、サラっとAエンディングだけで終わる方が多いのかな、と思っていたんですが、Dエンディングまでしっかりやってくれた方が予想以上に多くてビックリしています。一方で海外の評価は、よくもなく悪くもなくという想定どおりの評価でしたが(笑)。その中で、『NieR』というゲームをうまく言い当てているなと思ったのが、『NieR』は醜い子犬のようだと書いてあって。

 

−−醜い子犬!?(笑)

 

横尾 欠点だらけで、見るに堪えないと(笑)。けれども、放っておけない愛らしさがある、ということで、なるほどと思いました。

 

●『NieR』の世界の秘密

 

 

−−『Replicant』と『Gestalt』の違いのひとつとして、ニーアの誕生日が前者では6月6日、後者では9月11日となっていているんですが、これはどういう意図で?

 

横尾 9月11日というのは、『ドラッグ オン ドラグーン』の発売日からです。6月6日のほうは……設定バグですね(笑)。仮でつけていた日付を直し忘れたまま、世に出てしまいました。ただ、ネットでは「6月6日は兄の日だからだ」と推測してくださっている方がいて、調べてみると本当にそうだったので、それが公式の設定になりました、と書いておいてください(笑)。

 

−−オープニングから本編にいたる時間の経緯でも『Replicant』では1400年後、『Gestalt』では1300年後と違いがあるのは?

 

横尾 まず、前提となる設定として、あるとき、白塩化症候群という不治の病が蔓延し始めるんです。その対策として肉体から魂を抜き出し、"レプリカント"という入れモノに、魂を移し変えるという治療法が確立されます。その魂自体を"ゲシュタルト"、肉体から魂を抜きとることをゲシュタルト化と言います。ですので、この世界では、器であるレプリカントを変えていけさえすれば、魂はくり返し存続することができるというのが、物語の基本としてあるんです。『Replicant』と『Gestalt』は、パラレルの世界ではなく、くり返されている世界のパターンのひとつで、主人公とヨナの関係が、あるときは兄妹、あるときは親子だった、ということで、両作で年号のズレが設定上にはあるんです。

 

−−そういった部分はゲームではあまり触れられませんよね?

 

横尾 はい。プレイしていても「なぜ世界が滅びかかっているのか。なぜマモノは人を襲うのか」と思われるでしょうが、それには演出上の理由があってそうしました。現実の世界をみてみると、原因はよくわからないけれど、状況として実際にある、というのはよく見られますよね。たとえば、各国や地域では、宗教上の対立というのがいまだにあるという状況はわかるけれど、なぜそうなったのか、という点は長い歴史を紐解いても感情的な部分など、細かいところまでは、自分にはわからない。なので、ゲームでもあえてわからない部分を残して、また、実際の世の中でもよくあるように、理不尽なことが降りかかるということも描きたかったんです。主人公をとりまく世界の設定は、細かく決めてあるんですが、ロード中の画面などに世界設定や裏の設定的なものを少しだけ提供し、そういう細かい設定部分が好きな方には、いろいろ考えていただけるような作りにしました。

 

−−ちなみに、横尾さんの物語の構築の仕方というのは、細かい設定を決めてから、どの部分をゲーム化するか、と考えていくんですか?

 

横尾 いえ、まず描きたい状況を考えて、設定はそこから広げていく感じですね。『NieR』本編で描かれる物語は、考えた設定の後半部分で、先ほど言ったバッサリ削った前半部分は、それだけで、ゲーム2作品分くらいのボリュームはあると思います。

 

−−隠されている部分のことをもう少し伺います。オープニングに出てくる黒の書は2冊あるように見えるんですが……。

 

横尾 はい。あの時点の世界には、黒の書のコピーがたくさん存在しているんです。

 

−−なぜそんなに黒の書が?

 

横尾 ゲシュタルト化には黒の書が必要なんですが、あの時点ではゲシュタルト化に成功した例はなく、失敗続きでした。なので、多くの人々に黒の書のコピーが手渡され、成功例を探していたんです。成功した人のパターンを使えば、人類を正常にゲシュタルト化できると考えていたんですね。いわば、大量の人々を使って人体実験が行われていたということです。オープニングで、ニーアが正常なゲシュタルト化に初めて成功したんです。彼を襲う者たちはゲシュタルト化に失敗し、精神が崩壊してしまった"崩壊体"です。ヨナもニーアの力になりたい一心で、黒の書を手にするんですが……(以下、かなりのネタバレになるため割愛)

 

−−ゲシュタルト化の成功とは?

 

横尾 ゲシュタルトになった状態で、人間として人格を維持できていれば成功です。2周目で見られるイベントで、マモノが親子で会話しているシーンがあるんですけど、あれは成功している実例ですね。

 

−−黒文病などに出てくるあの文字には、何か意味が?

 

横尾 あれは天使文字という実際にある文字で、天使文字の羅列をアルファベットに変換すると、遺伝子のパターンになっています。その天使文字で魔法を表すというのは、『ドラッグ オン ドラグーン』とリンクしている設定ですね。

 

−−実験兵器7号は、不思議な魅力のあるキャラクターですが、狙って作ったのなんでしょうか?

 

横尾 実験兵器7号のもともとのデザインは、ブタのようなものだったんですけど、キャラクターデザインをしていただいたD.Kさんから最初に挙がってきたのが、いまのデザインのものなんです。自分も気に入りましたけど、とくに齊藤プロデューサーがかなり気に入られまして。結果的にユーザーの方にも予想以上に好評なようでうれしいです。

 

−−そういえば、実験兵器7号がフィーアの結婚をうらやましがるシーンがありましたが……。

 

横尾 じつは、実験兵器7号は“男の人が好きな男の子”という設定なんです。あまり伝わらなかったというのは、意外でした(笑)。

 

−−ほかのキャラクターの設定に関していかがでしたか?

 

横尾 そうですね……なかでもD.Kさんの描かれたカイネが想像以上に過激だったのでその露出をどうするか、というところは迷いました。途中、前垂れをつけてみたり、露出を抑える方向にしたんですが、けっきょく最終的には裸のようなかなり露出した姿に戻しました。ニーアに関しては、当初、貴族風なデザインだったのですが、荒廃した世界にしっくりこなかったので、いまのデザインにリファインしていただいたという経緯があります。

 

−−ほかにキャラクターに関して、何かおもしろい設定などあれば。

 

横尾 そうですね……黒の書と白の書、真紅の書もそうですが、書物ももとは人間だったんです。

 

−−え!? なぜ本の姿に?

 

横尾 ゲシュタルト計画を進めるうえで必要な、素体となる本がもともとあって、人間をゲシュタルト化して書き込んだのが、白の書や黒の書、真紅の書なんです。書物自体も、じつは13冊ある、というのも裏設定としてあります。

 

 

●ゲームシステムについてあれこれ

 

−−本作には、さまざまなゲームのオマージュが散りばめられていますが、あれはどういう意図で?

 

横尾 理由はいくつかあるんですが、まずひとつは変質していくゲームを作りたかったんです。最近、ゲームをプレイしていても、年のせいかすぐに飽きてきちゃうんですよ(笑)。なので、さまざまなジャンルのエッセンスを入れて、しかも操作方法を変えることはなく、違和感なく遊べるゲームにしたいと思って、ああいう作りになりました。ただ、だからといって何でパロディーばかり入れているんだ、というご指摘もあるかとは思うんですが(笑)、昔にプレイした覚えがある要素が入っていると、笑って楽しんでもらえるんじゃないかと。なので、それはゲームのシステム的なものだけではなく、物語であったり演出であったりと、いたるところに入れています。

 

−−アクションなのにサウンドノベル風のものまで入っているのには、思わず笑っちゃいました(笑)。

 

横尾 海外では不評みたいなんですが(笑)。海外では、文字を読ませるというのは、あまり受け入れられないようです。サウンドノベルというゲームの文化がほとんどない、というのあるんでしょうけど。

 

−−洋館のところは、ニーアの走りかたまで某ゲーム風に変わってましたよね(笑)。

 

横尾 洋館は、忠実に再現しすぎて、もとのゲームまんまになりそうだったので、いろいろ変えました(笑)。

 

−−洋館ではモノクロ風になるのはなぜなんですか?

 

横尾 エミールや執事は人間ではないので、歳は取りません。なので、洋館は時間が止まっているかのような雰囲気を出す演出としてモノクロにしています。

 

−−フィールドは狭からず、広からずで、移動も快適ですね。

 

横尾 フィールドは、某名作アクションRPGを参考に、ひとつのフィールドの端から端まで走って何分かかるかをストップウォッチで計って、それとだいたい同じような移動時間になる広さにしました。

 

−−意外にもアナログな(笑)。シナリオ上でもそうですが、クエストなどでも行き来することが多い作りになっているので、移動に時間があまりかからないのはストレスがなくていいですよね。

 

横尾 移動が早いというご意見をよくいただくんですが、早くしたというつもりはあまりなくて。ゲームとして適度な大きさがあってストレスも感じない広さはこれくらい、ということで作りました。それでも、齊藤さんから、「もっと移動を早くしたい」とリクエストがあったので、イノシシに乗れるようにしたんです。プログラマーが、イノシシにドリフト機能までつけてビックリしましたけど、結果として手触りがおもしろかったので採用しました。ちなみに、少年のニーアだけは少し移動が遅いんです。理由は簡単で、足が青年や父親のニーアより短いからです(笑)。

 

−−チュートリアルが収集要素になっているのは?

 

横尾 収集することが好きな方に用意した要素のひとつです。それがよりによってチュートリアル、というのがこのゲームの歪なところではあるんですが。操作は斬る、防御、回避さえわかれば説明しなくていいかなとも思ったんです。

 

−−難易度設定の違いについて教えてください。

 

横尾 敵の防御力やHP、ニーアの防御時ののけ反りなどの系数などもいろいろ変えています。また、HARDは敵の強さが極端に強くなり、さらにEASYとNOMALでは敵の強さが2周目以降も1周目と変わらないんですが、HARDだけはニーアのレベルに合わせて敵も強くなります。その代わり、ワードやアイテムのドロップ率が上がって、それらを集めやすくはなっています。

 

−−ゲーム中、敵の名前が出てこないのはなぜなんですか?

 

横尾 すべてに名前があるのが、そもそも好きではなくて。自分が人の名前や地名などを覚えられない、というのもあるんですけど(笑)。あと、ニーアの視点でみると、彼が神のようにすべてを知っているのも不自然かなと。なので敵に限らず、街や人の名前も固有名詞をなるべく出さないようにしています。設定上は、ボスの名前やワードを童話からつけているんですが、これは初期のプロットでは絵本をもとにした物語にしようと考えていたときの名残ですね。

 

−−最初のプロットはどんなものかよろしければお聞かせください。

 

横尾 絵本の世界が実際に存在しているという設定で、その世界から飛び出してきた悪者を倒す物語です。悪者たちは自分たちのリーダーを復活させようとするので、それを勇者たちは阻止すると。しかし、悪者たちがリーダーを復活させようとしたのには動機がありました。その世界では、同じ物語が延々とくり返されていたるんです。なので、悪者はずっと悪さをさせられて、懲らしめられ続けている。悪者たちはいつまでも永遠の苦しみの中に存在していた。その仕組みに気付いて悪者たちを救おうとする科学者がいたのですが、平和を目指す勇者たちによって倒されてしまいました。悪者たちは自分たちを救おうとした科学者を必死で復活させようとします。もちろん勇者たちはそれを許すことはできません。そこから始まる戦いの物語が初期プロットです。このころから周回プレイで、物語の裏側を見せることは考えていました。これがいろいろ変化していって、いまの『NieR』という物語になったんです。

 

−−なるほど〜。話を『NieR』に戻しますが、今回、音楽も好評ですね。

 

横尾 僕はシューティングゲームが好きで、今回の音楽演出は某シューティングゲームの影響を多分に受けています。すごく繊細な演出が施されているゲームで、いろいろ勉強になりましたね。また、本作で作曲をお願いしたMONACAの岡部さんは、じつは大学時代の同期で古くからの知り合いということもあって、気兼ねなく無理難題を頼むことができました(笑)。最終的に、すばらしい音楽を作ってくれて感謝しています。ただ、ユーザーの方々の反響ではゲームより、むしろ曲の評価のほうが高いくらいで、少しイラッとするんですけどね(笑)。

 

 

●遊び心が詰まったダウンロードコンテンツ

 

−−ダウンロードコンテンツはどういった経緯で?

 

横尾 開発終盤に話が持ち上がりまして、やれるならやりたいと。どういうことができるかといろいろ考えたんですけど、今回はバトル中心に遊べるものにしました。

 

−−ゲーム本編では、コスチュームが変わることがないので、新コスチュームはインパクトがありますね。

 

横尾 限られた時間と素材でできる範囲のことをやろうと話し合った結果、ああなりました(笑)。

 

−−カイネは髪型が変わるだけあって、イメージがかなり変わります。

 

横尾 髪型の変更は予定になかったんですけど、スタッフがコスチュームに合わせた髪型がいいだろうということで。コスチュームチェンジ自体、当初はニーアだけだったんですけど、進めるうちにどんどん予定外の作業をがんばってやってくれました。

 

−−ちなみに、ダウンロードコンテンツは今後も考えてらっしゃるんですか?

 

横尾 今回のダウンロードコンテンツが好評だと、もしかしたらスクウェア・エニックスさんから予算をいただけるかもしれませんが……(笑)。開発会社としては無限にやらせていただきたいですね(笑)。

 

 

 

 

 

 

 

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