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『ファイナルファンタジーXIII』のサウンドを生み出す“MASTS”を解剖
【GDC 2010リポート】

2010/3/12

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●大幅なコスト減、そして将来的な作業効率化にも


 2010年3月9日〜13日(現地時間)の5日間、アメリカ・サンフランシスコのモスコーニセンターにて、ゲームクリエーターによる国際会議、GDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)2010が開催。世界中のクリエーターによる講演が多数予定されている。ファミ通.comではその模様を総力リポートする。
 

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▲スピーカーを務めたスクウェア・エニックスの土田氏(左)と矢島氏(右)。

 海外でも2010年3月9日に発売を迎えた、スクウェア・エニックスの『ファイナルファンタジーXIII』。まさにいまが旬のタイトルということもあってか、今回のGDCでは同作に関連したセッションが複数組まれている。開幕3日目の2010年3月11日に行われたサウンドディレクター&サウンドデザイナーの矢島友宏氏と、テクニカルディレクター&オーディオプログラマーの土田善則によるセッションでは、“Motion-Controlled Real-Time Automatic Sound Triggering System”通称“MASTS”と呼ばれる、この作品で初めて搭載されたサウンド発音システムの紹介が行われた。


 最初に矢島氏より、ゲーム内での発音制御のタイプについての説明が行われた。それによれば、効果音を鳴らす手段には大きくわけてふたつのタイプが存在するそうで、ひとつは足音や衣擦れの音をキャラクターの動きに合わせてひとつひとつ手動で結びつけるというもの。こちらはおもに、カットシーンなど発音のタイミングが確定している際に使用されるもので、手間はかかるが音でキャラクターの感情変化を音で表現するのに最適な手段となっている。もうひとつは発音の条件テーブルを設定し、ゲーム内でそのアクションが起きた時点で自動的に効果音を鳴らすという手法。インゲーム時、つまりプレイヤーがキャラクターを動かしているため発音タイミングが予測できないときに使うもので、手動に比べて手間はかからないが、音による感情表現には向いていないと言えるだろう。矢島氏が過去に手掛けた作品では、『ベイクランドストーリー』で前者の手法が多用されており、MMORPGの『ファイナルファンタジーXI』では後者の手法でほぼすべての音が構成されている。「手動はコストがかかるが、自動制御ではこだわりが出せない」という矢島氏の言葉どおり、両者をどう配分するかはサウンドクリエーターにとって大きな悩みどころ。そこで矢島氏は、手動発音と自動発音におけるジレンマを解消するためには「これまでの手法を積み重ねるだけでは難しい」と判断。新しい方法を作る必要があると考え、今回『ファイナルファンタジーXIII』で採用されたMASTSの開発に着手したという。
 

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 矢島氏が提案したMASTSの基本構想は、キャラクターの間接ごとにセンサーを埋め込んで音を制御して挙動と連動する物理演算システムを実現し、最終的には音の自動生成を可能にするというもの。これを受けて実際に開発を行うことになった土田氏は、プレッシャーを感じつつも「実現すればおもしろそうだ」という情熱に動かされ許諾したという。こうして完成したMASTSは、発音情報の収集、発音の判定、実際に発音する、という3つのフェーズを経て、自動で発音処理を行うことを可能にした。各フェーズの詳細を説明すると、発音情報の収集では、キャラクターの向きや地形、ボーンの位置といった素材をもとに鳴らすべき音の種類を判断。続く発音の判定では、前フェーズで抽出された音をキャラクターの状況と照らし合わせて、どう鳴らすのか、または鳴らす必要があるのか、といった点を判断する。たとえば、前進しているのか後退しているのか? 歩いているのか走っているのか? といった具合に。これらを経て最後に発音されるというのがMASTSの仕組みとなる。冒頭で述べた、手動による音の微妙な強弱、そして条件テーブルの手軽さという両者のいいとこ取りを実現したものと言えるだろう。

 

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 矢島氏より提示された作品ごとの使用サウンド総数を見ると、MASTSがいかに作業を効率化しているかがわかる。前作『ファイナルファンタジーXII』では、使用サウンドの数は手動で結びつけたものと条件テーブルで鳴らされたものの合計が約9000個。一方、『ファイナルファンタジーXIII』ではMASTSの搭載により手動で音を結びつける必要がなくなった。発音制御がすべてオートメーション化されたことで総数は約5200個と、大幅なコストダウンに成功している。

 

 とは言え、『ファイナルファンタジー』シリーズはファンタジーな設定の作品。登場するキャラクターのすべてが2足歩行の人間タイプというわけではない。つまり個体差が激しいということ。そこに関しては、スクリプト制御を取り入れて対応したそうだ。腕を振り上げる際の発音は肩の角度が一定を超えときに、しゃがみ姿勢を取ったときの音は膝の座標が腰より上にきたタイミングで、といった設定を組み込み、ほとんどのキャラクターで違和感なくモーションと発音を連動させることに成功したという。また、異常発音が出た際の調査用に専用のデバッガーも作成。映像のモニタリング、保存が同時に行えるため、より効率的な作業を可能に。しかし、それでも想定の範囲外すぎるキャラもいくつかあったようで、そこに関しては従来どおり手動で音の結びつけを行ったそうだ。

 

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 矢島氏はMASTSの成果は、『ファイナルファンタジーXIII』だけに限らないと語る。同作で使われた音のパターンはライブラリー化してほか作品への流用も可能なため、「将来的な費用対効果は非常に大きい」のだという。また同氏いわく「MASTSはまだ完全版ではない」そうだ。「いまはイベントテーブルで音を組んでいるわけですが、将来的には完全に物理化できれば考えています」(矢島)。『ファイナルファンタジー』シリーズの美麗な映像表現同様、音へのこだわりもこのように日々確かな進化を遂げているのだ。

 

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