HOME> ゲーム> これまでにない斬新な戦闘システムが爽快さへと誘う『エンド オブ エタニティ』
●斬新なだけに、システムの深い理解が必須とされるが、戦略性と爽快感を兼ね備えた1作
セガの『エンド
オブ エタニティ』は、3人が重火器を用いて戦いながら、階層世界の謎に迫っていくRPG。もっとも特徴的なのはその戦闘システムだ。独創的なシステムを持つ本作を、ファミ通Xbox
360を中心にレビューや攻略記事を担当してきた古株ライター、石井ぜんじがインプレッションする。
▲主人公たち3人は、階層世界バーゼルの4階層にある“エベル・シティ”に住んでいる。各階層を移動しながらストーリーは進んでいく。 |
●戦闘システムの理解がおもしろさにつながる
本作のジャンルはロールプレイングであるが、ストーリーやキャラクター以上にその戦闘システムに特徴がある。戦闘システムをウリにしているロールプレイングは数多いが、その中でも本作のシステムは異色だ。通常の場合、いくらシステムに凝っているといっても、そこはロールプレイング。戦いをこなして成長させれば、レベルアップの力でゴリ押しできる。ところが本作は、そのようなタイプの作品ではない。間違った方法で戦っていると、なかなか先に進むことは難しいだろう。その点はアクションゲーム並みにシビアであり、ロールプレイングというよりは、むしろシミュレーションゲームに近い。
しかしだからこそ、本作の戦闘システムはおもしろい。システムを理解することにより、強敵を倒すことができたときの喜びは格別なものがある。ここでは本作の特徴をレビューするとともに、始めたばかりのプレイヤーが陥りがちな失敗についてもコメントしていこう。
●初心者の罠〜単発での攻撃には危険が潜む
マニュアルを読んだり、闘技場でのチュートリアルを体験すれば、本作の戦闘システムについてある程度理解できるだろう。だがいざ戦闘となったとき、プレイヤーは敵に対してどのような行動を起こすだろうか? 敵の正面に立ち、ゆっくりとチャージし、銃撃するのではないだろうか。
ところが本作においては、それは危険な行為なのである。ゆっくりとチャージしているあいだは無防備なので、敵の攻撃が3人のうちの誰かに当たってしまう可能性が高い。なによりも、そんな単発な攻撃では爽快感に欠ける。
このような単発のノーマル・アタックをくり返し、盛り上がらない戦闘にかろうじて勝利しても達成感は薄い。そしてすぐに、倒せない敵と遭遇してしまうことだろう。場合によっては、システムを理解しないまま投げてしまうことにもなりかねない。
だが安心してほしい。本作の戦闘システムはやや特殊だが、理解すればちゃんと爽快に敵を撃破していけるものなのだ。インビンシブル・アクションと呼ばれるシステムが、本作の戦闘における最大のキモといえる。
▲単発の銃での攻撃は、あまり相手にダメージを与えられない。それどころか危険も潜んでいる。それを理解しないで遊んでいてはもったいない。 |
●“インビンシブル・アクション”が勝利へのカギを握る
インビンシブル・アクションとは、I.S.ゲージを消費しながら、移動しつつ銃撃するというシステムだ。だがこのシステムを使おうとしたときに、引っ掛かるのがゲージを使って攻撃する、というところである。
本作を始めたばかりの人は、敵を攻撃してゲージを溜め、それを使ってより強い攻撃をするという、格闘ゲームの必殺技のようなものをイメージするかもしれない。しかしI.S.ゲージをよく見てみると、3つゲージが溜まったところから戦闘開始となるのがわかるだろう。これはどういうことであろうか。
本作の戦闘はインビンシブル・アクションを使いまくり、敵にダメージを与えることで減ったゲージを回収していく、といった流れとなる。インビンシブル・アクション中は無敵で、爽快に敵を攻撃できる。この攻撃をいかに連続して行っていくか、その戦略が戦闘のキーポイントなのだ。
もちろん、単に移動する、というアクションも場合によっては必要となる。移動すれば敵を誘導したり、安全でインビンシブル・アクションのやりやすい場所を確保できる。しかし単に逃げているだけでは、いつかやられてしまう。I.S.ゲージを回復させるには、やはりインビンシブル・アクションを行わなければならない。本作の戦闘システムが要求するのは、攻撃は最大の防御、という考えかたなのである。
▲攻撃しつつゲージを溜めるのではなく、ゲージを使って攻撃しながらゲージを維持、または増やしていく。いかに途切れずに攻撃し続けられるかが勝負のポイントだ。 |
●基本を理解したあとに、さらに奥深い戦闘が待っている
インビンシブル・アクションを行う場合、どこまで走って撃つのか、その行動の終点を指示する必要がある。このとき、残りのふたりを結ぶ直線と、インビンシブル・アクションのラインが交錯していれば、青い直線が引かれる(交錯していない場合は赤い直線)。青い直線を引いたときにインビンシブル・アクションを行うとレゾナント・ポイントが溜まっていき、ポイントが溜まれば3人が同時に走って攻撃できるレゾナンス・アタックを仕掛けられる。
レゾナンス・アタックは強力な攻撃だが、くり出すまでにインビンシブル・アクションという仕掛けが必要だ。効果的にレゾナンス・アタックを使っていくためには、二手、三手先を読んでインビンシブル・アクションで走る方向を決めていかなくてはならない。それは一種の思考パズルであり、高い戦略が必要とされるゆえんだ。
また銃で与えるダメージの種類も、スクラッチ・ダメージとダイレクト・ダメージの2種類がある。ここでは深く説明しないが、このダメージシステムは武器の使い分けや、3人の攻撃順番などに関係してくる。さらに敵の弱点の見分けかた、敵に応じた武器選択など、システムに関して語れることは数多い。強敵と出会い、とても勝てないと思っても、それは何か見落としているポイントがあるのだ。
▲レゾナンス・アタックは3人で同時にくり出す強力な攻撃。そのほかダメージシステムや武器の性能など、システムを理解すればするほどおもしろくなる。 |
●ゆとりを脱出し、真のおもしろさに到達できるか
これまで紹介してきたように、本作は戦闘システムを理解すればするほどおもしろくなってくる。だが問題は、ユーザーが最初に試みようとする感覚的なプレイが、インビンシブル・アクションの要求する遊びかたと異なっている、というところだ。これがもう少し前例のあるシステムであれば、それほど抵抗なく受け入れられるであろう。だがオリジナリティーが高いがゆえに、戦いかたのコツをつかむまで苦労するかもしれない。これは戦闘システムだけでなく、ワールドマップのシステムについてもいえる。客観的に見れば、それは欠点といえるかもしれない。
ヒット作を産み出した先人の開発者の言葉によれば、ゲームは斬新であればよいというわけではなく、一歩か二歩くらい先に進んでいればいいそうだ。それに比べて本作は、五歩か六歩は先んじているように、筆者には思える。
だがそれは、いままでにないおもしろさがあることに他ならない。戦闘システムに新しさを求めたり、自分で攻略法を編み出すことに喜びを感じるユーザーにとって、本作はこのうえない贈り物になるだろう。ぜひとも途中で投げ出さず、本作の魅力を存分に味わってほしい。
▲ゲームゆとり世代にはきびしいかもしれない本作のシステム。しかしこれを乗り越えてこそ、シナリオを達成していく本当の喜びが得られるだろう。 |
Text by 石井ぜんじ |
筆者紹介 石井ぜんじ |
ファミ通Xbox 360誌でクロスレビュー、攻略を担当する古株ライター。ゲームの文章を書き始めてから20数年、飽きずに続けております。過去に『NINJA GAIDEN(ニンジャガイデン)』シリーズ攻略本、『シュタインズ・ゲート公式資料集』に参加。『公式資料集』はディープな内容に仕上がりました。これからも本の作りがいのある、魅力的な作品を期待したいですね。 |
『エンド
オブ エタニティ』
■機種:プレイステーション3、Xbox 360
■発売元:セガ
■発売日:2010年1月28日発売
■価格:7980円[税込]
■テイスト:SF・銃
■ジャンル:RPG
■プレイ人数:1人
■通信機能:なし
■CERO:12歳以上対象
■備考:プロデューサー:島野光弘(セガ)、ディレクター:勝呂隆之(トライエース)、開発:トライエース
※『エンド
オブ エタニティ』の公式サイトはこちら
[石井ぜんじの過去のレビュー記事]
※ゲーム性のクオリティーアップが世界への没入感をより高める『アサシン クリードII』インプレッション
※時間という禁断のテーマに挑んだ本格派ノベルゲーム『シュタインズ・ゲート』インプレッション
※じっくりと余韻を楽しみたい大人のギャルゲー『ドリームクラブ』インプレッション
※プレイヤーの腕がしっかり反映される『バイオニック コマンドー』インプレッション
※戦略性がほどよくアクションに融け込んだ絶妙のバランス『真・三國無双5
Empires』インプレッション
(C)SEGA |
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