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『聖闘士星矢』のフィギュア全種類を持つ仏Xbox 360のキーマンがオタク文化を熱く語る!
【フランスゲーム事情 その3】

2009/12/28

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●マイクロソフト・フランスのブランドマネージャーに独占インタビュー

 

 フランスゲーム事情を巡る旅第3弾は、セガ、THQ、マイクロソフトと渡り歩き、フランスゲームの事情通としても有名なジェレミー・ゴードン氏。フランスだけでなく、ヨーロッパ全体のゲーム事情、さらには日本との関わり合いやオタク文化についてなど、幅広くお話をうかがってきた。興味深い話が満載につき必見です!
 

01

マイクロソフト フランス

Xbox 360ブランドマネージャー

Jeremy Goldstein
(文中:ジェレミー)

 

――まず、ジェレミーさんのお仕事について教えてください。

 

ジェレミー 10年まえにセガで働いたのちTHQへ移り、そして1年半まえ、マイクロソフト・フランスに入社しました。現在は、フランス国内において、マイクロソフトが作るすべてのXbox 360のソフトを担当しています。

 

――ヨーロッパ内での、フランスの立ち位置を教えてください。

 

ジェレミー フランスはヨーロッパの中で、家庭用ゲーム市場においては、イギリスに次いで2番目に大きな市場です。同じく、PCゲーム市場においても、ドイツに次いで2番目の売り上げがあります。

 

――――PCゲームも担当しているのですか?

 

ジェレミー 別の担当者がいますが、じつは2年ほどまえから、マイクロソフト・フランスでは、PCゲームを発売していません。

 

――フランスでの、Xbox 360の状況を教えてください。

 

ジェレミー フランスでの家庭用ゲームマシンの総売上台数は140万台です。ゲームソフトは960万本。だいたいゲームマシン1台に対して、ゲームソフトが7本という計算になります。その中で、Xbox 360を持っている人たちの50パーセントは、Xbox LIVEに接続しています。Wiiとはターゲット層が違うので、単純な比較はできませんが、Wiiの売上はXbox 360よりかなり上です。プレイステーション3は、Xbox 360より数字の上で少しだけ上ですが、もうほんの少しの差でしかなくなってきています。プレイステーション2が544万台売り上げたことに対し、初代Xboxの売り上げが100万台に満たなかったことを考えれば、現在Xbox 360は、かなり追い上げている状況です。

 

――フランスで売れているXbox 360のソフトを教えてください。

 

ジェレミー マイクロソフトのソフトの中では、『Halo 3(ヘイロー 3)』、『Gears of War 2(ギアーズ オブ ウォー 2)』。他社のゲームでは、『Call of Duty: Modern Warfare 2(コールオブ デューティ モダン・ウォーフェア 2)』、『FIFA 10』、『PRO EVOLUTION SOCCER 2010(ワールドサッカー ウイニングイレブン2010)』。日本のゲームで売れているものもあります。たとえば、『Resident Evil 5(バイオハザード5)』、『LOST PLANET (ロスト プラネット)』、『ソウルキャリバー Broken Destiny(ブロークンデスティニー)』などです。

 

――フランス人はどんなゲームが好きなのでしょうか?

 

ジェレミー フランスでテレビゲームと言えば、3つのカテゴリーに分けられます。アメリカで作られたゲーム、フランスで作られたゲーム(ユービーアイソフトの作品など)、そして日本のゲームです。フランスでは、アメリカのようにアクション中心のゲームと、日本のようにキャラクターやシナリオが重要視されるゲーム、その両方が混ざり合ったゲームが人気です。ヨーロッパの中でフランスは、日本の文化に興味を持っている人がもっとも多く、日本文化を意識したゲームを好みます。

 

――日本では、残念ながらフランスのゲームはあまり発売されていません。具体的に、どういった作品がありますか?

 

ジェレミー 日本のテレビゲーム市場は大きいので、日本の会社が日本のゲーム市場向けに作った作品だけで、十分な利益を上げることができますよね。しかし、フランスのテレビゲーム市場は小さすぎて、フランスの会社がフランス国内向けに作っても利益が上がらないのです。そういった中で具体的な例として、ユービーアイソフトの『ANNO』があります。『ANNO』は、ヨーロッパの長い歴史を取り入れた作品で、アメリカのような歴史の浅い国にはない物語を取り入れています。そういったゲームはフランス人が作るいいゲームであり、全世界に売り出すことができる作品です。

 

――フランスというより、ヨーロッパをターゲット、テーマにした作品ということですね。

 

ジェレミー 1995年〜2000年にかけて、フランスの会社が作るテレビゲームは“フレンチタッチ”と呼ばれていました。フランスのゲームはアドベンチャーゲームのような探偵モノが有名で、古代や中世、またベルサイユ宮殿などが舞台の作品がありました。事件の証拠を掴むため警察のように人々を尋ねてまわったり、宝探しの手がかりを見つけたりするゲームです。フランスはこういったスタイルのゲーム作りに強く、この種のゲームがたくさん作られ、そしてよく売れました。それらはほとんどPC向けでしたが、プレイステーション向けの作品も少しありました。ですが、この種のゲームがあまりにも多く市場へ出回ったためにピークを迎え、その後は作られなくなってしまった。誰もが1〜2本は買いますが、その後似たような作品は買わなくなりますよね。それは、現在のニンテンドーDSやWii向けゲームにも見られる傾向だと思います。ニンテンドーDSやWii向けのゲームには、似通った内容のものが多いと思います。

 

――アドベンチャーゲームが人気とは、ちょっと意外でした。もう少し詳しく教えてください。

 

ジェレミー ニンテンドーDSの『レイトン教授』や、『MYST(ミスト)』のような感じの作品です。ゲーム中に、ちょっとした映像とともに物語が紹介されたり、探偵のようにルーペを使って手がかりを捜したりする内容です。それらの作品の主人公は、ほとんどが歴史上の人物でした。こういったゲーム作りにおいて、歴史に基づくことは、フランスではとても大切なことなのです。アメリカのゲームは、主人公が強く、激しく、音も派手という内容が多い。ですが、私たちにとって大事なのは、ゲームをプレイする人が主人公になりきれること。おとぎ話や童話が大好きなのです。だから、宮崎駿監督の映画がフランスでも成功するのだと思います。

 

――主人公になりきるゲームが好きだったり、歴史などの実話に基づく話が好きだという部分は、日本のゲームファンと共通する部分ですね。さきほど挙げていただいた以外で、フランスで売れている日本のゲーム、受けている日本のゲームがあれば教えてください。

 

ジェレミー 数字の上では『PRO EVOLUTION SOCCER(ワールドサッカー ウイニングイレブン』ですが、フランス人に「日本のゲームと言えば?」と聞いた場合、誰もが『ファイナルファンタジー』と答えるでしょう。『ウイニングイレブン』は、日本のゲームだとは知らずに買っている人が多いのです。『ウイニングイレブン』は日本でも売れていますが、日本以外でいちばん売れている国はフランスでしょうね。

 

――『FIFA』シリーズよりも、『ウイニングイレブン』シリーズのほうが売れているのですか?

 

ジェレミー 今年に入ってから『FIFA』が『ウイニングイレブン』を追い抜きました。ですが、それまでの10年以上のあいだ、『ウイニングイレブン』の売り上げがトップでした。『FIFA』はどうやっても勝てないだろうと思っていたのですが、今年はそういう結果になり、「すべては可能だ」と改めて思い知らされました。この結果が示しているのは、ゲームは、どれだけ有名なタイトルかではなく、重要なのは“質”だということです。

 

――やはり、フランス人はサッカーゲームにはうるさいのですか?

 

ジェレミー サッカーゲームにももちろんうるさいですが(笑)、サッカーゲームに関わらず、フランス人はすべてのゲームについてきびしい目を持っています。つね日ごろから何でも批判する国民なのです。たとえばこういう話があります。コップに半分水が入っている。イギリス人は「コップに半分水が入っているね」と言うが、フランス人は「半分しか水が入っていない」と不平を言う。私も含め、いままで『ウイニングイレブン』で遊んでいた友人たちが、今年は揃って『FIFA』を遊んでいます。誰も『ウイニングイレブン』で遊びたいと言わない。でもこのさき、来年や2年後はどうなっているかと言われれば、わからないですが。ちなみにフランス人が『FIFA』に持っているイメージと、今年『FIFA』が勝利したこととは何の関係もないと思います。もうひとつ、フランス人の気質を表している話として、フランス人は強いものを嫌い、弱いものを応援する傾向にあります。初めは『FIFA』のほうが『ウイニングイレブン』よりも売れていました。そこで『ウイニングイレブン』を応援した結果、『ウイニングイレブン』の売り上げは増え、王者になった。そこで今度は『FIFA』を応援し始めた。その結果、今年は『FIFA』が売り上げを伸ばしてトップに立った。私たちフランス人は、こういう気質なのです。『ウイニングイレブン』は10年以上ものあいだトップの座にいたから、そこに胡坐をかいていたのでしょう。そういう態度をフランス人は、よく思わないものです。

 

――興味深い洞察です。フランス人のことが、少し理解できたように思います。ところで日本とフランスのマーケットの違い、マーケティングの違いは、どこにありますか?

 

ジェレミー フランス人は、かなり日本文化の影響を受けています。その理由として、30年ほどまえからフランスのテレビで放映され始めた日本のアニメの影響があります。日本で放映されたアニメは、1年後にはフランスで放映されていたのです。テレビゲームについて言うと、『ドラゴンクエスト』、『モンスターハンター』など日本で爆発的に売れていたゲームについて、具体的にどんな内容なのかを知りませんでした。ゲームの名前は聞いたことはあるが、内容はわからないという状態です。アニメは1年後なのに、それらのゲームがフランスで発売されるまでには、かなりの時間がかかりました。フランスではプレイステーション2の『ドラゴンクエストVII』から発売になり、いまでは『VIII』までの発売です。Wiiの『ドラゴンクエストソード』も発売されていますが、『XI』はまだです。それ以前は、『ドラゴンクエスト』がどんなゲームなのか、見たこともありませんでした。『モンスターハンター』は、現在プレイステーション・ポータブル向けに1作品出ていたと思います。それら、日本で成功を収めているゲームがどんなものなのか、フランス人は興味があります。私がTHQにいたときには、コーエーのゲームを担当していました。コーエーの『三國無双』やアトラスのゲーム、そして『魔界戦記ディスガイア』や『ファントム・ブレイブ』のようなゲームが日本ではとても売れているようですが、そういったゲームは、アジアの歴史にあまりなじみがないフランス人には、難しく感じてしまいます。

 

――日本のオタク文化をいち早く取り入れたフランスですが、現在は、何が流行っているのでしょう?

 

ジェレミー フランスのオタク文化には2種類あると考えています。日本に何度も行き、日本語を習い、日本のポップミュージックを聞いている(日本のポップミュージックビデオを流しているテレビチャンネルもある)、そういった本当のオタクと呼べるフランス人は、そう多くはいません。その反面、私のように日本のアニメをテレビで見て育ったフランス人も多い。マンガやゲームというたくさんの日本文化に触れているフランス人は、ある意味、少なからず皆オタク文化に触れている、"軽いオタク"と呼べるのではないでしょうか。フランスで放映された日本のアニメは、『キャプテンハーロック』、『グレンダイザー』、『銀河大戦』、『スペースコブラ』などがあります。もう少し新しいものになると『キャプテン翼』、『北斗の拳』、『聖闘士星矢』などです。ヨーロッパの中で唯一フランスだけが、このように多くの日本のアニメをテレビで放映していたのです。'80年代〜'90年代に観たアニメの中には、女の子向けの『キャンディキャンディ』などもありました。現在のフランスの25〜35歳くらいの人は、だいだいそういったアニメを見て育ちました。ひとつおもしろい話があります。『ベルサイユのばら』という日本でも有名なマンガがありますよね。これはフランスでもとても有名です。『ベルサイユのばら』はジャック・ドゥミ監督の『レディーオスカー』というフランス映画をヒントにして描かれたマンガだったからです。しかし古い映画のため、少なくとも私と同じ年代のフランス人は、その映画のことを知りません。何年かのちに『ベルサイユのばら』を通して、その映画のことを知ることになるのですが。

 

――――日本のアニメが流行っていたことは聞いたことがありますが、具体的なタイトル名をお聞きすると、ぐっと身近に感じます。さらにお聞きしますが、もっと最近では、どのような状況ですか?


02

ジェレミー '90年代始めからは、アニメだけでなく、たくさんの日本のマンガが入ってきました。アジア以外の国の中で、フランスはマンガの消費が世界一です。アメリカよりも、フランスのほうが、マンガが売れています。ちなみに私が初めて読んだマンガは『BASTARD!! -暗黒の破壊神』です。もう20年ほどまえの話ですね(笑)。それ以外にも、いろんな種類のマンガがフランスに入ってきました。その中には、エロチックなもの、レディースコミックなどもあります。そういった新しい世界を描いたマンガも売れました。若者たちにとって新鮮だったため、関心を集めたのかもしれません。現在は、インターネットを使えばあらゆる情報を集めることも難しくはないですし、それにテレビを使えば、あらゆるものを流行らせることが可能です。まずテレビアニメを放映する。その後、おもちゃ、テレビゲーム、本、フイギュアなどを発売する。そうやって流行が作られていきます。私も、昔集めた『聖闘士星矢』のフィギュア全種類をいまも大事に持っています(笑)。私の青春時代でもあるのでね。

 

――そこまで、日本が好きだとは(笑)。

 

ジェレミー きっと日本の皆さんは、フランス人がこれほど日本文化の影響を受けているとは、思っていないでしょうね(笑)。ですので、死ぬまでに一度は行かなきゃいけないと思う国は日本です。じつはまだ、行ったことがないので。東京は、テレビゲームで遊んでいるすべてのフランス人が、一度は行ってみたいと思う場所でしょう。みんな、アメリカのE3より東京ゲームショウに行きたがっていますよ。E3もいいんだけど、どちらかと言えば、東京ゲームショウでしょうね(笑)。

  

――――話が戻りますが、Project Natal(プロジェクト ナタル)のフランス国内での反響についてお聞きします。ユーザー、開発者、それぞれの反響は?

 

ジェレミー Natalのことを知ったとき、「すごいものが出てきた」と誰もが感じました。Natalはテレビゲーム界に新しい未来をもたらす、いい意味での起爆剤です。みんながNatalについて少しでも多くの情報をほしがっています。まずユーザーが知りたいのは、Natalを使ったゲームがどんなものなのか、そして何ができるのかということです。いまのところ私たちは、ユーザーに具体的なものを何も見せていません。開発者については、現在すでに多くの人々がNatalの開発に関わっています。ユービーアイソフトも早い時期からWii向けの開発(『レッドスティール』や『クレイジーラビット』など)に着手していました。ユービーアイソフトは、フランスのテレビゲーム会社の中でも、Wii向けの優れた作品を作っている会社です。彼らにも、現在Natalを使用した開発中のプロジェクトもいくつかあるはずです。ヨーロッパでは、どの会社でも、Natalの開発はイギリスで行っています。マイクロソフトのNatalの開発も、マイクロソフト・フランスではありません。マイクロソフト・ヨーロッパの本部はイギリスにあるので、本部がイギリスにいる開発者たちと連絡を取り合っています。

 

――なぜイギリスに開発が集中しているのですか?

 

ジェレミー ヨーロッパ内でのテレビゲームの普及が、イギリスがいちばん早かったこと。そしてアメリカや日本のゲーム会社がヨーロッパ支社をイギリスに構えていることが理由です。たとえば、セガのヨーロッパ支社もイギリスにあります。

 

――今後のマイクロソフトの展開について教えてください。

 

ジェレミー それについては、残念ですが詳しくは言えません。他社との争いは避けたいので、詳しい話はできないのです。言えることは、つねによりよいものを提供していくこと。プレイステーション陣営との差を縮めることです。たとえば、イギリスではXbox 360がプレイステーション3よりも売れています。しかしフランスでは、プレイステーション3のほうが売れている。きっとそれは、フランスが日本の文化に強い影響を受けているからで、イギリスはどちらかというとアメリカの文化に影響を受けているからではないか、と考えています。このように、ヨーロッパといっても、国によって販売戦略が変わってくるのです。それらの情報を言ってしまうと私は首になってしまうので言えません(笑)。それに、そういう大事なことは、私たちにもまえもって知らされていないことが多いのです。情報はどこからもれるか分かりませんからね。

 

※斬れ味抜群の刀を携え『レッドスティール2』見参!

※その1 欧州のヒットメーカー、ユービーアイソフトのキーマンに独占インタビュー!

※その2 日本発売が期待される『レッドスティール2』開発現場に独占潜入!

 

 

 

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