HOME> ゲーム> 東京工芸大学が2010年4月にゲーム学科を設立、将来を担う人材を幅広く募集
●ゲーム業界に対して優秀な人材を育成する
日本初の写真学校を前身とし、85年以上にわたり最先端のメディア技術とメディア芸術を追求してきた東京工芸大学(東京都中野区、神奈川県厚木市)。2010年4月、同校に“ゲーム学科”が誕生する。2007年4月に芸術学部アニメーション学科に“ゲームコース”をスタートさせてから3年。今回“ゲーム学科”という、単独の“科”として独立することで、同校の取り組みはさらに本格化することになる。東京工芸大学は、芸術系・理数系を同時に擁したゲームの専門的な教育環境を整備したのである。東京工芸大学にて教鞭を振るう岩谷徹教授に、ゲーム学科設立にあたっての抱負などを聞いた。
▲岩谷徹氏。東京工芸大学 芸術学部 ゲーム学科 教授。『パックマン』(1980年)のクリエーターとしてあまりにもおなじみ。’77年ナムコ(現・バンダイナムコゲームス)に入社後、数多くのタイトルを手がける。日本デジタルゲーム学会理事。バンダイナムコゲームス フェロー。著書に『パックマンのゲーム学入門』(エンターブレイン・刊)など。 |
――2010年にゲーム学科が設立されるそうですが、どのような方針で?
岩谷 基本的な部分は2007年にゲームコースを設立した当初から変わっていないのですが、ゲーム業界に対して優秀な人材を育成していきたいという思いがあります。ゲームは、マンガやアニメなどと並んで日本が世界に誇る“知的財産”なわけですが、世界を相手にしての競争力の強化という意味からも“教育”に力を入れていかないといけない。実際のところ、ゲームの教育や研究という意味では、欧米やアジアに比べて日本は立ち遅れているという現実があります。北米では100数十校のゲームの教育・研究機関がありますし、中国や韓国などゲームの教育・開発に対して政府が支援をしている国もある。ましてや昨今は、ハードウェアの進化によって、ゲーム開発にも高度なテクノロジーを要するようになっているわけですからね。教育という側面から、ゲーム開発の底上げを図るための協力をしたいという思いがあるんですよ。
――実際の教育にあたっての方針は?
岩谷 根本に据えているのは“ゲーム学”です。CGが描けたりプログラムが組めたりするということだけではなくて、「ゲームとは何か?」「遊びとは何か?」「そもそも人間とは何か?」ということを、ちゃんと哲学を持って理解できるようにする。ゲームというものは、単に「おもしろいものを作ろう」というのではなくて、「人間という生き物はこういうところに喜びを感じて、こういう気持ちのメカニズムで反応する」といったことを考えながら開発するとぜんぜん違う。じつはゲームというのは、この意識の差が如実に反映されるコンテンツなんです。ゲーム学科では、そういったゲーム作りの根本にあたる“ゲーム学”を教育していくことが目標です。
――より懐の深い人材を育成するということですね。
岩谷 そのとおりです。もうひとつゲーム学科でこだわっているのが“ゲームの研究”です。ゲームに対する世間の認識にはプラスもマイナスもあります。とくに年配の方はマイナスのイメージが強いかもしれない。それに対して科学的見地に立って分析を行うことで、ゲームの効能を図る必要がある。「ゲームは社会に対してこのように有効である!」ということを、しっかりとしたデータに基づいて発信していくことも、ゲーム学科の責務になります。それはゲーム会社や専門学校にはできない、まさに大学のやるべきこと。科学的な研究に基づいた新しいゲーム理論を提示していきたいと思っています。そういった意味では、“研究所(ラボラトリー)”としての実験施設の充実ぶりも、ゲーム学科の誇るべき点と言えるでしょう。
――どのような設備が導入されているのですか?
岩谷 脳血流測定装置や眼球運動測定装置などです。ゲーム関連で、ここまで設備が充実している学校はほかにないと思いますよ。すべての設備が導入されたのは今年の8月で、実験は端緒についたばかりです。実験の検証が済むまでに最低5年はかかるだろうと想定しているのですが、着々と体系化を果たし、ゲームの“チカラ”を医療・福祉・教育分野などに活かしていきたいと思っています。
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〈東京工芸大学に導入されている実験装置〉 |
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■脳血流測定装置:脳のどの部分が活性化しているかを測定する装置(写真)。 ■眼球運動測定装置:ゲームや映画などで、ユーザーが画面のどこを見ているかを測定する。 |
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▲ゲームルームA(左)。アーケード向けの大型筐体を設置。ゲームの基本を学ぶ授業に活用している。ゲームルームB(右)。ゲームを体験できる。ゲーム研究の空間。 |
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▲モーションキャプチャースタジオ。ゲーム会社とそん色のない環境で開発に取り組んでいる。 |
――実際のカリキュラムはどのような感じになるのですか?
岩谷 これは入学時の試験からしてそうなのですが、ゲーム学科は“企画”、“デザイン”、“プログラム”の3分野に分かれています。入学試験も専門の試験を受けてもらって適性を見ていく感じです。「デザイナーになりたい」という気持ちはあっても、どうしても絵の上手い下手の適性はあるわけで、素養がないとなかなかきびしいというのが現実です。1年生で学ぶのはやはり基礎。たとえばデザイナーを例に取ると、ゲーム業界の試験を受けるときにポートフォリオ(自分の作品集)を提出したりするわけですが、メーカーの担当者が真っ先にチェックするのが、CG作品のまえにデッサンなんです。
――それくらい基礎というのが大事になるということですね。
岩谷 そうです。そして2年生になると、“企画”、“デザイン”、“プログラム”のそれぞれのメンバーがチームごとに集まって、実際にゲーム作りを体験することになります。
――開発現場の縮図ですね。
岩谷 まさにそのとおりです。何よりも問われるのがチームワーク。東京ゲームショウ2009に合わせて行われた日本ゲーム大賞2009では、東京工芸大学の学生チームが製作した『BAMBOONO(バンブーノ)』がアマチュア部門で大賞を受賞したのですが、そのときに評価していただいたのが、「このゲームはチークワークがよかったからこそ、できたもの」というものでした。
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▲日本ゲーム大賞2009の受賞式の模様(左)。『BAMBOONO(バンブーノ)』を制作した学生さんたち(右)。 |
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――ゲームを見るだけで、チームワークがいいか悪いかわかるんですか?
岩谷 わかりますよ。そして興味深いのが、『BAMBOONO(バンブーノ)』を作ったチームが、必ずしも成績優秀なメンバーばかりが集まったチームでもなかったということです。メンバーは、ちょうど2007年にゲームコースができたときの初年度に入学した学生たちなんですが、2年になってチーム編成をするときは、それぞれの分野で成績のよい順からチームを組んでいったんですね。このチームは中位の成績だったんです。でも、いっしょになってひとつのゲームを作ると、チームワークのよさを発揮して、見事にチームとして機能し出したんです。物を創るということは、こういうことなのです。逆に成績上位のチームは、それぞれに主張が強くて、「自分が、自分が!」となってしまう。各自の主張を尊重し過ぎてしまうんですね。ダメになると他人のせいにしたりして……。まさにゲーム会社の縮図を見ている感じがします(笑)。
――(笑)。でも失敗しても、それがつぎに活きますものね。
岩谷 そうなんです! むしろ学生のあいだはたくさん失敗してもいいと思っています。学生たちにも「失敗は勲章だぞ!」って言っていますし、“チームワーク”とか“コミュニケーション”を実体験のなかで覚えてほしいと思っています。ちなみに二期生の代は、チーム編成はコンペ制にしました。企画を学ぶ学生たちがゲームの企画を出して、デザイナーとプロブラマーは自分の作りたい企画に集まるという。
――それはきびしいですね。
岩谷 きびしいですよ。自分のところには人が集まらないという学生もいますから。でもこれが社会の現場です。ゲーム会社の縮図ですね。当然、自分が自信を持って提案したものに人が集まってくれないと悔しいし、イヤだと思います。でもそこで初めて学生たちが真剣に考え始めるんですよ。「なんで誰も支持してくれなかったんだろう?」「何がおもしろくなかったのか?」と悩み始める。新入生として入学してきたときは、ゲーム業界に対する漠然とした憧れだけがあった。「何かしらゲーム業界に携われればいい」くらいの気持ちの学生も多い。でも、自立したクリエーターになるには、生半可な勉強のしかたでは無理です。手足を動かすことを怠ると何もできないのですが、実際のところ1年生のときはまだまだ意識が薄い。それが失敗や悔しさを経験することで意識が変わるんです。ある意味、そこからエンジンがかかるんですね。自分の置かれた現状に気付かないことには何も始まらない。そういう“気付き”を与えてあげることが、私たちの役割だと思っています。
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『BAMBOONO(バンブーノ)』(製作:タケノコ) |
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日本ゲーム大賞2009
アマチュア部門 大賞受賞作。ふたりプレイ専用のアクションゲーム。プレイヤーはふたりで1本の棒を持ちながらゴールを目指すことになる。岩谷教授いわく「“企画”、“デザイン”、“プログラム”と3分野での工夫が随所に活かされた作品。難易度調整をはじめ、かゆいところに手が届くゲームデザインが秀逸。まさにチームワークの勝利」とのこと。 |
――それにしても、講師の方も教育カリキュラムで試行錯誤しているようですね。
岩谷 そうなんです。何しろ前例がない取り組みですからね。ゲームコース自体まだ卒業生が出ていなくて、カリキュラム自体現在進行形ですから。いまは、いかにカリキュラムを改善するかで試行錯誤の毎日ですね。学生たちといっしょに手探りしている感じです(笑)。まあ、それだけやりがいがあります。
――いっしょに作り上げている感がありますね。
岩谷 そのとおりです。日本ではゲーム教育の教材自体も不足しているというのが現状ですからね。私たちが彼らを教えていくなかで得られたことを、ひとつひとつ教材としてまとめていくのも、今後のゲーム教育にとっては有益だろうと確信しています。
――最後にゲーム業界に興味を抱いている方へのメッセージをお願いします。
岩谷 今回、東京工芸大学はゲーム学科という形ではっきりと“学科”になります。たしかに入学に際しては適性試験があるのですが、最終的に大切なのは「やりたい」という思いです。思いさえあれば少しくらい遅れていても追いつけますので、興味をお持ちの方はぜひとも東京工芸大学の門を叩いてほしいです。ただ単に「ゲームを作りたい」という漠然とした思いだけではなくて、「ゲームをとおして何を表現したいのか?」という明確なビジョンを持っていっしょに学んでいきましょう!
ゲーム教育に対して熱意を持って語る岩谷教授が印象的だった。東京工芸大学では、平成22年度の入学試験を2010年始めに実施予定。日程などは以下のとおりとなっている。
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▲こちらは正木勉専任講師のプログラムの授業風景。 |
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[平成22年度
入学試験日程] |
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一般入学試験(前期) |
※平成22年度学生募集要項の詳細はこちら
※東京工芸大学の公式サイトはこちら
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