好評価を維持し続けるiPhone版『スペースインベーダー』の開発秘話に迫る!(ネタばれあり)
【iPhoneアプリの開発現場から】
●30周年記念作品に込められた、原作への驚きのオマージュ
モバイル版として2008年に発売され、その後2009年7月28日にiPhone用アプリとして登場したタイトーの『スペースインベーダー インフィニティジーン』。配信直後から評判は非常に高く、App Storeのランキング上位に入るだけでなく、レビューでも約8割が満点評価の5つ星をつける(2009年11月現在)ほどの好評価を得ている。『スペースインベーダー』シリーズでありながら、まったくの新しい一面を見せつけた革新的な作品はどのように生まれたのか、本作のディレクター、そしてグラフィックデザイナーを務める石田礼輔氏にお話を伺った。なお、本インタビューの最後には重大なネタバレが入っている。インタビューの途中で、「ここより下はネタバレです」と注意書きをしているので、ネタバレを気にされる方は、そこより下記の部分は本作をクリアーしてから読んでほしい。
まずは、本作を知らない方のために、ゲームの概要を紹介。本作は、『スペースインベーダー』30周年記念作品として登場した、iPhone/iPod touch用のシューティングゲーム。“進化”をテーマにしており、ゲームの進行に応じて自機の攻撃方法だけでなく、グラフィックデザイン、サウンドも進化していくのが特徴だ。ゲーム開始時には1画面固定の、いわゆる『スペースインベーダー』そのものだったゲームが、ゲームが進むにつれて縦スクロールシューティングになり、1方向しか撃てなかった弾がホーミングレーザーになり、サウンドはテクノになり、グラフィックはハイセンスなワイヤーフレームのものへと進化していく。下のゲーム画面を見ればわかるとおり、どれだけゲームが様変わりするか、その一端がわかるはず。洗練されたビジュアルとZUNTATAの楽曲がシンクロし、シューティングの本来の気持ちよさに没頭できる。
また、本作は操作も革新的。プレイヤーが指で画面をなぞると(場所はどこでも可)、その動きに連動して自機が動く仕組み。自機が自分の指に隠れることなく、しかも戦況も見極めやすい。弾はつねに自動的に連射で発射されるオートショットで、操作だけに集中できる仕様になっているのだ(オートショットはオフにもできる)。こちらも、iPhoneのシューティングゲームではとくに操作がしやすいと話題になった。
【スペースインベーダー
インフィニティジーン】
キャリア:iPhone/iPod touch
アクセス:AppStoreでタイトル名を検索
情報料:600円[税込]
※『スペースインベーダー
インフィニティジーン』の購入はこちら
■プロフィール
石田礼輔氏
Ishida Reisuke
タイトー所属のゲームデザイナー。過去にモバイル用ソフトの『トランスピンボール』、『スピカ★アドベンチャー』、『ニジイロエンソク』などを手掛ける。『スペースインベーダー インフィニティジーン』ではディレクションとともにグラフィックデザインを担当した。
●シューティングゲームの進化そのものを物語に
――まずは『スペースインベーダー インフィニティジーン』を開発することになったきっかけについて教えてください。
石田 もともと“『スペースインベーダー』の30周年用ソフトを作ろう”というミッションを会社から受けたのがきっかけです。『スペースインベーダー』というソフトはタイトーの顔であって、非常に有名なタイトルです。厳密に言えば違いますが、日本の元祖テレビゲームとも言えるソフト。(僕に任せてくれて)とてもありがたいなと思っていたのと、自分自身が『インベーダー』ファンだということもあって、「ぜひ!」と即決でやらせてもらいました。ただ僕も該当するんですが、いわゆる“インベーダー世代”ではない人に向けて、オリジナル版に似たものをそのままリリースしても関心を持たれにくいかなと。そこで、“『インベーダー』というゲームはこんなにスゴいゲームなんだよ”ということを知ってもらうために、“進化していく”というコンセプトにしました。
――進化というテーマはすぐに浮かんだのでしょうか?
石田 すぐにというわけではありませんが、じっくり考えていくなかで浮かんできました。『インフィニティジーン』はプレイしていくとどんどんゲームが変わっていきますが、『インベーダー』のルールを変えずに現代風にカッコよくしていく、という直球勝負も考えなかったわけではありません。ただ、そういうものを作るよりも元の『インベーダー』を見せて、それが進化していく形のほうが、より『インベーダー』を自然に理解してもらえるかなと思いました。そこで、ベースは『インベーダー』にしつつ、ほかのものを加えていくように作り、最終的には『スペースインベーダー』に集約していくようにしています。
――あれだけ完成されたビジュアルを見ると、ビジュアル先行で作られた印象を受けます。
石田 ゲームの仕様を考えるときにビジュアルも同時に考えますので、そういう意味ではどちらが先とは言えないくらい最初のころからビジュアル面も考えていました。本作のテーマは“進化”ですが、いわゆる“インベーダーがやってきたぞ! キミの手で宇宙を守るんだ!”というような物語はないんです(笑)。ただ、『インベーダー』というゲームと、『インベーダー』から生まれてきたゲームというような歴史自体を物語にしようと思っていたので、ストーリーを語る画面というわけでなく、ゲームらしい画面にしないといけないなと思いました。ですので、ゲームらしい記号やデジタル感を意識してデザインしていますね。
――ワイヤーフレームを多用したステージや、そのままの形で登場するインベーダーが目を惹きますね。
石田 ほかのメーカーさんが緻密なデザインを追求していく中で、ああいうシンプルなグラフィックにすれば、単純に目に留まるだろうなというビジュアルインパクトも意識していましたね。あと、『インベーダー』という素材を考えるときに、あまり具体的な具象物にしてしまうとデザインが合わない。インベーダー以外の敵だけ豪華にしてしまうと、インベーダーだけが借りて置いてきたような感じになってしまうんです(笑)。
もうひとつは、テーマに戻ってしまうのですが、“元祖でありながら最新”というコンセプトで、新しいような懐かしいようなグラフィックにしたいと考えました。最初に考えたビジュアル画面は、ステージ“3-1”の赤いグラデーションの背景に白いキャラクターが乗っているところで、これは新しさと懐かしさの融合を実現するために思いついたものなんです。手前のものは懐かしい完全に白一色にも関わらず、背景は昔の技術では出せないキレイなグラデーションにするという、違和感がありながら、違和感ではないヘンなマッチング感という両方を持たせました。それをキービジュアルにして、ほかのものを考えていきました。
――グラフィックで、『スペースインベーダー』をどこまで崩していいかという判断材料はありましたか? 名作だけあって、難しいところだと思うんですけど(笑)。
石田 いえ、完全に自分で勝手に線引きを考えました(笑)。ただインベーダーの形は崩してはいけないという社内ルールがありますので、最終的には広報に確認をしています。じつはレトロ感を表現するために、昔のモニターの走査線を再現する演出を使っているんです。その線が瞬間的に入ることでインベーダーの形を一瞬だけ崩しちゃうんですが、これは演出ということで許してもらいました。誰もこの効果に気づいてはくれないんですけど(笑)。
――あー、言われてみればそうですね(笑)。インベーダーの形を崩したのは、本作が初めてなんですか?
石田 いえ、むしろ崩していないほうだと思います。ほかのゲームを見て「あれを認めちゃうんだ!?」と、自分のほうがうるさく言うくらいなので(笑)。インベーダーを発光させるのは許されるので、一度赤や青に発光させてみたこともあったのですが、逆にありきたりなものになってしまったので、白一色にしました。
――こういったビジュアルを実現するのに、インスピレーションを受けた作品はありますか?
石田 Xbox 360の『Geometry Wars: Retro Evolved』などは気になりましたね。あのゲームは、まさに発光している演出ですよね。あれがあったからこそ、こっちで発光をやめたという理由もあります。
――タイトーで『スペースインベーダーエクストリーム』というシリーズがありますが、こちらは意識されましたか?
石田 30周年の『インベーダー』を作るというときに、家庭用でもう『エクストリーム』が動いていて、それとは別に自分で作らなくてはいけなかったので意識はしましたね。ひとつの方向性としてああいう正統派の進化もあったと思うんですが、同じものをやってもしかたないということで、僕の作りたい方向性が明確化したことにもつながりました。
●作品に込められたタイトーシューティングへのオマージュ
――シューティングゲームの歴史を追うようにゲームの内容が進化していきますが、もともとシューティングゲームにお詳しいのでしょうか?
石田 詳しいと思います(笑)。もともとかなりのシューターで、いちばん好きなゲームジャンルと言えば「シューティングです!」と、即答します(笑)。ですので、『インフィニティジーン』はあらゆるゲームに影響されていると思います。タイトーに入社した最大の理由が、タイトーのシューティングが好きだったからなんですが(笑)、だからか、とくにタイトーのシューティングのエッセンスが、散りばめられて色濃く出ていると思います。中には直接的に出ているものもありまして(笑)、お気づきの方もいらっしゃると思うんですが、『メタルブラック』のパワーアップアイテムである“ニューロン”が出てきたり、『レイ』シリーズのロックオンレーザーが出てきたりというのは、直接的に出てくるパターンですね。
――ちなみに、初めて遊んだシューティングゲームは?
石田 えっと、タイトーのゲームではないんですが(笑)、たぶん『ツインビー』だった気がします。『スペースインベーダー』のほうが先に知ってはいたのですが、出身がスゴい田舎だったのでゲームなどを遊ばずに、初めて友人の家で『ツインビー』をやったと思います。
――なるほど。では、衝撃を受けたシューティングゲームは?
石田 『メタルブラック』と、これを言う人は珍しいと思うのですが、『レイ』シリーズの中でも『レイクライシス』ですね。どちらも映像的と言いますか、『メタルブラック』は進化というテーマ性と、怨念のようににじみ出てくる世界観がほかと違うなあと。シューティングゲームも、単なるゲームだけでなく世界観を表現できるんだと、すごく感じました。同じく『レイクライシス』もゲームでありながら、敵が映像的に出てくるんです。映像とゲームの融合というのは、昔から自分でやりたかったものでもあって、『レイクライシス』はそれができている作品だと思いました。ただ敵がカットインしてくるところを見ているだけでも気持ちいいのに、それが魅せるだけでなくゲーム性とマッチングしているというのがすごくよかったですね。
――『スペースインベーダー』へのオマージュという部分も?
石田 そうですね。かなりオマージュという部分が入っていて、ゲームの起動画面は『スペースインベーダー』のアトラクト画面のパロディーになっているんです。別のゲームの企画をやっているスタッフに、「アトラクト画面のパロディーになっているんだよー」と見せたんですが、完全にノーリアクションで(笑)。わかる人にだけわかればいいかなと思っています。
――超高速に移動したり、花火のように打ち上がったり、母船から飛び出してきたりと、といういろいろなインベーダーがいますが、ああいう発想はどこから出てくるのでしょうか?
石田 毎回同じ言葉になってしまって恐縮なのですが、やはり進化というポイントを表現するためです(苦笑)。「いままでのインベーダーの動きというイメージを崩さなくては」という思いから作っていったものですね。個人的なイメージで言うと、インベーダーは歩兵と言いますか、『ドラクエ』で言うスライムのようなイメージがあって、キャノン砲をたくさん積むといった、すごい火力を持っているイメージはないので、多彩な動きはするけれど、攻撃方法は大仰なことはしないようにしています。ただ、何体か集まると強いビームを撃つというものは入れましたね。
●気軽に手軽に、そしてアツく!
――今回いちばん驚いたのが操作性なんですが、多くのiPhoneのシューティングゲームが採用しているものとは違いますよね。これは、何かを参考にされたんでしょうか?
石田 これはとにかく実験を重ねました。いくつものバージョンを作って、中にはモーションセンサーを採用して傾けて遊んだものも作りましたね。その中に、現在の操作方法もありました。本当は操作方法がいくつかあって選べるようにしようと思っていたんです。ですが、現在の操作方法がいちばんやりやすかったですし、逆に選択できるようにするとユーザーさんを混乱させかねないので、一種類だけにしました。
――そもそもなんですが、インターフェース作りからしなくてはいけないのに、なぜiPhoneで作ろうと思ったのでしょう?
石田 ひとつは、iPhoneは勢いがあるというシンプルな理由。あと、ゲームの雰囲気やグラフィック、ゲーム性などがiPhoneユーザーに受けるんじゃないかという、とてもゆるい感覚です(笑)。
※同席していたタイトー広報からのつっこみ
(スゴいゆるい回答……。もっとグローバルを見据えたとかカッコいい意見はないの(笑)?)
石田 (汗)。あと、現在主流になりつつあるダウンロードコンテンツで、ちょっとグローバル的な、ひとつ作れば、すぐに世界に出せるっていうか……(笑)。
――模範解答、ありがとうございます(笑)。でも、本当に世界の市場でも好評ですよね。
石田 ただ一度も『インフィニティジーン』を遊んでいるところを見たことがないので、実感が湧かないんですよ(笑)。単純に電車内でマンガを読んでるから気づかないのかもしれませんけど(笑)。
――では、あまりこの好評っぷりを実感することはないと?
石田 直接的にはありませんが、それこそApp
Storeのレビューなどを見て「やったー!」と、小市民的に喜ぶことはあります(笑)。
――(笑)。印象に残った意見などはありますか?
石田 いわゆるフォーク世代のユーザーさんからの意見なんですが、昔ながらの『インベーダー』が好きだったようで、「ついて行けない」という書き込みがありましたね。それが初めての悪い評価のコメントだったので、スタッフ一同「そういう意見もあるか……」とスゴい衝撃とショックを受けました。
――社内の年齢層の高い方にプレゼンをしたときの評判はどうだったんですか?
石田 社内の人間にはごく一部にしか見せなかったんです。ある程度できあがった段階で見せたときには「カッコいい」と言われましたが、大勢の人がいる前でのプレゼンだったので、あまり文句が言えないという状況もあったのかもしれません(笑)。画面のシンプルさは、ものすごい反発があるんじゃないかと恐れていたところだったんで、何も言われなかったのは助かりましたね。
あと、プロデューサーの奈良(明広氏)にも例外的に好き放題に作らせてもらっていたんです。いつもは開発費のことや売れる企画といったことを言われるのですが、今回は「いいゲームを作れ!」という命題だったので、がんばらせていただきました。
――いまのシューティングの流行りは“弾幕系”ですが、『インフィニティジーン』はどんな位置づけになるのでしょう?
石田 “進化系”ですかね(笑)。いまのジャンルにこだわっているつもりはないのですが、あえて置き換えると“覚えゲー”かもしれません。先ほどもお話しましたが、ジャンルというよりはビジュアルを意識していて、ステージデザインのコンセプトは音楽のプロモーションビデオのような映像を目指していたんです。『レイクライシス』にもつながりますが、映像の中に自分が参加しているような感覚にすれば、腕前に関わらず遊んでいるだけで楽しめるものになると思っていたので。ですので、系統で言うと“ビジュアル系”かな。ちょっと意味が変わっちゃいますが(笑)。
――パターンを覚えるということではなく、ゲームのビジュアルの中に入れることを目指したジャンルだと。
石田 そうですね。ゲームのテンポ自体の気持ちよさを目指しました。覚えゲーと言うと、ガッチリとパターンを覚えないとクリアーできないという印象がありますが、敵がビジュアル的に激しい攻撃をしてきていても、知らぬ間に避けて進んでいるような、自分がうまくプレイしている感じがする手触りを意識しています。たとえ自分自身が動かなくても、背景や敵が非常に動いていますので、そこに音楽が合わさって、参加しているだけでおもしろくなるようにしました。
――では、ゲームの難度は細心の注意を払って作られたと。
石田 はい。自分はシューターなんですが、ぶっちゃけヘタなんです(笑)。好きなくせに全然クリアーできなくて。だから、ゲームがさほどうまくない人でも落ち着いて対処すればクリアーできるようにしようという意図のもと、自分自身が基準になれましたね。いまのゲームは、敵の思考パターンが非常に複雑になっていて、攻略サイトを見ても理解できない。
『インフィニティジーン』は、逆にあからさまに「ここが安全地帯ですよ」と示すような動きにしていて、いまのゲームではほとんど聞かない“安全地帯”をわざと作っています。武器の選択も難易度に関わっていて、この武器を選べばほぼ動かずにクリアーできてしまうといったバランスも意図してやりました(笑)。ただ、武器を一度も変えずに、1回もミスせずにクリアーしようとすると難度は一気に跳ね上がりますね。あまりうまくない人は、コンティニュー時に武器を選べるようにしていますので、いろいろな武器を選んでいけば、すぐにクリアーできる武器が見つかると思います。
――逆に“名古屋撃ち”などは上級者向けのテクニックですよね。
石田 そうですね。高得点を狙うシューター用です。シューターにとっては、あの難度で満足しないとわかっていますので、名古屋撃ちなどのテクニックに加えて、ハードモードを用意しています。このふたつを組み合わせれば、無茶苦茶アツいゲームになりますね。あと、基本的には自動的に弾が発射されるオートショットを使っていますが、高得点を狙う人用にオートショットを切れるようにしました。3本の指で触れればオートショットが切れるのですが、これはいい操作方法になったなと、一度も褒められたことがないので自分で言いました(笑)。プログラマーの発案でもあるので、僕が言うのもアレですけど。ただ、メニューからいちいち切り替えるのではなく、すぐに狙ってできるようには意識しました。逆に初心者の人が3本指で触れてしまって、オートショットのオフが暴発してしまう可能性もありましたので、その機能を入れるかどうかだけ、オンオフの切り替えをメニューでしています。
――ベースをオートショットにしたのは、初心者を意識していたのでしょうか?
石田 そうですね。指1本で遊べるという手軽な感覚は必要だろうなと思っていました。もともと当初からグローバル展開を意識して開発していたので、説明書を読まずに遊んでもプレイできるようにしようと思っていたんです。進化などのメッセージは出るのですが、それを読まなくても遊べるし、メインとなる撃って避けるだけというシステムは絶対に変えませんでした。それは原作の『スペースインベーダー』というエッセンスを意識していたこともあるのですが、誰でも遊べるようにそういう仕様にしました。
●Macユーザーならではのインターフェースデザイン
――樹形図のようなメニューも変わっていますね。
石田 『インフィニティジーン』はもともとモバイル版があるのですが、インターフェースまわりはすべて一新しました。あの樹形図自体がゲームの進化をより示せるなということと、またものすごいゆるい感覚的な回答なんですが、iPhoneユーザーはこういうアートっぽいインターフェース好きだよなと思って(笑)。
――好きだと思います(笑)。石田さんは、もともとMacユーザーなんですか?
石田 はい。会社に入ったらWindowsだったので、最初は戸惑いました(苦笑)。
――なるほど。Macユーザーならではの感覚ですね。あの樹形図メニューはどういった発想で作られたんでしょうか?
石田 単純にいままであまりないので、いいなと思ったんです。僕が知らないだけかもしれませんが、最初のメニューから最後のステージ選択までがつながっているインターフェースは見たことがないので。
――これはどこまで伸びるんでしょうか?
石田 どこまでも(笑)。プレイヤーごとに形は変わっていくのですが、意図的に同じ場所から進化させていけば、その1本がずっと伸びていって、非常に使いにくいメニューにもなります(笑)。ただ、枝分かれする条件があるものの、基本的に左右のバランスを取るようにしています。
――音楽の評価も非常に高いですね。
石田 ありがとうございます。サウンド担当者(ZUNTATA)も非常に喜んでいます。ゲーム画面のイメージとともに、自分の中でサウンドのイメージもクールでソリッドな感じというのがありました。その分、物語がないので感動的なメロディーではなく、シューティングらしい激しさを現したメロディーにしてほしいと担当者に伝えたところ、ものすごく悩んでしまって。言葉じゃ伝わりにくいんで、当たりまえなんですけど(笑)。けっきょく、リテイクしなかったものがほとんどないという状況になってしまいました。ただ、その担当者が急に開眼しまして。
――開眼ですか(笑)。
石田 担当者がいろいろな仕事を抱えて追い詰められた中でエンディング曲を作ったんですが、追い詰められすぎたようで、心情的に爆発してしまったみたいなんですね。それで急にはっちゃけて、「やりすぎて狂気のサウンドになっちゃったんですけど」って持ってきたのが、「これいいじゃん! こっちの方向性だよ!」ということになりました(笑)。それからは、それまで作ってきた曲も、同じ曲のテイストを持ち込んで、すべてアレンジし直していきました。あとSEは、わざとFM音源のままにしていて、レトロ感と未来っぽさを融合できるようなゲームらしい音楽にしています。
――iTunes Storeでサウンドトラックも配信していますよね。
石田 ええ。非常にサウンドが好評で、「サントラを出してほしい」というレビューの記述もありましたので、緊急配信したところ、サウンドトラックも人気を得ています。
――海外と日本ではゲーム自体のダウンロード数の差はありますか?
石田 一時、海外のほうが上のときもありましたが、いまでは日本がいちばんですね。じつはiPhoneの普及率も考えて、もともとアメリカのユーザーをターゲットにしていたのですが、結果を見ると、『インベーダー』はやはり日本のゲームなのかなと思いました(笑)。
――600円というゲームでは高めの値段設定ながら、ヒットしているのはスゴいですよね。
石田 もうちょっと高い値段も考えていましたが高すぎても受け入れてもらえないし、かといって『インベーダー』はタイトーの顔ですのであまり安売りもできないと。ゲーム内容も安っぽいものにはしていませんので、『インベーダー』ブランドを汚さずに、手に取りやすい値段を考えて設定しました。
――あまりユーザーに知られていないゲームの要素はありますか?
石田 深いものではない小ネタですが、爆発して敵を全滅させるアイテムのような敵がいるのですが、じつはその敵は、『メタルブラック』のボーナスステージに描かれているタンクなんです(笑)。これは社内の誰からも指摘されないマニアックなネタですね。ほかにもいろいろとネタは仕込んでいますが、もっともマニアックです。あと僕が、以前モバイル用に作っていた『トランスピンボール』というゲームがあるのですが、その中に出てきた敵がちょっと登場していたりします。さっき言っていた『メタルブラック』のタンクも『トランスピンボール』に出ていました。
――いろいろなシューティングのオマージュを含めて作られているんですね。
石田 そうですね、シューティングマニアの色が出てしまいました(笑)。
――今後追加要素などは考えていますか?
石田 具体的には秘密ですが、考えてはいます。
――それはハードの垣根を越えた感じのことも……(笑)?
石田 えーと、あるかもぐらいです(笑)。続編などは社内から話が出ていますが、まだ考えていません。追加要素も含めて、今後の展開は1年以内には出せると思いますので、ご期待ください!
……と、ここでインタビューは終わりになっているが、じつはまだ非常に大きな話題が残っている。それは、本作の裏テーマをより詳しく伝えるもの、そして魅力を示すものなのだが、重大なネタバレにもなっている。そこで、ここより下は本作をクリアーした方、またはネタバレを気にされない方だけに読んでほしい。「ネタバレはイヤだけど、読みたい!」という方は、本作をクリアーしてから読んだほうが、より衝撃が増すと思うので、まずは本作をクリアーしてはいかがだろうか。あまりもったいぶってもしょうがないので、以下、ネタバレインタビューとしてお届けさせていただく。
●ネタバレ注意! 本作に込められた石田氏の想い
――最後に登場する攻撃方法“クラシック”は、やはり原作の『スペースインベーダー』の攻撃方法なんでしょうか?
石田 クラシックは原作の『インベーダー』と同じく、画面内に1発しか発射できない攻撃方法ですが、その代わりに最強の威力を持っています。使いこなすのは相当難しいですね。これは、最終的に原作の『インベーダー』に集約していくという、『インフィニティジーン』のテーマと密接な関係があるんです。『インフィニティジーン』は、好き勝手に『インベーダー』をアレンジをしているのですが、それでも“原作の『スペースインベーダー』がいちばんすばらしいんだ”というメッセージを持っており、それを示すためにも最後に出てくる攻撃方法を原作そのままになっています。というのも、原作の『インベーダー』はどんな敵も1発で仕留めていますよね。あれは弱い弾を1発しか撃てないのではなく、どんな敵をも破壊できる強力なビームを撃つ究極の兵器だったんだという、自分の中の解釈を『インフィニティージーン』という作品で示したものでもあるんです。
――なるほど! そのテーマは『インフィニティジーン』全体に関わるものですよね。進化していった先に元に戻るという。
石田 そうですね。これはだいぶネタバレになってしまうのですが、そのテーマは最初から決まっていました。最初に原作の『インベーダー』から始まって、また原作に戻るという。伝わっているかどうかわかりませんが、ゲームスタート時の原作の『インベーダー』を踏襲した戦いと、最終ステージの原作を踏襲し、一匹だけ残った状態の戦いは同じものなんです。メイン部分の戦闘は、じつはたった一回の戦闘のさなかに垣間見た“進化の記憶”みたいなもので。ですので、最初と最後はまったくの同じシーンで、すべてのステージをクリアーしているあいだにその戦いが進んでいて、最後の一匹だけを残した状態でそのシーンに戻ると。
――あーーー! なるほど! そんな深いストーリーが……。
石田 ありがとうございます(笑)。ユーザーさんが使う時間はゲームのメインの部分なので、僕はあまりメニューやエンディングに力を注がないんです。でも、今回はそういうオチがありましたし、その最初に戻るというテンションが、ユーザーの皆さんにレビューを書いてもらうモチベーションになるのでは? と考えて、こだわりました。
――クリア―してみて、なんとなく母体に還る、原点回帰という意味合いなのかなと思っていました。
石田 ええ、それでほとんど合っています。最初であり最後にもなる究極に進化した状態というのは、すべての力を利用しないと倒せないほど肥大化したというイメージなんですね。言葉を使わないので、明快なメッセージにして伝わりやすくしたつもりなんですが、最初と最後がつながっているというのは一部の人にしか伝わらないかなと思っています。
――これを読んでやりたくなるユーザーも多いと思うのですが?
石田 そう思いますが……ただ、かなりのネタバレなのでもろ刃の剣だなと(笑)。
(取材・文章:世界三大三代川)
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