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「世界でいちばん売れる何かを作りたい」 宮本茂氏が仕事史を語る

2009/10/24

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●「世の中にはインタラクティブにしたほうがおもしろいメディアはたくさんある」
 

▲最新技術の展示と各種シンポジウムが実施されているデジタルコンテンツEXPO2009。

 2009年10月22日〜2009年10月25日まで、都内の日本科学未来館と東京国際交流館で開催されている“デジタルコンテンツEXPO2009”。最新テクノロジーを使ったデジタルコンテンツの展示などが行われている本企画内では、各業界を代表するクリエーターによるシンポジウムも実施されている。10月24日には任天堂の宮本茂氏による“宮本茂の仕事史”と題した講演が実施。これは“アジアグラフ 2009 in Tokyo”による、世界の第一線で活躍する現役クリエーターを表彰する取り組み“創賞 贈賞式”と合わせて開催されたもので、宮本氏は同賞の受賞記念として登壇したのだ。

 

 今回の講演は“宮本茂の仕事史”というタイトルにあるとおり、約30年にわたる同氏のゲーム業界における歩みを、東京大学大学院教授でアーティストの河口洋一郎氏が聞き手となって振り返る内容となった。最初に、スクリーンで自身の歴史のダイジェストとも呼べる映像を流し、任天堂入社以前のエピソードから語り始めた宮本氏。小学生時代は人形劇が好きで、とくにお気に入りだったのは『ひょっこりひょうたん島』だったそうだ。ちなみに、その中に登場するキャラクターのひとり“ドン・ガバチョ”は容姿の面などで「マリオに少し影響しているかもしれない(笑)」とのこと。中学に上がった宮本氏は、赤塚不二夫、手塚治虫、白土三平などの作品に出会い、マンガ家を志すことに。みずからマンガ部を設立するほどの気の入れようだったそうだが、「まわりのやつがすごくて挫折しました(笑)」と断念。しかし、絵を描くことへの愛着はその後も持ち続け、大学で工業デザインについて学び、その流れで任天堂へ入社となった。

 

 任天堂へ入社した当初は、マクドナルドで配る景品やカルタの制作を行っていた宮本氏だが、『スペースインベーダー』の大ヒットで空前のゲームブームが巻き起こり、会社が本格的にゲーム事業へ乗り出したことを機に、ゲーム開発へ携わることに。そして、記念すべき第1作目『ドンキーコング』が登場する。同作を手掛けるに当たって宮本氏が念頭に置いていたのは「誰が見ても何をしたらいいかわかるゲームを作ろう」という考え。「大きなものが逃げているから、そこへおいでという作りにしました」(宮本)。ゲームを遊んだことがある人ならわかるだろうが、『ドンキーコング』では画面上部に“大きなもの(ドンキー)”があり、いちばん下にプレイヤーがいるという画面構成。宮本氏の言葉どおり、画面を見た瞬間にゴールがわかり、何をすればいいのか理解できる作りになっている。また、ジグザグに組まれた足場のところどころにショートカットできる梯子があるのは、「ただジグザグに進むのでは労働になってしまう」(宮本)という考えによるもの。

 

 宮本氏は『スーパーマリオブラザーズ』の開発経緯についても言及。この作品が発売されたのは‘85年で、ファミコン誕生から2年目のこと。当時は、ファミコンも発売から数年が経ってそろそろ終わりだろう、という見かたがあったそうで、宮本氏は同ハードで最後の作品にしようという考えで開発を行ったという。しかし、最後のつもりで作った作品が空前の大ヒット。さらに翌‘86年には『ドラゴンクエスト』の発売も重なりファミコンは社会現象とも呼べるほどの人気を獲得することになったのだ。ファミコン人気が加熱する一方、宮本氏はつぎに「カートリッジを超えるゲームを作ろう」と“ディスクシステム”向けタイトルの開発に乗り出す。そこから生まれたのが『ゼルダの伝説』だ。

 

 『ドンキーコング』、『スーパーマリオブラザーズ』とパッと見てすぐにゴールがわかる作品を出してきた宮本氏だが「いつまでも同じことをやっていてはつまらないだろう」ということで、『ゼルダの伝説』では「プレイヤーが成長する要素」に着目したアクションゲームへ挑戦することに。が、当初は「何していいのかすぐにわからないゲームが売れるか、と言われました(笑)」といった具合に、周囲から猛反対を受けたという。それでも「ゴールがわからなくても、いろいろな仕掛けを見つけたり、だんだん自分が強くなっていったりというのはおもしろい」と信じて開発を続けた。そして発売後、『ゼルダの伝説』は日本のみならず海外でも絶大な評価を得て、『スーパーマリオ』と並ぶ同氏の代表シリーズとして知られることになった。ちなみに『ゼルダの伝説』では当初、ゲームの目的を知るうえでの最低限の目印として主人公“リンク”に最初から剣を持たせていたそうだが、上述した周囲の反対を受けて「僕は天の邪鬼なので、剣もとってやりましたよ(笑)」(宮本)と、手がかりをさらに削ってしまったんだとか。その代わりに「どう見ても“そこに入れ”という洞窟を作って、そこで剣をもらえるようにした」(同)というシーンを追加。結果的に、より自然にプレイヤーがゲームの進めかたを理解できるデザインになった。

 

 宮本氏が手掛けているのはソフトだけではない。ハードの開発、とくにコントローラーのデザインは同氏の意見が強く反映されている。ファミコンではゲーム&ウォッチ版『ドンキーコング』で搭載された“十字キー”を採用し、スーパーファミコンではコントローラー上部にLRボタンを設置するといった具合にだ。ファミコンに十字キーを採用した背景には、ふたり用のゲームが遊べる本体にしたいという考えがあり、そのためにはジョイスティックだとふたつのコントローラーを付属させるにはコストがかかり過ぎる、という理由があったという。スーパーファミコンのLRボタンは、アーケードで一大ブームを巻き起こしていた『ストリートファイターII』の6ボタンへの対応を考えてのこと。単純に3つのボタンを上下に並べるという意見もあったそうだが、操作が混乱してしまうことを危惧して、コントローラーを持った際自由になるひと差し指で押せる本体上部に設置したそうだ。どちらも開発段階では反対意見も出たそうだが、「そのうち慣れるんじゃない、と大らかに考えていました(笑)」と話す。十字キーとLRボタンは若干の形状違いはあるが、現在ほとんどのゲーム機で採用されており、同氏の着眼点がいかに鋭かったがうかがえる。さらに、ニンテンドウ64で3Dゲームを動かすことに着目して“3Dスティック”を開発し順調にコントローラーを進化させていくが、ゲームキューブで壁へぶつかることに。「初めてゲームを触る人にはコントローラーが複雑怪奇なものに見えるようになってしまった」(宮本)。

 

 ボタンの数が増え、さまざまなグラフィック表現に対応したキー配置は熱心なゲームユーザーにとっては歓迎すべきことかもしれないが、一方でそれは新規ユーザーが入りづらいという問題も生む。宮本氏は「この流れの中で進むのには限界がある」と考え、原点回帰をテーマにニンテンドーDS、Wiiの開発を手掛けることになったのだ。それに合わせて、ニンテンドーDSでは『脳トレ』シリーズや『nintendogs(ニンテンドッグス)チワワ&フレンズ』、Wiiでは『Wii Sports』、『Wii Fit』といった新機軸のタイトルも打ち出す。こちらは現在進行形の取り組みなので結果を論じることはできないが、世界中で老若男女がニンテンドーDSとWiiを楽しんでいる現状を見る限り、“原点回帰”という宮本氏の狙いは成功していると言って間違いない。ちなみに、現在は「インターフェース、インターフェース言うのにちょっと飽きてきたから(笑)、つぎはインターフェースじゃない部分に行こうかな」(宮本)と考えているんだとか。

 

 ゲームキューブからWii開発までのエピソードを明かす中で、宮本氏は海外におけるキャラクター戦略についても語った。多くの人が海外、とくにアメリカは“キュートが嫌いで、クールが好き。クールなものが売れる国”と考えているが、同氏はすべてがそうではないと考えている。事実、かわいらしいキャラクターデザインの『ポケットモンスター』シリーズは海外でも大ヒットを記録しているし、それ以前にも『スーパーマリオ』シリーズ、『星のカービィ』シリーズなどキュート寄りのデザインのタイトルが売れているからだ。その理由について同氏は「ゲームがおもしろかったから」と簡潔な説明。「おもしろいゲームを作ってそこにキャラクターを乗せればいいんです。こうでないとダメ、と言われる考えは意外といい加減なものですから」(宮本)。日本ユーザーは、海外ユーザーは、といった考えに振り回されすぎないことの重要性を説いた。

 

 講演の最後では、これからの展開についても語られた。ゲーム関連技術はインタラクティブなメディアという特性上、わかりやすさ、親切さという部分で最高峰にあると話す宮本氏。ニンテンドーDSを利用して読書をゲームで表現したように「世の中にはインタラクティブにしたほうがおもしろいメディアはたくさんある」と語り、ゲーム技術のさらなる広がりを展望した。自身については、今後『Wii Fit』のようなものを作り続けていくよりも「世界でいちばん売れる体重計を作って満足してしまったので(笑)、つぎはそれと違う世界でいちばん売れる何かを作りたいですね」とコメント。新たな遊びの創出へ意欲を見せた。

※関連記事:“デジタルコンテンツ Expo 2009”に未来のゲームを見た
 

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