HOME> ゲーム> ゲーム業界は“第2ラウンド”へ――エンターブレイン浜村社長、定期セミナー“ゲーム産業の現状と展望”を実施
2009年10月9日、エンターブレイン本社にて業界関係者に向けたセミナー“ゲーム産業の現状と展望 2009年秋季”が実施された。これは、同社代表取締役社長の浜村弘一氏が、毎年春と秋に行っている恒例の講演で、今回は“第2ラウンドへ移行するゲーム業界 〜多様化とグローバル化が変える競争のメカニズム〜”と題し、世界規模で起こりつつある競争原理の変革を、国内外のデータを元に読み解くという内容になった。まずは、各プラットフォームの現状に対する分析から見ていこう。(本記事中に登場する数字はすべてエンターブレイン調べ)
2009年度上半期の国内ゲーム市場全体は前年同期比で、10パーセント以上も縮小。浜村氏はその要因について、前年市場を牽引したハードの売れ行きが大きく後退したことにあると語り、WiiとPSP(プレイステーション・ポータブル)の販売台数がともに半減近く縮小したと説明した。
Wiiに関しては、上半期における大作ソフトの不在がハードの売れ行きにも大きな影響を与えたという。『大乱闘スマッシュブラザーズX』、『マリオカートWii』、『Wii
Fit』(発売は2007年末)といった大作が出揃った2008年に比べて、タイトルが小粒になっていることを指摘した。とは言え、明るい話題も多いWii。サードパーティーの苦戦が続く中で、カプコンの『モンスターハンター3(トライ)』が90万本以上を販売し、Wiiのサードーパーティータイトルおよび据え置き機の『モンスターハンター』シリーズで最高の売れ行きを記録したのだ。また、下半期以降のラインアップについても『Wii
Fit Plus』(発売中)、『New スーパーマリオブラザーズ Wii』(今冬発売予定)と大作が揃っている。浜村氏はこれらを踏まえたうえで「100万、200万本以上の売れ行きを望めるタイトルが、これだけ揃っているのはWiiだけ」と、大作ソフトの不在は一時的なものであるとした。
Wiiと言えば先日、初の値下げも行った。値下げされた週の国内販売台数は前週と比べて、約2.5倍増と早くも高い効果が現れている。海外に関しては、以前から「北米ではゲームハードは価格が200ドルを切ると、途端に売れ出す傾向がある」とのことで、浜村氏は日本以上の効果が期待できるのではと分析。加えて、年末商戦にはプレゼント需要でハードの売れ行きが伸びることは確実とし、「Wiiが盛り返す可能性は十分にある」とまとめた。
Wiiと同じく、前年同期比で販売台数がほぼ半減となったPSP。要因はWiiと同じくハードを牽引する大作ソフトの不在だ。事実、2009年上半期にもっとも売れたのは、廉価版である『モンスターハンターポータブル 2nd G(PSP the Best)』。そんな中、注目されているのがダウンロード専用機“PSP go”であると浜村氏は語る。現在のプレイステーションビジネスは、ソニーグループのネットワーク事業のひとつとして運用されているが、浜村氏はその中でPSP goがアップルの携帯音楽プレーヤー“iPod”のライバル機的位置づけにあるのではと分析。「過去のUMDソフトが使えないという点でゲームファンにはあまり響かないかもしれない」(浜村)一方で、新規ユーザーの開拓には効果が望めるという見かたを示した。
PSP-3000の値下げについては、値下げした週の販売台数が前週比2.8倍という伸びを見せたこともあり、市場の評価が高くまだまだ需要があると説明した。
上半期は好調な伸びを見せたプレイステーション3。理由は説明するまでもなく、価格変更に加えて薄型、軽量化した新モデルの投入だ。新モデル発売週の販売台数は、ハードの発売時を超えるもので、浜村氏は「新モデル投入のタイミングでロンチのときより売れるハードは見たことがない」と指摘した。またソフト累計販売本数ランキングでは、上位に2009年発売のタイトルが続々と入っており、ハード、ソフトともに好調だ。
今後の展開について浜村氏は、プレイステーションの『ファイナルファンタジーVII』、プレイステーション2の『ファイナルファンタジーX』という、各ハードで最初の『ファイナルファンタジー』シリーズのナンバリング作が出たタイミングで、ハードの売れ行きが急激に拡大してきたというデータを紹介。これに加えて、プレイステーション2で本体価格の値下げと『メタルギア ソリッド 2』の発売が重なったタイミングでも、『ファイナルファンタジー』シリーズ発売時に並ぶ売れ行きになったというデータを披露し、「ハードがいちばん売れるのは値下げとキラータイトルの誕生。そういう意味で、『ファイナルファンタジーXIII』はかなり伸びるのでは」と期待を寄せた。
浜村氏は「大いなる仕込みに当たる時期」と現在の状況についてとコメントしたXbox 360。仕込みのひとつは『The Beatles: Rock Band』(日本発売未定)による、新規ユーザー層の開拓だ。同作はエレクトロニック・アーツがプレイステーション3でマルチ展開しているが、Xbox 360に関してはハードメーカーであるマイクロソフトも“E3”のプレゼンテーションなどでPRに力を入れていた。その裏には高年齢層ユーザーの囲い込みという狙いがある、と浜村氏。「Wiiが“健康”をテーマに上の年齢を取りにいくなら、360は“ビートルズ”で上の年齢を取りにいく」というわけだ。
もうひとつの仕込みは、新世代の入力デバイス“Project Natal”の開発。自分の体をコントローラーにしてしまうというコンセプトのNatalについて浜村氏は「テクノロジーというよりもサイエンス」と評価。イノベーション(革新)に飢えたゲームクリエーターが高く評価しているとし、「これが出たら、Xbox 360をつぎの世代へ導く可能性がある」と展望を述べた。
ニンテンドーDSは昨年同時期比で本体販売台数が129.2パーセントと、好調に伸張。『ポケットモンスター ハートゴールド・ソウルシルバー』で、かつてゲームを遊んでいた人々、いわゆる回帰ユーザーの数をさらに増やし、加えて『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』でニンテンドーDSを買ったもののしばらく遊んでいなかった休眠ユーザーを呼び起こしたことがおもな要因であると浜村氏は分析する。今後も『ニノ国』(2010年春発売予定)、『ゼルダの伝説 大地の汽笛』(発売日未定)といった一般性の高いタイトルが発売されることを挙げ、浜村氏はニンテンドーDSが国内における「メインプラットフォームであることは間違いない」と結論づけた。
各プラットフォームの国内における現状を述べたあと、浜村氏は今後ゲーム業界が辿る方向性について言及。ネットワーク接続率の上昇にともなうプレイ時間の長期化、ハードの値下げするペースが前世代よりゆっくりであることに加えて、Wiiの“Wii Vitality Sensor”、プレイステーション3の“モーションコントローラ”、Xbox 360の“Project Natal”と新たなインターフェイスの登場により、一般的に5年と言われていたハードのライフサイクルはさらに伸びると断言した。
続けて浜村氏は世界のゲーム市場に触れ、欧米がプレイステーション2市場の急激な縮小などでダウン傾向にある中で、中国が急激な成長を遂げていると説明する。浜村氏が「信じられない状況になっている」と語る中国は、インターネットのインフラ整備が進んだことでPCのオンラインゲーム市場が拡大。提供されるコンテンツもかつては韓国や日本製のものが主流であったが、現在では中国がみずから生産し、さらにアジア諸国を中心に輸出するほどにまで育っているという。
今後ゲーム市場について浜村氏は、“拡散”――つまりさまざまなプラットフォームでコンテンツが提供される形になるだろうと展望。コンテンツが拡散する先は、ブラウザゲームやmixiアプリのようなSNSのサービス、さらにはiPhone、iPod
touchなど。その背景にあるのは、ゲームの進化がグラフィックから入力機器、サービスの進化へとシフトチェンジしたことがが大きいと語った。
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▲SNSは、PSPでも2009年冬から“R∞M for PlayStation Portable”と題したサービスを開始予定。 |
浜村氏は「間違いなく、ゲーム市場は第2ラウンドからまったく違う競争原理で進むことになると思います」とコンテンツのボーダレス化を強調。今後重要となるのは、コンテンツがより注目され、より売れる仕組みを作れるかどうか? というプロデュース力にかかっているという結論を示した。
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▲浜村氏はコンテンツを提供するストアの充実ぶりもついても、今後大きな鍵を握るとした。 |
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