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重鎮勢ぞろいのパネルディスカッションで業界への提言続々
【TGS2009】

2009/9/26

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 ●日本のゲーム業界がさらに発展するには?

 

 東京ゲームショウ2009のオープニングを飾る基調講演の第2部として、“グローバル時代におけるトップメーカーの戦略と展望”と題し、国内トップメーカーの経営陣を招いての豪華なパネルディスカッションが行われた。

 

パネルディスカッション

 

 登壇したのは、カプコン代表取締役社長の辻本春弘氏、コナミデジタルエンタテインメント取締役副社長の北上一三氏、スクウェア・エニックス代表取締役社長の和田洋一氏、ソニー・コンピュータエンタテインメント SCEワールドワイド・スタジオプレジデントの吉田修平氏、バンダイナムコゲームス代表取締役社長の鵜之澤伸氏。この5名により、来る2010年のゲーム業界のヒントを探るべく熱いトークが展開されたのだ。

 

 最初のテーマは“この1年の総括”。昨年9月のリーマンショック、少子化問題など日本経済が直面している問題は枚挙に暇がないが、これらを踏まえたうえで昨年の東京ゲームショウ2008以降ゲーム業界がどうなったのかをそれぞれが語った。

 

●この1年の総括。日本の家庭用ゲーム業界にどんな変化が起こったのか?

 

辻本 「この1年間で、ユーザーのプレイスタイルが大きく変わりました。日本では携帯ゲーム機がブームとなって街角で遊んでいる人をここ何年かで多く見受けるようになりましたが、さらに直近の1年では複数人で遊んでいる人を多く見かけるようになった。これはもちろん『モンスターハンター』の影響もありますが、近々では『ドラゴンクエストIX』が果たした役割が非常に大きいと思います。市場が大きく変わったことを如実に物語っている出来事だと思います」

 

北上 「景気がどうこういう話は、我々のいるエンターテインメント産業には基本的に関係がありません。ちょっと昔ですけど、“失われた10年”(バブル崩壊後の、`90年代中期から2000年代前半の不況時代)のときも毎年毎年成長していましたし、ちょうどこの真っ只中に初代プレイステーションは誕生しています。そういう意味では景気と我々の産業はあまり関係がないと言える。ではこの1年にどんな変化があったのかと言うと、Wiiが成功したり、いつでもどこでも遊べる携帯ゲーム機が流行ったりと、新しいライトな部分が成長したと思います。(では来年も明るいのか?)……それはまた別の話です(笑)」

 

和田 「リーマンショックで破壊されたのは“クレジット”の部分です。これが住宅やクルマ産業になぜ影響が大きかったのかと言えば、これらはほとんどをキャッシュでは買わないから。北上さんがおっしゃるとおり、我々の業界にはあまり関係がないんですね。ゲームを借金して買う人はほとんどいませんから。ただ、小売店の方々には仕入れの部分で影響があったと思います。……ここからちょっと宣伝臭いことを言いますが、スクウェア・エニックスはおかげさまで『ドラクエIX』が400万本を突破し、グループに入ったアイドスの『バットマン』は全世界で250万本が売れました。さらに年末には『ファイナルファンタジーXIII』が出る。何が言いたいかというと、全体的には業界は、それほど変わっていないんです。リーマンショックによるダイレクトな影響はほとんどないということですね」

 

司会:家庭における変化を感じた部分は?

 

和田 「携帯ゲーム機で遊ぶことが定着し、作り手もそれを前提に考えますから、この分野はすごく発展していくと思います。質問の答えにはならないかもしれませんが、向こう5年くらいで重要なのはハードやゲームソフトのスペック面でのイノベーションではなくて、課金や収益モデルなどのイノベーション。こういったことこそが大事なのではないでしょうか」

 

辻本春弘氏
北上一三氏
和田洋一氏

 

吉田 「家庭用ゲーム産業の変化というお題ですが、今後の家庭用ゲームコンテンツを作るうえで重要になるヒント……というか事件がふたつ起きています。ひとつは、アップルのアップストアのスタート。ここでゲームに限らない小さなコンテンツがたくさん配信され、それがユーザーに定着している。もうひとつが、欧米ではとくに規模が大きいのですが、ソーシャルネットワークのフェイスブックやマイスペースで遊べるゲーム……というかサービスが、非常に大きな数のユーザーを捉えている。遊べるものは非常にシンプルですが、ゲームの内容そのものよりも友だちとの会話のきっかけ、人と人をつなぐものとして定着しています。これは我々がゲームコンテンツを作るうえで重要なヒントになるんじゃないかなと感じています」

 

鵜之澤 「景気の流れというものは、会社のIR的な言い訳には使わせてもらっています(苦笑)。でも、本当に言い訳ですよね。我が社は、今年の1月から6月にはたいしたものを出さなかったのですが、それは『ドラクエIX』を避けていたから(笑)。でも8月以降からは、プレイステーション2の『Gジェネレーション』が好調だったり、新型プレイステーション3と同時発売した『ガンダム』なども元気。それを見ると、お客様が変わったとか、景気が悪いせいだ、ってことじゃなく単純に魅力的なソフトを出し切れていなかったんだな……という反省はありますね」

 

●中長期的に、ゲーム業界は発展するのか?

 

北上 「ゲーム業界は20年以上続いていますが、それは大きな波、事件、進化の歴史なわけです。その中で20年も成長してこれたのはつねに新しいものをユーザーに提供できたから。ではこれからどうなるのかというと、やっぱり新しい遊び、新しい進化というものをどう作り出していくかにかかっている。いままではハードメーカーさんの努力もあって技術が進化したおかげで、我々作り手の表現力も向上しました。でもこれからはハードメーカーに頼り切るのではなく、コンテンツとして進化していかなければいけないんです。そのいいヒントがWiiであり、ニンテンドーDSですね。我々はソフトの作り手として、ソフト単体でこういった驚きをユーザーに与えられるよう努力しないと業界の成長が妨げられると思います。ただ、人間というものは飽きます。理想を言えば毎年毎年、時代時代にこういった新しい提案を起せないといけないんです」

 

和田 「物事を変えるという行為は、とてつもなくストレスがかかります。我々もなかなか変われませんよね。コンテンツについては皆さんの発言におまかせしてあえてマーケットについて言いますと、“ゲームは子供だけのもの”ではなくて、大人の娯楽として十分に楽しめるということをもっともっと真正面から認知してもらうことが重要なんです。大人がキチンと遊べるものだということをお客様に対してアピールしなければいけないし、我々も作っていかなければいけない。これが実現されれば、一晩でマーケットは倍になりますよ。でも、なかなかそれができないんですよね。欧米だと、大人が「ゲームが趣味だ」と言えば「クール!」って言われます。日本がもっとも、“ゲームは子供のものだ”という先入観が強い。ここは、業界も考えていかなければいけませんね。

 ビジネスモデルの面で言いますと、メディアが変わる瞬間の影響はとても大きい。マスクROMから光ディスクが主のメディアになったとき、利益配分の姿がガラリと変わって、とてもたいへんでした。今回、光ディスクがネットワークに変わっていくとき、どのように利益配分が適正になっていくのかを捉えられるかどうかにかかっています」

 

吉田 「“モノを作る”という立場から考えると、Wiiのような身体を使って遊ぶ分野の技術というのは日進月歩なんです。より忠実に身体の動きを捉えたり、さらに3Dテレビの技術、あるいはタッチパネル……。そういう、「これをゲームに使いたい」というアイデアはたくさんあるんです。それこそリソースが足りないくらいネタはある。しかし和田さんのおっしゃった課金の部分だとかをしっかり作らないと、いくらクリエイティブがすごくてもうまくハマらなくなる。いろいろな選択肢があるからこそ、そこの見極めが難しい」

 

吉田修平氏
鵜之澤伸氏
 

 

鵜之澤 「1枚7980円くらいでディスクを何枚売るか……というビジネスモデルから抜け出せていませんよね。ダウンロード販売も出えてきていますが、だからと言ってそれに7980円払ってフルデータを買うかと言ったら、自分の思考を鑑みても「ありえない」と言いたくなります。iPhoneで1ドル程度のソフトを遊ぶことが定着していますけど、それがいくら売れたところで大きな会社を回せるまでになるかというとちょっと難しい。皆さんがおっしゃるとおりビジネスモデルとやりかたをいつ変えられるのか、ということですよね。ここ数年で任天堂さんのハードでパラダイムシフトが起こりましたけど、サードメーカーはなかなかそれについていけなかったという実感もあります。以前からのビジネスモデルから抜け切れないこととあわせて、ちょっと恐怖すら感じますよね」

 

 このあと、ネットワーク時代でのビジネスモデルについてそれぞれの考えが披露されたあと、課金の問題、電子マネーの問題点などに話題は及ぶ。それを踏まえたうえで、テーマは携帯ゲーム機へと移った。

 

北上 「携帯ゲームに関しては、まえまえからもっとも可能性があるものだと考えていました。その最大の強みは、ひとりで1台持てること。据え置き機については、いまはもしかしたら違うかもしれませんが、基本的に一家に1台ですよね。3人兄弟がいたとしたら、それぞれがなかなか1台ずつ据え置きゲーム機を持つことはできません。でも携帯ゲーム機はそうではない。この、ひとりが1台持てるということが、新しい遊びを生み出す土壌になるんじゃないかと思います。さらにこれがネットにつながることによって可能性は広がります」

 

辻本 「北上さんがおっしゃるように、ひとり1台というのは強い。さらに持ち運べることが大きい。この連休に仲間家族と集まったんですけど、やっぱりみんな、同じ携帯ゲーム機を持っているんです。そうするとその場で「このゲームおもしろかったよ」、「今度あのゲームで遊んでみて」なんて話になる。すると、仲間と別れてからすぐに話題に上ったソフトを手に入れて、家に帰ってひとりで遊んだりするでしょう。据え置き機の話題は口コミで広がりますけど、携帯ゲーム機の場合はそれに加えて、顔を付き合わせた状態でリアルに広がる。『モンスターハンターポータブル』シリーズがあれほど広まったのも、皆で持ち寄ることで上級者が初心者に遊びかたや楽しみかたを伝えたりできたからです。口コミほど安くて効果的な宣伝方法はありません。これをうまく使うことで、携帯ゲーム機のビジネスチャンスは広がると思います。このような現象を踏まえたうえで、据え置き機と携帯ゲーム機は、ソフト作りの段階でキチっと分けていかなければいけないでしょうね」

 

和田 「携帯電話が普及したのは、課金のプラットフォームとしてものすごく簡単だったからです。携帯電話でゲームをする必然性はあまりないのにも関わらず、一気に広まった。コンシューマーというものは“簡単である”ことが非常に重要なので、ひとつのゲーム機で何十種類もの課金システムがあると、その時点で「面倒くさい」となってそっぽを向かれるんです。でも携帯電話は、その部分がシンプルで受け入れられたんですよね。そういう意味で、携帯電話というものと携帯ゲーム機というものは、議論の対象としてまったく別物なんです。

 日本人ほど、携帯ゲーム機が向いている人はいません。おそらく日本人は、世界でもっとも家にいる時間が短い民族だからです。ほとんど外にいるでしょう? なのでモバイル機は強い。なので携帯ゲーム機の可能性は、日本は非常に高いと思います」

 

●日本のゲーム業界と世界のゲーム業界の関係はどうなるのか?

 

鵜之澤 「開発費が倍になると、やっぱり海外市場に目を向けざるを得ない。これは海外市場がいいからではなく、生き残るための手段なんです。ウチもSCEさんのマネをしてワールドワイドスタジオというのを作りましたが、まあ苦労しています。アメリカでも100人規模でゲームを作りますがなかなかうまく回らず、けっきょく日本に引き上げてきて調整する……なんてことが2度ほどありました。でもコンテンツ作りという点においては、日本の優位性というのは絶対にあると思うんです。海外のデベロッパーと同じものを作っても意味はなくて、日本人ならではのきめ細かさとか手触り感というのはやはり抜きん出ている。ハリウッド映画を日本で作ってもしかたないんですよ」

 

吉田 「私は2000年から去年まで、アメリカにおけるSCEのゲーム制作の責任者をしていました。いまはSCEワールドワイド・スタジオの責任者をしていますけど、現在のゲーム制作の規模感というのはアメリカ・ヨーロッパで8割、日本は2割以下となっています。そんな中でずっと私は、どちらかというと海外メーカーの目で日本市場を見ていましたが、アメリカにいるときによく、「よし、これなら100万本は堅いぞ!」と思ったものが、日本に持って行くと「よくて20000本程度かな……」となることが多くあったんです。日本のユーザーと欧米のユーザーの嗜好の違いはそれほど大きくて、これはハードが高性能化して表現がより自由になったとき、さらに顕在化しました。そういう意味で、日本でウケるものを作るには、やはり日本のクリエーターの力が必要なんですよね。

 では日本でゲームを作って業界にインパクトを与えるにはどうすればいいのか? ということを一生懸命考えています。ひとつは鵜之澤さんが言ったとおり、ハリウッド映画のような表現でゲームを作るのはアメリカが得意です。では日本は何が得意なのかと言ったら、やっぱりインタラクティブとか、遊んで楽しいものを突き詰める力。これは一日の長がある。欧米でウケているものに惑わされず、自分たちの強みを考えれば、ロースペックのものでも世界でウケるものは作れると思っています」

 

●ゲームをよりおもしろくするためには、ゲームの専門家だけではなく、たとえば数学者や物理学者、芸術家といった新しい血を入れないといけないのでは、という意見もある。海外ではこういった人材も集めやすい?

 

吉田 「ものすごく楽です。捜さなくても、“この業界は伸びる”とわかれば向こうから来てくれますから。でも、集まった専門家集団をたばねるのはやはり、ゲームの専門家であるディレクターやデザイナーなんです。でもそういうチームを作る地の利は、アメリカは大きいです」

 

 最後にそれぞれが、2010年のゲーム業界へ向けてつぎのようにメッセージを送った。

 

辻本 「ユーザーのライフスタイルは変わってきています。ここをいかに認識してゲームビジネスを変えていくか。ここをポイントに会社を運営していきたいと思っています」

 

北上 「競争が激しくて、売れるものと売れないものの格差が大きくなっています。その中で成功させるには、我々メーカーサイドから物事を考えるのではなくて、ユーザーサイドに立って考えなくてはいけない。ユーザーから見てどう新しいのか、どう差別化できているのか。同じようなものではなく、新しいものをどう認知してもらうかがいちばん大事だと思います」

 

和田 「ユーザーインターフェースが多様化して、本当にいろいろなことができるようになりました。あまりにもやれることが多いので、何をどう組み合わせてお客様に認知してもらうのか、プロデューサーの力がものすごく重要になります。作る側の手法としては、自分たちだけで完結するのではなく、いかに知恵の共有をするのか。社内、社外問わずに。ナニゴトも隠したがる日本人の文化的な壁は高いですけどね(苦笑)」

 

吉田 「これから業界を引っ張っていくようなネタはいっぱいあります。そして地域ごとに求められているものは違う。となると、我々マネジメントをする立場の人間の役割は、クリエイティブのアイデアとマーケットをいかに近くするかなんです。またプラットフォーマーとしては、ゲーム制作がしやすいハードにする努力をすること。それに注力していきたいですね」

 

鵜之澤 「ウチは組織的に業務用、家庭用と部署がわかれていますが、そこにある壁を取っ払いたい。そのうえで新しいものを生み出したい。まあ人を集めて新規事業を立ち上げたら新しいものが簡単に生まれる……なんて思いませんが、いままでの慣例を打ち破るものをひねり出したいと思います」

 

 

 

 

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