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現役クリエーターがみずから解説、カプコンゲームサウンドの創り方

2009/8/30

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●ゲームならではの“インタラクティブ性”がある音とは?

 

 2009年8月29日、東京の銀座にあるアップルストア銀座店で“カプコンゲームサウンドの創り方2009”と題したカプコン主崔のセミナーが開催された。これは2005年より実施されている催しで、カプコンのゲームタイトルで扱われているサウンド制作のノウハウを、現場のクリエーターみずから説明するというもの。今回のセミナーでは2009年3月に発売されたプレイステーション3、Xbox 360用ソフト『バイオハザード5』を題材に、さまざまな制作事例が紹介された。

 

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▲会場はごらんのとおり立ち見も出るほどの盛況ぶりに。


 講師を務めたのは、クリエイティブ制作部サウンド制作室サウンドデザイナーの山東善樹氏と、クリエイティブ制作部サウンドマネジメント室サウンドマネージャーの岡田信弥氏のふたり。セミナーは映像を織り交ぜながら行われ、まず最初に山東氏は「音が映像に与える影響力を見てもらいましょう」と、ひとつのムービーを上映した。主人公の“クリス”と相棒の“ジル”が、宿敵“ウェスカー”に迫る、という緊迫感のあるシーンなのだが、そこで流れている音はどこか牧歌的。キャラが床に倒れると“ぼよよん”というSE(効果音)が入り、投げ飛ばされたときには“ぴゅーん”……キャラの声もカン高く、見た目はシリアスなのだが、音の効果で海外のカートゥーンアニメのような印象に。山東氏は、このように映像と音ふたつの要素がマッチすることで初めて世界設定が生きてくるという例を示し「ゲームとは総合芸術」と力説。

 

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▲講師をつとめた山東氏(左)と岡田氏(右)。ふたりとも大阪のスタッフということで、巧みなトークでたびたび会場を笑わせていた。

 

 続いてはゲーム内の効果音がどのように録音されるのかを紹介。銃声を録音するためにアメリカまで行って本物の銃声を録る様子や、スタジオ内に木箱、金タライなどを持ちこんで生音を出す様子などが映像で紹介された。ちなみに、木箱や金タライといったオブジェは、落とす、引きずる、転がすなど状況によってまったく違う音を出すが、これはゲーム内でも再現されている。とくに『バイオハザード5』では物理演算を採用しているため、音が出る種類やタイミングはかなりの数に。山東氏によれば、同作ではひとつの小物につき20個くらいの音がプログラムされているそうで、実際に音を出す際はオブジェに対する垂直・並行方向への速度成分をもとに、それが引きずられているのか転がっているのかを判別して、状況に合った音を鳴らしているのだという。スクリーンではそれを具体的に説明するため、開発用のROMを使って画面内に大量のオブジェを出現させて、そこに80匹のネズミと20匹の蛇を放したらどんな音がするのかを披露するひと幕も。

 

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▲ハンドガンからショットガンなど、実際の銃声を収録するためにアメリカへ(左)。オブジェで埋め尽くされた部屋で、音の鳴りかたを説明(右)。

 

 『バイオハザード』シリーズにはさまざまなクリーチャ―が存在し、どれも一様に「クチュクチュ」や「ズル、ズル」といった具合に動きと合わせてなんとも言えぬ不気味な音を発している。このような実在しないクリーチャ―の音はいかに作られるのか? 『バイオハザード5』では、よりリアル(という言葉が適当かわからないが)なクリーチャ―音を出すため、ハリウッドにある効果音専門の制作スタジオと協力。そこでは、さまざまな物どうしをぶつけたり、こすったり、転がしたりして新たな音を作りだしているのだ。

 

 映像で紹介されたスタジオでの音作りは、スタッフが殻つきのピーナッツを木製のお面で潰して湿気を含んだ「カサカサ」という音を出すといった具合で、最新ゲームの開発現場とは思えないほどアナログ。しかし、こういった職人的で地道な作業が、異形のクリーチャ―をより恐ろしいものにしているのだ。

 ハリウッドではこのほかに、キャラクターボイスとサウンドも収録。とくにサウンドは今回生オーケストラを採用したこともあって、かなり大がかりなものに。大規模なスタジオを借りて103人の演奏者を使い録音したそうで、「作曲した人間は、その光景を目の当たりして、感動でだだ泣きしていました」(山東)んだとか。

 

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▲物を組み合わせて、さまざまな音を作りだす効果音の制作現場。

 

 大規模なものからアナログなものまで、あらゆる手段を駆使して作られている『バイオハザード5』のサウンド。しかし、それらのテクニックは多くの映画でも採用されているもの。ここで山東氏はゲームならではの音作りについて言及し、映画とゲームの音作りで決定的に違うのは“インタラクティブ性”であると断言した。そしてスクリーンではインタラクティブ性を説明する映像が上映に。

 

 『バイオハザード5』では、プレイヤーは相棒の“シェバ”とともに行動する。ふたりはゲーム中、声によるやりとりをするのだが、物理的に生声が届かないときは無線を使用して会話する。このような、同じ音声でも状況によって聞こえかたがまったく違ってくるのが、インタラクティブ性のある音である。山東氏は無線のほかにも、さまざまなパターンの聞こえかたおよび、鳴らしかたを紹介した。たとえばグレネードは、目の前で爆発したときと壁を挟んだときではまったく違う。これは“遮音壁”という設定がステージ内に設置されているためで、それによって発音の変化をプログラムで生みだしているのだという。窓を割ると風が吹き込む音が聞こえるのもプログラムによる制御。こちらは窓のすぐ外に発音の設定がしてあり、窓を割るというアクションによってスイッチが入るというイメージだ。スクリーンでは、ひとつのステージ内に設置されている発音設定を表示したものが紹介されたのだが、その数は気が遠くなるほど膨大。

 

 さらに、発音のプログラムはステージだけでなくキャラクターごとにも設定されている。今回は“プラーガ”という刃物状になった頭部を振りながら迫ってくるクリーチャ―を例に説明された。同キャラは、プレイヤーとの距離によって刃物状の部分が空を切る音の聞こえかたが違うのだが、これは“ボリュームカーブ”というものがキャラ自身に設定されているため。プレイヤーとこれだけ離れているときはこの音量、といった具合に距離ごとに音の大きさが制御されているというわけだ。これに加えて“モーションシーケンス”という設定もあり、こちらはキャラの体勢などの状況に合わせた音を出すためのプログラム。モーションごとに1音ずつ設置することができるので、作るときは「曲を作るようなノリノリ感」(山東)があるのだという。


 このように“何かしたら何か起こる”というゲームならではのインタラクティブなサウンドは、膨大な量のプログラムによって成り立っているのだ。

 

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▲クリーチャ―ごとに音を設定することで、『バイオハザード5』の圧倒的な恐怖は作られている。

 

 セミナーの最後では次回予告として、画面分割による協力プレイでの音の出しかたについても言及。その内容は、画面分割プレイをしている際クリスとシェバのあいだに音を出す対象があった場合、どうすれば両方のプレイヤーに自然に音を伝えることができるか? というもの。つまり、対象物からの音がクリスの右側から聞こえる場合、対象を挟んだ向こう側にいるシェバにはその音が左側から聞こえるはず、それなのにモニターの前には各キャラを操作するふたりのプレイヤーがいる……という問題だ。答えは2009年9月1日〜3日まで、パシフィコ横浜にて開催される“CEDEC 2009”でのカプコンによるセッション“カプコンが考えるサウンド制作方法の提案2 〜バイオハザード5〜”の中で明かされるとのこと。

 

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▲答えが気になる人はCEDECへ足を運んでみては?

 

※『バイオハザード5』の公式サイトはこちら

※CEDEC 2009の公式サイトはこちら

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