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アンコール曲の『そして伝説へ…』に鳴り止まない万雷の拍手!今回の『ドラクエ』コンサートは“伝説のコンサート”に!!

2009/8/6

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●“作っては壊し、また作っては壊す”という、すぎやまこういち氏の作曲手法が明らかに

 

 2009年8月5日、東京、池袋の東京芸術劇場、大ホールで、“第23回 ファミリークラシックコンサート ドラゴンクエストの世界”が行われた。このコンサートは、『ドラゴンクエスト』シリーズの作曲家、すぎやまこういち氏が指揮と“お話”を行い、東京都交響楽団が演奏を行う恒例のコンサート。通称、『ドラクエ』コンサートとして知られる人気の催しで、毎回、チケットが発売されるや否やソールドアウトすることでも有名だ。

 

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▲シリーズの作曲を続けることについて、「城や戦闘など、同じコンセプトで違う曲を作るのは、本当にたいへんなことです」と苦労を語ったすぎやま氏。しかし、作曲家は初期、中期、後期にそれぞれ傑作が生まれることを励みにしているとも語っていた。

 この『ドラクエ』コンサートでは毎回、開会まえに、すぎやまこういち氏が報道陣を集めてコメントを発表してくれる。まずはその模様をお届けする。

 

 最初に、すぎやま氏はこの日の天気にこと寄せて、以下のように語った。

 

 「何がすごいって、コンサートを23回行ったうちに、天気予報が雨のときが何回かありましたが、1回も雨が降ったことがないことです。今日も天気予報は雨ですが、いま、雨は降っていませんよね。これも『ドラゴンクエスト』の力かもしれません。」(すぎやま氏)

 

 すぎやま氏はそれに続けて、『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』の楽曲の制作手法に言及した。すぎやま氏によると、『ドラゴンクエストIX』の作曲に手をつけたのは、2004年から。すべての曲を完成させるのに2009年6月までかかったとのことで、足かけ4年半を『ドラクエIX』の作曲に費やしたことになる。

 

 「作っては壊し、また作っては壊しのくり返しで、戦闘の曲は5曲目。イントロの曲も同じく5回くらいは直しています。今年の6月にやっと納得の行く曲が完成しました。今日は生演奏で披露しますので、相当迫力があると思いますよ」(すぎやま氏)

 

 談話の途中、すぎやま氏から大きな発表も行われた。これまですぎやま氏が手がけた楽曲は、おもに“SUGIレーベル”から発売されてきたが、2009年8月5日に発売された“『ドラゴンクエストIX』 星空の守り人 シンセサイザー版&オリジナルサウンドトラック版”(2枚組CD、3000円[税込])より、販売やプロモーションをキングレコードが手がけることになった(発売元は“SUGIレーベル”のまま)。

 

 また、発売された“『ドラゴンクエストIX』 星空の守り人 シンセサイザー版&オリジナルサウンドトラック版”に関して「会場で販売しますので、コンサートの休憩時間に買ってくださるのではないかと期待しております(笑)」(すぎやま氏)と、朗らかに笑いながら語っていた。シンセサイザーバージョンは、すぎやま氏自らが打ち込んだデータをもとにしてCD化されており、使用した機材はすぎやま氏が自宅に置いている、ローランドSV-JV80、Proteus X2、コルグのM1。すぎやま氏によると、これらの機材は一般のユーザーが普通に使うもので「音色としてはプロ仕様ではない機材で勝負しています」(すぎやま氏)という。

 

 今回発売された、ゲームバージョンとシンセサイザーバージョンのほかに、オーケストラバージョンの発売も予定しているが、すぎやま氏がいつもコンビを組む東京都交響楽団のスケジュールがなかなか空かなかったという。2009年秋に録音のスケジュールが確保できたので、オーケストラバージョンの発売は秋以降になるようだ。

 

 毎回、たいへんな人気になる『ドラクエ』コンサートだが、今回のチケットも発売開始早々にソールドアウトしている。「買えなかった人にはたいへん申し訳なく思っています。どうしてもという人は、9月21日に札幌でコンサートを行いますので、がんばって来てください。8月29日に行う京都のチケットはもう売り切れてしまいましたので」(すぎやま氏)とのことで、たいへんな人気となっている模様だ。

 

 すぎやま氏は、作曲中にテストバージョンの『ドラゴンクエストIX』をプレイしつくしたうえ、製品版でもレベル50を突破しているが、取材が始まる直前まで東京都交響楽団のメンバーなどと“すれちがい通信”を行っていたことを告白した。

 

 「みんな“すれち”って言うらしいですが、うちのかみさんは『“すれち”って何?』って言っています。今日もみんな楽屋でやっていました」(すぎやま氏)

 

  すぎやま氏はかなり“すれちがい通信”が気に入っている模様で、取材に訪れた記者たちに対しても、気さくに「僕とやってみたい人はいますか?」と誘いの言葉をかけていた。

 

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 『ドラゴンクエストIX』でのお気に入りの曲については、「全部。気に入ったものしか入れていません」ときっぱり答えつつ、「一般的に人気があるのは、にぎやかな勇ましい曲が多いですが、『運命に導かれ』のような、“静か系”の曲、悲しい曲にも思い入れがあります」と捕捉。さらに「『天の祈り』は、全体のテーマ曲という意識で作りました」と、とくに思い入れが強い曲をあげた。
 

 

●多くの人が知っているあの曲から“伝説のコンサート”がスタートした

 

 報道陣をまえにしての談話発表終了後、いよいよコンサートがスタートした。
 

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▲会場の東京芸術劇場大ホールは非常に天井が高く、音響効果が整えられた本格的なコンサート用ホール。ステージ中央の上部には巨大なパイプオルガンが設置されている。

 

 満員の観客が詰めかけたホールに、コンサートマスターの矢部達哉氏を筆頭とする東京都交響楽団が登場すると、それまでざわついていた会場がぴたりと静まった。それに続いてすぎやまこういち氏が登場すると、観客の神経はすぎやま氏の動きに集中。ホールの空気は一変した。

 

 そして、すぎやま氏が手を振ると、金管楽器の音がいっせいに響き渡り、それに続いて木管楽器が音を出してコンサートがスタートした。1曲目は、多くの人が知っている、おなじみの曲『ドラゴンクエスト』のテーマだ。正式なタイトルは『序曲IX』で、『ドラゴンクエストIX』バージョン。フルオーケストラの演奏ということもあり、より勇壮な印象を受けた。
 

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 曲が終了すると、すぎやま氏が挨拶を行ったが、『ドラクエ』コンサートでは、すぎやま氏の“お話”も魅力的な要素のひとつとなっている。

 

 「今回は『ドラクエIX』の曲の初演です。初めて演奏する場に居合わせてくださった方々にお願いがあります。『ドラクエIX』には“すれち”というのがありますよね。ずいぶん流行っていますが、この演奏中にはやらないでくださいね(笑)。休憩時間にやってください。私も昼間、当楽団のメンバーとやりました。ちなみに、いま私は“旅芸人のレベル50”になりました」(すぎやま氏)
 

 “お話”に続く2曲目は、すぎやま氏が「全体のテーマ」として位置づける『天の祈り』だった。こちらは1曲目とは打って変わって、ソロ演奏からスタート。途中から弦楽器がそれを追いかける形になり、もの悲しいメロディが奏でられた。3曲目の『宿命〜悲壮なるプロローグ』も同じく悲しげな曲。バイオリンがビブラートを利かせながら、うねるような長い音を出すのが印象的で、すぎやま氏の言う“静か系”の曲だったが、途中から金管楽器が加わることで、温かみが感じられる曲調に変化した。これはゲームを始めてすぐに流れる曲なので、すでに聴いている人も多いだろう。

  続けて『王宮のオーボエ』と『来たれわが街へ〜夢見るわが街〜酒場のポルカ〜来たれわが街へ』が連続して演奏された。『来たれわが街へ〜夢見るわが街〜酒場のポルカ〜来たれわが街へ』では、弦楽器が奏でるメロディの裏に手拍子や鈴の音が入るというフルオーケストラでは珍しい曲となった。やや重めの、悲壮な曲が2曲続いたあとに、アクセントがスパイスのように利いた曲をつなげる、技ありの曲編成だった。

 

 さらに『野を越え山を越え〜仲間とともに〜箱船に乗って〜野を越え山を越え』、『陽だまりの村〜村の夕べ』、『負けるものか〜渦巻く欲望』が3曲連続で演奏された。『ドラゴンクエスト』らしい、朗らかで勇壮な曲からスタートし、不安をあおるような、せわしない曲に。そうかと思うと、一転して、転がるような、かわいらしい音が奏でられるなど、曲調がつぎつぎに変化。メドレーのような楽しさが感じられた。前半で最後の曲となった『負けるものか〜渦巻く欲望』は、ほかの曲よりも音量が大きくかなりの迫力。金管楽器と弦楽器の両パートが交互に大きな音を鳴らす様子が戦闘の緊張感を表現しているように思われた。

 

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●アンコール曲の『そして伝説へ…』に鳴りやまない万雷の拍手

 

 休憩を挟んで後半の演奏が行われた。記者はこれまでに数回、『ドラクエ』コンサートの取材を行っているが、今回の『ドラクエ』コンサートは前半からよくまとまっているという印象を受けた。これまでの『ドラクエ』コンサートから受けた感情の大きなうねりは感じられなかったが、それは大きな間違いだったことが後半で証明された。

 

 後半の開始に際し、すぎやま氏は観客席に向き合って作曲時の思いを吐露した。テストバージョンの『ドラゴンクエストIX』をプレイしながら作曲を行ったすぎやま氏は、「改めて『ドラクエ』はすごい」(すぎやま氏)という感想を抱いたという。すぎやま氏はその思いを「改めて堀井さんに感謝!」(すぎやま氏)と表現すると、会場から大きな拍手とともに「ブラボー!」という声が上がった。

 

 すぎやま氏の“お話”に続いて、『暗闇の魔窟〜洞窟のワルツ〜そびえ立つ死の気配』、『集え、者たち〜祈りの詩〜せつなき思い』、『サンディのテーマ〜サンディの泪〜サンディのテーマ』の3曲が披露された。1曲目はダンジョンの曲らしく、音階の乱高下が聴く者の不安をかき立てる印象。2曲目は、弦楽器のテクニカルなソロ演奏が印象的で、せわしなく弓を動かす様子が視覚的にも楽しめた。3曲目の『サンディのテーマ』は、スイング調で、いかにも楽しそうな曲。途中から転調して同じメロディをしっとりと弦楽器だけで奏でたあと、ふたたびスイング調に戻って締めくくられた。後半4曲目の『運命に導かれ〜主なき神殿』もダンジョンの曲。何かの兆しを暗示させるような短い音の連続とバイオリンの高音が、先が見えないダンジョンの不安を表現していた。それぞれに特徴のある楽曲が聴く者を楽しませてくれた。

 

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 この辺りから、コンサートはクライマックスに突入していく。続いての曲のタイトルは『決戦の時』。シンバルとバスドラムの連続音が使用された激しい曲で、途中に『ドラゴンクエスト』のテーマのメロディも盛り込まれている。攻撃したり、反撃されたりといった戦闘の様子が目に浮かぶ曲だった。最後は『ドラゴンクエスト』のテーマのメロディが急ピッチで演奏されたあと、シンバルの音できっちり締め括られた。

 

 最後のプログラムは『星空へ〜星空の守り人』。この曲で印象的だったのはハープの音色で、弦楽器群が奏でるベース音の上に「ポロン、ポロン」という独特の澄んだ音を響かせていた。静かな曲と思いきや、途中から曲調が一変し、全パートの楽器が一斉に大音量を響かせた。シンバルとバスドラムの響きを挟んで、同じメロディが形を変えてくり返される様子は、嵐のように激動する運命を暗示するかのようだった。曲が終了したとき、会場には大きな拍手と、「ブラボー!!」という声が、またしても響いていた。

 

 予定されていたプログラムはこれで終了したが、すぎやま氏は「盛大な拍手にお応えします」とアンコール曲を披露してくれた。『ドラゴンクエストIX』で船に乗るときの曲だ。この曲が、まさに圧巻のひと言。シンバルとバスドラムの連続音に続いて、弦楽器が一斉に大きな音を奏で、さらにそれがだんだん繊細な音になっていくところは、これぞオーケストラの醍醐味という印象を受けた。

 

 これだけでも観客を大いに満足させられるコンサートなのだが、今回はさらにサプライズが残されていた。すぎやま氏の「勢いに乗ってもう1曲!」という声とともに、さらなるアンコール曲が演奏されたのだ。曲は『ドラゴンクエストIII』の『そして伝説へ…』。シリーズの楽曲の中でもとくに名曲の呼び声が高い、文字どおり“伝説の”曲で、『ドラゴンクエスト』シリーズの楽曲の中でも勇壮な印象を受ける曲だ。もちろん、今回も勇壮に演奏されたのだが、不思議なことに、記者は大きく魂を揺さぶられ、不覚にも涙をこぼしそうになってしまった。個人的な物言いになるが、心が洗われるとはまさにこのこと。蓄積した疲れやさまざまな思いが流されていくように感じた。長く記者という仕事に就いていると、ときにすごいものに出会うことがあるが、今回の『ドラクエ』コンサートがそれに当たる。後半の数曲では、取材者という立場を忘れ、メモを取るペンの動きが止まることが多かった。曲の終了後、会場が万雷の拍手に包まれたことは言うまでもない。その拍手はいつまでも鳴り止むことがないかのように続いた。

 

 日常的にオーケストラコンサートを聴く人にとって、このコンサートがどのように位置づけられるのかは、あまりオーケストラコンサートを聴く機会のない記者にはわからない。しかし、『ドラゴンクエスト』というゲームを通じて、記者と同じような立場の多くの人にオーケストラコンサートを聴く機会を与え、そのすばらしさを知らしめたことには大いに意義があるはずだ。

 

 今回の『ドラクエ』コンサートは“伝説のコンサート”になったのではないだろうか?
 

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