HOME> ゲーム> 独占インタビュー! 『野球つく2』エンディング曲誕生秘話
●セガの馬場氏、瀬上氏、光吉氏の3名に直撃
2009年5月21日発売されたセガのニンテンドーDS用ソフト『プロ野球チームをつくろう!2』(以下、『野球つく2』)。すでに発売から約1ヵ月が経ち、全国のプロ野球ファンが日夜自分のチームを強くするべく、プレイを楽しんでいることだろう。同ソフトには、ペナントレースを戦う本編と、JAPANロードというふたつのモードが用意され、とくにJAPANロードは、今作新たに追加されたもので、ひとりでも複数でも楽しめる画期的なモードとなっている。1本で2本分のゲームが収録されていると過言ではない本作には、その両モードにそれぞれエンディング曲が用意されている。今回エンディング曲を制作した瀬上純氏と『Road to Win』(本編のエンディング曲)を歌っている光吉猛修氏、そして『野球つく2』のプロデューサー兼ディレクターの馬場保仁氏の3名に、直撃インタビューを敢行した。
●「もともとエンディング曲は1曲だった」(瀬上)
−−『野球つく2』には、エンディングが2曲あります。JAPANモードとシーズンモードというまったく異なる内容のモードにエンディングを提供することになった経緯と、依頼されたときの感想をお聞かせください。
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▲『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』シリーズを筆頭に、数々のセガの名曲を手掛けてきた瀬上氏。 |
瀬上 今回僕はサウンドディレクターという形ではなく、単純に曲を作るという形で参加しました。最初はサウンドを統括するスタッフから「エンディング向けに曲お願いしたい」と話をいただいたんです。その時点ではそれぞれのモードにエンディングを用意するという話ではなかったんですね。
−−そうだったんですか。
瀬上 でも、同じゲーム内にまったく別のふたつのモードがあるということであれば、異なるテイスト、違う流れの曲を作ったほうがいいのではないかと、こちらから提案したんです。「どうせやるなら」と僕は風呂敷を広げる性格なので(笑)、表現するもの、狙いを変えて入れたほうがイイんじゃないのかなと思って。それで結果的に2曲作ることにしたんです。あとタイトル曲も手を入れさせてもらいました。タイトル曲はユーザーがいちばんよく耳にするものなので、かっこいいに越したことはないと思って、自分がギターとピアノを弾いて、ベースもドラムも生で録って、という形でレコーディングしました。
馬場 最初タイトル曲は生のギター音じゃなかったんですよ。
−−ファンにはおなじみの曲で、聴くとすぐに『野球つく2』のことを思い起こせるタイトル曲ですよね。
瀬上 プロ野球ニュースやスポーツニュースっぽい感じを目指しました。「おお〜きたきた」という爽快感とパワー感が、共存しているような感じにしたくて、本作のサウンド統括者でもある作曲者に、その必要性と必然性を彼にも理解してもらったうえで、生の音でブラッシュアップしようと。
−−社内にしっかりとしたサウンドの制作チームがあるセガだからこそできた曲と言えそうですね。
馬場 そうですね。僕は都合のいいときに勝手なことばかりお願いしているだけですけどね(笑)。
−−(笑)。ちなみに、光吉さんが参加されるきっかけは?
馬場 じつは前作でも光吉は参加していて……審判の声でね。
−−えっ?
光吉 「アウト!」、「セーフ」とかね。
−−おおお、本物の声。
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▲『バーチャファイター』シリーズの影丸の声やさまざまな楽曲など、幅広い活動を展開している光吉氏。 |
光吉 今回そこからエンディング曲を、ということで昇格しました(笑)。ちょうど僕がGDC2007へ行ったときに、瀬上がセガオブアメリカで仕事をしていて、空港まで迎えに来てくれたんです。そのとき僕以外にもうひとりピックアップする人がいると。それが馬場だったんです。
馬場 それが最初の出会いですね。名前は当然耳にしたことはあったんですが、接点がなかったんですよ。
光吉 僕はアーケード畑の人間なので。
馬場 僕からすると、ユーザー時代から『バーチャファイター』で影丸の声をやられていた人だったので……それが前作では僕が関わっているタイトルの審判の声ですよ(笑)。
−−(笑)。
光吉 同じ声色でね(笑)。それでGDCのあいだ約1週間、食事などをして馬場という人間を知って、帰ってきてから「僕、カレーを100店舗以上食べているんですよ」という話から親交も深まって。「いっしょに仕事したいね」というところまでいって、前作で審判の声。そして今回ようやく歌を、ということになりました。
−−なるほど。
光吉 瀬上ともいっしょに仕事できるということで喜んでいたんですが、ちょうどオファーをもらったときに網膜剥離で入院してしまって。馬場にも心配かけました。
馬場 お見舞いと言いつつ、様子を探りに行くみたいな。
−−(笑)。
光吉 なかなか退院できなくて、だけど、レコーディングの日にちは決まっている状態で。
馬場 「来週火曜日(レコーディング)なんですけど」って、その前週の土曜日に話しているような状態。
−−本当にギリギリですね。
瀬上 まずこの仕事自体、僕がなかなか手をつけられなかったので。
馬場 作り込み含めると本当にギリギリでした。
瀬上 『野球つく2』のまえに、Wiiの『ソニックと暗黒の騎士』というタイトルをサウンドディレクターという立場で手掛けていて、年明けまでいろいろ引っ張っていたので、手が空かなくて。しかも、そのせいで待たせしていた仕事もあって……それが終わってようやくという感じでした。
−−しかも、2曲。
瀬上 自分で風呂敷広げてしまって、ですからね(笑)。
−−通常のペナントを戦う『Road to Win』、JAPANロードの『Baseball Anthem』はそれぞれどういったコンセプトを持って作られたのでしょう?
瀬上 『Road to Win』は長いシーズンを戦い抜いて、終わった、達成したという気持ちに爽快感を足したような雰囲気を出せればと思いました。そういう意味ではメロディも分かりやすくして、辿ってきた道をしみじみ振り返るイメージ。一方JAPANロードは『野球つく』シリーズの中でも新機軸のモードだったので、そのモードに合わせてみんなが参加している雰囲気が出せればいいなという思いを込めました。まさに野球のテーマ曲、Anthem(賛歌)ができればいいかなと思ったんです。
馬場 プロ野球などで誰かが使ってくれるとうれしいんですけどね。
瀬上 僕はこれまで『ソニック・ザ・ヘッジ・ホッグ』シリーズ、『つくろう!』シリーズなどのスポーツゲーム、『セガラリー』といったレースゲームの音楽ばかりを手掛けてきたんです。その中でレースゲーム用に作った曲がNHK BSの“今日のイチロー”のコーナー導入曲として使われていたこともあるので、『Baseball Anthem』はそういう展開も期待したいという気持ちはあります。
−−『野球つく2』以外でも、どこかで耳にする機会があるとファンはうれしいですね。
瀬上 野球は国民的スポーツですから、いろいろな展開が考えられると思います。
−−光吉さんは、いちばん初めに自分が歌う予定の曲を聴かれていかがでしたか?
光吉 じつはもともと『Road to Win』を歌う予定じゃなかったんですよ。
馬場 そこから話をしますか(笑)。
−−(笑)。
光吉 わりとまえの段階から「制作途中でもいいから(曲を)聴かせてよ」と話をしていて、入院中にバッチリ聴いていたんですよ。そうしたら、直前で「こっちを歌ってもらうことになりました」って。
馬場 歌詞見たのは、レコーディング当日ですもんね。
光吉 そうそう。歌詞はね。だから、聴いたときの印象と言っても……歌詞を覚えるだけでたいへんで、収録自体勢いで何とか乗り切った感じでしたね。でも、幸いだったのが瀬上とは仕事したことがありましたから、彼の曲が自然と体に染みついていて、歌っていくうちにだんだんと乗れてきました。レコーディングの雰囲気がとてもよかったので、逆に勢いがある曲に仕上がったと思います。
−−馬場さんは楽曲を聴いていかがでしたか?
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▲野球つく★番長こと馬場保仁氏。馬場氏の熱い想いがエンディング曲からも伝わってくる。 |
馬場 僕は制作途中の段階からマメにチェックさせてもらっていたので、「ココ、どうなるんですかね?」なんて話をしながら進めていました。瀬上の頭の中では当然完成形があったうえで制作していると思うのですが、僕らは途中しか聴くことができない。だから、毎回聴かせてもらうたびに、「ああ、こうなるんだ」、「こうきたか」といった感じで楽しみでした。
−−馬場さんから「こうしてほしい」というリクエストは?
馬場 好き勝手言わせてもらいましたよ(笑)。ただ、基本的に絶対いいものができると信頼していますから。その信頼関係の土台のうえで、「このさきはどうなるの?」、「こうなるとイイな〜」なんて話をさせていただきました。それで瀬上から再度制作途中の楽曲がくると、その意見を反映してくれたのか、ガッとまた雰囲気が変わっていたり。なんか長嶋茂雄さんみたいな会話になってきましたが(笑)。
−−(笑)。話を聞いていて、ゲーム内容だけでなく楽曲へのこだわりも相当のものだと、改めて実感しました。
瀬上 自分で言うのも何ですが、野球ゲームでここまで力を入れてオリジナル曲を作るというのはなかなかないことなんじゃないでしょうかね。
●お互いの信頼関係が作り出す“最高のノリのよさ”
−−ちなみにおふたりは『野球つく2』をプレイされているのでしょうか?
馬場 それは僕からは聞けない(笑)。
瀬上 僕はようやく始めたところです。
馬場 そう言えば前作で光吉の子供さんが、お父さんの声だって気づかなかったとか(笑)。
光吉 「これ誰の声?」って(笑)。かなりエフェクトもかかっていますしね。家で「アウト!」って言いませんから。
−−確かに(笑)。
馬場 けど、あのひと言だけでも何テイクも収録しましたからね。たとえば、「ホームラン」というひと言も、4、5回録り直していますからね。「おちゃらけたバージョンでお願いしますとか」。そうすると光吉さんが「ホ〜ムラ〜ン」なんて、ルパン三世みたいな声でやってくれたり。
−−(笑)。
光吉 「笑った雰囲気でアウト」なんていうのもありました。「アウト(笑)」みたいなね。ほかにも怒った雰囲気でとか、いろいろ録りました。結局どっち使ったの?
馬場 覚えていません。
一同 (爆笑)
馬場 どういうゲームでも同じだと思うんですけど、現場の空気が楽しくて、ノリノリの状態だと……ときどき変なものもできますが(笑)、いいものが生まれることが多いですからね。現場のノリは非常に大事だと思っています。
瀬上 舵取りしている人がしっかりと芯を持っていれば、軸がブレませんから。あとは僕たちを泳がせてくれる度量があれば、いいものが自然と生まれてくるんだと思いますよ。
馬場 のんきなだけですけどね(苦笑)。
−−いやいや(笑)。本当に雰囲気がいいのは、皆さんの話をお聞きしているだけで伝わってきます。まるで漫才のような……。
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▲インタビュー中もまるで漫才のような軽妙な掛け合いを展開するお三方。レコーディングの雰囲気がよかったということを肌で感じることができた。 |
瀬上 (笑)。そういうノリのよさから、実際2曲作る必然性はなくても、自然と2曲作ろうよ、という話も出てくるんだと思います。プロジェクト的に建設的な意見が出てくるのはお互いの信頼関係があるからこそ。たとえば、初めてお仕事をする外部の方に楽曲を頼むと、1曲作るだけで終わってしまいますからね。
−−確かにそうですよね。
瀬上 モチベーションも違いますし。
馬場 ニンテンドーDSの場合、容量も「これだけ」と決まっていましたし。
瀬上 そういう意味でじつはJAPANロードの『Baseball Anthem』はフルバージョンでレコーディングしているんですが、今回はデータ容量ありきだったのでゲームではフルで収録できていないんです。曲の一部をくり返すことによって、より短く、より少ないデータで長い曲に仕立て上げているんですよ。
−−『野球つく2』は前作以上に内容が濃いですからね。
瀬上 エンディング曲はゲーム本編のデータを削ってまで入れるものではないですからね。
馬場 そういう意味では2曲入れたからといって、前作よりデータ的に内容が薄くなっているということはまったくないですし、ユーザーの方たちから見ると、ゲームの容量も増えています。そして音楽も増えている。すべてにおいてパワーアップしているということなんです。
●エンディングフルバージョンは瀬上氏、光吉氏のCDで!
−−ちなみにフルバージョンをユーザーが耳にする機会は?
瀬上 『野球つく2』には残念ながら入れられなかったんですが、僕のほうで企画していることがあるんです。
−−ほうほう。
瀬上 『ソニック』シリーズのテーマ曲などで知られている僕のプロジェクトに、アメリカ人のシンガーとやっているCrush 40というものがありまして。昨年の東京ゲームショウでもフィナーレライブを弊社のブースで行なったりしたのですが、そのプロジェクトのベスト盤を9月にリリースするのを皮切りに、僕が関わっている作品の3ヶ月連続リリースの企画が進行中なんです。その中には、本作を含めた『つくろう!』シリーズの楽曲などの未CD化音源や入手しにくい音源を集めたアルバムも予定しているので、その中にフルバージョンが収録される予定です。
−−楽しみですね〜。
瀬上 じつは『Road to Win』は、光吉が歌っているバージョンと、その歌詞を作詞した者が歌ったバージョンのふたつがあって、僕のアルバムには後者のほうを収録する予定です。それで光吉が歌うバージョンは……。
光吉 6月25日に僕の2枚目のベストアルバムが出るんですよ。その中にぜひ収録させていただきたいと思っています。前回のアルバムを出してから約6年経つんですが、そのあいだの僕のワークス的な作品になっています。
瀬上 でも、このあいだ収録曲リストを見せてもらったら、(『Road to Win』が)入ってなくて。
光吉 いやいや、てっきり瀬上のところで別な展開があるのかなって。
馬場 人間、つらい想い出は忘れたいってことですよね。
一同 (笑)。
光吉 なんでやねん! 逆に迷惑掛けるかなって思っていただけで。それが瀬上のほうでは別バージョンを、と聞いたので、「それじゃぜひ!」ということになりました。
−−『野球つく』ファンは必聴のCDになりそうですね。では、最後にファンの方たちにそれぞれメッセージをいただけますか?
馬場 信頼関係が根底にあって、お互いの仕事をリスペクトできているからこそ、いい楽曲ができたと思いますし、これからの仕事にもつなげていきたいと思っています。きっと楽曲を聴いていただければ、その想いが伝わるはずだと信じています。『野球つく2』をプレイしていただく際、僕はその“空気感”を大事にしたいと思っているんです。その“空気感”を作るうえで、音というのはすごく重要な要素だと思っています。そういう意味でも今作は相当自信があります。だからこそ、この記事を読んでいただいた方たちには、いままで以上に音に耳を傾けていただきたいですし、まだプレイしていない方たちはぜひプレイをして聴いていただきたいと思っています。がんばってクリアーしてください!
光吉 『ビクトリーゴール』以来久々の瀬上との仕事ということで、当時からふたりがどれくらい成長しているかを感じていただきながら聴いていただければと思います。ぜひ僕のCDもよろしくお願いします(笑)。
瀬上 『つくろう』シリーズはスポーツシミュレーションゲームという分野で確固たる地位を築いているタイトルだと思っています。シミュレーションゲームというどうしてもプレイ時間が長くなる分、プレイ中に主張しすぎない楽曲が相応しいと思いますが、そのなかにあってエンディングやタイトルの曲は、ほかの楽曲とは違って、逆に印象的で、皆さんの耳に残るものにしなければならないと感じています。そういう意味で今回はかなり自信を持って皆さんに聴いていただけるものができたと自負しています。個人的にはぜひつぎの『つくろう!』シリーズも何らかの形で関わってみたいと思っています。
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▲馬場氏、瀬上氏、光吉氏の想いが『野球つく2』のエンディング曲に込められている。ぜひクリアーして聴くべし! |
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