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30秒の戦いにすべてを注ぎ込んだ快作『勇者30』インプレッション
【プレイ・インプレッション】

2009/5/28

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●30秒で魔王を倒す! 『勇者30』の魅力とは?

 たったの30秒という制限時間のもとで、勇者たちが魔王に戦いを挑む、マーベラスエンターテイメントのPSP(プレイステーション・ポータブル)用ソフト『勇者30』。RPG、シューティング、リアルタイムシミュレーション、アクションと、それぞれ異なる4つのジャンルのゲームが楽しめる新感覚の作品だ。そんな一筋縄ではいかない作品を、ライターの戸塚伎一が語り尽くす。

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▲30秒というあまりにも短い時間内で戦いを挑む『勇者30』。


●すべてを投げうってレベル上げしていた時代の記憶へ

 多感な時期にやり込んだRPGの思い出話は尽きないものです。

 あのころのゲームは、世界がときめきに満ちていた。凶悪なゲームバランスに苦しみ幾度となく全滅したことも、いまとなってはいい思い出。胸にこみあげる何かを感じながら見守った、エンディングのスタッフロール。それにくらべて最近はッ!! といった具合ですが、そういった思い出の大部分は“美化”されたもの。目に見えるもの触れるものが新鮮さに満ち、あるがままを素直に楽しめていた時代を顧みる際の印象補正は、バカにできません。

 ひとときの懐古趣味で済んでいるうちはまだいいのですが、あの時の感動よもう一度とばかりにうっかりオリジナル版を起動すると、思い出の印象とのあまりのギャップに、心の中の大事な何かまで駄目にしてしまう可能性があります。

 当代のゲーム機向けにグラフィックやサウンド、操作性やゲームバランスが再調整されたリメイク版をプレイする、という選択肢もありますが、これも五分五分といったところ。アレンジの方向性やクオリティーが自分の気に入ればいいのですが、そうでない場合は“美化された思い出のゲーム像”にますます依怙地になってしまうことだってありえます。

 つまり、過去のゲームのプレイ感覚を呼び覚ますのに、記憶の美化というやつはじつにジャマなのです。とくに、作業感の強いゲームプレイを長時間必要とするRPGの場合、その傾向はいっそう強まるわけですが、今回インプレッションする『勇者30』は、記憶の美化ならぬ記憶の“パロディー化”によって、過去と現在の邂逅をあっさり実現しています。しかも、30秒そこらのプレイ時間で!!

●30秒+αに凝縮された“RPGのスベテ”

 本作のタイトルにもなっているメインゲームモード“勇者30”は、魔王が“世界ハメツの呪文”を唱え終える30秒以内に魔王を討伐する、ステージクリアー型のRPGです。

 この説明だけでは“雰囲気をRPGっぽくしたミニゲーム”と思うかもしれませんが、プレイヤーが各ステージでやることは、レベル1の状態から敵を倒して経験値とお金を稼ぎ、町では武器や防具、体力回復アイテムなどを買いつつ情報収集し、困っている人を助けたり貴重なアイテムを発見したり、冒険の仲間と合流した末、最終決戦の地に乗り込む……と、まんまRPG1本ぶんに相当する内容です。

 実際にプレイすると、各ステージのスタート直後から、画面上部に表示されている残り時間がグングン減っていきます。フィールド移動時や、エンカウントしたモンスターとの戦闘中(オート操作のアクションゲーム風)も容赦なく減り続け、無闇に焦ります。このゲームを遊ぶと実感しますが、30秒という時間は本当にあっという間で、フィールドをちょっとぶらついているだけで、たちまち世界滅亡です。

 フィールドに点在する町に入っている最中は、さすがに時間の流れが止まります。お買い物や住人たちとの会話をリラックスムードで楽しめるものの、当然そのままでは根本の解決にはなりません。

 そこで重要となるのが、特定の町に設置されている“時の女神像”へのお祈り。相応の金額がかかるものの、一度お祈りするごとに、残り時間がステージ開始時の状態に巻き戻ります。30秒以内に新たにお祈りすることを徹底し慎重に進めれば、たいていのステージは無理なくクリアーできる……というゲームバランスが、何ともRPG的です(ご丁寧にも、各ステージ特定のレベルアップ時に「魔王よりも強くなった!!」と表示されます)。

 安全策でクリアーするばかりが、RPGの醍醐味ではありません。各ステージクリアー後のリザルト画面には、クリアータイム(総プレイ時間)やクリアー時の主人公のレベル、プレイの総合評価としてのランク(“◎◎勇者”と表現される)などが表示されるのですが、これによって、いくつかのプレイスタイル欲求が喚起されます。

 より短時間かつ効率的なプレイを心がける際にポイントとなるのが、1ヒットポイント、1/100秒単位のギリギリ感。「時間を巻き戻すまえにあと1回は戦闘できそうだ」、とか、「(使用中ヒットポイントを消費する)ダッシュしながら攻撃すれば、何とか時間内に倒せる」といった、一か八かの賭けに挑み続けた末、好記録でクリアーした時などは、通常のRPGでいうところの“早解き”の達成感とともに、アスリート的な爽快感さえ得られます。

 ステージの構造を研究し、別のプレイ目標を掲げて再チャレンジ……ということを全50ステージぶん楽しめることから、“クリアー後のやり込み要素”もばっちりと言えるのではないでしょうか。

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▲本作には、RPGの醍醐味が凝縮されている。


●ローレゾ+ハイレゾ→めくるめく世界

 “勇者30”モードのゲームシステムそのものが、RPGの画期的なパロディーとして十分過ぎるほど成立している本作ですが、いわゆる“RPG的なムード”を作っている各要素に関しても、相当はっちゃけています。

※いまさらですが、本稿で言うところの“(懐かしい)RPG”は、ファミコン〜スーパーファミコンあたりの時代のゲーム機でリリースされたものを差しています。したがって、物心ついて初めて遊んだRPGのキャラグラフィックがすでにポリゴンだった……という読者のみなさんにはピンときにくい内容であることをご了承ください。ぶっちゃけ、対象はおっさんゲーマーです(笑)。

 もっともわかりやすいところで、キャラクターグラフィック。キャラクターのバストアップが表示されてテンポのよい会話のやりとりが展開するイベントシーンでも、少ないピクセルで構成されたメインゲーム画面用のキャラ絵をそのまま拡大した状態で表示されます。画面の結構な範囲が角張った単色の領域で覆われ、しかもそれが生意気にも(笑)、人間らしく振る舞っているシュールさは、そうそう味わえるものではありません。

 登場人物のセリフの言葉選びも秀逸です。かつてはハードの制約上そう表現するしかなかった、投げやりともとれる簡潔な物言いのノリをそのまま再現しているばかりか、それに対する的確かつ慈愛に満ちたツッコミの数々に、心和まされます。当時の低スペックなゲーム機の常識をオーバースペックなハードで馬鹿正直に再現することで引き立つアナクロさ、当時の個人的な思い出を重ね合わせながら堪能してください。

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▲なつかしい雰囲気のキャラクターグラフィックが味を出している。


●こんなゲーム(失礼)だけどスケールは壮大!!

 本作は、“勇者30”以外にもいくつかのゲームモードが用意されています。

 “魔王30”は、三すくみの法則を意識してモンスターを召還し、30秒以内に敵部隊を全滅するリアルタイムシミュレーション風アクション。“王女30”は、ボウガンを乱射しながら目的地に向かい、30秒以内に城に戻るシューティングアクション。以上3つのモードのエンディングを観るとアンロックされる“騎士30”は、賢者サマがモンスターを殲滅させる大魔法を唱え終える30秒間、ありとあらゆる手段を駆使して賢者を守り抜くアクションゲームです。

 これらはステージクリアー型のミニゲームとして徹底した作りになっていて、それぞれに独自のアクション操作スキル、攻略テクニックが要求されます。ステージごとに用意されているキャラクターどうしのゆるい漫才を楽しみつつ、マイペースに進められるのが魅力です。

 ちなみに、各ゲームモードの舞台となる時代設定はバラバラ。ゲームモードを時系列順にプレイすることで、表面のお気楽ムードに隠された、架空世界の壮大な叙事詩としての側面が浮かび上がってきます。

 とくに、各時代の主人公キャラゆかりの地を巡るかたちで進行する“騎士30”などは、100年単位での盛者必衰をしみじみ噛みしめる展開。騎士と賢者サマの会話に脱力しつつ、デカダンスなムードは緩やかに増していきます。

 過去は時の流れによって実像から乖離し、あるいはひっそりと忘れさられる蜃気楼のようなものでしかないのか。そんな思いに捉われそうになりながらもゲームを進めると、それまでのモヤモヤが一気に晴れるような男前な展開に突入。このくだり、年甲斐もなく燃えました。

 過去と現在が邂逅し、それが“確かなもの”として自分を包んでいる感じ……これこそまさに、本作が往年のRPGファンに味わわせたかった感覚と同じものだと思います。それが実際にどんなかは、モードメニューリストの騎士30の下にある“???”の項目で確かめてみてください。


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▲リアルタイムシミュレーション風の“魔王30”。

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▲ボウガンを駆使して敵を倒すシューティングアクション“女王30”。

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▲ありとあらゆる手段を駆使して賢者を守る“騎士30”。


●すべてを投げうってひとときの栄光に酔いしれよ!

 最後にアドホック対戦について。最大4人同時で、“勇者30”をプレイ可能です。

 勝利条件は、魔王にとどめの一撃を食らわせること。フィールドに配置された各アイテムを誰よりも早く、多く入手することで展開を有利に進められますが、それが必ずしも勝利に直結しないところが、本モードの厄介さです。

 ほかのプレイヤーに直接戦いを挑んだり、あるいはモンスターとの戦闘中に乱入しモンスターに加勢することで足を引っ張ることも重要なテクニック。ルール設定でハメツの呪文(30秒の時間制限)を“あり”にすると、時間の巻き戻しに関する陰険……否、アツい駆け引きが、勝敗を左右します。

 今回私はふたりプレイを体験したのですが、積極的に状況を進めた結果、最後においしいところをもっていかれ敗北、という展開ばかりでした。何ていうか……“いいひと”のままでいたら一向に勝ち目がない仕様っぽいです。時には「勝って何が悪い!?」と開き直るくらい気持ちで非道全開のプレイをするのも、ゲーマー的にいい思い出になるんじゃないでしょうか。その後の人間関係がどうなるはさておき。


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▲“勇者30”では、最大4人が参加してのアドホック対戦が可能。人間性を問われる対戦になりそう!?

 

Text by 戸塚伎一 

 

筆者紹介 戸塚伎一

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ファミ通Xbox 360誌でクロスレビューを担当するフリーライター&漫画かき。『勇者30』は、BGMも大きな魅力のひとつ。かつてどこかで聴いたことがあるようなないような……でもこれはこれでアリだな! と思える秀作揃いです。各ゲームモードごとに担当サウンドクリエイターが異なるので(ステージクリアー時のスタッフロールで確認可能)、ゲーム音楽ファンはチェックしてみましょう。

 

『勇者30』

対応機種

PSP

メーカー

マーベラスエンターテイメント

発売日

発売中(2009年5月28日)

価格

4410円[税込]

テイスト/ジャンル

ファンタジー・コミカル/バラエティー

CERO

全年齢対象

備考

無線LAN機能(アドホックモード)対応


※『勇者30』の公式サイトはこちら
※『勇者30』ファミ通.com特設サイトはこちら

[戸塚伎一の過去のレビュー記事]
※まさに硬派! 骨太のSFワールドを満喫せよ『Mass Effect(マスエフェクト)』インプレッション
※人間の“表と裏”を描く『Another Time Another Leaf(アナザータイムアナザーリーフ)〜鏡の中の探偵〜』インプレッション
※プロ野球ファンの皆さん、球春到来です! 『実況パワフルプロ野球NEXT』インプレッション
※伝説的なシューティングがPSPで蘇る『零・超兄貴』インプレッション
※“現実”と“妄想”が入り乱れる不思議な体験……『カオスヘッド ノア』インプレッション
※仲間と戦うことの力強さと、圧倒的なゾンビの恐怖と……『レフト 4 デッド』インプレッション

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