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『グローランサー』シリーズの原点が、10年の時を経てPSPで登場
【プレイ・インプレッション】

2009/5/14

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●10年の時を経て、良作が復活!

 シリーズ随一の人気を誇り、いまなお多くのファンを魅了してやまない『グローランサー』が、PSPで復活する。1999年にリリースされた『グローランサー』は、人気イラストレーター・うるし原智志の描く魅力的なキャラクターやテンポのいいストーリーが人気を博したRPG。そのシリーズの原点である同作が、PSPでリリースされるのだ。今回、さまざまな新要素が加えられ、リリースされるPSP版を、おもにファミ通系雑誌で活躍するフリーライター・本田やよいがプレイ。その魅力をお伝えする。


●時代が変わっても良作は変わらない

 

 いまや空前のリメイクブームである。いや、とくにいまだけってわけじゃなくて、数年まえからそうだったって言われればそうなんだけれども。ほら、ニンテンドーDSやPSPといった携帯機がものすごい勢いで普及しちゃったでしょ? で、せっかく高機能の携帯機が普及したんだから、ってわけだかどうだか知らないけど、昔の名作がつぎつぎと発売されてるわけよ。

 とくにPSPの勢いがものすごい。プレイステーションやプレイステーション2時代に評判を呼んだ名作がどんどんリメイクされている。もちろん、いまの時代に合わせてテンポをよくしたり、演出やエフェクトを派手にしたりといった工夫はあるけど、基本は昔のまんま。

 

 で、そういう風潮を見て思うのが、良作は何年経っても色褪せないなぁ、ということ。

 

 もちろん見た目はプレイステーション3やXbox 360の新作にかなわない。

 でも、ゲームのおもしろさってのは見た目だけじゃないじゃない?

 システム、演出、キャラクター、シナリオ、音楽、操作性、テンポ……。ゲームを構成する要素を挙げていくときりがないけど、それらのひとつひとつが高い質を誇り、なおかつ絶妙のバランスでまとまっていれば、それは“良作”と呼んでしかるべき作品だと思う。

 で、発売当時にある程度評判を呼んだ良作は、やっぱりいま遊んでもおもしろい。

 

 確かに最近の新作にくらべると不満な点はいろいろある。やっぱりテンポがいまいちなんだよねぇ、とか、グラフィックがちょっと昔っぽいよね、とか。でもそれは時代の変化からすればあたりまえのこと。むしろ、それらの点を差し引いてもやっぱり質が高いよね、という評価を得られるというのは、すごいことなんじゃないかと思う。

 

 その“良作”のひとつが、今回紹介する『グローランサー』だ。


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※画像クリックで拡大されます。

 

●“RPG”という単語ではくくりきれない戦闘システム

 

 このゲーム、ジャンルとしてはRPGの部類に入る。発売元アトラスの公式サイトを見ると、“ノンストップドラマチックRPG”と銘打たれている。重厚なストーリーが本作の売りのひとつなので、その点を強調したいという思惑はよくわかる。

 が、実際にプレイしてみると、“RPG”という言葉ではこのゲームを説明するのに不十分なんじゃないか? と思えてしかたない。あえて言うなら、リアルタイムストラテジー(以下、RTS)の要素を十二分に含んだRPGと言うべきか。

 

 主人公たちがフィールド上にいる敵に接近すると、画面が切り替わることなく戦闘に突入する。仲間の番がきたら、コマンドを入力することで指示を与える。“アタック”であれば対象の敵めがけてじりじりと移動し、敵に隣接した時点で直接攻撃する。“スペル”であればその場にとどまって呪文詠唱を始め、一定の時間が経過すると魔法が発動する。“護衛”の指示を与えれば、護衛する対象に接近するように動き、その対象を守るように戦う。

 これらの事実だけでは、RTSという印象よりもむしろアクションRPGに近い印象を受けるかもしれない。基本がセミリアルタイム制という点をとってみても、RTSとは言いがたい。

 だが、このゲームにRTS的要素を感じる点は多々ある。

 そのひとつが、“標的を自由に変えられる”という点だ。指示を与えてから、キャラクターが行動するまでに起きた変化に応じて、指示の対象となる標的を変更することが可能なのだ。

 たとえば、魔法が使えるルイセというキャラに、「敵を複数攻撃できる魔法を使う」という指示を出したとしよう。その魔法は中距離にしか届かないので、指示を出した時点で、攻撃可能な範囲内には敵が存在しないとする。だが、敵は味方目掛けて移動するので、指示を実行する時点では、攻撃範囲内に敵が複数存在する、ということがあり得るのだ。

 回復魔法もしかり。主人公のHPを回復させるために、ルイセに回復魔法を詠唱させていたとしよう。実際に詠唱するまでにルイセ自身がより大きなダメージを受けてしまった場合、その対象をルイセに変更することができるのだ。

 コマンド入力自体はセミリアルタイム制だが、使用する武器や魔法の種類によって、実際に行動するまでの時間が違うので、そこに戦略性が生まれる。さらに敵と味方が互いに動くことで、状況に応じた戦略が必要となる。たかがザコ戦といえど、この戦略が見事ハマり、複数の敵を効果的に倒したときの爽快感は格別だ。

 

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●ミッションの緊迫感がゲームを盛り上げる

 

 その戦略性をもっとも実感するのが、要所要所に仕掛けられた“ミッション”だ。

 街に入った瞬間、あるいはダンジョンの深奥部など、さまざまな場所で突発的にミッションが発生する。多くは敵を全滅させるのが目的だが、中盤以降はそれだけに留まらない。敵を倒しつつ、時間内にダンジョンから脱出したり、特定の対象を救出したりと、敵の殲滅と目的達成の両方をこなさなければならなくなる。ザコ戦で鍛えられたプレイヤーの戦略が要求される場面だ。

 

 とくに、中盤あたりで立て続けに発生する“レティシア姫奪還”と“レティシア姫&エリオットを守る”のイベントは非常にスリリングだ。

 最初の“レティシア姫奪還”では、敵に捕らえられ、監獄に護送される姫を救出しなければならない。だが、馬車で姫を移送する隊列の中には、非常に腕の立つ騎士が紛れていて、彼との戦いは絶対に避けなければならないのだ。彼が戦線に参加しないようにするにはどうしたらいいか? 姫を連れて逃げようとする兵士をどう阻止するか? さらに多数の護衛の兵士を相手にどう立ち向かうか? 何度も失敗し、何度も挑戦させられたミッションだったが、それゆえに達成感は非常に高い。

 さらに間髪入れず、レティシア姫とエリオットという少年のふたりを守るミッションが発生する。このミッションの厄介なところは、なんと街の人々までもが犠牲になってしまうという点だ。気のいい店のおじさんや無垢な子どもを、敵の兵士たちは容赦なく攻撃する。それ自体はミッションの可否に問われないが、やはり罪なき人たちを犠牲にしてしまうわけにはいかない。それにはどうしたらいいか? NPC(ノンプレイヤーキャラクター)であるエリオットにも指示が出せるので、どう指示を出すかが重要だ。

 

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●興味を持たざるを得ない、主人公の生い立ち

 

 ストーリーの面で細かい説明をするとネタバレになってしまうので避けたいのだが、この作品に関しては、冒頭部分の展開について書いておかずにいられない。それくらい衝撃的な展開だった。

 

 主人公は赤ん坊の頃、宮廷魔術師サンドラに拾われた少年。サンドラは彼を占ったが、その結果は“世を滅ぼす闇となる”、あるいは“世を救う光となる”という正反対のものだった。この結果を恐れ、サンドラは主人公を外界と隔てて育てる。だが、彼が17歳になった日、サンドラは彼に、この世界を自分の目で見てくるようにと言い、主人公は旅に出る。

 

 ぶっちゃけ、この描写だけでは「ふーん」くらいの感想しか持たないかもしれない。

 正直、私もそうだった。

 

 だが、プレイしてわずか1〜2時間で、プレイヤーの脳天を打ち砕く事件が起こる。

 

 うるし原智志氏が描く主人公のイラストは、クールで、その感情がいまひとつ感じられにくい。

 それは、感情を決定するのはプレイヤーだからで、主人公の表情にそれを感じさせる描写をあえてしていないからだ、と私は単純に思っていた。

 

 ところが。

 主人公には、過去のできごとや離れた場所で起こっていることを、夢に見る能力があった。

 そして、プレイ開始後、主人公が見る夢。

 そこに登場する彼自身の姿。

 

 それは、どう見ても殺戮を楽しむ殺人鬼の、愉悦に浸った歪んだ笑顔だった。

 

 それがただの夢なら、さほど衝撃的な展開ではない。

 だが、主人公が目を潰し、腕を斬り落とし、崖から突き落とした男。

 その名を傭兵ウォレスという。

 彼と主人公は再会する。そして、仲間としてともに戦う運命となるのだ。

 もちろん、ウォレスは目の前にいる青年が、その時の彼だとは知るよしもない。

 

 いったい、主人公は何者なのか?

 

 そこにいっさい触れられないまま、物語は進行していく。

 そして、やがて国と国との争いが始まる。


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●古さを感じるところはあるものの、後世に残したい良作

 

 このゲーム、オリジナルが発売されたのが1999年11月。いまからちょうど10年まえだ。

 オリジナルをプレイしていないので比較はできないが、現代のゲームとして考えると、やはり10年という歴史からくる難点を感じる部分はある。

 ひとつは戦闘終了後のテンポについて。戦闘が終わると、最後に敵を倒したキャラクターがちょっとした動作をするのだが、それが終わってからでないと、獲得した金額や経験値が表示されない。この動作、スキップもできないので、何度も敵と戦ってレベルを上げたい時にはちょっとしたストレスになる。しかも、場所によっては木などに隠れてキャラクターが見えないまま戦闘が終わったりするので、木をぼーっと眺めながら獲得金額の表示を待つしかない。

 もうひとつは“休暇システム”についてだ。

 ゲームを進めると王宮に仕官することができるようになり、国王からさまざまな任務が与えられる。この任務をこなすと、ご褒美として休暇がもらえるのだが、休暇のあいだは4つの街に行くことしかできない。その街で仲間や特定のキャラクターと会話し、親睦を深めるということが目的で、キャラクターにもよるし、会話の進行具合にもよる所が大きいと思うが、重要ではないイベントは淡泊で、仲間を捜して会話しても、あっさりとした会話をかわすだけで終わってしまうことが多いのだ(ミーシャの花言葉に関するうんちくとか)。その会話のために、主たる目的を中断してまで仲間をわざわざ捜し出すことのほうが苦痛に感じられてしまうのが非常に残念。せっかくのリメイクなのだから、この点は改善してほしかった。

 

 だが、冒頭にも書いたが、良作には欠点を駆逐する魅力がある。

 

 ミッションを含む戦闘の戦略性と、主人公の生い立ちをめぐるストーリーへの興味。

 

 このふたつが際立っていることで、本作は良作としての地位を獲得し得た、と思う。

 

Text by 本田やよい

 

著者紹介
本田やよい

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おもにファミ通系列の雑誌にて執筆活動を行うゲームライター。『真・女神転生II』と『ペルソナ4』をこよなく愛するアトラスファン。本作『グローランサー』の主題歌がめちゃくちゃカッコイイのでカラオケで歌いたいんだけど、ゲームの曲ってカラオケになかなか入らないんだよねぇ、と嘆くカラオケフリークでもある。得意な曲は『夜桜お七』。



グローランサー

対応機種

プレイステーション・ポータブル

メーカー

アトラス

発売日

発売中

価格

6090円[税込]

テイスト/ジャンル

冒険・ファンタジー / RPG

備考

ディレクター:高田慎二郎、キャラクターデザイン:うるし原智志、シナリオ:葉月 陽、オープニングテーマ曲:田村ゆかり(『Tomorrow』)


 

※『グローランサー』公式サイトはこちら
 

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