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浜村弘一氏セミナー“ゲーム産業の現状と展望 2009年春季”が“景気後退に直面するゲーム産業”と題して開催

2009/4/11

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●不景気はゲーム市場に影響を及ぼしたのか?

 

 2009年4月10日、都内のエンターブレイン社屋で“ゲーム産業の現状と展望 2009年春季”という講演が行われた。これは、エンターブレインがまとめたゲーム産業に関するデータに基づいて、同社代表取締役社長、浜村弘一氏が行う恒例の講演。毎年、春と秋の2回、アナリストや報道関係者向けに行われている。今回のテーマは“景気後退に直面するゲーム産業 〜ゲーム産業の次なる成長戦略とは?〜”。国内、及び海外のゲーム市場の現状を分析しつつ、2008年に米国のサブプライム問題に端を発した世界同時不況がもたらしたゲーム産業への影響を読み解くという刺激的な内容だった。なお、本記事中の数値はエンターブレイン調べ。
 

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 まずは家庭用ゲーム機各ハードの現状と課題が解説された。

 

 2008年後半、景気後退により国内小売市場は縮小したが、ゲーム市場は堅調な数字を記録した。世界的に見ても、2007年のゲーム市場に比べ、2008年の市場は縮小していない。この立て役者となったのが任天堂で、浜村氏は北米地域での任天堂を含んだデータと任天堂を含まないデータを示し、「公約どおりゲーム人口の拡大に成功」と分析した。Wiiは現在、世界市場で大ヒットを続けているハードだが、浜村氏はその要因に、商品力と低価格、史上最大規模のプロモーションを挙げた。

 

 任天堂は北米でのニンテンドーDS用ソフト『リズム天国 ゴールド』(北米でのタイトルは『Rhythm Heaven』)のCMにビヨンセを起用。かつて『東北大学未来科学技術共同研究センター川島隆太教授監修 もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング』のCMにニコール・キッドマンが起用されたこともあり、任天堂は旬な人物を起用して大々的なプロモーションを展開する手法を採る。浜村氏は、これにより集まってきた世界のライトユーザーに向けて商品力のあるソフトを供給したことが成功の要因だと語った。ファミリー、スポーツ、音楽、パーティーなどライトユーザー向けのソフトが大きく伸びた。不況下にあって、低価格であったことも成功の要因だという。

 

 一見、順風満帆に見えるWiiだが、浜村氏はその課題をサードパーティーのソフトにあると説いた。販売本数ベースで見ると、国内でのWiiのサードパーティーによるソフトの比率が30パーセントであるのに対し、プレイステーション3のそれは79.7パーセント。Wiiでは相対的にサードパーティーで成功したタイトルが目立っていないが、その中でも成功したタイトルはカジュアルなタイトル。浜村氏は「任天堂が作った市場戦略を理解したソフトハウスが成功を収めている」と指摘した。こうしたタイトルが徐々に増えてきているとのことで、浜村氏はエレクトロニック・アーツのフィットネスソフト『EA Sports Active』を例に挙げた。また、任天堂の『Wii Sports Resort』にも大きな期待をかけていることを表明した。サードパーティーが目立たないという課題が克服されつつあるとともに、浜村氏は任天堂による市場拡大は今後も続き、東欧やアフリカ、オーストラリアなどの新興市場に拡大していくという見解を示した。
 

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 カジュアルなゲームを好むライトユーザーを獲得することで任天堂は成長戦略を採ることができる。しかし、それ以上を目指すならコアなゲームユーザー向けのタイトルも必要となる。そうした意味で浜村氏が注目したのが、カプコンの『モンスターハンター3(トライ)』。約300万本のヒットを記録したPSP(プレイステーション・ポータブル)用ソフト『モンスターハンターポータブル 2nd G』の購入者を対象としたアンケートが俎上に上げられたが、2008年10月に『3(トライ)』の購入意欲を示した人は27.2パーセントに過ぎなかったのに対し、2009年4月の調査では50.2パーセントにアップしている。このようなコアなゲームユーザーに訴求するタイトルはWiiにとって大きな存在となるはずだ。

 

 プレイステーション3に関しては、国内ではソフトがそろってきたことにより普及の兆しが見えてきたことが指摘された。2008年後半から2009年にかけて、『メタルギア ソリッド 4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』、『白騎士物語』、『龍が如く3』、『バイオハザード5』といったビッグタイトルがハードの販売台数を押し上げたとともに、ソフトの装着率(ハード1台に対するソフトの販売本数)が上がり、2009年3月の段階でほぼWiiの水準に到達したことが示された。
 

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 欧州ではカラオケソフト『Singstar』やクイズゲーム『Buzz』、アクションゲーム『リトルビッグプラネット』がヒットしたが、浜村氏はこうした子供、ファミリー向けソフトの投入が必要とコメント。そうした意味でソニー・コンピュータエンタテインメントヨーロッパが開発中の『Eye Pet』に注目しているという。海外ではプレイステーション2がようやく終息に向かいプレイステーション3への世代交代が進みつつある。また、ソニーの組織改編によりプレイステーション3がソニーの戦略商品に位置づけられたことも、プレイステーション3普及の兆しとして挙げられた。

 

 浜村氏は、プレイステーション3の今後の鍵を握るのは、ネットワークと値下げ効果と分析。北米ではプレイステーション3のネットワーク接続率は3大ハード中もっとも低いものの、欧州ではもっとも多いとのこと。これは欧州でカラオケソフト『Singstar』がヒットしているためで、キラーソフトの存在がネット接続率に大きく影響しているという。ネットワーク接続により入手できるダウンロードコンテンツは増えてきていることが、明るい材料として紹介された。さまざまな憶測が飛び交っている値下げに関して浜村氏は、ドイツでプレイステーション2の値下げが行われた際に、販売台数が約2倍に伸びた事例を挙げて、その効果を証明。「(値下げを行って)ゲーム機としてもう1回普及させようと考えているかもしれません」(浜村氏)と、ソニー・コンピュータエンタテインメントの戦略を推測した。

 

  Xbox 360の国内累計販売台数が100万台を突破したが、これは「値下げとゲームタイトルの充実というハードを売るための基本戦略」(浜村氏)が成功したため。これは日本だけでなく欧州でも起きている現象だという。すでに成功を収めている北米でも、値下げを機にふたたび販売台数を伸ばしたことが指摘された。
 

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 ニンテンドーDSとともに携帯ゲーム機を主力ゲーム機の地位に押し上げたPSPに関して浜村氏は「つながるゲームで支持を集めた」と説いた。つながるゲームと言えば約300万本の大ヒットを記録した『モンスターハンターポータブル 2ndG』が思い浮かぶが、セガの『ファンタシースターポータブル』以降、つながるゲームが増えてきたことが指摘された。また、PSP-3000や新カラーの登場もPSPの販売台数に寄与している。PSP-3000は約7割が買い換え、約3割が新規購入とのこと。現状ではハードの販売台数でニンテンドーDSに水を空けられているが、サードパーティーによるタイトルの販売本数はニンテンドーDSを拮抗しているデータが示された。

 

 PSPの今後の課題として挙げられたのは、海外でのソフトラインアップの不足。しかし、ソニー・コンピュータエンタテインメントヨーロッパが急速にソフトラインアップを強化しており、『リトルビッグプラネット』、『Motorstorm』、『レジスタンス』シリーズ作品、『アサシンクリード』をもとにしたタイトルが準備されている。

 

 浜村氏は、空前の大ヒットを記録したニンテンドーDSに関して、「転換点を迎えた」と分析した。国内での販売台数はこれまでの爆発的な勢いに比べると若干、落ち着いた模様で、本体の購入者は既存ユーザーが増え、回帰ユーザーが減少していることが統計で明らかにされた。2008年11月1日にニンテンドーDSiが発売されて以降、累計販売本数の上位を占めていたロングセラータイトルの販売本数が従来ほど伸びていないことも指摘された。

 

 国内でこうした転換点を迎えたいっぽう、海外での新たな動きとしてUbiソフトの『Imagine』シリーズが紹介された。これはおもに女子があこがれる職業になれるシミュレーションゲームで、シリーズ合計で25種類以上が発売。英国だけでシリーズ合計で100万本以上が販売されている。今後もラインアップが拡大予定で、カジュアルなユーザー層に訴求している。Wiiのケースと同様、任天堂の戦略を理解しているメーカーが成功を収めた例として紹介された。

 

 浜村氏は、カジュアルなタイトルとともにゲームらしいゲームにも注目。そうしたタイトルによりニンテンドーDS向けソフトの層が厚くなるという。国内では『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』、海外では『Grand Theft Auto: Chinatown Wars』が代表的なタイトルとして提示された。

 

 続いて2008年度の国内ゲーム市場が取り上げられた。各ハードの販売台数と前年比は以下のとおり。

 

 前年比62.8パーセントとなったニンテンドーDSに関して浜村氏は「いまは少し落ちているが、DSiの登場でまた数字を伸ばし始めている。DSiならではのダウンロードコンテンツが出てくれば、さらに普及は進む可能性がある」と語った。前年比169.4パーセントと大きく販売台数を伸ばしたXbox 360については、サードパーティーのタイトルが継続的に発売されたことを要因に挙げた。すべてのハードの販売台数の合計値が、前年比71.7パーセントと落ち込んだことについては「景気の影響というより、ソフト不足による面が大きい」(浜村氏)と分析しつつ、「各ハードの特性がわかってきた中で、不景気による小休止が終わる今後に注目」(浜村氏)とコメントした。

 

 現在、世界のゲーム市場は、北米、欧州、日本の市場規模が40対40対10の割合になっているという。任天堂はそれとほぼ同じ比率で、各市場で販売をあげており、健康的な数字を維持しているいっぽう、スクウェア・エニックスやバンダイナムコゲームスは「もうちょっと海外を伸ばしたいと思っているかもしれない」(浜村氏)とのこと。浜村氏はこうした思いが業界再編を生み、さらなる国内メーカーどうしの合併や海外のソフトハウスの買収が行われる可能性があることを指摘した。海外ではすでに業界の集約化が進み、エレクトロニック・アーツ、アクティビジョン、Ubiソフトの3社に収斂しつつあるという見解を示し、「日本でも5年以内に大手3社くらいに統合される可能性がある」と予測した。

 

 浜村氏は不景気のゲーム市場への影響について「確実にあったと思います」としながらも「ほかの業種に比べて影響が少なかった」と語った。海外で流通が麻痺したこと、エレクトロニック・アーツなどの海外メーカーでリストラが行われたことを示しつつ、「不景気はゲーム産業に大打撃を与えるには至らなかった。しかし、ゲーム産業の構造を変化させるきっかけを作ったことは否定できない」と総括。

 

 今後の展望として、2011年につぎの転換期が訪れることを予想し、ハードの更新が行われる可能性を示唆した。しかし、「もはやハードの変化は決定的に勝敗を分ける要因とはならないかもしれない。グラフィック性能が決定的でないことは任天堂が証明した」と語り、“手軽さ”や“安価”をメリットに持つネットワークにおけるサービスが鍵を握る可能性がある考えを示した。
 

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