HOME> ゲーム> ngmocoのニール・ヤング氏が“GDC モバイル”の基調講演で語る、「iPhoneがゲーム業界に革命をもたらす!」
●人気作『Rolando』シリーズの構想も明らかに
2009年3月23日〜27日(現地時間)の5日間、アメリカ・サンフランシスコのモスコーニセンターにて、ゲームクリエーターのための国際会議、GDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)09が開催。世界中のクリエーターによる技術交流を目的としたGDCでは、トップクリエーターらによる注目の講演が多数予定されている。ファミ通.comではその模様を総力リポートする。
ご存じのとおり、ここ数年のケータイにおけるゲームの充実ぶりには目覚しいものがある。そんなニーズに対応する形で、GDCではここ数年“GDC
モバイル”として数多くのセッションを開催しているが、GDC09開催1日目の23日には、“GDC
モバイル”の基調講演として、ngmoco(エヌジーモコ)のCEOであるニール・ヤング氏による講演“なぜiPhoneがすべてを変えたのか”が行なわれた。ニール・ヤング氏はエレクトロニック・アーツ在籍時は、『Lord
of the Rings』や『ザ・シムス2』などを手掛けてきたトップクリエーター。エレクトロニック・アーツを退社後は、2008年6月にngmoco
を設立。iPhone/iPod touchという新しいデバイスに可能性を感じたヤング氏は、iPhone/iPod
touch向けソフトの開発に注力してきた。iPhone/iPod touch向けとして圧倒的な支持を得るアクション『Rolando』はその大きな成果のひとつだ。
「従来のケータイゲームは、莫大な種類の端末に対応しなければならないため効率が悪く、利益がほとんど出ませんでした。たとえば、エレクトロニック・アーツでは、スタッフの90パーセントを移植にあてていたくらいです。ところがiPhoneがすべてを変えました。iPhoneでの経験は驚くべきものです」とヤング氏。そしてiPhoneの存在は、「ファミコンやゲームボーイ、Xbox
LIVE、MMORPGなどの登場と同様に、特別な“何か”の始まりだと思う」と断言した。
電話であることのうえに、Webの閲覧やメールのやり取りなど、iPhoneを“ひとつの完全なデバイス”と説明したヤング氏は、「(iPhoneは)ゲームでもすばらしい才能を発揮してくれることがわかった」と説明。iPhoneがゲームマシンとしてすぐれている点として、“携帯ゲーム機レベルのゲームを開発できる”、“スムーズな流通”、“つねにコネクトされている”、“ソフトウェアを拡張できる”、“ファーストパーティータイトルがない”、といった点を列挙。iPhoneが、この業界に4つの大きな変化をもたらしたとした。
(1)市場
iPhone/iPod touch発売から2年近くを経た段階での販売台数は、同時期のニンテンドーDSやPSPを凌いでいる。iPhone/iPod
touchのワールドワイドでのトータルの販売台数は、短期間のうちにPSPの58パーセント、ニンテンドーDSの32パーセントまで迫っている。使い勝手のよさなどにより、ユーザーの使いかたが変わっただけではなく、ゲーム自身も進化している。iPhone/iPod
touch用のアプリは25000を超え、App Store開始以来のダウンロード数は8億を記録している。1日にリリースされるアプリの平均は165個! これは、混沌とした市場と熾烈な競争を意味するが、長期的な視点では大きな可能性となることはたしか。
▲携帯電話や携帯ゲーム機よりもiPhoneのほうがすぐれているというヤング氏。真ん中の写真は、ニンテンドーDS(赤いグラフ)やPSP(黄緑)と比較して、いかにiPhone(水色)が短期間で普及しているかを示したもの。 |
(2)ゲーム
家庭用ゲーム機に劣らない、ゲーマーを驚かせられるクオリティーのゲームが出てきている。いま、オランダのRough
Cookieという会社といっしょに『Star Diffence』というディフェンス系のゲームを作っているが、従来のモバイルゲームのビジュアルクオリティーに比べて、大きく改善されている。ハードウェアにマッチしたゲームデザインという点では、任天堂に学ぶべきことが多い。ニンテンドーDSが世界中でヒットした理由としては、デュアルスクリーンとタッチパネルというユニークな機能で勝負したから。任天堂がもしiPhoneのゲームを作っていたら、“つねにネットにつながっている”、“つねに持ち歩いている”というハードの特性に注目しているハズ。iPhoneのゲームをつぎのレベルまで引き上げるヒントはそこにある。
▲ngmocoが開発中のディフェンス系ゲーム『Star Diffence』。惑星をフィールドに見立てているようだ(写真左と真ん中)。「任天堂がiPhone向けのゲームを作ったら、まさにiPhoneならではのゲームを作るに違いない」とヤング氏。 |
(3)ゲームメイキング
現在ゲーム業界は多少の停滞感はあるが、iPhoneがいいカンフル剤になっている。アップル社の提供する開発キットはすばらしく、99ドルを払えば誰でも開発が可能になる。その成果があって、25000タイトルがリリースされ、10000を超えるディベロッパーがいるわけだが、一方で混沌とした市場とすぐれたゲームでも埋もれてしまって売れないという事情があり、多くの開発者は岐路に立っている。ゲームメーカーとしての生き残るためには、自分の得意分野は何か?を模索する必要があるだろう。成功したら、長いあいだいっしょに仕事をできるパートナーを捜すべき。ngmocoの『Rolando』では、タイトルアップデートのほかに、『Rolando2』(2009年7月配信予定)、『Rolando3』(2009年11月配信予定)という展開を予定している。『Roland』シリーズ全部あわせると、11ヵ月のスパンで12ワールドをリリースし、40時間以上のゲームプレイとなる。ユーザーからのフィードバックを得て、ゲームを改良する時間もあり、ユーザーの満足度も高くなる。
▲iPhoneの人気作『Rolando 2』の配信を明らかに。ユーザーの意見をフィードバックした作品になる模様だ。さらには『Rolando 3』も予定。 |
(4)パブリッシング
パブリッシングを有効展開するうえでは、“ベストなゲームが作れる”、“最大限の露出ができる”という2点に注力すべき。そのための一助として、ngmocoではこの夏から蓄積したテクノロジーやツールをパートナーに提供し、後方支援をするつもりでいる。
『Roland』シリーズの構想もさりげなく飛び出したngmocoのニール・ヤング氏による“GDC
モバイル”の基調講演。実際のところ、北米におけるiPhoneの普及率は驚異的で、ゲームプラットフォームの今後にも大きな可能性を感じさせる。「ゲーム市場にさまざまな革命をもたらしたiPhoneですが、まだまだはじまったばかりです」と最後にニール・ヤング氏は力強くコメントした。
▲小社刊行の週刊ファミ通とファミ通iPhoneといっしょに撮影させてもらいました。 |
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