HOME> ゲーム> “現実”と“妄想”が入り乱れる不思議な体験……『カオスヘッド ノア』インプレッション
●猟奇的な殺人事件の顛末を追う妄想科学アドベンチャー
引きこもり一歩手前の高校生、西條拓巳を主人公に、渋谷で起こった連続猟奇殺人事件の顛末を描くXbox
360用ソフト『カオスヘッド ノア』。“現実”と“妄想”が入り乱れる不思議な世界観に心惹かれる……というライターの戸塚伎一が本作をプレイ。この“妄想科学アドベンチャー”を語り尽くしてもらった。
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※『カオスヘッド ノア』はCEROより18歳以上のみ対象の指定を受けておりますが、掲載にあたってはファミ通.comの掲載基準に従って配慮しています。 |
●Chapter01 イマジネーションを持て余していたあのころへ
“エッチな想像”に登場してもらった同級生女子(もちろんカノジョではない)が、翌朝ひどく辛そうな様子で登校しているのを見かけると、「俺の昨夜の脳内ストーリーが、どういうわけか彼女にバレている」と思い込み、本人に謝ろうにも、謝りづらい。
以上は私の20年以上まえの実体験ですが、とかく中学〜高校生時代は、それを表に出す出さないにかかわらず、自身の“想像力”を異様に高く評価しがちです。当時高評価を与えていたもののほとんどは、いま私自身が感じているように、こっ恥ずかしいものばかりでしょう。
でも、それはそれで楽しかった気がする。盲点だらけの思い込みで突き進んでいたからこそ見えていた景色、感じていた世界があったのでは……と思えるようになった人にとくにプレイしてもらいたいのが、今回紹介する『カオスヘッド
ノア』。実年齢もおそらく18歳以上だろうから、何の障害がありましょうか!
●Chapter02 共感できない…というより異物感満点の主人公
本作の主人公・西條拓巳(写真)は、オシャレな若者の街・渋谷の私立校に通う高校2年生。親が所有する雑居ビルの屋上に置かれたコンテナ内で独り暮らし中、だとか、卒業に必要な最低出席日数以上は登校しないひきこもり一歩手前のライフスタイル、といった設定はさすがに突飛ですが、彼の人となりや興味の対象に関しては、共感とはいかないまでも、理解できる部分は結構あるはず。
拓巳君は、自分のことを“キモオタ”と称します。キャラデザイン的には、とくにネガティブな要素が強調されているわけでもなく、むしろ好青年風。趣味はアニメ、ネット、ゲーム、フィギュア。いかにもといえばいかにもですが、この時代、特別オタクな人でなくても、手を伸ばせばすぐ触れられる範囲にあるホビーばかりです(とは言えネットゲームでは、仲間内から英雄と崇められるほどの廃人ゲーマーっぷりを発揮していますが)。
じゃあ毒にも薬にもならない人物像かといえば、さにあらず。ネット上の会話や独り言では、某巨大掲示板用語を使いまくってノリノリなのに、人との直接的なコミュニケーションは苦手。そのくせ腹の中では“世の中自分以外は馬鹿ばっか”と考えている人柄が、拓巳役の声優さん(吉野裕行)の怪演によって、強烈な存在感を放ちます。口癖の笑い声「ふひひ」のイントネーションの多彩さ、オタクの独り言特有の妙なハイテンションぶりの再現度は、ひょっとするとあなたを本気で怒らせるかもしれません。
●Chapter03 ギャルゲー的日常に妄想の翼をはばたかせろ!
そんな困った人物として描かれる拓巳君も、交遊関係は案外、華やか。個々のプロフィールや出会いの経緯は省略しますが、さまざまなタイプの美少女キャラがつぎからつぎへと現われ、拓巳君の日常に直接、または間接的に影響を及ぼしていきます。
この状態、プレイヤーの立場から見ると、まさにギャルゲーの王道的展開。未成年にもかかわらずエロゲーをたしなむアウトローな拓巳君自身、そういった意識も少なからずあるようですが、最終的には
「ゲームじゃあるまいし……」
と、ギャルゲーの主人公然と振舞うことにたいして抵抗を示します。兄の様子をちょくちょく見にコンテナにやってくる健気な妹・七海にたいしても同様のスタンス。プレイヤーにしてみたら“強がりな態度と甘たるい口調がかわいい元気妹系美少女キャラ”なのに、当の拓巳君は
「これだから三次(三次元世界の住人)は……」
と、実妹の言動を嘆き悲しむばかり。拓巳君の言いぶんはわかるのですが、それにしたって、“本当の三次元世界”から視線を送るプレイヤーにとっては、何とも滑稽かつ奇妙な主張に映ります。
煮え切らない日々を送る拓巳君にとってのささやかなマイレボリューション。それが“妄想”です。ゲーム中の特定の場面──おもに、女の子と向かい合っているシーンになると、画面の視野が狭まって、“妄想トリガー”の入力受け付け状態になります。この際に選択できる行動は、以下の3つ。
(1)ポジティブな妄想を暴走させる
(2)ネガティブな妄想を暴走させる
(3)妄想しない
(1)はいかにもギャルゲーエロゲーっぽいご都合主義的展開の妄想。(2)は女の子または拓巳君がなぜか凄絶な最期を迎えるバッドエンド的展開の妄想です。たかがほんのひとときの“自由すぎる夢”とは言え、専用のイベントCGがけっこう用意されていて、ともすれば声優さんの艶っぽい演技も堪能できるとあっては、プレイヤーとして見過ごすわけにはいきません。言ってみれば、妄想トリガーは、メインストーリーとは異なる世界や可能性を提示してくれる、良心的なサービス要素というわけです。
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▲本作独特のシステム“妄想トリガー”。 |
●Chapter04 連続猟奇殺人事件によってブレていく“現実”
ギャルゲー的人間関係とともに同時進行するのが、渋谷を舞台に連続する一連の猟奇殺人事件──通称“ニュージェネレーションの狂気”。第二の事件までは無関心だった、というか存在さえ知らなかった拓巳君も、偶然、第三の事件発生現場に居合わせたことで、否応なしに巻き込まれていきます。
目撃した“犯人”に命を狙われるのではないかという不安。事件を調査する警察に、なし崩し的に“犯人”に仕立て上げられるのではという不安。そして、そういった不安に苛まれる自分をどこからか眺め、ほくそ笑む人物の思い通りになっているのではないか、という疑心。そうこうしているうちに第四、第五の事件が発生し……といった具合にストーリーが展開します。
憂鬱な事件報道やネット住人の反応などが、自宅PCのモニターを通じ、鮮度の高い情報として入ってくる際の臨場感は、なかなかのもの。ブラウザ画面を模したぱっと見だけでなく、閲覧時の画面アクションや、実際に書かれている内容がソレっぽく再現されているあたり、思いつきのパロディーとは一線を画したこだわりを感じます。ややグロテスクなCGが急に大きめに表示されるという、うっかりブラクラを踏んでしまったときのような演出もあって(困ったことに回避不能)、それらの情報が主人公の日常感覚を徐々に脅かしていく過程を体験できます。
……しかしそれは、主人公だけの問題でしょうか?
●Chapter05 本作特有のカオスに巻き込まれるが勝ち!
序盤こそ“ギャルゲー要素満載のサイコサスペンス風ストーリー”としてふつうに楽しめる本作ですが、いつのまにか自分自身、いろんな次元で“現実”と“非現実”の境界があいまいになっていることに気づかされ、ハッとします。
最初に「やられた!」と思ったのは、ゲーム内の造語を実際にネット検索してしまった時。少年時代、『魁!!男塾』に登場する出版社・民明書房が実在すると思い込んでいたようなミステイクですが(たとえが古い)、いい年のおっさんが何やってるんだか……というよりは、こんな気持ち久しぶり! と、ちょっとうれしくなりました。
前述した妄想トリガーも、その点なかなかのクセモノです。ゲームの性質上、詳しくは説明しませんが、これがじつにあっさりとプレイヤーを裏切ります。ここまでくると、「やられた」を通り越して、「いいぞ、俺をどこまでも惑わせてくれ!」という気持ちになってくるから不思議です。
この感覚はたとえるならば、一流のマジック・ショウを最前列で見ているようなもの。マジシャンに指名されて壇上にあがり、“タネも仕掛けもないこと”を確認する役割を担わされた上で、あっと驚く現象を見せつけられる……『カオスヘッド
ノア』は、まさにそんなことが連続する、一大エンターテイメント作品です。
今回リリースされるXbox
360版は、昨年先行してリリースされたPC版のグレードアップ・バージョン。グラフィック、演出面が強化されただけでなく、PC版では描かれなかった各ヒロイン固有のシナリオが追加され、物語世界の混沌の度合いが、一層増しています。
すべてのシナリオを楽しむには、ゲーム攻略的なプレイが必要になりますが、ともあれ最初の1回目は、あまり余計なことは考えず、気の向くまま起こるがままに任せてみましょう。一流のマジック・ショウのすばらしさは、何回観たかとか、「本当はタネも仕掛けもある」という事実によって歪められはしません。そこのところだけは、ご安心を。
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Text by 戸塚伎一 |
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▲妄想と現実が交差する『カオスヘッド ノア』。 |
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筆者紹介 戸塚伎一 |
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ファミ通Xbox 360でクロスレビューを担当するフリーライター&漫画かき。かつて渋谷近辺──本作でいうところの「拓巳君が剣を買ったアヤしいお店の近所」に8年間ほど住んでいた経験あり。渋谷の実在する場所をモデルにした背景の数々に、何とも言えない懐かしさを感じました。 |
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『カオスヘッドノア』 | |
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対応機種 |
Xbox 360 |
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メーカー |
5pb. |
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発売日 |
発売中 |
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価格 |
7140円[税込] |
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テイスト/ジャンル |
サスペンス/アドベンチャー |
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備考 |
初回限定版『カオスヘッド ノア(限定版)』が9240円[税込]で発売 |
※『カオスヘッド
ノア』の公式サイトはこちら
[戸塚伎一の過去のレビュー記事]
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