劇的3時間SHOWの開幕初日にキューエンタテイメントの水口氏が出演
●志をともにする佐藤可士和氏の講演に特別ゲストとして登場
2008年9月30日〜10月4日まで開催された“CEATEC JAPAN 2008”を皮切りに、“東京ゲームショウ2008”や“第21回東京国際映画祭”、“秋葉原エンタまつり 2008”など約1ヵ月間のあいだに、さまざまなエンターテインメント関連イベントを集中開催する、世界最大規模のコンテンツフェスティバル“JAPAN国際コンテンツフェスティバル”(愛称、コ・フェスタ)。このコ・フェスタが手掛けるオリジナルイベント“劇的3時間SHOW”が2008年10月6日に都内・表参道にあるイベント施設スパイラルホールで開幕した。
劇的3時間SHOWとは、将来の日本のコンテンツ産業を支える人材の育成を目的としたトークライブイベント。2008年10月15日までの10日間にわたって、日替わりで国内のコンテンツ産業を牽引するトップクリエーターたちが登壇し、3時間という決められた時間の中で自身の経歴や仕事などを自由に表現するという内容になっている。初開催となった昨年は、『パックマン』の生みの親で現在は東京工芸大学芸術学部ゲームコースで教授を務めている岩谷徹氏が出演するなど、ゲームとの関わり合いも深いイベントだ。
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▲現役トップクリーエーターの生の声が聴ける機会とあって、会場はご覧のとおり満員。すでに各講演の事前応募は終了しているが、当日受付枠も用意されているので興味がある人は足を運んでみよう。 |
開催初日となったこの日は、昨年に引き続いてアートディレクターの佐藤可士和氏が登壇した。過去に“スマップ”のアートワークや、ユニクロNYグローバル旗艦店のクリエイティブディレクションといった仕事を手掛け、日本だけでなく世界でも広く名の知られている佐藤氏。コ・フェスタのシンボルマークのデザインも行っており、イベントを象徴する人物とも言える。講演は2部構成で行われ、前半ではクリエーターという生きかたを選んだきっかけや、自身の代表的な仕事のひとつユニクロNYグローバル旗艦店のロゴデザインに関するエピソード、そして来場者とのQ&Aなどが行われた。そして、休憩を挟んだあとに始まった第2部では、スペシャルゲストとしてキューエンタテインメントの代表取締役(CCO)を務める水口哲也氏が登場。日本を代表するアートディレクターと、『スペースチャンネル5』、『Rez』、『ルミネス』といったデザイン性の高い作品を手掛けてきた水口氏による、アーティスティックなトークセッションが実現した。
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▲講演の前半部分では佐藤氏の過去の仕事などが、自身のWebサイト“KASHIWA SATO.COM”のコンテンツを参照しながら解説された。 |
佐藤氏によればふたりが出会ったのは2005年。Xbox
360の発売を記念して期間限定でオープンした“Xbox 360 LOUNGE ”のデザインなどを佐藤氏が行い、そのタイミングで当時Xbox
360用ソフトを開発していた水口氏と雑誌SWITCH上で対談をしたのが、初顔合わせだという。その後、空港で運命的に邂逅するなどを経て、現在佐藤氏はコ・フェスタのアートディレクター、水口氏はコ・フェスタ関連イベント第21回東京国際映画祭のアドバイザーとして、初めて同じ舞台で仕事をすることになった。今回水口氏がスペシャルゲストに呼ばれたのはそういった経緯に加えて、「まえまえからクリエーティブなことを腹を割って話したかった」という佐藤氏たっての願いもあってとのこと。
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▲第2部からはスペシャルゲストとして水口氏が登壇。同氏が過去に手掛けたゲームの話題に始まり、クリエーティブの本質についてなど幅広い話題が展開された。 |
まず水口氏は、自身の経歴について語った。’72年に『PONG(ポン)』で初めてインタラクティブに触れてから、漠然と「いつか何かを作りたい」と思うようになったという水口氏。その思いに向かって具体的に動き出したのは、大学時代にアメリカで“アイソレーション・タンク”を体験してからだという。これは、浮力の大きい体温とほぼ同じ温度の液体が入った完全防音の容器に浮かび、外部からの感覚を遮断して心身ともにリラックスしようとする試み。水口氏は初めてこれに入ったとき「外部からの入力がゼロになり、自分の意識が内側に向いた」という経験をし、同時に「物を作って生きる人生を送るか、誰かが作ったものを楽しんで生きるのか」といった悩みに対し「どうせ生まれてきたんだから、決心して物を作っていこう」という回答を得て、クリエーターとして生きる道を決断したそうだ。そして、物を作るからにはグローバルにやろうと思い、選んだのが「言語がなくても楽しめる、体験の共有で楽しさが広がる」(水口)ゲームだった。
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▲水口氏はクリエーターを目指したきっかけなども語った。 |
ここで水口氏は、過去に手掛けてきた代表作を映像とともに紹介。『スペースチャンネル5』、『Rez』、『ルミネス』という流れから明かされたひとつのコンセプト、それはすべての作品が“音と映像”の融合を目指しているということ。具体的に言えば、『スペースチャンネル5』は「ミュージカルをゲームに変えてみよう」(水口)という思いが、『Rez』には画家のヴァシリー・カンディンスキーが提唱していた、音を色などで表現するシナスタジア(共感覚)に対するゲーム側からの回答が、そして『ルミネス』では「PSP(プレイステーション・ポータブル)というゲーム機をインタラクティブ
オーディオビジュアル ウォークマンとして利用できないか」(同)という提案が詰まっているのだという。
水口氏のゲーム作品を語るうえで外せない“音と映像の融合”という要素。その究極形とも言えるものは『ルミネス』の続編『ルミネスII』から生まれた。この作品で水口氏は実在する音楽アーティストのプロモーション映像をゲーム内にそのまま取り込むという試みを行い、加えて「ゲームを遊んだだけでハッピーになれる音楽と映像を作ってみよう」というアイデアから“元気ロケッツ ”という音楽グループを結成、プロデュースを行うことになったのだ。この元気ロケッツは“30年後の18歳であるLumi”がメインアクターを務めるという設定の実体をともなわないコンセプチュアルなグループで、本来は『ルミネスII』のためだけに結成したのだが、試しにプロモーションビデオを動画共有サイト“You Tube”を投稿したところ国内外から大きな反響が起き、あっという間にCD発売が決定したのだという。「ゲームというメディアがついにそういうところまで来た」(水口)。その後元気ロケッツは、さらなる“映像と音のハイブリッドな演出”を推し進め、2007年7月に幕張メッセで開催されたイベント“Live Earth”でホログラムを駆使したライブを開催。その中で元アメリカ副大統領のアル・ゴア氏とも共演を果たすなど、世界レベルで大きな存在感を見せている。
「日本のPOPな文化と世界の人が持っている共通項。それをどう合わせていくか? そして、音と映像が一体化した表現をどこまで追及していけるか?」(水口)
水口氏はまとめとして、この10年でゲーム業界およびコンテンツ業界には急激なイノベーション(革新)が起きていると語り、それはこれからも「ジェット気流のように進んでいくだろう」と結論づけた。
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▲ゲームから生まれた映像と音のハイブリッドな演出の形、元気ロケッツ。 |
佐藤氏とのトークセッションでは、クリエーティブに対する考えかたについてもさまざまな意見交換が行われた。両氏に共通しているクリエーティブの原型は、学生時代に抱いた思いや、頭の中で描いていた未来図であるという。そしてそれは、学生時代から10数年経ったいまも、当時持っていたテンションと変わらないまま持ち続けているそうだ。話は前後するが、このことに関して佐藤氏は講演の前半部分でも触れており「“できるかもしれない”とイメージし続けることが重要」と、自身の考えを述べていた。一方の水口氏も「当時やりたかったことは最近になってやっとできるようになってきた」と、佐藤氏の考えとほぼ同内容の意見を披露。クリエーティブを発揮するには諦めないことが大切である、それぞれ活躍する分野は違えど本質的な部分で両者の価値観は共有されているようだ。
そのほかに、コ・フェスタのテーマのひとつである国産コンテンツの世界発信についてもふたりは言及した。佐藤氏は、ひらがな、かたかな、漢字、英語が入り交じっても体裁が崩れない日本語表記のハイブリッド性の高さに注目し、「日本のデザイナーは出自(生まれなどの意味)的にミックスがうまい」と説明。水口氏も日本のアニメやマンガ、ゲームの影響を受けた外国人たちはカタカナなどの日本語表記を「クールに解釈している」と語り、日本に対する海外からの注目度の高さを強調。「グローバル化するときはグローバルの真似事をしていても、誰も振り向いてくれない」と、外にばかり目を向けず、まずは自分たちにいちばん近いところを見ていこうと呼びかけた。
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▲お互いアートへの造詣も深いということで、トークセッションの終盤はピカソやデュシャンといったアーティストたちの話題で盛り上がっていた。 |
※劇的3時間SHOWで『パックマン』の岩谷徹氏と『塊魂』の高橋慶太氏が競演
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