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愛するiPhoneのために作った自信作、『moon』の西健一氏×『Dの食卓』の飯野賢治氏が『newtonica』を語る

2008/10/3

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●夢はスティーブ・ジョブズの基調講演で『newtonica』が使われること

 西健一氏と飯野賢治氏。熱心なゲームファンには特別な響きを持つふたりのクリエーターによるトークショウが2008年10月2日にAppleStore銀座にて行われた。トークショウの内容はというと、西健一氏が企画・ディレクションを、飯野賢治氏が音楽を担当した(クレジットではKenji Enoと表記)iPhone、iPod touch向けタイトル『newtonica(ニュートニカ)』について触れつつ、iPhoneの魅力を語るというもの。タイトルはずばり、“愛するiPhoneのために飯野賢治と作ったゲーム『newtonica』”。気のおけない友人どうしである西氏と飯野氏とのトークショウは、芸人のような息の合った掛け合いを見ているよう。飯野氏がちょっぴりアブナイ話を振れば、西氏が苦い顔をしてたしなめたりと、会場からはつねに笑いが絶えなかった。ちなみに、名目上は“音楽担当”となっている飯野賢治氏だが、実際のところは音楽以外の部分でも深くゲームの開発に関わっているようだ。

▲西健一氏はスクウェア(当時)を経てラブデリックを設立。プレイステーション用ソフト『moon』やドリームキャスト用ソフト『L.O.L』を開発。スキップ設立後はゲームキューブ用ソフト『ギフトピア』やニンテンドーDS用ソフト『アルキメDS』などのディレクションを担当している。2006年にRoute24を設立後は、フリーランスとして活躍中。

▲飯野賢治氏は'94年にワープを設立。'95年には3DO用ソフト『Dの食卓』を発売。全世界で100万本のセールスを記録し、注目を集める。その後も『エネミー・ゼロ』や『リアルサウンド〜風のリグレット〜』などの話題作をリリースする。現在はフロムイエロートゥオレンジの代表取締役。


 なお、『newtonica』はフィールドシステムより発売中のアクションゲーム。降りそそぐ立方体のメテオが同じ色のフィールドに落ちるように、赤と青の球体状のフィールド“コア”をうまく回転させる。星マークで描かれた“スターパネルスフィア”を指でなぞると、コアが動く仕組みだ。うまくフィールドに落とし続ければライフゲージがいっぱいになりレベルアップすることになる。iPhoneとiPod touchの直感的なインターフェースを駆使したオリジナルタイトルだ。App Storeにて販売されており、価格は600円[税込]となっている。

星マークで描かれた“スターパネルスフィア”を指でなぞり、中にある球状の“コア”を動かす。降り注ぐ赤と青のメテオを、同じ色のフィールドにぶつけていくのだ。


 イベントは、音楽を担当した飯野賢治氏のスペシャルライブで幕を開けた。『newtonica』でプロデュースを担当したフィールドシステムの奥山一郎氏を司会役に招いてのトークショウでは、まずは西氏の口から『newtonica』開発のいきさつが語られた。それによると、そもそもふたりともiPhone好きで、iPod touchが出るやいなやまずは飯野氏が購入。購入が1ヵ月遅れた西氏のところに、ある日、飯野氏自作の壁紙が送られてきたという。「友だちから壁紙を送られてくることは滅多にないのですが(笑)、ミラーボールみたいな壁紙が送られてきまして、“これをぐるぐる回したらおもしろいね”という話をしていたんです。そしたら日本でもiPhoneが出ることになって、ゲームを作ろうかということになりました」(西)。

▲『newtonica』で音楽を担当した飯野賢治氏のスペシャルライブでトークショウの幕が開けた。ちなみにこうした場所に飯野氏が姿を見せるのは本当に久しぶりのこと。


▲こちらが飯野賢治氏が西氏に贈ったという壁紙。ふたりの友情が『newtonica』に結実したのかも!?


 開発でもっとも重視したのは、触っていて直観的に気持ちよく感じられることだという。ゲームとしてのおもしろさよりも気持ちよさを優先したと断言する飯野氏だが、『newtonica』に関しては、ふたりとも従来のゲーム制作作法からある程度距離を置いたようだ。

「スターパネルスフィアの色分けしている赤と青を、もっといろいろと分けたらおもしろいかも……とも思いましたが、そうすると昔のゲームスタイル(複雑にする方向性)にいってしまいそうなので、そういうのはなくそうと思いました」(飯野)

「レビューでは、ゲームを続けているとどんどん派手になったほうがいい、という意見もありました。確かに従来のゲームの文法を持ち込むという手もありましたが、僕らもアップルに対するこだわりがあって、iPhone向けには、いままでの文法で作るべきではないと思ったんです」(西)

 ふたりが追求したのは、アップルらしくiPhoneらしいタイトル。その結果、「『newtonica』はiPhoneにプリインストールされていてもおかしくない、アップル純正のようなタイトルになった(笑)」(飯野氏)。飯野氏は続けて、「アップルのイベントの基調講演で、スティーブ・ジョブズ(アップルCEO)が、いかにもゲームらしいゲームでプレゼンしているのを見て、“それは違うだろう!”と思いました」と辛口批評。でも、それは愛があるゆえで、アップル好き、iPhone好きを公言する西氏と飯野氏だが、ゲーム機としてのiPhoneの魅力をこう語った。

 「何よりすごいのは、62ヵ国で同時にリリースできること。通常ゲームでは日本で発売され、海外で発売され……と時間がかかるのですが、マスターアップ直後に1週間休暇を取ってベトナムから帰ってくると、全世界で発売されているというスピード感がすごい。アメリカやフランス、レバノンなどいろいろな国の人たちが『newtonica』を遊んでくれるわけです」(飯野)

 「iPhoneは、スペックがそんなにすごいというわけではないのですが、得意な分野がたくさんある。たとえばサウンド。iPhoneでは、サウンドを出すのにCPUの負荷がそんなにかからないんです。『newtonica』では4つの楽曲が順番にシームレスに流れるのですが、マルチトラックで4曲を同時に再生していて、適時音の強弱をつけているんです。それでも処理が落ちない。iPhoneは得意なことを集めて作った、可能性のあるハードですね」(西)

▲会場は立ち見客も出るほどの盛況ぶり。iPhoneのソフトは、ランキングの上位100とかに入れば認知度も上がりマスコミにも取り上げられるので売れ行きも上がるが、そうでないと認知もされず売れ行きも上がらない“格差社会”だと、きびしい現実を指摘するひとコマも。


 さて、トークショウでは続編である『newtonica2』の話題についても触れられた。プロデューサーの奥山一郎氏と「年内に3本を出すという口約束を交わしている(笑)」という西氏だが、3部作の構想は明確なようだ。

「最初の『newtonica』を真ん中にすると、『2』はもっとゲーム寄りにしようと思っています。一方『3』はもっとゲームから離すつもりでいます。ゲームの温度が同じだとおもしろくないので変えていこうと。『newtonica2』はプランニングがほぼできていまして、10月末には終わらせようと思っています」(西)

 西氏にしても飯野氏にしても、家庭用ゲーム機の分野では長い開発歴を誇るわけだが、iPhoneという新しいプラットフォームには大きな可能性と魅力を感じているようだ。

「iPhoneは誰でもクリエーターになれるマーケット。携帯電話の市場でアプリを出そうと思うとたいへんですが、iPhoneだったらパソコン1台とネット環境さえあれば、アップルと契約できる。それで世界中でソフトがリリースできるわけです。クリエーターに対して、“あなたはクリエーターであれ!”とこんなに強く主張しているマーケットはほかにありません」(飯野)

「App Storeでは、3日遅れでデイリーの売り上げランキングが届くのですが、仕事にならないくらい気になります(笑)。名も知らない国でも遊ばれているわけです。ダイレクトに世界中の反響がわかって、ある意味ゲームよりもゲームっぽい(笑)」(西)

 「日本以外ではあまりうまくいっていないことも含め(笑)、いろいろと手探り状態の自分たちが楽しい」という飯野氏。喜々としてiPhoneというマーケットに取り組んでいるようだ。最後に飯野氏が「スティーブ・ジョブズの基調講演で『newtonica』が使われるのが夢」とコメントすれば、西氏が「新人バンドの夢が武道館でライブをすることなのといっしょ(笑)」と、最後の最後までふたりのトークは会場を賑わせた。

▲こちらが続編の『newtonica2』。『Return of the Baby Bird』のサブタイトルが見えるが……。ファンの皆さんはお楽しみに。

 

▲フィールドシステムの奥山一郎氏(左)のもと、西氏(中央)と飯野氏(右)のトークも弾む。ちなみに『newtonica』の名前の由来は、落ちものパズルの一種なのでニュートンにエレクトロをかけ合わせた造語とのこと。ちなみにアップル初の世界初の携帯端末(PDA)のニュートンへのオマージュも込められている。『newtonica』のゲームオーバー時の音は、マッキントッシュの起動音をモチーフにしているとのことだ。



※『newtonica』の公式サイトはこちら
※フィールシステムの公式サイトはこちら

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