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カプコン稲船敬二氏による”ゲームヒットの法則”とは?
【CEDEC 2008】

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●「日本のゲームクリエーターの考えは甘い!」(稲船)

 

 2008年9月9日から都内にある昭和女子大学で開催されているCESA デベロッパーズ カンファレンス 2008(CEDEC 2008)。本イベントは、社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が主催する、国内最大級のゲーム開発者向けカンファレンスだ。その2日目となる2008年9月10日、カプコンの常務執行役員で開発統括本部長兼オンライン事業統括も務め、ダレットの代表取締役社長でもあるゲームクリエーター、稲船敬二氏による基調講演が行われた。

 

▲カプコンの開発のトップに就任したとき、「会社はドン底状態」だったという稲船氏。そこであえて攻めの姿勢を貫き、成功に導いたと自身で分析。「苦しいときほど攻めなさい。勝っているときほど攻めなさい」(稲船)という考えで、今後も攻めの姿勢を崩さず、世界のゲーム市場に打って出るという。

 

 『ロックマン』シリーズや『鬼武者』シリーズなど、数々の人気作品の生みの親として知られる稲船敬二氏。最近ではXbox 360やPCで展開している『ロストプラネット』やXbox 360用ソフト『デッドライジング』などを世界的なヒットに導いたことでも注目を集めている日本を代表するゲームクリエーターだ。今回の基調講演は”ゲームというビジネス、ビジネスというゲーム”と題され、稲船氏自身の数々の成功体験をもとにした持論が展開された。

 

 まず、稲船氏はここ数年のカプコンの好調ぶりの要因を”ゲームをビジネスに、ビジネスをゲームに”という考えに起因したものだと語り、集まったゲームクリエーターたちに「クリエーターは”おもしろいもの”、”こだわりがあるもの”を作ることが正義だと考え、ビジネスのことを軽視する傾向にあります。しかし、ゲームを作るうえで、ビジネス的なことを考えることは非常に重要なこと」(稲船)と切り出した。その理由として「クリエイティブなこととビジネス的な考えは180度違う。矛盾した相反する考えかたです。その矛盾を追及することでヒット作が生まれるのです」(同)と示し、「飲食店の場合、安い食材で美味しいものを作ればお店は儲かる。高い食材で時間をかけて美味しいものを作るのはある意味当たり前のことですから。これと同じようなことがゲームにも言えるんです」(稲船)と例を挙げて説明した。

 

 そしてその矛盾について、稲船氏自身はどのような解決策を持ってのぞんだのか? 稲船氏がカプコンの開発統轄本部長に就任したとき「会社としてドン底状態」(稲船)で、経営陣からは「(プロジェクトが失敗する)リスクを回避するためにも、人気シリーズの続編を作り、新しいものは極力作らないように」と言われたという。しかし、稲船氏は「その場では「ハイわかりました」と言っておいて、まったく逆をやりました(笑)」と会場の笑いを誘いながらも、「会社が困っているときは社員も疲弊している。疲弊しているときに疲れる命令をするとよけいに疲弊してしまう。だから、逆に新しい作戦を考えようと。そうすると皆がんばりますからね」と、開発陣のモチベーションを高めることも考えたうえで、あえて経営陣とは逆の発想を持って取り組んだことを明かした。

 

 「ビジネス的な観点から考えると経営陣は”絶対”を求めてきます。しかし、未来のことはどんなに考えたってわからないわけです。そういうときにはウソをつくことも大切。「絶対売れるのか?」と聞かれたときに、「絶対売れます」と自信を持って言っておけばいいんです。未来のことは誰にもわからないんですから。ただ、投資する側に対して、「売れるかどうかわかりません」じゃ通用しない。自分の考えを押し通すためには、自分の考えを信じるしかないんです」(稲船)

 

▲午前9時半から行われた稲船氏の基調講演。開場まえから人が長蛇の列を作り、立ち見が出るほどの盛況ぶり。

 

 続けて稲船氏は、「ここまでの話を聞いて「それって稲船だから経営陣に押しとおせるんじゃないの?」って思った人もいると思います。それはそう思った時点で負け。自分の考えを信じられていないんです」と断じ、「そういう意味で、日本のクリエーターはハッキリ言って甘えています」と、ゲームクリエーターに向けて厳しい言葉を投げつけた。畳みかけるように「経営のこと、ビジネスのことはわからない。だけど、いい作品は作れる。それだけで独立した人もいっぱいいますが、ヒット作は生み出せていません。それはビジネス的な観点からゲームのことを考えていないからなんです」(稲船)とし、「クリエーターと経営陣が合致しないと世界市場では勝負できない」(同)と、クリエーターたちと経営陣がバラバラな考えを持っていることが現在の日本のゲーム業界における大きな問題であると指摘した。

 

 実際稲船氏は、カプコンの株価やほかのゲームメーカーの株価などを、「株を持っていて儲けたいから気にしているわけではなく、世間の評価を知るため」にチェック。マーケティングや広告など、ゲーム開発とかけ離れた分野にも積極的に取り組むことで、そこからクリエイティブな発想やヒントを得られるという。

 

 「経営陣を避けるのではなく、積極的に関わっていくことが重要。経営陣との折衝は大半はケンカみたいなものですが(笑)。内部で戦い抜いてこそ、いいものが作れると信じることが大切です。「いい作品を作るのであれば制作期間が延びてもいい」という考えかたは、クリエーターの甘え。「いい作品を作るため」という感情的な理由ではなく、延ばすにしても、延ばしたことによってどれだけ販売本数が伸び、ブランド力を上げられるのかを示さないと駄目なんです」(稲船)

 

 最後に稲船氏は、「ゲームを作れる人だったらビジネス的な観点から考えられるはず。「数字とかって難しそう」って思っている人もいるかもしれませんが、そんなことはまったくありません」(稲船)と力説。「今回お話ししたことは、あくまで理論ですが、この4年間カプコンはこういった考えを持って成功を収めてきました。この理論を自分なりにかみ砕いて理解してもらえればと思います。そしてこういった考えを持ったカプコン、そして稲船が3年後、4年後にどれだけのことをやれているのかを見ていただければと思います」(同)と基調講演を締めくくった。

 

※CEDEC 2008の公式サイトはこちら

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