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ゲームレーティング制度のいまを探る――”ゲームレーティング研究会”が公開講座を実施

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●ユーザー、識者、メーカーなどの意見からレーティング制度の現状を分析

 

 特定非営利活動法人コンピュータエンタテインメントレーティング機構(略称:CERO)が実施している、家庭用ゲームソフトの“年齢別レーティング制度”に関する調査報告書、『テレビゲームとレーティングの社会的受容に関する調査報告書』が2008年8月5日に発売された。

 これを受けて日本デジタルゲーム学会(DiGRA JAPAN)は2008年8月29日、東京大学本郷キャンパスにて公開講座“「テレビゲームとレーティングの社会受容」調査レビュー〜テレビゲームのレーティングを社会はどう捉えているか〜”を開催。報告書の制作を行った“ゲームレーティング研究会”のメンバーを招き、社会におけるCEROレーティングの捉えられかたなどについてを語った。


▲平日の夜にも関わらず、公開講座には数多くの人が参加。レーティング制度への関心の高さがうかがえる。


 公開講座はゲームレーティング研究会のメンバーそれぞれが、自分の担当した調査を進めていくうえで明らかになった事実を、報告書の内容に沿う形で解説するという形で進行。まず最初に、“テレビゲームユーザーおよび青少年保護者へのグループインタビュー調査”を担当した渋谷明子氏(慶応義塾大学研究員)氏が登壇した。


▲グループインタビューによる調査の報告を行った渋谷氏。

 渋谷氏はいまから1年ほどまえにCEROからレーティング機構の社会的需要に関する調査依頼を受託。そこで、ゲーム関わりのある人の中からとくに重要と思われる“大人のゲームユーザー”、“子供、青少年、青少年保護者”というユーザー層をピックアップし、複数回にわたってグループインタビューを実施した。質問事項は共通のものが用意され、その内容は“テレビゲームの内容面でよい点、悪い点は?”というゲーム全般に関するものから、“レーティング区分に関して”、“CEROへの要望”といったある程度の知識を要するものまで全部で7つ。両者から上がってきた回答をすり合わせ「ふたつの層の相違点と一致点を捜す」(渋谷)ことで、レーティング制度の成果および今後の課題を明確にしていこうというわけだ。

 

 レーティング制度を語るうえで外せないのが“Z区分(18歳以上のみ対象のゲーム)”のタイトルで多く見られる暴力表現に代表される禁止表現の問題。これに関してはとくに盛んな意見交換が行われたようで、その内容も「法律違反にならない限り、Z区分禁止表現は撤廃してほしい」(大人のゲームユーザー層)、「禁止表現があると安心できる」(保護者)といった具合に、大人のゲームユーザーがレーティングを“きびしすぎる”と認識しているの対して、保護者は“野放し”と考えるなど、答えが真っ向から対立する結果に。またこれに関連して、独立した審査機関であり販売規制などの権限を持っていないCEROに対し、ほとんどの人が“自主規制団体である”という誤解を抱いている事実も、グループインタビューの中で判明したという。

▲グループインタビューではこちらの7つの質問が大人のユーザー層と子供、青少年、青少年保護者層の両方に行われた。


 

▲禁止表現があるため、ゲーム表現に萎縮が発生するのでは? といった問題提起もグループインタビューの中で行われた。


 肝心のレーティング制度そのものに関する意見はどうだろうか。渋谷氏によれば、こちらはZ区分問題とは対照的に「レーティングはよい。浸透していないのがもったいない」という意見に代表されるように、いずれのユーザーも高く評価している結果となった。これを受けて渋谷氏は、レーティング制度への社会的需要は高いが、その存在、内容はともにまだまだ認知不足であると分析。加えて、保護者の中から「禁止表現も、(Z区分タイトルを)未成年には販売しないということが徹底されれば問題ない」という声があることを挙げ、徹底した管理を推し進めることが、大人のゲームユーザーと保護者の双方が納得できる制度確立への近道であるとした。


▲そのほかに、“A区分(全年齢対象のタイトル)”が子供向けタイトルであるという誤認識が、とくに保護者層の中で見られることなども明らかに。渋谷氏はこれを受けて、幼児向け区分の新設を提案していた。

 

▲「レーティング制度に反対する識者はまったくいなかった」と語る新氏。

 続いて新清士氏(ジャーナリスト、IGDA日本代表)より“有識者へのインタビュー調査”に関する報告が行われた。「よくわかったのは、すべての識者が“ゲームの持つ影響力”に関して、まったく意見が共通していないということです」と切り出した新氏。ゲームは社会的な影響力を持つメディアか? という問題に対する見解は“ある”、“ない”とキッパリ断定する派と、“まだわからない”と慎重派にわかれているが、ご存知のとおりコレという結論が出ていないのが現状だ。その一方で、新氏によればレーティング制度の存在に関しては、いずれの識者もあって然るべきものである、と認識しているのだという。この傾向はさきの渋谷氏が紹介したユーザーの傾向と一致しているところが多く、非常に興味深いものであると言える。

 

 レーティング制度に対する意見の傾向こそユーザーと一致しているが、その内容に関してはユーザーとは大きく異なり、メーカーよりもCEROに対するものが目立った印象。新氏から紹介された識者の意見をいくつか挙げると「日本の表現にはZ区分の上に当たる区分があるが、これは世界的に見てもきびしい」、「CEROのレーティングは(メーカーからの)自己申告制なので、ちゃんと作品を見て判断してほしい」、「(レーティングの存在を)親が知らない、知っているのは子供だけ」、「消費者側から見れば業界の隠れ蓑的に、業界からは開発の足枷と捉えられている」など、かなり手厳しいものも複数見られた。

▲新氏の報告では、識者ならではの鋭い意見、きびしい意見が紹介された。また、暴力表現の問題に関する意見が完全に対立しているふたりの医師の話を挙げ、「これはものすごくおもしろいので、ぜひ実際に本を手にとって確認してください」と語った。


 佐々木輝美氏(国際基督教大学教授)と猪股富美子氏(お茶の水女子大学アソシエートフェロー)はそれぞれ、数字によるアプローチでレーティング制度に対する社会の反応を分析した。

 佐々木氏はCERO会員のゲームソフト会社および諸団体にこの1年間で送られてきたテレビゲームに対する苦情件数などの質問調査を実施。そこから、ゲーム会社へのレーティングに関する苦情は調査対象の全36社中8社が受け取り、諸団体に関しては全142団体中、1団体が受け取ったという結果が出たと報告した。佐々木氏は調査対象の絶対数が少ないことを考慮しつつも、レーティングに関する苦情は非常に少ないと判断。「マスコミの取り上げかたによって、ゲームは大変なものと捉えられてしまっているのかもしれない」と分析した。

 

 一方の猪股氏は、消費者の視点からレーティング制度の受け入れられかたを把握するために“国民生活センター”のデータベース、“PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)”を利用して、テレビゲームに対する苦情・相談の実態調査実施。その結果、PIO-NETに寄せられたすべての苦情・相談(670万件強)のうち、テレビゲームに関するものは1143件で、その中でレーティングに関するものはわずか7件しかないことが明らかになったと報告した。これを受けて猪股氏も佐々木氏と同じく、数字で見る限りメディアでのゲームの取り上げられかたと、消費者の反応には温度差が感じられるという見解を示す。一方でこの結果には調査方法による傾きの可能性もあると指摘。ゲームの内容に関しての苦情申し立ては、消費者センターよりも、メーカーなどに行ってしまう可能性が高いとし「苦情などの受け口が設けられていないのは制度不備。国民生活センターとは別のものを設けなければ、(正確な数字を)拾いあげるのは難しい」(猪股)と自身の考えを述べた。


▲数値の面からレーティング制度の現状を浮かび上がらせた佐々木氏(写真左)と猪股氏(写真右)。


 最後に登壇した坂本章氏(お茶の水女子大学教授、CERO理事)は、いままでに述べられてきた各メンバーの報告をもとに、レーティング制度の社会的受容の現況を総括。いわゆる問題のあるソフトは「社会的な盛り上がりに比べると、ソフト自体の数、苦情ともに少なく」(坂本)、レーティング制度を疑問視する声も少ないと結論づけた。一方で、CERO自体の認知度拡大、審査基準の情報公開の是非、自己申告制の改善検討など数多くの仮題があることも明言。今後のCEROの活動に対して、9つの提言を行った。なお提言の概要に関しては以下を参照してほしい。
 

▲坂本氏は全員の報告を総括。CEROへ9つの提言を行った。


提言1 CEROのレーティングに関する周知活動を行う

認知度の不足は、それぞれの調査を通じて、CEROレーティングについてもっとも盛んに指摘された問題点であるとされ、周知活動の推進はとりわけ強く薦められた。また、周知活動の方法に関する具体的な提案(マークをより目立たせる、テレビ・ラジオ・学校での告知など)もいくつか出された。

提言2 CEROマークのわかりやすさを追求する

CEROマークが目立たず、見にくいことはたびたび指摘され、とくにコンテンツディスクリプターは有効に機能していないと考えられることから、年齢表示マークとともに、改善のための工夫をすることが薦められた。

提言3 審査基準や判定理由に関する情報公開を進める

こうした情報公開には強い要請が見られ、それは強く望まれる一方で、それには慎重にならざるを得ない面もあるので、問題がないように配慮しつつ、適当なものから公開を進めることが薦められた。

提言4 審査基準のきびしさを緩和することについて前向きに検討する

審査基準の緩和については、それを強く薦めることはできないが、いくつかの理由から、少なくともそれは検討すべき問題に思われることが指摘された。とくに禁止表現については、もしZ区分に関する販売や貸し出しなの規制がしっかり機能するのであれば、審査基準の緩和が薦められるとされた。

提言5 D区分は廃止するなど、現在の区分見直しを検討する

現在の区分のありかたについては、多くの意見がさまざまに出されて、それゆえ、見直しは検討する意味があると指摘された。とくに、D区分の廃止には、反対意見が少なく、薦められる取り組みとされた。

提言6 幼児用の年齢区分を新設する

A区分の下位区分として幼児用の区分を設けることが提言されるとともに、とくに幼児区分においては、倫理的な側面だけでなく、ゲームソフトの難易度も加味することのニーズが大きいので、その方向性を検討することが薦められた。

提言7 審査方法の改善を検討する

問題箇所が録画されたビデオを審査するのではなく、実際にプレイをしてゲームソフトを審査することについて、それにともなうコスト問題の解決方法などを検討したり、研究を行うことが薦められた。

提言8 新しいメディアレーティングに取り組む

CEROがさまざまなメディアにおいても、CEROのシステムが活用されるように取り組むことの意義が指摘され、とくに携帯電話ゲームについて取り組みを進めることが薦められた。

提言9 CESAや流通企業が行う自主規制を促す

Z区分のゲームソフトを子供に接触させないように、CEROは、社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)や流通業界による自主規制の取り組みについて、適時、それを促すことが望ましいとされた。


▲公開講座終了後には来場者とのディスカッションも行われた。同人ゲームへの適応是非や、海外との規制の差についてなどに関する意見交換が行われた。


※DiGRA JAPANの公式サイトはこちら

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