HOME> ゲーム> eスポーツの国際シンポジウムが韓国で開催
●21世紀の情報化社会に生まれた新しいスポーツ、それが”eスポーツ”!
ここ1〜2年のあいだ、日本国内でも注目を集め始めているeスポーツ。このeスポーツの国際的なシンポジウムが、2008年8月9日〜11日のあいだ、韓国・釜山で行われた。今回は韓国eスポーツのプロリーグの最高峰である”新韓銀行プロリーグ2008”決勝戦と、”International e-Sports Symposium”ふたつの模様をお届けする。
eスポーツについて、まだなじみの薄い人も多いと思うので、その概念を説明しておこう。eスポーツとは”Electronic Sports(電子スポーツ)”の略称で、電子機器を用いたスポーツ全般を指すもの。おもに、競技性が高いビデオゲームを使用し、反射神経や瞬間的な判断力、戦略などを駆使した競い合いをスポーツとして捉えることで、従来のゲーマー像からの脱却を図るとともに、プレイヤーの心身を鍛え、スポーツマンシップ育成やコミュニケーション能力の向上を目指す、新しいスポーツだ。
人気のタイトルもチェスのようなマインドスポーツに近いものから、多人数どうしによる本格的なチーム戦、激しい身体運動を伴うものまで、さまざまな特徴を持っている。昨今話題となっているシリアスゲームと同じく、ゲームをプレイする新しい方法論(スタイル)として、世間一般に広く認知されつつある。
世界各国でeスポーツは、政治、ビジネス、教育、文化など、さまざまなシーンに溶け込み始めている。eスポーツ先進国である韓国は、eスポーツの競技会やプロ選手の認定を行う団体が設立され、中国では、2003年に中華国家体育総局がeスポーツを99番目のスポーツ競技項目として登録された。また、数多くの代表的なeスポーツ大会で本戦開催国を毎年変更するホストシティ制を採用するなど、対戦型競技だけでなく、世界各国との文化交流の側面も併せ持っているのだ。
そんな中、2007年、中国・マカオで行われた第2回アジア室内競技大会でeスポーツは、フットサル、ビリヤードなどと同じく、室内スポーツの正式種目として採用された。残念ながら日本からの代表選手は派遣されなかったが、次回のアジア室内競技大会への選手派遣を目標に、日本唯一のeスポーツ統括団体”日本eスポーツ協会設立準備委員会”が設立されるなど、eスポーツは確実に日本国内でムーブメントを呼びつつある、新しいスポーツと言える。
●韓国最高峰のeスポーツのプロリーグ”新韓銀行プロリーグ2008”
新韓銀行プロリーグ2008とは、韓国eスポーツ協会が運営するeスポーツのプロリーグで、新韓銀行がメインスポンサーを務めている。そして、12のプロチームが参加し、韓国でもっとも人気の高いリアルタイムストラテジーゲーム『StarCraft』を使い、白熱した戦いがくり広げられている。その決勝戦が2008年8月9日、国際eスポーツシンポジウムの前日に行われたのだ。
決勝戦が行われたのは、韓国・釜山の広安里(クァンアルリ)にある海水浴場。サムスン電子がスポンサーを務める古豪チーム”KHAN”と、7シーズンぶりに決勝進出を果たしたというongamenetがスポンサーを務めるチーム”SPARKYEZ”による試合は、各チームの代表選手を6人ずつ出し合う形(シングル戦:4試合、2on2:1試合)で行われた。試合は、第1試合を”SPARKYEZ”が先取したものの、残り4試合で”KHAN”が”SPARKYEZ”を圧倒。去年行われた新韓銀行プロリーグ2007に続き、”KHAN”が2連覇を達成した。優勝チームにはトロフィーと優勝賞金8000万ウォンが送られ、MVPになったKHANのイソンウン(firebathero:T)選手にはトロフィーと賞金200万ウォンが贈られ、幕を閉じた。
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▲テレビなどのeスポーツ専門チャンネルで放映されているにも関わらず、生でプロ選手を見たいファンや観客約10000人が釜山広安里の海水浴場に集結! この光景はまさに圧巻と言える。 |
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▲アイドルと同じような扱いであるeスポーツのプロ選手。そのため女性ファンの姿も多く、スポーツの応援というよりアイドルのコンサートのようなイメージが強い。 |
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▲優勝したサムスン電子のチーム”KHAN”は、プロチームの創設時に誕生したチームのひとつ。チームにはプロ選手だけでなく、チームを率いる監督やコーチもおり、スポーツチームと同じような人員構成となっている。 |
韓国では、この新韓銀行プロリーグ以外にも数多くのeスポーツイベント・競技会が開催されているが、そのほとんどで『StarCraft』が採用され、プロチームに所属するプロ選手が熾烈な戦いを行っている。そして、これらのeスポーツイベントはケーブルテレビのゲーム専門チャンネルやネットワーク放送などでつねに放送されており、韓国国民の認知度はとても高い。その影響から、韓国の子供がなりたい職業ランキングで1位はサッカー選手だが、2位にeスポーツのプロ選手がランクインするなど、韓国においてeスポーツは通常のスポーツ以上の人気を博している。
そんな注目度の高いイベントだけあり、特設ステージが建てられたビーチには約10000人近く(!)の観客・ファンが集結。ファンは、それぞれのチームのユニフォームを身に着け、太鼓などの鳴り物とともにスティックバルーンを叩いて選手たちに声援を送る。さらに風船を飛ばしたり、応援席いっぱいに巨大な旗を広げるなど、サッカーや野球と同じようなスタイルで応援合戦をくり広げていた。そして、そんなファンの声援に答えるような演出が随所に見られた。それぞれのチームの代表選手がモーターボートに乗って登場したり、勝利後、水着1枚になって海に飛び込むなど、派手なパフォーマンスで盛り上げ、ファンを虜にしていた。
●International e-Sports Symposium最大の課題は”国際eスポーツ連盟の設立”!
韓国eスポーツ協会と韓国ゲーム産業振興院が共同主催し、文化体育観光部と釜山広域市、釜山情報産業振興院が後援する、eスポーツの国際的なシンポジウム。今年で3回目の開催となるこのシンポジウムが、韓国釜山の”BEXCO(ベクスコ)”という多目的ホールで行われた。”Make
the One e-Sports World”のスローガンのもと、参加した9ヵ国のうち韓国、ドイツ、デンマーク、オーストリア、そして日本と、5ヵ国のeスポーツ協会の代表者が登壇し、国際eスポーツ連盟の設立に向け、プレゼンテーションを行った。
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International e-Sports Symposium プレゼンテーション内容 |
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1:韓国eスポーツ協会「国際eスポーツ連盟の組織構成及び運営方案」 国際eスポーツ連盟設立に向けた4つの課題(組織構成・標準化・人材育成・競技会)について |
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2:株式会社電通「スポーツコンテンツとしてのeスポーツ」 スポーツコンテンツから見たeスポーツの課題・問題点について |
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3:デンマークeスポーツ協会「審判の教育と選抜の体系」 eスポーツ審判員の資格・類型・教育・標準化について |
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4:オーストリアeスポーツ協会「eスポーツの選手分類とランキング体系」 eスポーツ選手の分類・資格と専門課程・国際ランキングのシステムについて |
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5:ドイツeスポーツ協会「eスポーツのゲームとその規則の選択方法及び標準化する方法」 |
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6:韓国eスポーツ協会「国際eスポーツ連盟の構造と役割」 国際eスポーツ連盟の組織構成案・役割及び課題・世界大会、総会の開催について |
日本からは、日本eスポーツ協会設立準備委員会の委員長補佐である平方彰氏が登壇した。が、今回はさまざまなスポーツコンテンツを扱う電通の企画業務推進部長という立場から見た「スポーツコンテンツとしてのeスポーツ」という内容で、国際eスポーツ連盟設立への課題についてプレゼンテーションを行った。
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▲日本eスポーツ協会設立準備委員会ではなく電通という立場で登壇した平方氏。グループディスカッションでは、世界のスポーツはグリーンべニューで行われていると指摘。また、ゴルフを例に挙げ、世界共通ルールに従い、さまざまなメーカーが商品を製造していることに触れ、eスポーツの国際的なルールの整備の必要性を説いた。 |
まず平方氏は、eスポーツの現状について「世界を見るとレクリエーションスポーツの概念が強く、eスポーツ文化が根づいていない国では、単なるゲームとしてしか捉えられていないのが現状。全世界に向けてeスポーツがスポーツだという概念を植え込み、チャンピオンシップスポーツとして魅力あるコンテンツに発展させることが、eスポーツのさらなる普及・発展につながる」と語った。
つぎに、eスポーツの問題点について、国際組織がない、地域組織がない、各国単位の組織体制が整っていないという、3つの問題点を提示。さらに、競技会の開催や採用タイトルがゲームメーカーやスポンサーの意向で左右されたり、ゼネラルルールに基づいた競技タイトルがないことを挙げている。
そして、これらを解決するためには「eスポーツを国際的に統括する国際連盟の設立、ワールドスタンダードの確立、ゼネラルルールに基づいたソフトの開発という、3つの課題解決が必要。そのためには、ゲームメーカーやパブリッシャーの協力が不可欠」と、その重要性を訴えた。
そして平方氏は、実際のオリンピックの組織構造を例に挙げ、「オリンピックの主催者である IOCに国として加盟しなければオリンピックに参加できないのがポイント」と語った。さらに、陸上と水泳の総括を見せ、「国際連盟は、オリンピックとは別に国際連盟主催で世界大会などの国際大会を開催・実施している。そして国際連盟が各競技団体をまとめることによって、初めて世界標準ルールを作り、世界大会を開催している」と述べた。
また、スポーツコンテンツの収入構造から「スポーツイベントにある放送権、興業権、マーケティング権という、3つの収入源・権益を確保できるものこそが、世界大会を開催し、世界中のスポーツファンに夢と感動を与えていくスポーツコンテンツではないだろうか」と提示している。
さらにeスポーツイベントの問題点について平方氏は、「現在のeスポーツは各イベントを通じた世界的な広がりはあるものの、それぞれが独立した”点”の状態。世界的にヒットしているように見えても、実際はその国や都市でしか盛り上がらない。映画やコンサートと同じようなエンターテイメントになっているのが現状」と語った。そして「だからこそeスポーツの目標として冒頭に挙げた3つの課題解決を行い、eスポーツが21世紀の情報社会が作った”エンターテイメントスポーツコンテンツ”という新しいジャンルを確立し、それを目標として行かなくてはならない。具体的にはワールドスタンダードの確立、eスポーツ競技の普及、スポーツの未来を背負うジュニアの育成とその対策が必要だ」と述べた。
最後に平方氏は、2007年10月に中国マカオで開かれた第2回アジア室内競技大会で、eスポーツが競技として採用されたことについて言及。問題点として「突然の採用タイトルの変更は、ルールに違いが生じるため参加者の混乱を招く。さらに主催者側の理由で大会ごとに採用タイトルが変わるのは、競技者のレベルや練習期間に差が生じ、前回優勝者がつぎの大会に出場できなくなる危険性をはらんでいる」と指摘した。その一方、レースゲームによる競技の際、選手が使用する入力デバイスの違いについて触れ、「統一されたルールのもと、三者三様のやり方で同じ種目を競い合う。このようなeスポーツの持つ特徴を最大限に活かしてこそ、eスポーツが、新しいスポーツコンテンツとして、さらに発展していくのではないだろうか」と提言し、プレゼンテーションは終了した。
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▲国際eスポーツ連盟の発足、そしてeスポーツの国際的な普及に向け、世界各国のeスポーツ団体・関係者がついに動き始める! |
その後、各国のeスポーツ関係者によるグループディスカッションで活発な議論が取り交わされたが、国際eスポーツ連盟の設立には、さまざまな課題があることが浮き彫りとなった。しかし、国際組織の設立やワールドスタンダードの確立、審判育成やランキング制度の導入など、話の内容は一貫してゲームをスポーツとして行う、というところに集約されていた。今後、採用タイトルを制作するゲームメーカーや関連企業、政府などとの協力体制を築くことができれば、eスポーツはまったく新しい分野として、確立されていくはずだ。
●国際eスポーツ連盟の調印式に日本eスポーツ協会設立準備員会が参加しない理由とは?
最終日には、このシンポジウムの最重要課題である国際eスポーツ協会発足のための各国関係者たちの調印式、韓国eスポーツ協会会長キム・シンベ氏の国際eスポーツ協会発足宣言及び記者会見が、2005年にアジア太平洋経済協力首脳会談が開かれた”ヌリマルAPECハウス”で開かれた。
主催国である韓国を筆頭に、オーストリア、オランダ、スイス、台湾、デンマーク、ドイツ、ベトナム、ベルギーが調印式に参加。日本、中国、イギリスはオブザーバーとして参加したたため調印は行わなかった。また、2008年11月に韓国・ソウルで国際eスポーツ連盟の設立総会が行われ、定款や初代議長の選出が行われること、そして国際eスポーツイベントが開催されることが発表された。
日本eスポーツ協会設立準備委員会が参加しなかった理由として、日本eスポーツ協会設立準備委員会の委員長補佐である平方氏に話を聞いたところ、「事前に韓国側から国際eスポーツ連盟への調印の話を聞いていたが、日本eスポーツ協会はまだ準備段階であり、組織立っていない状態。委員長の西村(康稔氏:衆議院議員)とも相談した結果、今回の調印は見送ろうということでシンポジウムに参加した。現場でも韓国の事務総長から強い要請を受けたが、サインするには至らなかった。韓国が主張する国際eスポーツ連盟設立への意図、意義には賛同できるが、経済基盤やタイトル選定など、具体的な施策や説明がなかったのは残念なことだった」と語っていた。
筆者は前回のシンポジウムにも出席したが、今回の国際eスポーツシンポジウムの開催、そして国際eスポーツ連盟の発足は、前回と比べても内容が濃く、eスポーツというエンターテイメントスポーツコンテンツを形作るための重要な一歩を踏み出したと感じた。また、シンポジウムに参加していたベトナムeスポーツ協会の関係者によると、2009年にベトナム・ハノイで開催が予定されている第3回アジア室内競技大会で、eスポーツがスポーツ種目として採用される動きがあるとの話を聞くことができた。このような動きがより具体化すれば、今後、日本国内でもeスポーツという言葉をより多く耳にし、数多くの競技会・イベントが開催されるようになるはずだ。そして、eスポーツというゲームの新しい潮流に乗るために、国内唯一の統一団体である日本eスポーツ協会設立準備委員会をはじめ、ゲーム業界全体でeスポーツを真剣に取り組んでいく必要があることを感じさせるシンポジウムだった。 (文責:小里浩一【マグナマ吟】)
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