Xbox 360用ソフト『ロストオデッセイ』の開発で失敗したこと全部お教えします
GDC 2008
●試行錯誤のうえに、『ロストオデッセイ』は成立する
日本では2007年12月6日に発売された坂口博信氏製作総指揮のRPG『ロストオデッセイ』。その北米版が先週発売されたのに合わせる形で、2月21日のGDC
2008開催4日目に、“『ロストオデッセイ』の開発を振り返る 〜日本式と欧米式の融合〜”と題された講演が、フィールプラスの代表取締役社長、中里英一郎氏により行われた。フィールプラスは『ロストオデッセイ』の開発を担当した会社で、中里氏による講演は『ロストオデッセイ』の4年近くにわたる開発の成功を失敗を振り返るという、なんとも直球な内容の講演となった。
|
|
|
▲「『ロストオデッセイ』はロード時間が長いと言われていますが、それでも発売ひと月まえに比べると30パーセントくらいロード時間が短くなっているんですよ」と率直な裏話を披露。 |
もともとはマイクロソフト内部の開発チーム(いわゆるインハウス)として、2004年にスタートした『ロストオデッセイ』のプロジェクト。フィールプラスはその開発を引き継ぐ形で、「『ロストオデッセイ』を開発するための会社」として、2005年に設立された。設立当初は、マイクロソフトから出向という形でやってきたスタッフが多かった。「マイクロソフトの中で、ゲーム制作のプロを集めるのはつらかったのと、マイクロソフトだと人件費がかかるから……」と、中里氏はフィールプラスを設立した理由を振り返った。以降、『ロストオデッセイ』はマイクロソフト(プロジェクトマネジメント)、ミストウォーカー(ストーリー、音楽、キャラクターデザイン)、フィールプラス(開発の実作業)の3者で開発を行っていくことになる。
「最初の1年から2年はハードのない手探りの状態で開発を進めていましたね。2006年6月にプレイアブルロムを作り、2006年冬に配布したのですが、ソフトの発売から1年半もまえに完成度が高くない状態でプレイアブルロムを出したということで、早すぎた感がありました。『ロストオデッセイ』ではトレーラーを7本作ったのですが、時期を見て順次発表していきました」(中里)
『ロストオデッセイ』の開発に当たって、中里氏はチームを3つに分けたという。ゲーム本体を作る部隊の“ゲームディレクター”と、ムービー専門のチーム“プロダクションマネージャー”、そして前述のふたつの部隊に素材を提供する“アートディレクター”だ。中里氏はそれらの作業分担を踏まえつつ、「何がうまくいって、何がうまくいかなかったか今後のための反省も踏まえ、成功と失敗を検証し」ていった。以下、おもなものを紹介していこう。
|
『ロストオデッセイ』の開発での成功と失敗 |
|
|
【ゲームデザイン】 |
|
|
Good |
ゲームシステム:ゲームシステムはオーソドックスなターンベース性だったが、伝統的なRPGに慣れているクリエーターが多く、開発は安心して任せられた。ストーリーテリング:重松清の“1000年の夢”が秀逸。ゲームの進行とは関係がないが、物語い深みが増した。テキストベースでいくときには反対意見もあったが、結果としていい方向に作用した。 |
|
Bad |
時期:プロジェクトの始動が早すぎた。プラットフォームがないうちにどんどん人数を増やしてしまった。最初は絞るべきだった。 |
|
【アートプロダクション】 |
|
|
Good |
キャラクターとクリーチャーの制作:キャラクターとクリーチャーなどが秀逸。比較的時間があったので、細かい調整をできた。 |
|
Bad |
背景の制作:背景は300枚作ったのだが、大切な風景と2〜3秒で通り過ぎるところを、同じくらいの力の入れぶりで制作してしまった。 |
|
【カットシーン】 |
|
|
Good |
ビジュアルディレクター:ゲームデザイナーやアートデザイナーのほかに、ハリウッドで仕事をしていたビジュアルデザイナーを加えたのだが、すばらしい出来栄えだった。 |
|
Bad |
優先順位づけ:300カットを超えるシーンを4種類プリレンダリング、Aイベント(フェイシャルアニメーションあり)、Bイベント(フェイシャルアニメーションなし)、スクリプトイベント(いわゆる立ち絵)に分けて制作した。まず、Xbox 360の特性をわきまえずに制作に入ったのだが、プリレンダリングはいらなかったかも。あと、Aイベント、Bイベントに関しては、クリエーターは違いを意識して制作していたが、ユーザーの方は区別がつかなくて、イベントにバラツキを感じたかもしれない。Bイベントをなくして、Aとスクリプトイベントに振り分けたほうがよかったかも。 |
|
【テクノロジー】 |
|
|
Good |
アンリアルエンジンを使ったこと:ツールが使いやすく、レンダリング技術ではアンリアルエンジンがいちばん先を行っていた。PCバージョンをベースにしてXbox 360に移行するのが容易だった。 |
|
Bad |
アンリアルエンジンを使ったこと:ベテランの作り手が古くからの作りかたをアンリアルエンジンに当てはめようとして失敗した。あとは、Xbox 360、『ロストオデッセイ』、アンリアルエンジンと3つの開発途上のものが結びついてしまってたいへんだった。『ロストオデッセイ』の開発中には、大規模なアップデートが3回あったのですが、これがたいへん。まるで別のプラットフォームに移行するような感覚で、すべてのプログラマーの仕事をとめて、4〜6週間かかった。 |
|
【プロジェクトマネージメント】 |
|
|
Good |
マイルストーン(プロジェクトのチェックポイント):マイクロソフトのマイルストーンに対する考えがよかった。『ロストオデッセイ』では2〜3ヵ月に1回マイクロソフトに途中経過を報告することになっているが、納品時につぎのマイルストーンの予定を提出しなければならない。そのため、細かい作業まで3ヵ月さきを把握できるようになる。長いプロジェクトだと中弛みが生じがちだが、3ヵ月ごとの緊張感が逆によかった。 |
|
Bad |
組織:初めてのプロジェクトなので、チームに一体感ができるまでに時間がかかった。いざこざもあり脱落者もあった。 |
|
【ローカライズ】 |
|
|
Good |
システムの構築:日本発でここまで世界同時期に出せたタイトルはほかにはない。マスターアップの1年まえにマイクロソフトと打ち合わせをして、フィールプラスになるべく負担がかからないようなローカライズツールを作った。9カ国のローカライズ担当に最大限協力してもらった。 |
|
Bad |
最後のあまりにもたくさんの修正:これはしかたがない。 |
|
【チューニング&テスト】 |
|
|
Good |
データベース:全世界のバグチェックはすぐに翻訳されてデータベースとして管理された。そのバグに優先順位をつけて、しっかりと規律修正できた。 |
|
Bad |
最終段階での変更:坂口さんはある程度形が見えてきてからチェックされる方。ただ、言われたことを直すとよくなることはわかっていたので、みんな最後までつきあってこられた。 |
中里氏がアンリアルエンジンの苦労話を語っていると、参加者がしきりとうなづき出すなど、洋の東西を問わず、開発者が抱える問題はある程度共通しているようだ。『ロストオデッセイ』の違った一面が垣間見られた中里氏のセッションだった。
|
|
|
▲『ロストオデッセイ』の開発は2004年からスタートした。最初の1〜2年は手探り状態だったとか。 |
GDC 2008の関連記事
- 【動画追加】極秘パーティーで明らかになった、エレクトロニック・アーツ秘蔵の3タイトル - 更新日時:2008年3月1日
- 名作ゲームの音楽をオーケストラで。”Video Games Live @ GDC”が開催 - 更新日時:2008年2月24日
- 任天堂のネットワークのキーマンが語るWiiメニューの企画、デザイン、Wiiウェア - 更新日時:2008年2月24日
- ”新MMORPG”でも使用、スクウェア・エニックスの開発ツール“クリスタルツールズ”の魔力とは? - 更新日時:2008年2月24日
- “ゲームの神様”大いに語る、Xbox 360用ソフト『Fable 2(フェイブル2)』に不可欠の3つのヒミツ - 更新日時:2008年2月23日
- アートディレクター、上国料勇氏の『ファイナルファンタジー』美術の時間 - 更新日時:2008年2月23日
- 桜井政博氏が語る、『大乱闘スマッシュブラザーズX』のキャラはこうして命を吹き込まれた - 更新日時:2008年2月23日
- スピルバーグ初のゲーム『BOOM BLOX』は宮本茂氏との出会いから生まれた - 更新日時:2008年2月23日
- Wiiウェア『小さな王様と約束の国』 でスクウェア・エニックスの新たな開発スタイルを開拓 - 更新日時:2008年2月22日
- Xbox 360用ソフト『ロストオデッセイ』の開発で失敗したこと全部お教えします - 更新日時:2008年2月22日
特別企画・連載
2種類のPVを大公開!『アサシン クリードII』!
暗殺者となり、発見されないようにターゲットを始末していくアクションゲームの最新作。本作の見どころは、前作から大幅にパワーアップしたアクション性。そして、15世紀のイタリアを再現した箱庭の完成度の高さ。本記事では、その魅力の数々をお伝えしていこう。
チュンソフトが送る新作サスペンス!『極限脱出 9時間9人9の扉』!
『かまいたちの夜』、『428 〜封鎖された渋谷で〜』などのサウンドノベルを生み出したチュンソフト。そして、驚愕のラストで話題を呼んだADV『Ever17 -the out of infinity-』の打越鋼太郎氏。この両者がタッグを組んで送り出す、新作ADV『極限脱出 9時間9人9の扉』。ファン必見の本作に迫ります!
『ペルソナ3ポータブル』のバトルを楽しむコツがあります!
PSP用ソフト『ペルソナ3ポータブル』の魅力を、元気ハツラツ系の女性主人公“月光ルナ子”がガイドする特設ページ“ペルソナ通信”。本日の更新では、敵と戦う心の力“ペルソナ”を使いこなすコツを紹介します!
バスタイムイベントもあるんです!『ルミナスアーク3アイズ』!
“デイタイム”でメインシナリオと戦闘を進め、“アフタータイム”でイベントをこなす。本作は、そんな王道スタイルのシミュレーションRPGの最新作だ。そんな本作の最新情報をお届けしちゃうぞ!!
伝説の武器を巡る戦いがいま幕を開ける!『闘真伝』!第2回更新!
数十年に一度行われる"真武節〜シーズン〜"で最強の"闘真器"を決める闘いが始まる……。『闘真伝』は、こうした舞台設定のもとで闘う対戦アクションゲームだ。ファミ通ドットコムでは、そんな本作の内容を全3回に分けて詳しく解説していく。
最強のクラブを創り上げろ! 『J.LEAGUE プロサッカークラブをつくろう! 6 Pride of J』!
『サカつく6』は、自分が創り上げたクラブで、Jリーグ制覇を目指す人気SLG『J.LEAGUE プロサッカークラブをつくろう!』(以下、『サカつく』)シリーズ最新作。本作のゲームの流れを確認しながら、新要素の数々を紹介する。
古きよき時代のRPGを現在の最新技術で創り出す! 『光の4戦士 -ファイナルファンタジー外伝-』!
王様や魔女、ドラゴンが登場する王道ファンタジーの世界観、オーソドックスなバトルシステムなど懐かしいプレイ感覚が満載の本作。『FF』シリーズのファンはもちろん、これまでにプレイしたことがないという人も楽しめる作品になっている。
この記事の個別URL
ソーシャルブックマーク
TVゲームニュース
- 更新日時:2009/09/18 01:30
私立ギャルゲー学園 第3回は『アイマスDS』を特集!!
【ファミ通DX出張版】
携帯サイト“ファミ通DX”のコーナー“私立ギャルゲー学園”では、発売したての『アイマスDS』を特集! アイドルたちが輝きを放つステージを見よ! - 更新日時:2009/09/18 00:00
週刊ファミ通企画:読者によるゲーム採点 USER'S EYE

- 更新日時:2009/09/18 00:00
立花宗茂が新規参戦! Wii版『戦国無双3』最新情報を公開
2009年11月19日に発売が予定されているWii用ソフト『戦国無双3』の最新情報を公開。新規参戦が決まった立花宗茂を始めとしたさまざまなキャラクターや、ステージ上のギミックなどを紹介。
- 更新日時:2009/09/17 23:48
プレイステーション3&Xbox 360で体験版配信スタート『FIFA10 ワールドクラスサッカー』
- 更新日時:2009/09/17 23:23
『ルーンファクトリー3』完成記念発表会に声優の福井裕佳梨が登場
- 更新日時:2009/09/17 21:00
アイドル視点で描かれるシリーズ最新作『アイドルマスター ディアリースターズ』
【プレイ・インプレッション】 - 更新日時:2009/09/17 19:41
『AngelLoveOnline』“きかいの王国”で天空ステージへ
- 更新日時:2009/09/17 18:03
PS3向けに発売! 『スターオーシャン4 -THE LAST HOPE- INTERNATIONAL』


