HOME> ゲーム> Wiiウェア『小さな王様と約束の国』 でスクウェア・エニックスの新たな開発スタイルを開拓
●少数精鋭、短期間の開発がクリエーターの選択肢の幅を広げる
Wiiの新作タイトルがダウンロード販売されるWiiのオンラインサービス”Wiiウェア”。2008年3月から始まるWiiウェア向けオリジナルタイトルとして、スクウェア・エニックスが配信予定の『小さな王様と約束の国 ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』をテーマにしたセッションが行われ、プロデューサーの土田俊郎氏、プログラマーの白石史明氏が登壇。Wiiウェア向けのタイトルの開発プロセス、Wiiウェアのゲーム作りから得たことなどが話された。
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▲講演のまえに、『小さな王様と約束の国 ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』の映像が上映された。 |
土田氏は、「私は現在、『ファイナルファンタジーXIII』でバトルシーンのデザインに携わりながら『小さな王様と約束の国』では商品化に向けたプロデュースを行っている立場です。その私から見てこの作品は、ここ数年のスクウェア・エニックスのゲーム開発とは異なるスタイルでした」と語ったが、ではどのようにして『小さな王様と約束の国』が誕生したのだろうか?
「Wiiウェアは気軽にダウンロードして遊べるゲームということでメモリーに制限があり、スクウェア・エニックスがこれまでに培ってきた独自の世界観をハイクオリティーCGで表現する開発スタイルはそぐわない。ハードやメディアが進化する中で、それらをフルに行かしてゲームを作ってきた開発者にとっては、Wiiウェアは新たな挑戦だと思う」(土田)
『小さな王様と約束の国』は、土田氏ら開発チームにとって新たな挑戦になった。ストーリーメインのゲームが中心のスクウェア・エニックスでは、まずシナリオやキャラクター、世界設定を決めてからプロジェクトを始動。その後、本格的なコンテンツ制作のためにセッションごとに作業を分担する。しかし、「この開発スタイルでは作られるゲームの内容が限定されてしまいます。開発するゲームにはある程度のバリエーションを持たせないと、開発者の力も限定されたものになり 多くのユーザーの希望にも応えられなくなるのではないか? 私は開発者のひとりとして、ゲームデザイン、開発スタイルにおける新しい試みをしなければと感じていました」(土田)。
開発プロセスについて注意した点を、「新しい試みをする以上、リスクは最小限にしなければいけない」と挙げた土田氏。「大規模プロジェクトが多いスクウェア・エニックスは、リスクに対する配慮が企画時のモチベーションに押されてどうしても失われがち。それがあとあと開発プロセスの各ポイントでみずからの選択肢を奪っていくことがある」と、開発プロセスに大きな落とし穴が存在することを説明した。
また、『小さな王様と約束の国』を開発するにあたり、プログラマーの白石氏から”少人数短期プロジェクト”が提案され、「実際に開発に入っても画面の表現手法やCGリソースの作り込みはゲームの全体像ができるまで行わない」という条件で開発チームを結成した。土田氏は手始めに、ゲームキューブ版『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』のプロデューサーに試作品を作るためにCGリソースを借りることに。これにより試作でコストをかけずに、プロデューサーはゲームデザインが固まるまで開発費を最小にでき、浮いた分を商品化など重要なことにつぎ込めるという。
商品化に際して意識したことはバーチャルコンソールとの差別化。「ユーザーがすべてWiiをインターネットに接続している前提で企画立案が可能であり、それを活かしたものを盛り込む。詳細は今後のプロモーション計画が整うまで言えませんが、その企画を盛り込むことで、バーチャルコンソールのゲームと差別化している」。土田氏は続ける。「もちろんグラフィックの面でバーチャルコンソールとの差別化は当然なんですが、グラフィックを意識してWiiのパッケージソフトの表現力を目指してしまうとコストが上がってしまう。そこを注意した」と加えた。また、Wiiウェアの中での作品としての個性も重要とし、「キャラクターや独特の世界観の提示など、これらの要素はユーザーがスクウェア・エニックスに求めていることだと思います」としながらも、この分野に関しては従来のパッケージソフトと張り合うような意識をスタッフに持たせないことが重要という。
満足の作品を作りつつ、開発費をどうやって圧縮するのか。土田氏が口にしたのは、多くの作品やスタッフを抱える会社ならではの”スケールメリットの利用”をあげた。『小さな王様と約束の国』も既存作品(この場合は『クリスタルクロニクル』)を使って世界観を補強した。スタッフに関しては若手を起用しながら、ベテランにはスーパーバイザーに回ってもらう。これにより若手を育成するとともに、ベテランが関わることで開発期間が短縮できたという。他プロジェクトからのリソースと情報の共有も開発をスムーズに進行させることで、開発コストを抑えた。「『小さな王様と約束の国』を作ることになったとき、プログラマーの白石から”少人数で短期間開発”を提案されましたが、そんな夢のような話は最初は信じていなかった」という土田氏だが、ここまでに語られた要素が合い間って現実に向かっている。
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▲スクウェア・エニックスのプログラマー白石氏(左)とプロデューサーの土田氏(右)。 |
『小さな王様と約束の国』の開発によって、「クリエイティブスタッフが、新たな開発スタイルの選択肢を得た」と土田氏。人は成功するとその方法以外のやりかたをしなくなる。そこからゲームを作ろうとすると、どうしてもおなじ作りかたになってしまう、というわけだ。『ファイナルファンタジー』のようなハイエンドな作品は、分業体制で作る場合、スタッフは1〜4年という期間で集中した仕事ができるためスキルアップに繋がる。しかし、大作と呼ばれるゲームは最大200人ものスタッフが関わっており、個々がゲーム全体を把握しながら仕事はできない。対するWiiウェアは容量が制限されたゲームを少人数で作るため、少人数ゆえのマルチスキルを高めることができる。各スタッフが作品の内容に深い理解をしたうえで参加することが求められ、参加意識が高まり、責任と発言権が生まれる。クリエーターの幸せは、自分の能力に自信を持つこと。能力を発揮する場を選べること。そして正統な評価を受けることだと土田氏。
「我々は大作ゲーム、圧倒的容量のパッケージソフトを作り、販売するというビジネススタイルを持っています。が、そのビジネスモデルへの依存がクリエーターのスタイルを縛ることになるのは、開発会社としては問題だと思います。Wiiウェア、『小さな王様と約束の国』がクリエーターの選択肢を広げるプロジェクトになればいいと考えています」(土田)
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▲さまざまな開発秘話が語られたのち、スクリーンに”『小さな王様と約束の国』がもうすぐできます”というメッセージが。 |
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