第11回文化庁メディア芸術祭の受賞者シンポジウムに『Wiiスポーツ』の開発者などが登壇
●業界をリードするクリーエーターが自身の作品について語った
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▲ゲーム業界のトップランナーたちの声を聞こうと、数多くの人が会場へ足を運んだ。 |
2008年2月6日〜17日まで、都内の国立新美術館で文化庁、国立新美術館、CG-ARTS協会が主催する”第11回文化庁メディア芸術祭”が開催されている。すでにお伝えしているとおり、今年は同イベントのエンターテインメント部門で、任天堂のWii用ソフト『Wiiスポーツ』(発売中)が大賞を、カプコンのPSP(プレイステーション・ポータブル)用ソフト『モンスターハンターポータブル
2nd』(発売中)と、KONAMIのプレイステーション3用ソフト『メタルギア ソリッド 4
ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』(2008年発売予定)が優秀賞を受賞。2008年2月11日には、その3作品を手掛けたクリーエーターたちによる受賞者シンポジウムが実施された。
登壇者は任天堂から『Wiiスポーツ』開発チーム代表の太田敬三氏、カプコンから『モンスターハンターポータブル 2nd』開発チーム代表の辻本良三氏、KONAMIの小島秀夫監督。加えて、エンターテインメント部門の審査を主査を務めたキューエンタテインメント代表取締役CCOの水口哲也氏が司会進行役として登壇した。まず最初に水口氏が「いまや日本のゲームは世界に誇る文化であり、産業でもあります。そのトップランナーが今日ここに集まりました」と挨拶を行い、その後に各登壇者が受賞作品の解説を行った。
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▲審査主査を務めた水口氏は司会進行に合わせて、受賞者への質問なども行った。 |
●Wiiというシステムの中にあってこそ成り立つ『Wiiスポーツ』
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▲「メディアとしてのWiiとセットになって初めて『Wiiスポーツ』の価値も上がる」と語る太田氏。 |
水口氏曰く、「ゲーム作品の審査ではゲーム産業を背負うつもりで、慎重に審査したがこの作品に関しては満場一致で大賞が決定した」という『Wiiスポーツ』。日本のみならず世界中でヒットを記録し、社会現象を超えた「地球現象」(水口)にまでなった本作だが、太田氏は開発している段階でこれだけブレークするとはまったく予想していなかったという。とは言え「自分の周りという枠に限定すれば、必ず流行するとは思っていた」(太田氏)とのことで、家族や友人など身近な人間の反応から手応えは感じていたようだ。
太田氏は『Wiiスポーツ』がほかのゲームとは異なる部分について「ハードウェアの性能に沿ってクリエーターがゲームを作った以上の親密な関係がある」と説明。その具体例として、Wii本体に収録されている”似顔絵チャンネル”で作ったMiiとの連動を挙げた。 「マリオなど個性のあるキャラクターを操作すると、プレイヤーはそのキャラクターで遊んでいる気分になってしまう。『Wiiスポーツ』では自分が遊んでいる感覚を大切したかった。そこで、似顔絵チャンネルとの連動に至ったのです」(太田)。スクリーンでは『Wiiスポーツ』開発最初期にあったコケシのようなキャラクターがテニスをしている姿や、プレイヤーキャラが全員マリオになっている画像が映し出され、Mii採用までの紆余曲折が視覚的に説明された。
「『Wiiスポーツ』はソフト単体ではなく、Wiiというシステムの中にあってこそ成り立つ。これはいままでのゲームにはなかったもの。Wiiがあってこそ力が出せるし、逆に言えばWii自身も最大限の力を発揮するために『Wiiスポーツ』を必要とする。そのような関係ですね」(太田)
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▲Wiiスポーツに登場するキャラクターはコンピュータも含め、すべて似顔絵チャンネルで作られたものとなっている。 |
『Wiiスポーツ』のシステムを作るうえで、Wii本体の機能は欠かすことはできないとを語った太田氏は、ソフトの開発コンセプトについてもWiiの基本路線”誰でも遊べるゲーム”に乗っ取ったものであると説明する。「テレビのまえを横切っていく家族も巻き込む」(太田)ために、『Wiiスポーツ』では各スポーツのハイライトだけを抽出し、それ以外のゲーム初心者にとって煩雑になりがちな要素、野球の捕球やテニスでのミスサーブなどをバッサリと斬り落とした。ともすればただのシンプルなゲームになってしまう可能性もある決断だったが、体力測定や各種やり込み要素といった部分がしっかり作りこまれていたため、既存のゲームユーザーからソッポを向かれることもなく、結果的にゲームを遊ばなかった層、ゲームから離れていた層も巻き込んで大ヒットを記録したのだ。太田氏は最後につぎのように語り、『Wiiスポーツ』は任天堂の理念を強く受け継いだソフトであるとした。
「ひとつのゲームソフトではありますが、実際にはWiiという大きなプロジェクトのひとつです。我々の目標は昔から変わらず、いまも”ゲーム機のまわりに笑顔を作りたい”というただひとつなのです」(太田)
●「ゲームを色々なところで遊ぶ、という行為を一般化したかった」(辻本)
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▲辻本氏はゲームを楽しくするひとつの要素に「まわりにいる仲間たちと遊ぶこと」があると語った。 |
辻本氏の講演は、『モンスターハンター』シリーズ全体の話からスタートした。
シリーズ第1作目、プレイステーション2用ソフト『モンスターハンター』の発売初日の売れ行きは数万本と決して芳しくない数字。しかし、発売後購入者の口コミでソフトの魅力が広がり最終的に数10万本を販売するヒット作となった。辻本氏はこの現象を喜びつつも、一方でユーザーの口コミにはどうしても限界があるとも感じていたという。加えて据え置き機では通信環境を整えなければ多人数プレイができないというネックもある。これらの状況から同氏は「実際にゲーム画面を見せながら友人に紹介することができ、さらに多人数プレイの敷居も下げたい」という思いに駆られ、携帯ゲーム機版第1弾『モンスターハンターポータブル』の開発をスタートしたのだという。
『モンスターハンター』シリーズのコンセプトは、「大きな武器を持ったハンターとなって、大きなモンスターを狩りに行こう」(辻本)というもの。『モンスターハンターポータブル』ではこの基本コンセプトは貫きつつ、新たに「隣にいる人と遊ぶとさらに楽しい」というコンセプトを追加したと辻本氏は語る。そして、今回の受賞作『モンスターハンターポータブル 2nd』では、さらに「携帯機であるよさをもっともっと広げていこう」(辻本)というコンセプトが加わった。
辻本氏は、村の中を移動するときのショートカット機能、通勤時間中に遊べるほどよいボリュームのクエストなど、本作で追加された携帯機ならではのよい部分を提示。ゲームそのもの以外に、”モンスターハンターフェスタ”に代表されるユーザーどうしがリアルにつながるイベント開催などができたことも『モンスターハンターポータブル
2nd』を語るうえで外せないとし、「ゲーム自体をいろいろなところでする、という行為を一般化したかった」(辻本)と語り締めくくった。
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▲水口氏は『モンスターハンターポータブル 2nd』の持つ協力プレイの楽しさについて、「『ポケモン』の牙城をある意味で崩しにかかっている」と評した。 |
●シリーズ完結篇のテーマは未来に残せない”SENCE”
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▲9年まえに発売された『メタルギア ソリッド』以来2度目の受賞となった小島監督。 |
今回の受賞作品の中で、『メタルギア ソリッド 4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』は唯一発売まえの作品となっている。水口氏によれば審査規定を覆してまで、選出することに審査委員会でもかなりの議論が交わされたが、最終的に「そういった規定などの枠を越えてでも評価するべき作品」(水口)という結論に至り、今回の受賞が決まったという。小島監督はこの異例の受賞に「21年間ゲームを作ってきて、なんとかゲームの立場をサブカルチャーから文化にしたかったので、今回の受賞は非常に感慨深いものがあります」と喜びのコメント。続けて「『メタルギア』サーガは今回で完結します」と語り、受賞作品の解説を開始した。
『メタルギア ソリッド』(シリーズ1作目と2作目は『メタルギア』)シリーズは、20年まえにMSXで発売された第1作目からずっと”究極の隠れんぼ(ステルスゲーム)”というゲーム性を保ち続けている。潜入する場所は、グラフィック描写が規則的な屋内などの”人工物”から、ジャングルといった”自然”へと、ハードや開発技術の向上に合わせて変化してきた。プレイステーション3という最新機種で作られる本作では、もはや潜入場所は特定された場所ではなく”戦場”という地域にまで広がる。小島監督は、地域へ潜入する方法についてスクリーン上でスライドを使いながら説明。赤国と青国というふたつの勢力が争い合っている場合、戦場へ介入せずに共倒れを待つ、戦場へ積極的に介入して両国とも倒す、片方の国に介入してもう一方の国を倒すことで潜入する、といった戦場への具体的手段が明かされた。
『メタルギア ソリッド』シリーズと言えばゲーム性はもちろんのこと、シリアスでメッセージ性の強いストーリーも魅力のひとつ。シリーズのメインテーマ”反戦反核”および、サブテーマ”次の世代に伝えるもの”はすべての作品に受け継がれているが、『メタルギア ソリッド 4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』自体のテーマは「残せないもの”SENCE”」で、シリーズのサブテーマと相反するものなっている。これについて小島監督は「SENCEとは、人の意識や感情といったものです」と含みのあるコメントを残し作品の解説を終えた。
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▲つねに何かしらのテーマを持って作られてきた『メタルギア ソリッド』シリーズ。本作のテーマ”SENCE”が意味するものとは!? |
また、作品の解説終了後、水口氏が小島監督に対して「『メタルギア
ソリッド』シリーズに対して映画化などのオファーがあるのではないですか?」と質問するひと幕もあった。それに対して小島監督は、『メタルギア
ソリッド』の魅力を引き出すには現状ゲームという手法以外は考えられないとして、その可能性を否定した。
「『メタルギア ソリッド』に関してはゲームに最適な内容で作っているので、これを映画化するときに僕自身が監督をするとか、脚本を書くということはまったく考えていません。映画自体を作りたいとは思いますけど、そのときは映画というフォーマットに最適なお話や世界観を作ろうと思います。僕にとっての『メタルギア ソリッド』はあくまでゲームでしかないので、ゲームで表現できることをやっていこうと思います。」(小島)
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▲映画制作には興味があるが、あくまで『メタルギア ソリッド』はゲームであると語る小島監督。 |
最後に各登壇者は、「これからのゲーム業界をどのようにリードしていきたいと思いますか?」という水口氏の質問に対し、それぞれつぎのように語りシンポジウムは終了となった。
「これからは開発環境も含めた技術の進歩で、プロとアマの差がなくなっていくでしょう。ますます競争も激しくなっていくと思いますが、自分はすごい楽観的に考えています。自分はさいわい組織に属しているので、組織ならではの力を発揮して「ああ、これがプロの作品なのか」と思えるようなものを作っていきたいと思っています」(太田)
「つねに新しいものや驚きという部分をつねに提供していかなければだめだな、という気持ちがあります。もちろん、そういった新しさや驚きの基準は時代によって動いている可能性もあります。ゲームは制作から発売までが3年間くらいなので、作品が完成した時点を想像しながらゲームを作っていく必要があるでしょうね」(辻本)
「21年もゲームを作っていますが、本来僕は飽き性なんです(笑)。では、なぜゲーム作りは飽きないのかというと、技術の進歩とともに進めるという点があるからです。インタラクティブなメディアとしてのゲームは今後さらに、あらゆる分野を吸収して新しくできることが広がっていくでしょう。そういう意味では創造芸術に近いものへとなっていくんじゃないでしょうか。アナログの時代は他分野との融合が難しかったのですが、デジタルという魔法を使えば水と油が混ざるようなことも可能です。ゲームという媒体が急成長していくなかで個人が意見や作家性を発揮する場所は、最終的にすべてゲームに集約されていくのかもしれない、そう思っています」(小島)
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