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劇的3時間SHOWで『パックマン』の岩谷徹氏と『塊魂』の高橋慶太氏が競演

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●アカデミックな第1部と、ざっくばらんな第2部

 

 ゲーム、アニメ、音楽、映画などさまざまなコンテンツ業界の第一線で活躍する人々がひとりずつ日替わりで登場し、3時間という限られた時間のなかで自身の技術や経験を自由に表現するイベント”劇的3時間SHOW ‐コンテンツプロフェッショナルが語る3時間‐”が2007年10月1日〜10日まで東京・青山にあるスパイラルホールで開催されている。開催4日目に当たる、2007年10月4日にはゲーム業界を代表して『パックマン』の生みの親で、現在は東京工芸大学芸術学部ゲームコースで教授を務めている岩谷徹氏が出演。”ゲームはどうしておもしろいのか?”という普遍的なテーマについて語る講義形式の前半と、『塊魂』を手掛けた高橋慶太氏を招き新旧の天才クリエーターによる”かみ合わないトークを楽しむ”対談形式の後半、という2部構成で講演を行なった。
 

▲日本のみならず世界でも高い評価を得た『パックマン』の生みの親である岩谷氏。

 「今日は年寄りの説教にならないように気をつけます」という、コンピューターゲーム黎明期から現在まで業界を牽引し続けている岩谷氏らしい、重みとユーモアに満ちた挨拶で幕を開けた第1部では、まず最初にクリエーターに求められる資質について語られた。「クリエーターにとって大事なのは、”クリエーターになるまでに”蓄積された”経験です」(岩谷)。自然の中から遊びを発見していた”アナログ”な小学生時代と、競馬や麻雀などに熱中していた”デジタル”な高校時代。岩谷氏にとってこのふたつの時代はクリエーターとして成功するうえで大切な”経験”が蓄積できた貴重な時代だったという。なかでも、高校時代に沢山してきたという”悪さ”は「そのひとつひとつが工夫のかたまりだった」と語り、このときの工夫がゲーム開発におけるプログラムの工夫にもつながっていると説明。そんな遊びの中からクリエーターの資質を磨いてきた岩谷氏は`77年にナムコ(現バンダイナムコゲームス)へ入社。そこで「自分にとっての師匠」と語るATARI社製のゲームと衝撃的な出会いを果たし、本格的にゲーム開発の道を歩み出すことになった。

 

▲悪さばかりしていたという、高校時代の貴重なワンカット。こちらの写真は女性ファッション誌に掲載されたものだとか。


▲「『パックマン』を作るうえで影響を受けたと言わざる得ない」と岩谷氏が語るATARIの『Gotcha』。このほかに、レースゲームの雛形となった『Night Driver』などが紹介された。

 

 ATARIとの出会いを語ったところで、話題は自身の代表作『パックマン』へと移る。ビデオゲームが登場する以前にアーケードゲーム施設で遊べた”エレクトロメカニカルゲーム”の1プレイあたりの相場は30円〜50円程度で、ビデオゲームの1プレイ100円という設定は当時非常に高値なものであった。そこで開発者は”高価な分上手くなればなるほど長く遊べる”というレイアウトにこだわり始めることになる。加えて、ただ長く遊べるだけではなくアクセントとしてイベントやボスをつけ加えるといった”単調な展開から細かい設計の施された展開へ”という意識も開発者側に芽生え始めてくる。このような状況の中、`80年に『パックマン』は満を持してアーケード市場へ投入した。同作にはさきに挙げたゲーム内におけるアクセントのほかに、リスクの高いプレイをするほど高得点が得られる”魅力あるハイリスクの設定”や、プレイヤーの腕前に合わせてリアルタイムで難易度が変化する”セルフゲームコントロールシステム”といった画期的なシステムが搭載され、世界中のゲームユーザーを魅了した。岩谷氏は『パックマン』の成功を例に上げ、ゲーム設計では「失敗の経緯が明確に理解でき、成功へのイメージがしやすい」ことが大切であると語った。


▲『パックマン』には現在まで受け継がれるゲームの設計がすべて詰まっていた。「じつに至れり尽くせりの作品です」と岩谷氏。


 岩谷氏は”ゲームとは?”という定義づけが難しい話題にも言及。「人の意見は数多くある中のひとつなので鵜呑みにはしないでほしい」と断ったうえで、「ルールに基づいたすべての遊び」がゲームであると持論を展開。制作する側については”プレイヤーが楽しめるように気配りする思いやりの心”と”サービス精神”のふたつが肝になると語った。また、重要なのは「モノ作りは仮説を実行すること」と、その仮説を立てるためには日々の観察がすべて。物事の真理を意識しながら観察することで、ひとつの対象を違った角度から見られるようになり、仮説、つまりアイデアがつぎつぎと沸いてくるようになるのだという。

 

 最後に岩谷氏は、”ゲームはあらゆる題材に拡張する”、”ゲームを知ることは人間を知ること”、”ゲームは作り手の人生観に支配的”、”作品のテーマではなく、表現者として自身のテーマを持つこと”の4つが、クリエーターにとって重要な心構えと語った。「作品のテーマは作り手のチームで考えること。ただ、クリエーターひとりひとりが持つ内なるテーマは作品に影響してくる重要なものなので、それはどんどん打ち出して行ってほしい」。
 

▲最後に岩谷氏から来場者に贈られたメッセージ。ゲーム開発以外にも通じるものがある内容だ。

 

 休憩を挟んでスタートした第2部からは『塊魂』を手掛けた高橋慶太氏が登壇。新旧の天才ゲームクリエーターによる対談が実現した。とくに対談のテーマなどは設けられておらず、おもに岩谷氏が聞き手となり『塊魂』の開発秘話から、ゲームに対する考え、そしてプレイステーション3で開発中の『のびのびBOY』に関する話題などをざっくばらんに語り合った。両者の対話の中で、特に印象深かったやりとり、言葉を抜粋して紹介しよう。

 

▲世界中でヒットしているWiiに関して高橋氏は、「ゲームはまだ生まれて20年しか経っていないのに、入力デバイスをあそこまで変えてしまうのは早過ぎる」と持論を展開する場面もあった。

岩谷 『塊魂』の転がして大きくするというテーマは最初からあったものだった? 

高橋 これというテーマがあってできたのではなく、会社帰りにふとイメージが降ってきたんです。ほんと、天才肌だと思いますよ(笑)。ゲームが完成したあと、海外でも評価されて言葉の壁を越えれたっていうのはうれしかったかな。でも正直こんなに多くの人に受け入れてもられるとは思っていなかったので、まだピンとこない部分もありますね。

 

岩谷 ゲームというものをどう捉えている?

高橋 青臭いことを言うと、ゲームで世界が平和になってほしい。本気ですよ。あと、ファーストパーソンシューティングとかリアルタイムストラテジーとか暴力表現のあるゲームは時代に逆行しているんじゃないかな。暴力自体を否定するわけではないけど、そればかりなのはせまい感じがするし、どこか恥ずかしいことだと思う。

 

会場からの質問 高橋さんが「これは凄い」と思ったものは何ですか?

高橋 最近はとくにないんですけど。大学時代に入っていたラグビー部の先輩で、ポテトチップスの袋を財布として使っている人がいて(笑)、「あぁコイツには勝てないな」って思いましたね。

 

岩谷 いま熟成させているアイデアはある?

高橋 そろそろゲーム以外のこともやってみたいんですよ。いまTシャツのデザインと販売をやっていて、それを実際に身に着けてもらったりするのはすごくうれしいんです。ただ、”メディアミックス”というのはイヤですね。

  

高橋 ゲームにしかできないことをやらないと現実の楽しさには勝てない。『伸び伸びBOY』でそれに勝ちたいと思う。

 

高橋 『のびのびBOY』で、とうとう自分も”性表現”に一歩踏み入れたかなという感じですね。
 


▲「噛み合わないトークも楽しいと思いまして」という岩谷氏の言葉どおり、対談中は意見が食い違うこともしばしば。しかし、両者とも「ゲームにしか実現できないことをしたい」というゲームに対する根本的考えは一致していた。

 

 ゲームという枠組みを飛び越え、モノ作りに関わるすべての人へ向けた内容となった岩谷氏の講演。そして、みずからを天才肌と語る高橋氏の鋭い言葉が飛び出したスリリングな対談。どちらも来場者にとっては文字どおり”劇的”な内容となったに違いない。

※劇的3時間SHOWの公式サイトはこちら
 

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