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太秦戦国祭りふたたび! コーエー松原氏が語る歴史創作コンテンツの魅力とは?

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●映画、テレビ、ゲームの歴史モノを扱うプロデューサーが講演!
 

▲ゲーム業界を代表して、コーエーの松原社長が登壇。同社の歴史シミュレーションゲームを紹介し、歴史を扱ったゲームの魅力を語った。


 京都にある東映太秦映画村で2007年9月29日と30日の2日間、”太秦戦国祭り”が開催された。このイベントは、戦国時代に関連するさまざまなコンテンツを鑑賞、体験する場を提供しようという産学協同の取り組み。2007年3月に第1回が実施されて今回が2度目の開催となる。前回よりも参加する企業も増え、規模を拡大して行われた。

 

 ゲームメーカーで出展していたのは、カプコンとコーエー、アクワイアの3社。カプコンは、2007年11月29日に発売予定のプレイステーション2用ソフト『戦国BASARA2 英雄外伝(HEROES)』の試遊台を出展して、60分待ちの列ができるほどの人気ぶりに。会場には戦国モノのコスプレイヤーも大勢来ていたのだが、なかでも『戦国BASARA』のキャラクターに扮した人が多く、時代劇セットの中で雰囲気たっぷりに最新作を楽しんでいたようだ。コーエーはWii用ソフト『戦国無双KATANA』(発売中)をプレイ可能な状態で出展、アクワイアは『天誅』シリーズの原画や映像を公開していた。

 

▲コスプレイヤーを中心に絶大な人気を誇っていた『戦国BASARA2 英雄伝(HEROES)』。


▲コーエーの『戦国無双KATANA』も体験プレイが可能で、Wiiリモコンを手にする巫女さん(?)の姿が!


▲アクワイアブースでは、貴重な資料や原画を展示し、じっくりとその世界を堪能することができた。


 太秦戦国祭りに併催される形で、立命館大学映像学部が主催する”国際クロスメディアシンポジウム”も実施。”歴史創作の魅力を探る〜アジアンエンタテインメントの展望〜”と題されたシンポジウムで、特別招聘講演として中国の武侠小説の第一人者である金庸氏が来日するはずだったのだが、残念ながら体調がすぐれないため急遽キャンセルに。代理人として、金庸氏の相談役でもあるという香港天地図書副総編集長の孫立川氏が登壇した。孫氏は、金氏の武侠小説がどのようなものか解説したほか、金氏が話す予定だった原稿を代読した。金氏の武侠小説は、ほかの作家と違って史実に忠実に作られているのが特徴。孫氏によれば、「豊富な歴史知識を持っており、個人的な歴史観があるから」こそできることだが、歴史的背景だけではなく人間の情感を大切に書いていることが広い世代に受け入れられたのだという。実際、香港や台湾でも人気を博し、マンガやアニメ、さらにはオンラインゲームにもなっているとのこと。まさにアジア全体でクロスメディア的な展開を見せている作品なのだ。

▲日本に来るのを楽しみにしていた金庸氏の原稿を代読した孫氏。日本の金庸ファンのために、金庸作品の翻訳をしている岡崎由美氏と孫氏との対談も行われた。


 シンポジウムの後半では、日本の映画、テレビ、ゲーム業界から戦国モノに関わる3人のプロデューサーが講演を行い、パネルディスカッションが実施。モデレーターを務めた立命館大学映像学部の細井浩一教授は、このシンポジウムの趣旨を以下のように語った。
 

 「戦国時代を中心とした史実や文化を扱ったものを、ここでは歴史創作コンテンツと位置づけたいと思います。いわゆる時代モノは昨今廃れるどころか、コスプレなどを見ても若者が積極的に楽しんでいる。歴史創作コンテンツは、世界に向けて発信できるコンテンツであると同時に、メディアを超えていく、クロスメディアの力があると考えています。今日は、その可能性を展望したいと思います」(細井)

 

 映画界からは、東映の常務取締役で新作映画『茶々』のヘッドプロデューサーである坂上順氏が登場。中国語が飛び交い、コスプレをした人たちが歩き回る映画村に戸惑いの表情を見せながら、「場違いな気もしますが、日本の映画が世界戦略という点でなぜ負けているのかをお話できたらと思います」と切り出した。そもそも、歴史創作コンテンツという言いかたに違和感があるという坂上氏。

 

 「僕はプロデューサーとしてお金を稼がなければいけない立場なので少し違った感覚ですが、映画を作っている人は”コンテンツ”という言葉を聞くとそっぽを向きます。作家、クリエーターはある種、命を削って作品を作ってます。コンテンツという言葉に、山田洋次監督は”自分はコンテンツは作っていない、作品は作っているけれど”と反論してましたが、そういう世界なんです。それが、日本映画がここにきても細々と続けていける原点の部分であり、また世界を相手にしたときに負けている要因でもあります」(坂上)

 

 坂上氏自身はプロデューサーという立場上、できあがった作品を映画館で公開する以外にDVDのパッケージ販売など二次利用を考える必要があるが、「実際に映画を作っている人にとってはゼニ金の問題ではない」と坂上氏は言い切る。コンテンツという言葉にはどこかお金の匂いを感じるのか、映画の作り手には好意を持たれていないようだ。現在の日本映画は、モノを作りたいというエネルギーだけに支えられ、戦略的コンテンツとしては遅れてしまっているのが現状。なぜ日本映画が世界の中でそこまで遅れてしまったのかと言えば、「かつての日本映画は、国内で資金を回収できたからでしょう」(坂上氏)。マーケットとして国内だけを見ていればよかったものが、いつの間にかハリウッドが時代劇『ラストサムライ』を作って成功を収める時代になり、日本の映画は取り残されてしまったというわけだ。だが、映画業界の人たちも手をこまねいているだけではない。坂上氏は、東映太秦映画村を始め、映画の制作現場には時代劇の財産がたくさん残っていることから時代劇映画をしっかり作ろうと決意。その気持ちが『茶々』につながっているのだそうだ。穏やかな口調ながら、不器用な映画クリエーターの気持ちを代弁して”歴史創作コンテンツ”とひと括りにされることにNOを突きつけた坂上氏は、「なんだか泣きとお願いになってしまいましたが、いまだにアナログだけれど情熱を持った活動屋たちをぜひ応援してください」と訴えた。

 

▲左が東映の坂上順氏、右がNHKの若泉氏。どちらも日本の映像作品を第一線で支えるプロデューサーだ。


 テレビ業界からは、現在放映中のNHK大河ドラマ『風林火山』のプロデューサー、若泉久朗氏が講演。大河ドラマの歴史を紐解き、過去に視聴率が高かった番組や、出演したキャストなどを紹介していった。大河ドラマには、「当たりもの」と呼ばれる、ヒット間違いなしの題材があるのだという。それは、源平合戦と川中島の戦い、織田信長と豊臣秀吉、徳川家康の天下盗り、そして忠臣蔵の4つ。過去にいちばんヒットしたのは、`87年に放映された『独眼竜政宗』と翌年の『武田信玄』で、視聴率40パーセントを記録したとか。意外にも、幕末を題材とした作品は女性にウケが悪く、あまりヒットしたことがないのだそうだ。

 

 現在放映中の『風林火山』は若泉氏が4年まえから準備してきたそうで、13ヵ月かけて50話を撮影し、先日クランクアップしたばかりだとのこと。1話につき6000万円、計30億円をかけて制作されていることも明かされた。ロケで苦労をするのは、現代の建造物など戦国時代にそぐわないものが映りこまない場所を探すこと。ただし、現在は合成やCGなどの技術も駆使されているそうで、会場では特別に大河ドラマの制作舞台裏が映像で公開された。『風林火山』のオープニングで馬が何頭もかけているシーンでは、じつは6頭で撮影したものを合成していることが発覚! 火の手が上がるシーンや、遠くに富士山が見えるシーンなどは何もないところにCGで描き足したことが暴露され、来場者からは驚きの声と笑い声が上がっていた。

 

▲上が、6頭の馬を走らせて撮影したもの。下はそれを合成して延々と馬の列が続いているように見せた『風林火山』のオープニング映像だ。


 最後は、映画やテレビと比べてももっとも新しいメディアであるゲーム業界を代表して、コーエーの代表取締役社長、松原健二氏が講演を行った。ゲームにはあまり馴染みがない来場者に、わかりやすくコーエーの歴史シミュレーションゲームや『無双』シリーズを紹介し、歴史を題材にしたゲームの楽しみを松原氏なりにまとめた。

 

 そのひとつは、”インタラクティブ性”にあるという。ゲームの特徴は、ゲーム世界の中に入り込めることで、より歴史に没入できる。自分の行動によって勢力を栄えさせ、統一を目指す楽しみがあるわけだ。ふたつ目は、”歴史ifの実現”。歴史ファンなら誰でも夢見る「本能寺の変がなかったら?」といった歴史上のifを自分の手で確かめることができる。コーエーでは、毎シリーズごとにどんな歴史ifを盛り込もうか、ユーザーからの要望と照らし合わせて検討しているそうだ。3つ目に挙げられたのは、”魅力的なキャラクターとストーリー”。松原氏は、歴史モノでは動乱の世だからこその個性溢れるキャラクターが登場すると指摘し、彼らにまつわるエピソードを味わえるのも楽しみのひとつだと語った。キャラクターに固有のイベントを体験して、戦いに勝利すればムービーが観られるのもゲームならではの楽しみと言える。最後に松原氏は、歴史モノに取り組むコーエーの戦略を以下のように語った。

 

 「コーエーは来年で30周年を迎えますが、ここまで成長してこれたのは歴史を題材にしたゲームを作り、ファンに支えていただいたからだと思います。これからも人類すべてが共有する歴史を活かして、皆さんの日々を豊かにするエンターテインメントを作っていきたいと思います」(松原)


▲「歴史モノは、もともとユーザーの中にどんな人物か、どんな事件があったかというイマジネーションがある。それはさまざまなメディアで同じ時代の歴史モノが扱われているからでしょう。その中でも、ゲームはより世界に入り込めて、何度でも歴史のifを楽しめます。自分がそこに生きて、自分が歴史を作ったんだ、と感じてもらえればうれしいですね」と松原氏。


 パネルディスカッションでは、坂上氏、若泉氏、松原氏に加えて孫立川氏が参加して、各メディアの可能性などが語られた。印象深かったのは、坂上氏の「歴史モノは人物と結果がわかっていて、なぜその結果に至ったかの説明が作品になる」という言葉。映画では脚本家がその結果に至る原因を描くが、あくまでも現代の作家が空想で作ったものだ。それを観た客に「あれは違う」と言われることもあり、客の中では別の新しいシナリオができているのではないかという。つまり、歴史モノの作品というのはじつは無数に存在しうることになる。松原氏はこれを受けて、「オンラインゲームでは、ゲームの外にコミュニティが生まれて、ネットの掲示板やSNSを使って知らない人どうしが好きな話題を深めている」と指摘。ユーザーコミュニティ自体も歴史コンテンツと呼べるのかもしれないと問題を提起した。とくにオンラインゲームでは、そういったコミュニティに積極的に参加する人が多く、ゲームのさきにある新しいメディアと位置づけられるという。たとえば、コスプレというのもユーザーコミュニティから生まれた創作のひとつで、新しいメディアと言える。歴史創作コンテンツは、誰もが知っている史実をもとにした作品だからこそ、さまざまな楽しみかた、可能性が広がっているようだ。

 

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