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サイバーコネクトツーの松山氏が明かす『.hack//G.U.』プロジェクト成功の秘密
CEDEC 2007

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●徹底的にハンドリングした『.hack//G.U.』シリーズ

 3日目に安田講堂で行われたセッション“.hack//G.U.の裏側-クロスメディア展開の秘密としかけ-”は、サイバーコネクトツーの代表取締役である松山洋氏らしい、サービス精神溢れるものとなった。

▲ぶっちゃけトークも交え、自社の開発ノウハウを惜しげもなく披露するサイバーコネクトツーの松山氏。エンターテインメント精神は講演でも健在。


 2部構成にて行われたこのセッションの“第1部『.hack//G.U.』のクロスメディア戦略・展開の概略とその結果”というもの。松山氏みずからが『.hack//G.U.』シリーズの展開を説明。バンダイナムコゲームスより発売されたプレイステーション2用ソフト『.hack//G.U.』シリーズはご存じのとおり、ゲームを中心にアニメやラジオ番組、ユーザー参加型のイベント、そして専門雑誌の創刊など、2006年から2007年にかけてクロスメディア展開を行った。その展開のピークとなるように狙っていたのが、じつは2007年9月、2作目の『.hack//G.U.』発売時期であるという。

 

 「前作の『.hack』シリーズはプレイステーション用ソフトとして2002年から全4巻で展開したのですが、巻数を重ねるごとに右肩下がりで販売本数が落ちています。これはシリーズ作品の宿命のようなもの。Vol.1を購入してくれたユーザーをいかに飽きさせずに引き止めておくかが勝負になります。一方で、Vol.2が出たときにVol.1が売れるという現象があったのですが、Vol.3が出たときには、Vol.1やVol.2が売れるということはなかった。ここから導き出された結論はひとつです。プロジェクトのピークをVol.2にもってくるべきだということです」(松山)

 もともとシリーズ2作目ともなると、1作目と3作目のつなぎ的な位置づけとして中だるみをしがち。それをアニメーションの展開や、コミックの発売(ゲームのVol.2の発売に合わせてコミックが出せるように、専門誌の発売も決定した)、イベントなど、さまざまな展開をVol.2の発売時に重なるようにしたという。しかもこうした展開は、ゲームのストーリも何もできていない段階から考えたというから驚きだ。そんな戦略がぴたりと当たり、『.hack//G.U.』シリーズは、Vol.1が16.7万本、Vol.2が17.7万本、Vol.3が18.3万本と右肩上がりの販売本数を記録。「ミラクルな現象を見せる」(松山)結果となった。

 もちろん、そうした戦略を取るためには、プロジェクト自体のハンドリングを徹底する必要がある。ゲームのほかにも、アニメやマンガなど多岐に渡るコンテンツを展開する『.hack//G.U.』シリーズでは、ハンドリングの困難さは相当なものだと思われるが、「バンダイナムコゲームスに入り込むことによって、その問題をクリアーした」と松山氏は言う。

 

 「サイバーコネクトツーは開発会社なのですが、開発会社とは思えないほど深くプロジェクトに関わらせてもらっています。このプロジェクトには関わっている人が多いので、1回の打ち合わせで済むところが3回にもなってしまうケースも多い。だから、本来はバンダイナムコゲームスさんを通して打ち合わせをすべきところも、直接やりとりさせてもらいました。そういう意味では、徹底的に効率化を図りました。そのうえで、こちらでアニメの脚本もチェックしたし、マンガのネームやプロットも毎回確認しました。そこまでしないとハンドリングが取れないんです。ゲーム、アニメ、マンガとそれぞれ方法論はあると思いますが、『.hack//G.U.』はゲームを中心としたプロジェクトなので、とにかくハンドリングは任せてもらいました」(松山)

 “ゲームを中心としたプロジェクトである”という意識は最初から最後までブラさなかったという。「もちろんそこまでハンドリングできたのは、バンダイナムコゲームスさんがそこまで任せてくれたから。本当に懐の深い会社です(笑)」と松山氏は笑った。

▲2005年3月に前作テレビアニメシリーズのDVD-BOXのリリースにはじまり、2007年のVol.3の発売まで、足掛け3年間にわたり展開された『.hack//G.U.』。ゲームはもちろん、アニメ、ラジオ、専門雑誌などその展開は多岐にわたる。ちなみに、この時期に発売された『.hack』の廉価版はシリーズ累計12万本をセールス。

▲プレイステーション用ソフト『.hack』シリーズはヒットはしたものの、右肩下がりの販売本数に。ちなみに販売本数は、掛け値なしの実数だそうだ。

▲前作の経験を活かし、プロモーションのピークをVol.2に持ってきた『.hack//G.U.』は右肩あがりの販売本数を記録する。予約が巻を追うごとに増え、確注(ショップの受注本数)が伸びた。ちなみに、Vol.3の発売日には、Vol.1の廉価版も発売。19000本を販売する。

▲アニメやマンガを含め、たくさんの企業が『.hack//G.U.』シリーズには関わっている。それらすべてをサイバーコネクトツーがハンドリング。その努力は並大抵のものではなかっただろう。そこまでして初めて、“クロスメディア展開”なのだと言える。



●自社の開発ツール“Cyber Connect Streaming”で開発の効率化を図る

 引き続き行われた“第2部 プレイステーション2専用ゲームソフト『.hack//G.U.』における開発効率の秘密”では、サイバーコネクトツーのクリエーターおふたり、第一開発室 プログラムリーダーの渡辺雅央氏と第一開発室 グラフィックサブリーダー 下田星児氏が登壇。少人数開発での効率化をテーマに講演を行った。

 

 その答えのカギとなるのは、ずばり自社制作による開発環境の構築。サイバーコネクトツーでは、『.hack//G.U.』の開発にあたり、プログラマーに負担をかけないシステムとして、独自に“Cyber Connect Streaming(CCS)”を制作したという。CCSとは、3Dソフトツール(3dsMax)で作成したシーンをそのまま実機上で再現したり、開発機で動作するツールでのデータ調整を行えるシステム。ポリゴンモデル描画やアニメーション再生といった機能も実装しており、絵に関わる大半の作業を(通常ならばプログラマーが必要であるが)グラフィッカーだけで行うことを可能にしたという。

 「これにより、プログラマーがデモ作成などの物量作業に時間をとられないため、ゲームの“おもしろさ”の追求に時間を使えるようになりました」(渡辺)

 このCCSは、サイバーコネクトツーの開発するすべてのタイトルで使用されており、「グラフィックパワーを全面に押し出した一連の作品を提供できました」(渡辺)とのことだ。ただいまサイバーコネクトツーでは、バンダイナムコゲームスのスタッフと協力して、CCSと同じ思想で次世代機向け環境を鋭意開発中だという。

 一方で作業の効率化を図りつつ、一方でコンテンツの魅力を最大限に引き出すべくプロモーション戦略を練るサイバーコネクトツーに、ゲーム制作にかける凄みを見た思いがした。同社の“クロスメディア展開の秘密としかけ”を惜しげもなく披露したセッションに、来場者も得るものは大きかったのではないだろうか。
 

 ▲CCSによる開発画面。モデルビューアやモーションビューア、エフェクトエディタなどを搭載。

 

▲『.hack』のときは25人だったスタッフが、『.hack//G.U.』では39人に。じつはプログラマーは2人しか増えておらず、多くの人員はグラフィッカーに投入された。CCSの開発環境があればこそだ。

 

 

▲プレイステーション3用の『MARUTO-ナルト-』プロジェクトを走らせるために、CCSと同じ思想の開発環境を構築中だという。サイバーコネクトツーは走り続けることをやめない!

 

▲左から松山氏、渡辺氏、下田氏。CCSのほかにもサイバーコネクトツーではいろいろな効率化が図られていて、朝9時出社(遅刻厳禁!)徹夜は禁止なのだという。「朝9時には社員はみんな出社しているので、コミュニケーションを取りたいときに相手がいるんです」(松山)という。ちなみに、ついさきごろ、140席全部がワンフロアに入れるオフィスに移転したとか。

 

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