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パンクゲームは逆襲する! 須田剛一氏が語るゲーム開発のノウハウ
CEDEC 2007

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●パンクゲームを開発するための3つの対処方法とは?

 『キラー7』を代表とするトガったタイトルをリリースし、ゲームクリエーターのあいだでも人気の高い、グラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一氏。そんな須田氏がCEDEC 2007でセッションを行った。タイトルはずばり“パンクの逆襲”。SF映画『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』のパロディーとおぼしきタイトルがつけられたこのセッションは、須田氏のゲーム開発に対する取り組みかたを明らかにしたものだ。

▲ヒューマンに5年間在籍し、プレイステーション用ソフト『トワイライトシンドローム』などを開発。「自由にソフトを作りたい」という思いからグラスホッパー・マニファクチュアを設立し、来年10年目を迎える。プレイステーション用ソフト『シルバー事件』やニンテンドウゲームキューブとプレイステーション2用ソフト『キラー7』などを手掛ける。


 須田氏の講演は、まずはゲーム開発職の定義からスタート。“開発”を“開拓”と“発明”と定義して、「開拓と発明の精神を持つものがゲーム開発であり、そのために “パンクゲーム”が不可欠」なのだと主張。パンクとはご存じのとおり、ロックのいちジャンルで、“反社会性”や“自主性”などを特徴とした音楽だが、須田氏の場合は自身のゲームを“パンク”と表現する。この場合は、“オリジナルゲーム”と置き換えても、ある程度意味は通じるだろう。

 「子供のころはゲームセンターに通っていたのですが、ゲームセンターには“きらめいていたもの”がありました。そのために毎日お袋のサイフから黙ってお金を抜き取ってはゲームセンターに通っていたくらい(笑)。そのときの初期衝動をプレイヤーに与えたい一心でゲーム開発をしています」(須田)

 そんなパンク精神に則ったグラスホッパー・マニファクチュアには、3つのスローガンがある。(1)レッツ・パンク (2)クラッシュ&ビルド (3)コール・アンド・レスポンスだ。それは、パンクゲーム(オリジナルゲーム)を開発する際に生じるリスクへの対処方法でもあるのだという。つまり、

(1)ゲーム内容がパブリッシャーに理解されないといった“障害”に対処するためのレッツ・パンク
(2)ゲーム開発の難しさといった“困難”に対処するためのクラッシュ&ビルド
(3)ゲーム開発は人間関係で成り立っており“課題”も生じる。それに対処するためのコール・アンド・レスポンス

というわけだ。今回の須田氏の講演は、この3つのスローガンを説明することで、自身のゲーム開発に対するスタンスを明らかにしようという主旨のもとに行われたわけだ。(1)のレッツ・パンクは今年行われたGDC(ゲーム・デベロッパース・カンファレンス) 2007でしゃべったからという理由で割愛されてしまったが、(2)クラッシュ&ビルドと(3)コール・アンド・レスポンスについては詳細に説明してくれた。

 「破壊なくして創造なし」という夭逝したプロレスラー橋本真也さんの明言を引用した須田氏は、クラッシュ&ビルドは「完成図を書き直す、日本伝統の職人仕事」であると説明、以下のポイントをあげた。

・ノウハウがない
・教材がない(アニメやマンガなどの原作がない)
・ミドルウェアを使わない
・共通認識がない
・仕様書、設計図がない
・そして、終わりがない

 とくに興味深かったのが、“ノウハウがない”に対する説明。「これは続編を作らない、ソースを流用しないということですね。つまりノウハウに頼らない。最新作の『NO MORE HEROES(ノーモア★ヒーローズ)』は、新しいデバイスのWiiリモコンを使わないといけないのでそもそもノウハウがなかった。そういう意味ではWii本体がパンクハード。“過去のノウハウをあてにするな”という任天堂さんからのメッセージと捉えました。だから、『NO MORE HEROES(ノーモア★ヒーローズ)』は過去のソフトは一切参考にせずに作りました」という。さらには、“共通認識がない”についても独自の開発観を解説してくれた。

「スタッフ全員に、いま開発しているゲームに対する共通認識を持たせるかどうか毎回悩みますが、けっきょくは全員が同じ意識を持つ必要はないと考えています。『NO MORE HEROES(ノーモア★ヒーローズ)』については、美術スタッフには“寂れた西海岸の街が出るゲーム”、アクション班には“剣術アクション”と、各セクションごとにキーワードを変えているんです。じつは各スタッフが“これはどんなゲームなのかわからない!”という状態も好きで、何を開発しているかわからない、秘密工場で働いているようなわくわく感を感じてもらうのもいいかな、と思っています」(須田)

 さらに、(3)コール・アンド・レスポンスについては、「パブリッシャーからの要望にどう応えるか?」というなまめかしい問題があるとしてあるとしたうえで、“パブリッシャーとデベロッパーの関係”のためには、以下のポイントが必須であると説明した。

・経験則がある
・代案がある
・ブレないイメージがある
・瞬発力がある
・適応力がある
・活力がある
・そして、終わりがある

 “代案がある”については「プロジェクトの軌道修正を迫られた場合、どれだけの代案を出していけるかが勝負。プライドを持って提出したアイデアがひっくり返されるとツライですが、ダメだしをされたら、自分のアイデアを捨てる勇気も必要」、さらに“ブレないイメージがある”については、「開発の初期段階では“このゲームはどこに行くのかよくわからない”というのはよくあること。そのときは、ディレクターがブレないイメージを伝えることで、スタッフに力を与えるんです」と説明した。

 そして、結論である“パンクゲーム道の果てに”では、以下の項目においてどうバランスを割り振ってゲーム開発をすべきかを、頭の片隅で意識すべきであるとした。

・“予算”と“開拓”
・“スケジュール”と“発明”
・“売り上げ”と“クオリティー”
・“産業”と“文化”

 「多くの人が右の項目よりでゲーム開発をしたいと思っているでしょうが、最終的にはバランスを見ながら、どういったゲームを作るか判断すべきです」と結論づけた。日本のゲームは立ち居地が低いが、どんな映画や音楽をあわせたものよりもすごい、極上のエンターテインメントがゲームである、自身のゲーム観を改めて述べた須田氏は、最後に「パンクゲームを世に知らしめるべく、みんなが“勝てない”と思うゲームを作りたい!」と来場者に宣言した。
 

▲セッションのタイトルが『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』をもじったものなら、スライドも遊び心のあるものに。


●第2部のトークセッションでは須田氏が衝撃の発言を!

 また、須田氏の講演のあとは、セッションの“第2部”として『NO MORE HEROES(ノーモア★ヒーローズ)』の発売元であるマーベラスエンターテイメントの常務取締役(デジタルコンテンツカンパニープレジデント)和田康宏氏と、週刊ファミ通のバカタール加藤編集長を交えてのトークショウを実施。パンクゲーム(オリジナルゲーム)を入り口にして、ゲーム開発の現状を語り合った。

「ゲームビジネスを短期的に考えるならば、売れているものの続編や強力な版権モノを作っていればいいでしょ、というのがパブリッシャーの考えかた。ただ、自分はモノ作りから始めているので、人まねはイヤ。いま売れるものもいいかもしれなけれど、それは長期的に見ると市場を狭めることになる。長期的に考えたら飽きさせない努力をしないといけない。そういう意味ではひねくれモノであることが大事。商品をお店に流すうえで大切なのは、ほかとは違うものであるということ」(和田)

「ゲームはいま急速に多様化していて、何を作るか難しい時代になっています。ここからここまでがゲームです、という線引きが難しい。ただ、おもしろいものを作ったらいいという方向に向かっていきやすくなっていることは確かです。遊び手も5分でいいから遊びたいという人もいれば、2時間遊びたいという人もいて多様化している。まずは、作ってみることが大事なのではないでしょうか。そうなって初めて、ゲームはメディアとして認知されると思います」(加藤)

 最後に和田氏が「これは予言ですが(自信がありますけど)」と前置きしたうえで、将来的には家庭用ゲーム機の据え置き型ビジネスは崩壊して、マシンスペックがはるかに向上した携帯ゲーム機に集約されるのではないかと発言すると、それを受けて須田氏が驚くべき発言をした。

「据え置き型でゲームを作っていきたい。今年で40歳になるのですが、(80歳までゲームを作ると仮定して)あとゲームを作れるのが40年しかない。つまり、あと40本作れるか作れないか。上のクリエーターが詰まっているので、早く小島(秀夫)さんや三上(真司)さん、そして、宮本(茂)さんを追い越していきたい!」(須田)

 「すごいことを言うなあ」と和田氏が言うと、「言わないと実現しないので! 早く実行したいです」と切り替えした須田氏。セッションはさながら須田氏のさらなるゲーム開発に向けての決意表明の場ともなった。まずは、12月6日に発売予定のWii用ソフト『NO MORE HEROES(ノーモア★ヒーローズ)』に期待が集まるところだ。

▲週刊ファミ通バカタール加藤編集長、マーベラスエンターテイメントの常務取締役和田康宏氏、そして須田剛一氏によるトークセッション。パンクゲーム(オリジナルゲーム)などをテーマに語り合った。

 

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