”一騎当千の爽快感をオンラインへ”を合言葉に! 『真・三國無双BB』ができるまで
CEDEC 2007
●藤重氏が明かす『真・三國無双BB』開発秘話
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▲コーエーの藤重氏の講演はご覧のとおり超満員! 質疑応答タイムには時間が過ぎても熱心に質問する人があとを立たないほどで、大盛況だった。 |
コーエーのソフトウェア事業部ソフトウェア4部ソフトウェア4部長シニアマネジャーの藤重和博氏は、”一騎当千の爽快感をオンラインへ”と題する講義を行った。
藤重氏は『真・三國無双BB』の初期にはディレクターとして、現在は開発プロデューサーとして関わっており、『信長の野望 Online』や『大航海時代 Online』などのオンラインゲームを担当するソフトウェア4部を統括する立場でもある。講義は、『真・三國無双BB』の開発における課題と対応、そしてコーエーのオンラインゲームの歴史と今後の取り組みについて、藤重氏の体験談をもとに進められた。藤重氏はまず、『真・三國無双BB』のテーマを”一騎当千の爽快感をオンラインへ”と説明。この言葉は講義名にも使われているが、講義中に何度となくくり返された。藤重氏によれば、そのゲームの”らしさ”となるテーマを掲げて、コンテンツ追加などに関してもそこからぶれずに続けていくことが重要とのこと。一騎当千の爽快感はご存じのとおり、『真・三國無双』シリーズが掲げるテーマでもある。このシリーズの特徴は、1対多数の戦闘で、たったひとりでも劣勢な戦局を覆すことが可能な戦場シミュレーションを取り入れたことにある。だが、それをオンラインゲームとして実現できるのか、開発当初は不安も大きかったそうだ。
まずは、前述のテーマを含めてどういったゲームにするのかをしっかりと設定し、そこからひとつひとつハードルを超えていく必要がある。『真・三國無双BB』は、『無双』らしさである一騎当千の爽快感をあくまでも追求することに決定。そして、もうひとつこだわったのが、対戦の要素だという。オンラインで多人数が参加するゲームの形として対戦と協力がありえるが、開発当初どちらで進めるか相当な議論が重ねられたようだ。実際、協力のほうが開発がしやすいのではないか、という意見もあったそうだが、「協力型で作ってしまうと、そこから対戦に戻すことはできないと判断しました。検証をしていく上で企画を変更することはよくありますが、ハードルは高いけれども対戦ベースでゲームをデザインしておけば、問題があったときに協力にシフトできると思ったんです」(藤重)。
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▲「コンテンツ制作には”ならでは”というユニークさが重要。アップデートでもこれが下がるようじゃダメなんです。『真・三國無双BB』だったら、一騎当千の爽快感を必ず保つようにしています」と、藤重氏は強い口調で語った。 |
開発においていちばんの課題となったのは、通信環境の問題。『真・三國無双』シリーズは秒間60フレームにこだわっており、アクションゲームとして作る以上開発チームが妥協できない点だったのだという。60フレームを保った上で、日本全国各地でオンラインにつなげてプレイした場合にどれくらいの遅延が発生するのか? 『真・三國無双BB』は2006年5月にテクニカルテストを実施したのだが、「当時は日本の通信インフラ環境がどれくらいのパフォーマンスを持っているのかわからなかった」と藤重氏。そのために、ソフトバンクとがっちり組んで、当初はインターネットサービスプロバイダをYahoo!BBに限って導入することにした。検証の結果、3フレームまでの遅延ならアクションゲームとして成立すると結論。サーバーを全国に分散すればこの範囲内でいけるのではないかと目処が立ち、現在はプロバイダを限定しない形になっている。
また、技術的にもネットワーク構成をサーバー・クライアント型にするのか、Peer to Peer型にするのかなどの課題があった。藤重氏は、「技術的な問題は全体のゲームデザインとともに考えていく必要があります」と指摘。4対4での対戦で、一騎当千の爽快感を味わうための斬られ役には多数の兵士を用意する形でゲームデザインを考え、これに合わせてサーバー・クライアント型のシステムに決めた。だが、検証版を作成してテストをしてみたところ、結果はさんざんなものに。藤重氏は、「最初は動きもトロトロしたものでしたし、剣を振るスピードもゆっくりで、正直とても商品にはならないレベルでした」と当時を振り返った。結果的に、通信する際に各プレイヤーのPC間で同期をとらない非同期型の通信方式に踏ん切り、ひとつひとつ課題をクリアーしていった。
サービスインしてからも、『真・三國無双BB』はアップデートを含めてさまざまな手を打ってきた。藤重氏はそのひとつとして、プレイヤーの年齢分布や、地域別分布、対戦人数分布などのデータを集めたことを挙げた。たとえば、対戦人数分布データからはひとりでプレイしている人が多いことがわかる。ユーザーの半数がひとりでプレイしており、これは予想外のことだったとか。藤重氏は、このデータをもとにふたつの手を講じた。ひとつは、狙いとは違うとはいえ、ひとりで楽しんでいる人がいるのなら彼らの満足度を上げようという試みで、ひとりでクエストをこなせる”特務”を追加した。もうひとつは、対戦を楽しんでもらうための仕組み作りで、4対4の対戦のハードルを少しでも下げようと2対2の対戦やチュートリアルを実装。このように、「データをとってユーザーの声を汲むことが必要です。何でも出せばいいというのではなく、どの層に楽しんでもらうのかを考えなければいけません」(藤重)。また、ユーザーの意見を吸収しやすいシステムや社内の体制作りも重要だと語った。
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▲藤重氏はさまざまなデータを公開し、「定期的にこういった数字をとって、アップデートに活かしていかないと」と強調した。 |
後半パートでは、コーエーの歴代のオンラインゲームが紹介された。その中で藤重氏は、黎明期にはひとつのチームが開発を手掛けていたが、現在は開発と運営のセクションを分離していることを明らかにした。これは、複数のタイトルを同時に稼動させるためにも重要だったそうで、タイトルの垣根を超えてユーザーを楽しませるようなアイデアがたくさんあるはずだという。各タイトルごとのチームではなく、開発と運営という形で部署を分けることでよりよいコンテンツとサービスが生み出され、顧客満足度の向上に直結する。さらに、スタッフ個人がプロ意識を持つことにもつながるとか。開発が手掛ける”コンテンツ制作”と、運営が担う”サービス”は、オンラインゲームにとってクルマの両輪。藤重氏は、両者が対等な力とスキルを持って進めていくことが必要だとまとめた。
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