セガ小口久雄氏が基調講演で語る、”楽しい国、日本!”を目指すための方法論とは?
CEDEC 2007
●”遊びを作る……その本質とは”をテーマに基調講演
クリエーター相互の技術交流を図ることを目的としたセッションCEDEC(CESA
DEVELOPERS CONFERENCE)2007が、2007年9月26日に東京大学にて開幕した。プレイステーション3やXbox
360など、新世代機が登場するにつれゲームの開発も複雑化しており、ゲーム開発のノウハウに対するニーズが高まっている。CEDECはそんな開発者の要望に応える形で年々注目度が高まっており、開発者どうしの知識や方法論を共有できる場として、多くの業界関係者が詰めかけている。
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▲東京大学安田講堂にて行われたセガ小口氏の基調講演には、たくさんの聴講者がつめかけた。 |
そんなCEDEC
2007にあって、開幕を飾る基調講演に登壇したのは、セガの代表取締役副社長である小口久雄氏。”遊びを作る……その本質とは”とのタイトルで、50分間に渡り講演をした。20数年間に渡ってセガに在籍し、一貫してゲーム開発に取り組み続けてきた小口氏は、「今日は大きなテーマでかまえてみました。遊びを理解したうえで、楽しいゲームを作るにはどうすればいいかのハウツーをお教えします」と口を開くや、まずは"遊び"の重要性について説明した。
「人間の生活に必要な要件として、一般的には”衣食住”と言われますが、そんな衣食住に楽しさの概念を排除している場所があります。それは刑務所です。刑務所は社会的ルールを破った人のための罰則としてあり、”絶対に行きたくない場所”として機能しています。そんな刑務所でも、長期的に収監されている囚人には仕事や自由時間が与えられます。”楽しさを奪うこと”は相当な罰則行為であると言えます。そういった意味では、人間の生活に基本的な要件は
”食遊衣住”と言っていいでしょう」(小口)
そのうえで、「人間は(他動物も)つねに快感原則を得るために、または不快感を避けるために行動する」という精神学者フロイトの言葉を引用しつつ、いかに人間は”快感原則”を行動衝動としているかを説明した。さらには、”遊び”とは何かということを辞書からの定義を引きつつ説明し、最終的には「定義しづらいもの」であるとした。
「たとえば、英語の辞書で遊ぶ(”play”)を引いてみると、ほとんどの動詞が”play”で対応できそうに見えます。遊びとは定義がしにくくて、概念がどんどん広がってしまう。これは遊びというものの本質が”楽しさ”、”快感”にあるので、いろんな解釈ができるからです。楽しければ何をやってもいいのが遊びであり。学問をするのが楽しい人は、それが遊びであり、仕事をするのが楽しい人は、それが遊びでもあります。定義しづらい感覚的なものが楽しさなのです」(小口)
お腹がすいてる人にとっては、ご馳走は何よりの楽しみだが、満腹な人にとっては苦痛以外の何物でもない……「楽しさというものは流動的なものです」と小口氏は言う。
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▲「ゲームは仮想現実的な行為ではあるが、楽しさが現実と区別されない場合もある。遊びには十分配慮してほしいが、逆に”何ものもダメ”という決めつけもよくない」という小口氏。 |
さて、ではそんな定義しづらい”楽しい”ビデオゲームを作るにはどうすればいいのか? 小口氏はゲームの本質をインタラクティブ性(双方向、対話型)にあるとしたうえで、人の欲求の整理から始める。小口氏が整理した人間の欲求は以下の4パターンで、下に行くほど高次の欲求となる。
(1)生理的・本能的な欲求
(2)おもに身体内部からの情報にもとづいた欲求(呼吸、食欲、睡眠など)
(3)おもに体の外部からの情報にもとづいた欲求(逃避、闘争)
(4)心理・社会的な欲求(獲得、保存、秩序、保持、構成、優越、達成、承認、顕示、保持、劣等感の回避、防衛、反発、支配、恭順、模倣、自律、対立、攻撃、屈従、非難の回避、親和、拒絶、養護、救援、遊戯、求知、解明)
「楽しいゲームとは欲求が満たされるゲームです。逆に言えば、こうした欲求が満たされない行為は単なる作業であり、つまらないものとなります」と説明した小口氏は、自身も大好きという日本を代表するタイトルのひとつ『ポケットモンスター』を例にとり、そのおもしろさを分析した。
「『ポケットモンスター』はなぜおもしろいのか? それは人の欲求を満たす行為がバランスよく配合されているからです。『ポケットモンスター』は、おおまかに言うと”フィールド上のモンスターを集めて、育てて、ストーリーを進める”というゲームですが、そこには、”獲得”、”逃避”、”闘争”、”保存”、”秩序”、”保持”といった要素が含まれています」(小口)
さらには、『ポケットモンスター』の骨格は”獲得”と”戦闘”からできているが、そのほかは自由にできるのが肝であるという。「完璧にやらないと獲得できないというのではユーザーが苦痛になります。快感と苦痛は表裏一体のものなのです。そのあとで、小口氏はゲーム開発のための一助として、以下の方法論を提案する。
「ゲームを開発するうえで、まずは欲求の種類から考えてみるのもいいでしょう。どんな欲求を満たすゲームを作りたいか、決め打ちをしてみる。イメージをして企画書に落とし込んでいくのもいいでしょう。あるいは、イメージしたあとで、これはどんな欲求を満たすゲームなのかを整理するのもいいかもしれません(小口)
日本では人間に必要な要件として、よく
”衣食住”と言うが、なぜ”遊”が抜けているのか。それは、「ある程度個人的な意見になってしまいますが、日本人が人生を楽しまない人種だからではないでしょうか。日本人の自殺率が先進国では格段に高い(世界で10位)のも問題だと思っています」と小口氏は言う。遊ぶという行為は人間にとって重要なことであり、必然的なことでもある楽しいゲームを提供することが世の中の役に立っていくと信じて20数間開発をしているという小口氏。「この業界がますます発展するためには、夢と誇りを胸に遊びづくりをしてほしい。目指すは”楽しい国、日本!”です」と来場者にメッセージを送って講演を締めくくった。
講演の時間が50分と短時間なため、後半は少し駆け足になってしまったのが残念だったが、小口氏のゲーム開発にかける”思い”を、講演から感じとった来場者は多かったのではないだろうか。
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▲参加したゲームクリエーターにメッセージを送った小口氏。 |
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