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Text:永田泰大(週刊ファミ通編集委員)





 予定どおり土曜日の夜もプレイできなさそうだったが、昼間に少し時間ができた。午後3時すぎから4時くらいまでのほんの1時間ばかり。つまり、何をするにも中途半端な時間だ。

 『ドラクエ』でもやるか、という気分になった。

 太陽のあるうちに『ドラクエVII』をやるなんて、おそらくいままで一度もなかったことだ。今日は風は強いが天気はよく、子どもたちのはしゃぐ声が遠くから聞こえた。ときどき窓の下をクルマが通る。屋上に干した洗濯物は風に飛ばされてはいないだろうか。

 昼間に少し『ドラクエVII』をやってみるのも悪くない思いつきのように感じた。

 日米野球も気がかりだったけれど、シーズンオフの親善試合はどうにもテンションが上がらない。それは、選手のせいというよりは、見ている僕らのせいのような気がした。バックネット裏や外野席は概ね満員だったが、ポール際には空席も目立った。バリー・ボンズの弾道には感動したけれど、いかんせんそれは気の抜けた炭酸飲料のようだった。

 松井選手の右中間へのホームランを見たあとで僕は画面を切り替えた。ここ数日ばかり、僕のセーブポイントはダーマ神殿である。そこで熟練度をチェックし、僕はいつもの場所へルーラを唱えた。あとはのんびり"くちぶえ"である。風の強い休日の昼下がりに、洗濯物を干したあとで、のんびりとレベル上げをする。こういう過ごしかたって、一般的にはどうなのだろうか。

 昼間のRPGはやはりいつもと少し違う。もちろん個人的な話だ。まずコントローラーを持つ体勢が違う。いつもの定位置ではなく、適当な場所に僕は座っている。のんびりとボタンを押す。足を伸ばしたり、肩肘をついたりしている。画面では仲間たちが、ゆりかごの歌をうたったり、祈りを込めて十字を切ったりしている。はぐれメタルが逃げたりしている。スーパースターとして板についてきたりしている。どこかに放り出しているデジタルの腕時計がピッという短いアラームを鳴らしている。何もホイミスライムに向かってベギラゴンを唱えることないのにな。座布団を半分に折り畳んで背に挟む。イオナズンが炸裂して、少しボリュームを下げる。タバコを吸うためにコーヒーを入れようかと思うけれど、面倒くさいからやめる。ファンファーレが鳴って誰かのレベルが上がる。とてもいい天気だ。思い立って、リートルードの町へ行く。力自慢コンテストで優勝して表彰された。まだ優勝していないコンテストがあるけど、どうしようかな。流しにいくつか食器が貯まっているけれど、急いで洗うほどでもない。"くちぶえ"を吹く。仲間たちは、メダパニダンスを踊ったり、祈りを込めて十字を切ったりしている。

「あなたは土曜日の昼間、何をしていましたか?」
「洗濯物を干したあとで、『ドラゴンクエストVII』というRPGをプレイしていました。レベルを上げたり、力自慢コンテストに出たりしてました」

 そういう過ごしかたって、一般的にはどうなのだろうか?

 主人公が魔法戦士のマスターになった。いつものように戦闘を切り上げてダーマ神殿へ飛ぶ。何に転職しようか。僧侶は時間がかかるけど、これから羊飼いになるってのもなんだか違う気がした。大神官を前にして迷っていたら、驚いた。リストの中に"ゆうしゃ"という文字があった。何がどう作用したのかわからないけれど、どうやら僕は条件を満たしていたようだ。僕はためらわず勇者に転職した。

 ちょうど予定の時間だった。思わぬところでふんぎりがついた。僕は電源を切って、洗濯物を取り込みに屋上へ上がった。

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