前日の日記で、ついつい先の情報をしゃべってしまう人についてけしからんと述べたところ、さっそく「我が身を省みてしょんぼりしました」というメールをいただいた。いや、その、少し言い過ぎました。すいません。
ともあれ、僕がいかに先のことを知りたくないか、あるいは先のことを知らせたくないかは、ここ2週間ばかりの日記を追っていただいている人ならわかっていただけたかと思う。さて、僕は昔からそういった性分であるので、このプレイ日記を始めるずっと以前からそういったことを口やかましく言ってきた。さすがに職場の連中はわきまえてきたようで、人々が仲良く談笑している集まりなどに僕が近づいたりすると、「しっ、永田が来たぜ、黙れ黙れ」、「おい見ろ、永田だ、どやされるぜ」、「この話は他言無用ということで・・・」などといった感じで静まり返るしだいである。なんだか鬼看守のような扱いである。生活指導担当の体育教師のような扱いである。むしろやっかいもの呼ばわりである。
まあよい。義のためなら鬼にもなろう。いばらの道で生活指導もしよう。いつか彼らもわかってくれるさ。看守あってのアルカトラズだ。宗方コーチあっての岡ひろみだ。いつか泪橋を逆に渡るんだ。毎度話が進まんなあ。
そういったわけで、僕は極力先の情報を知らずに進んできた。そして、先の情報を知らせないために、ここでは僕の『ドラゴンクエストVII』の進行状況を抽象的に記してきた。アルカトラズのならず者たるファミ通編集部の連中もときどきここを読んでいるようで、ここで僕の進行状況を確認したうえで『ドラクエ』の話を振ってくる。平均的に連中のほうが先に進んでいるようだから、これは話をするうえでたいへん都合がよい。僕は自慢じゃないが、先の話は絶対にしたくないけど経験したことは人一倍話したいというやっかいな性質を持っているのである。
で、本日。Hという男が話しかけてきた。「永田さん、ついに追いつかれちゃったよ」と彼は言う。どうやらこのプレイ日記で僕の進行状況を知り、それがついに自分の進行状況と同じになってしまったというのだ。「どこ?」と僕が聞くと、彼は「H2O」と答えた。意味がわからんなあと思っていたら抽象的な進行状況の話だった。なるほど、僕は9月6日の日記に"大量のH2Oに囲まれた石造りの建物"がある場所に到達したと書いている。彼もちょうどそこを過ぎたばかりだというのだ。しかしおかしな話だが、こつこつとゲームを進めていて先を進む人に追いついたというのはなかなか気分がよろしい。べつに早く先に進んだ人が偉いというわけでもないのだが、なんだか根拠不明の優越感がある。わけてもこのHという男は、発売日とともに購入してガンガンとプレイし、「永田さん進むの遅いよ話できないじゃない早いとこ進みなよ」などと日々僕にほざいていた人間である。ウサギとカメでもないが、こつこつ進んだ僕がようやく追いついたというわけだ。根拠はないがなかなか気分がよろしい。
僕は先輩の器の大きさを知らしめるべく、「やっぱり日々の少しずつの努力だな。一気に進んだりすると往々にしてぱったり進まなくなったりするもんだよ、キミ」などと諭した。加えて、「これからはプレイ日記は読まないほうがいいよ。キミの知らないところの話が出てくるかもしれないからね」などと皮肉のひとつも言っておいた。根拠不明の優越感があるように、根拠不明の劣等感もある。Hはそれを聞いて「きーっ、週末に進んでやる!」などと叫んでいた。若気の至りとはこのことである。思春期特有の情熱である。ティーンネイジャーの慟哭である。長距離ランナーの孤独である。それで、上機嫌の僕は悔しがるHに向かって「あ〜、ときにチミはどのへんを進んでおるのかね?」などと問うた。Hは下唇を噛みしめながら「○○○○○を手に入れたところ」と答えた。
なんですって?
いぶかしい表情を浮かべる僕を見て、Hは「だからあ、○○○○○を手に入れて○○○しているところですよ。町は○○○かなあ。永田さんは、○○○のあたりでしょ?」などとまくし立てた。
ええと、それは、なんの話ですか?
絶叫したのは僕であった。瞬時、Hも察して絶叫した。Hは、やはり僕よりぜんぜん先に進んでいたのだ。彼はプレイ日記に記された僕の進行状況を誤解していた。僕が痛感したのはつぎのようなことだ。
しまった、抽象的すぎた・・・。
よくよく慎重に話し合ってみると、どうやら"大量のH2Oに囲まれた石造りの建物"というのは先にも登場するらしい。むしろ、僕がまだ到達していない先の地点にある建物のほうが、"大量のH2Oに囲まれた石造りの建物"と呼ぶにふさわしいものであるらしい。そう言われてみると、たしかにほかにも登場しておかしくないようなシチュエーションではある。
先の話をしたくないあまり、抽象的に進行を記してきた僕が、その抽象具合ゆえに先の話を知ってしまうとは、これはまた痛烈な皮肉。恩を徒で返されるとはこのことである。朝顔につるべ取られて貰い水とはこのことである。
そういうわけで、抽象的ながら誤解のないように具体を交えつつ記します。姉と弟が登場する荒くれどもが巣くうガッカリムードな町にいて、町を牛耳っている男の家のプールでは半裸の女がぐるぐる回っています。そんな感じですので、僕に話しかける人は誤解のないよう注意してください。 |