第七回「欲望という名の電子(最終回)」
ブルボン小林のE3末端レポート
芥川賞作家にして「ゆるいゲームコラムニスト」でもあるブルボン小林氏が、ロサンゼルスからE3レポートを送信します。本当にE3いってるのかという、よそみぶり、脱線ぶりをお楽しみ下さい。でも、会場の模様もお伝えします。 |
ブルボン小林のE3末端レポート
第七回「欲望という名の電子(最終回)」
この特設情報ページも、さすがにE3が閉幕して一週間もたった今はこの連載しか更新されておらず、なんだか一人だけ給食食べるの遅くて半泣きでモグモグやってるような気分になってきた(書くの遅くてすみません)。でも今回でやっと最終回です!
E3初日、半分以上は観たし、残りのブースは翌日にして、ホテルで少し休もう。そう思いかけたとき、ふと、連載第一回に登場した装丁家のNさんの言葉を思い出した。
「『塊魂』の続編を、どうぞみてきて!」みてきて…てきて…きて…きて……。
そうだ。俺は指令を受けていたのだった(註・セリフにエコー処理してあります)。一路、ナムコのブースを目指す。
今回、三大ハードメーカーこそにぎやかだが、ソフトメーカーのことをいうと寂しい印象もある。派手なブースで展開していた国内メーカーはナムコ、カプコン、コナミ、セガ、テクモくらい。セガもハードメーカーだったころの勢いは薄れた感じ。老舗のタイトーのブースにいったら、規模が小さいという以前にパーテーションのような壁で囲われ、ドアが閉じていた。
メーカー同士の合併話も相次ぐ中、E3の地図がそのまま勢力図を示唆しているようにもみえてくる。もっとも、イキのいいメーカーでも(米国RockStar社など)出展していないところもあるんだけど。
ほとんど一駅歩くくらいの移動でナムコブースにたどりつく。
「みんな大好き塊魂」をみる。
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はい、みましたよ、Nさん!(ええっそれで終わりか! もっとこう操作性とか、「レポート」しろよ!)
いやでも「みてきて」っていわれただけだから。たしかにみました。あーみたみた。さーかえろかえろ。
……そのとき、向こうのステージでまた威勢のいいスパイスガールズというか、少し前のペプシコーラのCMでコロセウムで観衆を煽っていたような女性が男子どもに呼びかけている。
「Hey,You guys! Rock'n roll! yeah!」
「YEAH!!」
なんだかすごい盛り上がりだ(註・英文の適当さはわざとです)。
「Nice to meet you! I'm fine thank you! and you?(ブルボン訳・この『塊魂』のE3限定グッズがほしいのかい?)」
「Yes I do!!(訳・ほしいとも!)」
「Bourbon is very cool! and cute!(訳・聞こえないよ、本当にほしいのかい!?)」
「That's right!!(訳・本当にほしいとも!)」
なんと、フリスビーのようにグッズを投げはじめた。鏡割りだ! ちがう、餅巻きだ! これをNさんのために持ち帰れば格好がつく!(註・なお、原文の適当さもわざとです)
物欲しそうな顔でヘイカマーンみたいなムードを出して手をのばす。二度、三度、四度、五度。
まったく、とれません。
全然「塊魂」なイメージではない野太い女性だが、どんどん盛り上げながらこういった。
「Last one!」
……これ、ヤラセみたいですが、本当に最後の一個をゲットしたのです! ヤッター! すてきなマウスパッド。みればみるほど、壇上のお姉さんと印象違ってます。
Nさんへのおみやげも確保。はじめて一人でタクシーを呼び止め、ホテルへ帰りつくなりバッタリと倒れる。明日は最終日。取材を終えたらヒロミとデートだ。スターウォーズをみるぞ……。
最終日、起きてすぐに、えべっさん改めえべ太郎氏改め菊太郎氏に電話をいれる。今、飛行機に乗ったところだという。そうか、お互いに多忙だものな。大変お世話になりました。お礼をいう。今回の旅行で嬉しかった出会いの一つだ。
E3会場入口にてふじのっちと合流。今日は小さなブースをみてまわる。
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「鬼武者」関連か、やたら怖いコントローラを出店するメーカー。無駄にほしいぜ! 米国での発売も九月ごろだそう。メッセサンオーカオス館の店長みてますか、絶対に入荷してね! ふじのっちと僕と、二個は確実に売れますから!(そして三ヶ月くらいして思うんだろうな。なんでこんなの買ったんだろうって)。チェーンソー型は「バイオハザード4」専用。
一部で「レトロゲームフェス」みたいな催しも行われていた。アタリ、アルカディア、光速船、ジャガーとかリンクスといった実機がずらり。
僕はレトロゲーム大好き、のはずなんだけど、でもなんか気持ちがときめかない。
これは米国らしいといえるのか分からないけど、まず、展示されているゲーム機が、なんだかきちんと磨かれてない。誰かの家で埃かぶってたのをそのまま持ってきた「家の中」感がある。
懐かしがって立ち止まっている連中もどこかくたびれた感じ(註・自分は棚にあげてます)。
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▲ 日本のPCエンジンの「R−TYPE」その米国版パッケージ。なんだか自機のデザイン「こうじゃない!」って抗議したい感じ。 |
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▲ ワーイ! ガンもハンドルも全部アソベルー! って感じの三角形ゲーム。これ、「同時に」遊べるんだったらなおすごいね。 |
すごい最新映像だけがゲームじゃないけど、レトロの愛し方も、こうなのかな、と思いながら一通り回ったところで加藤編集長から電話。最新のPS3の映像がみられるという。行列をつくって、ミニシアターみたいなところに入る……。
ドーーン、ババーーン、ボーーン、ガーーン。映像撮影禁止につき、脳内イメージ音声でお楽しみください。
(実感は、ファミ通本誌で、いずれなんらかの形で語ることになると思います)
……あーすごかったすごかった。シアターみたいなところから出ると、ちょうど新型PS3のモックが飾られている。群がって写真を撮る人々を写真にとる。なんだか珍獣みたいだ。
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それから加藤編集長と二人、ホテルに戻る。夜からSCE主催のパーティだ。任天堂のパーティはマルーン5だったが、ソニーのパーティはマルーンいくつがくるんだ。セブンか、エイトか(註・気にしないでください)。
「時間まで買い物にでもいきましょうよ」案内してくれるという。しかし。ヒロミからの電話がない。ヒロミ・グレースは今日はカンファレンス(って何をやるのかまるで分からないが)に出席している。もう終わるころだが、どうしたんだろう。
「なにかご予定でも」いえ。
二人でモールを巡っている間も、ソニーのパーティ会場に向かうときも、ヒロミからの連絡はなかった……。
夕刻。パーティに向かうバスは小高い丘をどんどんのぼる。ビバリー「ヒルズ」とはいったもんだ。ドジャースタジアムの側の、広い広い会場だ。着いてから、なお遊園地みたいな連結カートに載せられる。これ、急に一人で帰りたいなんていえるのだろうか。ヒロミとこっそり抜け出すなんて不可能だろう。
任天堂のパーティともまた違ったムード。野外の解放感はふんだんで、ロックフェスの趣すらある。実際、人気者っぽいバンドがジャカスカやってる。
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▲ もはや、バンド名を誰かに尋ねる気力もなかった |
ダウンタウンの夜景を遠くに眺めつつ、少し寂しい気がする。ここには大勢いて、バンドの音楽もにぎやかで、我々は皆、自分でバスに乗ってやってきたのに、でもなんだかこっちが置いていかれてしまったような錯覚があるのだ。旅をして数日たって、楽しいことがたくさん続くとき、楽しいのにふと一瞬感じるような気持ちだ。
明日の朝には帰国するのだが、ヒロミに挨拶できないままかもしれないということも、気持ちをしんみりさせたのだろうか。
「加藤さん加藤さん」そこにファミ通の若手編集者がやってきて、いった。
「向こうで今、日本のゲーム業界が動いてますよ」ふるった言い方で、どれどれといってみると、そこにはシブサワコウさんがいた。堀井雄二さんがいた。他にも大勢のクリエイターの姿が。
……もう、お腹いっぱいです。短い時間だが言葉を交わし、疲れつつも充実した気持ちで夜十時ごろ、会場を後にする。カートを降りてバスに乗り継ごうとすると、広い駐車場で綺麗な女性が話しかけてきた。
「(入場のための)チケットもってる?」リストバンドタイプのあれだ。出るときに、おみやげと引き換えに返してしまった。そう(加藤編集長が)告げると、残念そうに立ち去る。なんだろう。
中で登場するバンドのおっかけだろうか。また一人、綺麗な女性が同様の質問をする。
バスに乗り込むと加藤さんが教えてくれた。
「こういう大きいパーティでは、パトロンに出会って、よりいい仕事をもらおうと、女の子たちが会場にもぐりこみたがるんですよ」ロサンゼルスの喫茶店やレストランのウェイトレスの「レベル」は総じて高く、それは皆、チャンスを狙ってくるのだという。
そうか。僕はあらためて会場をみやった。ベルリン映画祭で新人賞をとった監督に、似た話をきいたことがある。映画祭の期間中、女優志望がホテルの部屋まで「寝に」くるから、絶対に寝てはいけないと注意されるのだそうだ。
……テレビゲームもまた、巨大な欲望のビジネスなのだ。昼間みた莫大な情報量を伴った最新映像を思い返し、ぼうっとした会場の明かりを、しばし眺める。
翌朝、空港での搭乗手続きの会話を反すうしているところに電話が鳴る。ヒロミからだ。
「ヒロミさん!」
「私ねえ、日本で仕事が入って、今日戻ることになったんですよ。多分ブルボンさんと同じ飛行機だから、一緒に帰りましょう」
オー、ヒロミ! 気まぐれでマイペースな人よ。ヨカッタヨカッタ!
E3に誘ってくださって、僕はとても嬉しかったですよ。飛行機でいろいろ話しましょう。
昨日おととい、みたこと聞いたこといろいろ、話してみたいことがたくさんあるのだから。
……ということで、ブルボン小林のE3末端レポートはこれでおしまいです(ヒロミ・グレースの正体はわかりましたか?)。
こんな内容で、来年は声かかるかなあ。(おわり)
BGM: |
ハスキー欲望という名の戦車(ハイロウズ) |
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