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第一回「ヒロミ・グレースの誘い」
ブルボン小林のE3末端レポート

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芥川賞作家にして「ゆるいゲームコラムニスト」でもあるブルボン小林氏が、ロサンゼルスからE3レポートを送信します。本当にE3いってるのかという、よそみぶり、脱線ぶりをお楽しみ下さい。でも、会場の模様もお伝えします。

 

ブルボン小林のE3末端レポート

第一回「ヒロミ・グレースの誘い」

 

 アテンション! つまりチューイ! この「E3末端レポート」は最新ゲームの速報をお届けする主旨ではありません。E3での「特ダネ」報告を期待している皆さんは、別のニュース記事をご覧下さい。

 

 ヒロミ・グレースから電話があったのは、五月の上旬。
「ブルボンさんは、E3にいかれるんですか?」ヒロミは、もちろん渡米するのだろう。
「いえいえ」とんでもない。電話なのに、ブルブルと首を大きく振ってしまった。
「あ、そうなんだ」意外そうな声音。親しげでもある。ヒロミ・グレースと僕はまだ二度くらいしか会ったことがないのに。
「そりゃそうですよ」動揺しながら答える。
「あ、E3に興味がない」と問われ、興味があるかどうか考えてみる。あるかないかでいえば、ある。
「あります、でも」自腹でいくほどのテンションはないのだ。正直に告げた。
「なるほどなるほど……それでは、私、ファミ通の編集長に、ちょっと今からでもホテルなんか取れそうかどうか、打診してみましょうか」などという。大丈夫だろうか。僕はちらっと時計をみて答えた。
「え、今からチケットなんて取れるんですかね」カレンダーをみるべきなのだが、突然の展開に動転しているのだ。
「分からないけど、キャンセル待ちもあるし、大丈夫ですよきっと」
「そうかなあ」僕が気まぐれに「いく」なんて返事をするせいで、ファミ通編集部の前途洋々たる若手社員が一人、お留守番なんてことに裏でなったりしたら……。煮え切らない返事の僕にヒロミは良く響くいい声でたたみかける。
「ブルボンさんはE3を見るべきですよ」なんだか、どきどきするような口説き言葉だ。
「そうですか」ついいってしまう。
 助詞の使い方がいい。「E3は絶対にみるべきですよ」よりも、なんかこうエスペシャリィな感じがする。
「ブルボンさん(ほどの人物)はE3(という素敵なもの)を見るべき(それくらい当然)ですよ」
 つまり、E3と同等以上にブルボンに価値がある(かのように錯覚させる)響きがある。いつか別のシチュエーションで、僕も使おうと思いつつ、電話を切る。

 

 翌日、ファミ通編集長のバカタール加藤さんから電話。
「チケットなど、もろもろ都合がつきましたので、ぜひ、ブルボンさんに!」まじっすか!
 そのとき、なんだかありありと浮かんできた。ヒロミ・グレースが、加藤さんにもミラクルな口説きの言葉で「その気にさせた」様子が。
「絶対にブルボン君をいかせるべきですよ」彼はやる男です。彼は日本を背負って立つ男です。彼は結果を出す男です……彼は……彼は……(注・すべて妄想です)。
 そんなわけで「このレポート報告その他の仕事を引き受ける」という形でE3への参加がとんとんと決まったのだった。つまりこれは仕事なのだ。首輪つながれてるのだ(と、首輪の例えは時事的によくないですね)。

 

 そして十五日。本業の打ち合わせで、装丁家のNさんに「『塊魂』の新作をどうぞみてきて!」と託される。ああ、みてくるともさ!

 

 打ち合わせを終えたところにヒロミ・グレースから電話。
「一緒に行くはずだった人がキャンセルなんだけど、ブルボン君、よければピックしていけますけど」
 ヒロミの愛車は2シーターのBMW、それもオープンカーだった。何者なのか、との思いがここでやっと脳裏をよぎる。一緒にいくはずだった人って? このデートカーで?

 

 様々な疑問を口にする暇を与えないように高速をぶっ飛ばすヒロミ。いろんな意味でメロメロになりながら成田空港へ。オープンカー日和の快晴で、車中でも話は弾み、弾みすぎて、入り口を間違えて空港を一周してしまう。

 

出発なのに気付いたらウェルカムとかいわれてた。

▲ 出発なのに気付いたらウェルカムとかいわれてた。

 

 空港のボディチェックでは、ひっかかってチェックされるヒロミをデジカメで撮影しようとして係員にたしなめられたり(撮りたかった)、早くも珍道中のムード満々。

 で、今、明かりの消えた機内で、パワーブックでこれを書いています。まるでパワーブックのテレビCMのようだと思いながらね。ヒロミ・グレースは寝ているような考え事をしているような風で、目を閉じています。

 ……と、思ったら薄い寝息が。ロス到着まであと5時間。


ブルボンは無事にロスに着けるのか、そして謎のゲームプロパー、ヒロミ・グレースとは何者なのか。謎を残しつつ次回につづく!

 

ヒロミの愛車。

▲ ヒロミの愛車。映画「007ワールドイズノットイナフ」にも登場した2シーターのBMW。排気量5000! もともとは、元セガのY川専務のものだったそうな。この車中であんな口説きのミラクルが出たらもう……。

 

BGM:砂原良徳「747Dub」
熱帯バンド「熱帯ZONE」(アルバム「サウンドオブタワー」より) 

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