●煩悩を捨てた修行の日々、そこから生まれた『超兄貴』の音楽
−−ゲームミュージックを作り始めたきっかけは?
葉山 いまから15年くらいまえですかね。専門学校に通っていたんですが、いまの若者とおなじように、なにをしていいかさっぱりわからない、どうしたらいいんだろう、と路頭に迷ってたわけですよ。
そこに、メサイヤというゲームメーカーで働いていた友人からサウンドのアルバイトの誘いを受けまして。20歳のときに、いまみたいな入社試験もなくポコッと入って。それで学校行きながら、1曲10000円で作ってました(笑)。15年まえの物価ですからねえ、当時にすればうれしいバイトをさせていただいて。大卒の初任給が10万に満たないような時代でしたからね。でも、ほとんどメサイヤさんには行かなくて、自宅で曲作って送ってたって感じなんです。そんなカンタンな仕事から入って、それから続くこと……15年ですか(笑)。
−−いちばん最初に作られたのは何というゲームの曲ですか?
葉山 PCゲームだったんですが、『ガイアの紋章』と『エルスリード戦記』かな。どちらが先かは忘れてしまったんですが。
−−で、そのあと葉山さんの名前を世に知らしめることになった『超兄貴』が発売されるわけですが。これもそのときのメサイヤさんとの仕事の流れで?
葉山 いや、じつは何をしていいのかわからなくて、ありとあらゆる会社を転々としてた時期があってね。で、25歳のときかな、「俺はこのままではマズイ」と思って一念発起したんですよ。この調子でいったらオレの人生はどうなってしまうんだろう、って。
それで、ホラ、いまも帽子かぶってますでしょ。これは何でかって言うと寿司屋の板さんみたいな頭してるんですよ。雑念を払うために(笑)。若いときは、それこそ「女の子にモテたい!」っていろいろ髪型とか模索したけど、「もう女はやめた!」って25歳のときに思って。……「やめた!」って言うと語弊があるんだけど(笑)。煩悩を断ち切って音楽だけに専念しようと決心したんです。
そうして作ったのが『改造町人シュビビンマン2』っていうPCエンジンのゲームの音楽。そのあと、例の『超兄貴』と『モトローダーMC』と『超時空要塞マクロス
〜永遠のラブソング〜』のPCエンジンの3タイトルの音楽を、わずか5ヵ月で作ったんですよ。
−−5ヵ月で3タイトルですか!
葉山 うん、あのときは体をボロボロにしながらやってね。頭を丸めて煩悩をあきらめて、フリーになってどこの会社にも所属せず、機材もなけなしの金をはたいて自分で揃えて。そういう環境でこの3タイトルを本当に一生懸命やったんですよ。だから、煩悩を捨てて修行の日々を過ごして出来たのが『超兄貴』の音楽だと。
−−うーん、そうだったんですか。
●一般の音楽ファンにナメられてるという状況に腹が立つ
−−では、今回のアルバムについてお伺いしたいんですが、この『明日は晴れる』は『超兄貴』を代表するこれまでの葉山さんのアルバムとは違った感じがしますが、これには何か理由があるんですか?
葉山 ゲームミュージックというものが、もうはっきり言って、ゲーム音楽としての存在理由がなくなってきちゃったと思うんですよ。あるゲームミュージックの有名な作曲家が、某大手新聞の取材でゲーム音楽の極意みたいなことをしゃべってたんですけど、「ゲーム音楽は作曲者の表現の場ではない」って言っててね。
−−ほーう。
葉山 作曲者の表現の場ではない、それは確かに一理あるかもしれない。
でも、みんな開発者の言うこと聞いて、自己主張せずにゲーム開発の歯車になっちゃったら……スペアーがきくようになっちゃうんです。たとえば、Aさんというミュージシャンが「うーん、どうもスランプだなぁ」って言うと開発者は「しょうがないなぁ。じゃあBさんこっち来て」ってスペアーのBさんに曲を作らせる。そうやってみんな横並びに同じものを作ってしまうんです。いまのゲームミュージック界はまさにそういう流れだし、同じような機材を使って同じようなツールを使って同じようなことを教わるから、スペアーがきく、要するに誰でもいい音楽ばっかり溢れてる。だからオレは、いまのゲームミュージックって、ゲームミュージックにあらず単なるゲームバックグラウンドミュージック、"ゲームBGM"だと解釈してますね。
−−ゲームBGMですか。
葉山 だって、そこに個性がないんだから。数年まえならね、タイトーのZUNTATAさんとか、セガのSSTさんとか、カプコンさんの……。
−−アルフ・ライラ・ワ・ライラですね。
葉山 そうそう。コナミは矩形波倶楽部とかあって、オレもその流れの中にいましたけど、なんでああいう大きな活動をやってたのかっていうと、ゲームミュージックをゲームの中だけで終わらせちゃいけないぞ、っていう想いがあってやってたと思うんですよ。
ゲームの中で音楽を完結させてしまうと、ゲームのバックグラウンドミュージックで終わってしまうじゃないですか。それじゃひとつのジャンルとして、あまりにも逃げがいっぱいありすぎて、J-POPやJ-ROCKといった一般の邦楽にナメられるんです。いや、これは大げさにじゃなくてナメられるんですよ、本当に。
−−「逃げがありすぎる」っていうのは、"ゲームの中の音楽"と割りきってしまった時点で、自分が作ったものに対して責任感が薄くなってしまう、ということなんでしょうか。
葉山 そう、まさにそのとおり。でもオレは、ゲームミュージックが一般の音楽ファンにナメられてるという状況に腹が立つ。オレも10年近くライブとかやってますけど、実際ライブに来てくださる観客のみなさんは、気迫溢れるかたばっかりですよ。これは本当にね。J-POPのミュージシャンに何ら遜色ないライブを展開してる自信がありますよ。
でも、やっている音楽がゲームミュージックというだけで、変な差別がやっぱりあって。大きいCDショップに行くと、3階にJ-POPとかJ-ROCKのコーナーがあって、いっちばん上の7階とかに"アニメ・ゲームはこちら"なんて感じで分けられて。それで、そのゲームコーナーの棚に葉山宏治のCDがポコーンと置かれてる。うーん、なんか差別されとんなぁ、と。
−−たしかに現状はそうなってますね。
葉山 だから今回は、「じゃあ、ゲームミュージックの枠の中からJ-POPに挑戦してやろう!」と、そう思ったわけですよ。ゲームミュージックのミュージシャンでもJ-POPの曲を作れるんだ、というのを見せたかったっていう。
いつまでも「ゲームミュージックだから」って理由でナメられてるわけにはいかないですからね。それで、以前から暖めていたボーカル曲を集めてJ-POPに殴り込みをかけられるアルバムを制作した、というワケなんです。
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