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ニュース 『チャイニーズ・ディナー』堤幸彦監督インタビュー
2001年9月28日
 斬新な映像手法を武器に、テレビドラマ界で一躍寵児となった映像作家・堤幸彦。いまでは、ブラウン管、スクリーン、ステージと場所を選ばず、大舞台で自由に活躍している彼が、突如『チャイニーズ・ディナー』というインディペンデントチックな映画を作った。"中華料理屋"というひとつのシチュエーションに、たった3人だけの登場人物。この所業は酔狂なのか? マジなのか? DVDのリリースに合わせて、堤幸彦本人からその真意のほどを聞いてみた!

●出発点は生身で作品と向き合えるか?

−−本作は、これまでメジャー枠で活躍して来られた監督の作品群と比較すると、マイナーさや実験的な印象を受けます。そもそも、この映画の企画はどういう経緯で立ち上がったのですか?

▲「バスの窓から見る人間社会の景色は、作り物なんかよりも百万倍おもしろい。形式化された映像物と、現実とのハザマを模索してるんです。シュールすぎてもダメ、かといって現実的すぎてもおもしろくない。その中間は何かってことと、ずっと格闘し続けてる」(堤監督)
堤幸彦監督(以下 堤):実際、この映画に出演しているのは3人なんですけど、最初の段階ではふたりの出演者だけで、映画を作れないかな、と思ったんです。あとは、ワンセット、ワンシチュエーションという、舞台のような設定を映像化できないかな、って。最近の映画って、年々大きな仕掛けの作品が出てくるようになったでしょう。テレビドラマにしても、毎週大掛かりなセットを組んだり。ボクが以前手掛けた『ぼくらの勇気〜未満都市』('97年)なんてのは、赤字覚悟で巨大なセットを作っちゃったりね。

 そういった感じで、ボクはこれまで、比較的ケレン味で作品を作ることが多かったんです。なので、ここはひとつ、そういうところからいったん離れて、カメラひとつ、つまり生身で作品と向き合えるかどうかっていう実験をしてみたい、っていうのが『チャイニーズ・ディナー』を作る出発点となったんです。

−−物語は、インテリなヤクザ(柳葉敏郎)と謎のヒットマン(IZAM)が、互いに殺すタイミングを伺いながら食事をするっていう、一風変わったものですよね。このアイディアどこから出たのでしょう? また、"中華料理"を選ばれた理由は?

:食べることと死ぬことって、たいして違わないんじゃないか、って考えたんです。これを前提に、フルコース食べながら殺されていくっていう状況が作れたら面白いんじゃないかって。数年前に『真夜中の恋愛論』('90年・仏)っていう、登場人物が男女ふたりしか出てこない映画を観たんです。これが結構おもしろくって。その頃から、こういうのにボクも挑戦できないかな、と考えてました。

 中華を選んだのは、まあ、殺し合いの場で食べるのは、さすがに和食ではないだろうって(笑)。フランス料理っていうのも、なーんかアナーキーなかんじがしないんですよね。たとえば、フランス料理のフルコースだと、前菜から始まってメインディッシュまで、と先の展開が読めちゃう。食事の進行を見ていれば「ああ、そろそろクライマックスだな」って思われてしまうじゃないですか。その点中華は、ほとんどボルテージの高いメニューばっかりだから、「いつどうなるかわからない感」が出ていいかなと。中華に付きものの回転テーブルも、この物語では重要なアイテムになってるんですよ。

●撮影期間は6日間!

−−出演者の柳葉さんとIZAMさんは、どのような考えがあってキャスティングされたのですか?

:ベテランの役者さんと、まったく先の読めない役者さんとを組み合わせてみたかったんです。柳葉さんは、どんなキャラクターでも上手にこなしてくれるまさにプロ。逆にIZAMは、映画のキャラを演じているのか、IZAMというキャラのままなのかも判別できないくらい、役者としては先が読めない。ふたりが食事するシーンも、IZAMはガツガツと手づかみで食べ散らかし、逆に柳葉さんは徹底して上品にという感じでコントラストを出してみたんです。IZAMはこの作品でとても気に入ったので、その後の『溺れる魚』('01年)にも出てもらったんです。(※『チャイニーズ・ディナー』は『溺れる魚』よりも以前に製作)

▲DVD版『チャイニーズ・ディナー』。ピクチャー仕様ディスクは、ゴージャス&クールなドラゴンの絵柄。

−−かつて本作の劇場公開時に、柳葉さんやIZAMさんが「撮影は辛かった」と言ってたのを伺ったんですが、実際はどういった現場だったのでしょう?

:ワッハハハハ……。そーんな非人道的なことしてたっけなー。撮影期間は6日間だったし、かといって朝から朝まで、っていう強行スケジュールでもなかったんだけど。でもそういえば、撮影が順撮り(時系列で順番に撮っていくこと)だったので、IZAMは頭からスープをかけられたまま、1日中頭が洗えなくて気持ち悪そうにしてたっけ(笑)。

●じつは、伊丹十三監督に憧れているんです

−−監督はこれまで、映画やテレビドラマ、ミュージッククリップからCM、さらには舞台演出までと、分野を越えてたくさんの作品を手掛けてこられてますが、なぜそんなにいろいろな仕事をされるのですか?

:来た仕事は断らない! 基本的に全部やる(笑)! 月給3万円のADからはじめてますからね、断るなんてとんでもないんです。でもやるからには、人と違うことをやろう、っていうのは心がけてます。

−−さらに、コメディからサスペンスまでジャンルもさまざまですよね。監督ご自身はどういった系統のものがお好きなんでしょうか?

▲DVDの映像特典収録風景。左から加藤学生(脚本)、堤監督、翠玲。
:これまでの仕事は、比較的サスペンス系が多いですね。ラブロマンス系の話は、なかなかこないんだなあ(笑)。でも、どれが好きっていうのはないです。受けた仕事のおもしろさを、とことんまで追求して、自分なりに楽しむっていうのがポリシーですから。もしつぎに、機会があったとしたら、社会派めいた企画をやりたい。

 じつはボク、伊丹十三監督に憧れているんです。あの観察眼にはホント感心しますよ。ボクもかつて『さよならニッポン』という、沖縄の島が独立するっていう荒唐無稽な映画を撮ったことがあるんですけど、そういうのをまたやってみたいかな。これまでに、ボクが取り組んできたいろんな仕事から得た資産を生かして、いま一度挑戦すれば、また違った世界ができるんじゃないかなって思います。

●大好きな吉田美奈子の歌を使うほど、思い入れのある作品

−−DVDに付いている特典映像について教えてください。

:テーマ通り、"中華関係"のオマケが付きます。コンセプトは"観ると腹が減るDVD"(笑)。この映画の脚本家・加藤学生さんが、かなりの食通なんです。特典映像では、ボクと加藤さんとで中華を喰いながら、ウラ話をするっていう。まあ、映画自体も観た人はみんな「腹減ったなー」、って感想を言ってましたし。そうそう、渋谷の映画館近くにある中華料理屋なんて、この映画の公開中、ちょっと流行ったって話もあったくらい(笑)。

−−エンディングで吉田美奈子さんの『凪』がとても印象的に使われてますが、起用された理由は?

:高校の頃からファンなんですよ。吉田さんといえば、喜びも悲しみもともに分かち合ってきた、というほど。大学時代に東京へ出てきて、四畳半のアパートに下宿してたころ、辛いことがあると吉田さんの歌を聴いたりして……。彼女からは、都会のいろんなことを教えてもらいましたね。吉田さんの曲を使うというのは、すなわち、ボクがこの作品に対していかに深い思い入れがあるか、ということです。

■堤幸彦
1955年愛知県生まれ。音楽ビデオを出発点に、映画、テレビ、CM、舞台、コンサートと、ノンジャンルで活躍中。10月からは、TBS系で長瀬智也主演のドラマ『ハンドク!!』がスタート。
■おもな作品
テレビドラマ:『金田一少年の事件簿』('95年)、『サイコメトラーEIJI』('97年)、『ケイゾク』('98年)、『池袋ウェストゲートパーク』('00年)。
映画:『さよならニッポン』('95年)、『金田一少年の事件簿』('97年)、『ケイゾク/映画』('00年)、『溺れる魚』('01年)



チャイニーズ・ディナー
発売日 2001年9月19日
価格 4700円
監督 堤幸彦
出演 柳葉敏郎、IZAM、翠玲
映像特典 電影晩餐会、劇場予告編、監督メッセージ
メーカー ポニーキャニオン
(C)2000 PONYCANYON INC.

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