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国領雄二郎の明日死ぬならこの1本
第45回 ドッグ・ショウ!
2001年4月25日
文=国領雄二郎(週刊ファミ通編集部デスク)
週刊ファミ通ではクロスレビュアーとしてもおなじみ

週刊ファミ通デスク・国領雄二郎が、毎週1本劇場公開中の映画を題材に、その作品の魅力や、僕たちの暮らす世界について語り尽くすコラム!

DATA
ドッグ・ショウ!
■監督・出演/クリストファー・ゲスト ■出演/ジェニファー・クーリッジ、マイケル・ヒギンズ ■配給/ワーナー・ブラザース ■上映時間/1時間30分
■STORY 全米で最も名高い「メイフラワー・ドッグ・ショウ」。全米の愛犬家たちは、この賞での優勝を目指して悪戦苦闘するのだった。
●こんな犬映画が観たかった!

 今週はドッグ・ショウという特殊な世界をコミカルに描いた『ドッグ・ショウ!』。ちゃんと、ただの言葉で刻みます。

 『名犬ラッシー』、『ベートーベン』、そして『101』に『102』。こうやってちょっとタイトルを並べただけでも、犬映画って内容が想像つくものばかり。愛くるしく可愛い犬たち。そして、犬たちに翻弄されつつも、それを愛する人たち。それはそれで素敵なんだけど、犬の可愛らしさだけを売りにした映画には、正直ちょっと物足りなさを感じる。

 もちろん、犬映画にだって傑作はある。犬とともに時の流れと少年の成長を描いた『マイ・ドッグ・スキップ』。宇宙ロケットに乗せられた犬が作品のメタファーとなっている『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』などなど。今回紹介する『ドッグ・ショウ!』も、傑作と呼べる犬映画だ。

 本作で描かれるのは、全米で最も有名なドッグ・ショウで優勝を目指す人々のコミカルな姿。もちろん、どの犬もショウに出るぐらいだから最高に可愛いくて立派なんだけど、それ以上に犬を自分勝手に育てるブリーダーたちの姿が、面白おかしく描かれているのだ。

 まず、映像スタイルが面白い。ブリーダーたちへのインタビュー。彼らの調教の模様。主催者たちによるドッグ・ショウの説明。開催地のホテル支配人のコメント。そしてブラッド・ハウンド、ノーリッチ・テリア、ワイマラナー、スタンダード・プードルなど、ドッグ・ショウに参加するブランド犬たちの完璧すぎる美しさと可愛らしさ。こういった部分が、すべてドキュメンタリータッチで描かれる。ただし、ドキュメンタリー風部分は一見リアルだが、明らかに「お話」とわかる作り。完全にこのドキュメンタリー的な手法自体を、笑いの発生装置として利用している。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』と似た手法で、ドック・ショウをやったという感じ。

 そこで描かれる全米のブリーダーや関係者たちの姿がとにかくユニーク、というか完全にヘン。旅行を兼ねて、ドック・ショウ参加自体を楽しもうとする中年夫婦。この夫婦の行く先々では、妻の昔の男たちが次々と登場する……。犬に気を使い、精神科医のカウンセリングまで受けさせる若い夫婦。でも、自分たちは犬のことを巡って喧嘩ばかり……。勝手に自分の犬の気持ちを代弁しているうちに、次第に腹話術師としての才能を開花させていく釣具屋勤務の男。年老いた大富豪とその若妻。この夫婦、とても犬に興味があるようには見えない。犬の世話もすべてプロまかせだ。かつてドッグ・ショウで知り合った中年のゲイ・カップル。毎年ドッグ・ショウの中継をしているのに、まったく犬に関する知識もなければ、興味もないアナウンサー。

 こんなヘンな人たちのドッグ・ショウ当日に至るまでの悪戦苦闘と、当日のドッグ・ショウの模様が、ドキュメンタリータッチの群像劇として描かれていく。ハッキリ言って可愛いブランド犬たちは完全に脇役。あくまでも主役はヘンなブリーダーたちと、ドッグ・ショウというお祭り騒ぎそのものなのだ。

 それでも、鑑賞後の僕が感じたのは、「犬ってやっぱり可愛くていいなあ」なんていうとぼけた気持ち。そんなに深みはないけど、なんかいい気分。でも、それは、『101』のような犬映画鑑賞後よりも、確かに強いものだった。犬を愛する人間たちの滑稽な生き方さえも受け入れて、犬たちの居る世界を、まるごと愛している映画だったからだと思う。

 ドッグ・ショウなどで犬を連れて歩く人をハンドラーと呼ぶ。ちゃんとプロの職業としても成立しているらしい。今日、家に帰ったら、いつもよりペットにちょっとだけ優しく接したりして。並んで歩いてみたりして。ちよっとだけ、そんなことしてみたい気分。僕のペットはネコなので、気楽にそんなことするには、いろいろと問題もあるのだけれど。

いつも感想のメールありがとうございます。どんな感想でもかまわないので、「ここ」までメールしてください。では、また。来週の水曜日に。

週刊ファミ通編集部:国領雄二郎

※「国領雄二郎の明日死ぬならこの1本」のバックナンバーはこちら

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