文=国領雄二郎(週刊ファミ通編集部デスク)
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週刊ファミ通デスク・国領雄二郎が、毎週1本劇場公開中の映画を題材に、その作品の魅力や、僕たちの暮らす世界について語り尽くすコラム! |
●こんな邦画が観たかったのです
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■監督/石井克人 ■出演/永瀬正敏、浅野忠信 ■配給/東北新社 ■上映時間/1時間44分 ■公開日/2000年12月16日
■STORY ヤクザの大金を持ち逃げしたチンピラ三木。彼は寂れたホテルへと身を隠すが、そこにはさまざまな人々が集まってくるのだった。 |
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今回は僕的には今年最も楽しめた邦画『PARTY7』を、ただの言葉でちゃんと刻みたい。
「邦画ってチャチだよね」なんて言う人に、僕はとりあえず平成『ガメラ』シリーズを薦めることにしている。観てくれた人は、「邦画なのにチャチじゃないし、面白かった」と言ってくれることが多い。また、「邦画のアクションってダサいし…」とか「邦画って暗くて笑えないし」なんて言う人には石井克人の『鮫肌男と桃尻女』を薦めてきた。つい先日、このコラムを外国で読んでくれている人にも、「オススメの邦画」を聞かれて、迷わずこのタイトルを挙げた。でも、これからは『PARTY7』になりそうだ。この作品には、邦画とは思えない、明るい笑いや、激しいアクションが『鮫肌男と桃尻女』以上の完成度で詰まっている。
『PARTY7』のストーリーはいたってシンプル。ヤクザの大金をチンピラが持ち逃げし、ホテルに身を隠す。ホテルの場所は秘密のはずなのに、おしゃべりな旅行代理店のおばさんのおかげで、彼を追う人々が、みんなそのホテルに集まってしまう。チンピラを殺すよう命令され苦悩する兄貴分。組長が雇った奇妙な殺し屋。チンピラに金を貸している元彼女と、ちょっと怪しいその婚約者。覗きとコスプレが趣味のホテルオーナー。覗きで捕まり出所して、自分の性癖に悩む青年。こんなの7人がホテルの一室で大金を巡って大騒動を引き起こすのだ。そうタイトルの『PARTY7』とはこの7人の登場人物のこと。RPGのパーティーみたいなもんだと思えばいい。
そしてこの映画タイトルはまさに「パーティー」的な映画の内容それ自体をも指している。要は、楽しいバカ騒ぎ。劇中の人物は皆真剣なのだが、観ているこちら側からはパーティーでもやっているようにしか見えない。でも、この作品にあるのは、ただの楽しいバカ騒ぎだけじゃない。パーティーが始まる前に全身を包む、なんだかわけのわからない高揚感。パーティー真っ最中、エンジン全開の興奮。そして、パーティーが終わり家路につく時の、あのどことなくさびしい気分さえも、この映画にはちゃんと詰まっている。
お金を盗んだヤクザと追手の物語。この設定自体は石井監督の前作『鮫肌男と桃尻女』とまったく同じ。前作もホテルが舞台だったし、前作とまったく同じ役で登場するホテルマンもいる(転職したのだろうか?)。最強の殺し屋・若頭は、『鮫肌』に登場した殺し屋・山田と従兄弟という設定でキャラもほとんど同じ。前作同様、我修院達也(若人あきら)が演じている。
このように『鮫肌』の続編的&リメイク的な香りも漂っているが、本作は何気ない会話やその映像によって起こる笑いをパワーアップさせたことで、さらに強力な作品となった。
その笑いとはどんなものか? 木村拓哉主演のFMVのCMを思い出してほしい。あの「ちょっと先が見えている」ってやつだ。あの映像や会話の間が、何とも言えないほど絶妙なCMだ。あのCMを手がけているのが、本作の監督である石井克人。また一連の日テレのキャンペーンCMも彼の作品。これらのCMだけでも、彼がいかに、何気ない会話や映像から笑いを生み出す達人であるかわかるだろう。これらのCMにあった愉快な会話や映像が、本作にはタップリと詰まっている。
もっとわかりやすく言うなら、飲み屋や電車の中で交わされる他人の何気ない会話。話している当人にとっては真面目な普通の会話なのに、それが聞いてるこちら側には、どういう訳か、まるでコントのように面白おかしく伝わってくることがある。誰でもそんな経験ってあるはず。本作ではそういった会話が全編に渡り、かなり確信犯的だか、自然に交わされる。クエンティン・タランティーノや、ケヴィン・スミスの作品内でよく観られる「どうでもいい会話」。この会話を、徹底して笑いにこだわったものに置き換えた。そうイメージしてもいいかもしれない。
それだけではない。そんな会話を交わしている登場人物たちのキャスティングが絶妙なのだ。永瀬正敏は、本当にただの情けないチンピラ。一般人だけには強気に出る彼が、別れた彼女となんとか寄りを戻そうと軽口を叩く様子は本当に情けなく笑える。また永瀬以上にクールな印象のある浅野忠信は、まともに他人とコミュニケーションもとれない覗き屋。服装だけ見ても、絵に書いたような性犯罪者だ。テレビではさわやかな2枚目俳優的なポジションの岡田義徳。彼はオカッパ頭に白黒縁のメガネで、人格もムチャクチャ。ほとんどの人が、テレビの彼と同一人物だとは気がつかないだろう。大御所原田芳雄に至っては、全編バットマンのような奇妙なスーツ姿で変態を嬉々として演じている。そして何よりも凄いのは、郷ひろみのモノマネや記憶喪失事件で世間に認知されていた若人あきらこと我修院達也が、凄まじくカッコイイ拳銃さばきを見せる最強の殺し屋を演じているということだ。
このように存在だけでも笑ってしまうキャラクターたちが、絶妙の会話でさらに笑わしてくれる『PARTY7』。もちろん、見事なカット割りで見せてくれる、イカしたガンアクションやパイオレンスシーンも、ちゃんとある。最後には寂しい笑いと幕切れもちゃんとある。この映画の楽しさをパーティーって呼ばずに、何をパーティーと呼ぶのだろう? まさに完全燃焼の完璧なパーティー映画。
ひとつのパーティーが終わって、なんか盛り上がれなかった僕たちは、「そっちはどう」なんて携帯で話しながら、そのまま別の場所に遊びに行く。それで楽しめることもあれば、そうでない時もあるのだけれど、それを辞めることはできない。だって本当にワクワクするほど楽しいものが、確かにあることを、もう知ってるから。それとまったく同じ理由で、映画を観るのもやめらんない。とぼとぼ歩いて帰るのは、素敵な事がひとつ残らず全部終わってからでかまわない。ところで、今度のパーティーはどこ? どんな感じ?
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週刊ファミ通編集部:国領雄二郎
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