文=国領雄二郎(週刊ファミ通編集部デスク)
週刊ファミ通ではクロスレビュアーとしてもおなじみ
週刊ファミ通デスク・国領雄二郎が、毎週1本劇場公開中の映画を題材に、その作品の魅力や、僕たちの暮らす世界について語り尽くすコラム! |
●アクション映画とはこうあるべきだ
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DATA |
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■監督/マーティン・キャンベル ■出演/クリス・オドネル、
ビル・パクストン ■配給/ソニー・ピクチャーズエンタテインメント ■上映時間2時間4分 ■公開日/2000年12月9日
■STORY 世界最難関の山K2。ここの山頂にアタックをかけた登山隊が遭難。登山隊に参加した妹を救うため、若き登山家が決死の救出劇に挑む。 |
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今回は今週末から公開される『バーティカル・リミット』をただの言葉で刻みます。
本作はいわゆる正月映画。昔から正月映画というと、大スター主演で、ハデなアクションが繰り広げられるんだけど記憶には残らないって感じの作品が多い。要するに、良くも悪くもただのお祭り映画。もちろん今年の正月もそういった作品は健在。シュワルツェネッガーは『シックス・デイ』で悪いやつらと戦い続けるし、ゴジラも『ゴジラ×メガギラス』で例年どおり最強の敵を迎える。
でも、この映画はアクションこそハデだが、それらの典型的な正月映画とはちょっと違う。キャストとかじゃなくて、ちゃんとリアルなアクションで勝負して、記憶にも残るであろう映画だ。ヒーローは登場しないし、ストーリーだって普通だ。でも面白い。なんでか。ちゃんと「凄い」と感じさせるアクションの絵で勝負している作品だから。真正面からアクション映画してるからだ。ファンタジーやマンガと感じさせない(←それはそれで魅力的なのだけど)リアルなアクションを見せてくれる映画だからだ。
ここ数年、良くも悪くもアクション映画は変わった。CGの驚異的な発達や、ワイヤーアクションの多用によって、あまりにマンガ的な絵を再現できるようになった。要するに、普通の人間では絶対に無理なことが映像として提示されるようになった。ここまで行くと、「凄い」という感想を持てない場合が多い。「クール」、「カッコイイ」、「笑っちゃう」。過去のこのコラムでもそうだが、正直な話、そういった言葉でしかアクションシーンを形容できなくなってしまっているのだ。
でも、本来アクションシーンは単純に「凄い」と感じさせてくれるもののはずだ。「このワイヤーがアクション凄い」、「この合成が凄い」。「この銃の持ちかたカッコイイ」。そんなもんだけじゃないと思う。ある意味では、これはとても不幸な状況だ。たとえ嘘でも、本当にやってそうなリアル感は絶対に必要。それの欠落したアクション映画。それは、アクション映画風映像を盛り込んだ、マンガやファンタジーに過ぎない。
『バットマン・フォーエバー』製作中にこんなエピソードがあった。ゴッサムシティのビルの屋上から無茶な回転をしつつバットマンが飛び降りる。彼は着地して、何事もなかったかのように立ちあがり歩きだす。そんなシーンがあったという。このシーンのバットマンはなんとすべてCGで描かれていたという。主演のヴァル・キルマーはそのシーンを劇中で使用することを、断固拒否したと言う。彼の態度が正しいかどうかは別にしても、このエピソードが、アクション映画の無茶すぎる進歩と、その行く末の危険性を端的に表しているように僕は思う。そう、もう俳優の演技なしで、アクションシーンを描ける段階にまで、技術は進んでしまったのだ。でも、それはやっぱり本物のアクションとは言えない。
本作は全編雪山が舞台。ここにはスタローンの『クリフハンガー』のように、悪者のテロリストは登場しない。銃だって登場しない(ニトログリセリンは登場するけど)。自分が生き残るために、悪事を働く小悪党がひとり登場するだけだ。あとは、遭難した人々、それを救出しようとする勇気ある人々、そして恐ろしい雪山があるだけだ。こんなひどくマトモでリアルなシチュエーションだけで、ちゃんとアクションを成立させようとしている。
この映画の中の出来事は、すべて自然によって生じるものばかり。雪崩れ、落石、寒さと高度から来る肺水腫の恐怖。みんな山では定番のアクシデント。もちろんそれだけではない。ロープが緩む、地面に置いた荷物がちょっとだけ傾く、滑って転ぶ、こういった通常の世界では何でもない些細なことが、雪山では命取りとなる。
こういったリアルな緊張感に支えられたアクションシーン。それが、「クール」とか「カッコイイ」という視点ではなく、まっとうに描かれている。当たり前なのだが大事なことだ。たとえば激しい雪崩のシーン。これは箱の中に固定した無人カメラを、雪崩の起きやすい場所に設置して撮影したという。もちろんCGで処理が加えられてはいるが、この迫力は本物のものなのだ。
もちろん本作にも、荒唐無稽なアクションシーンはあるし、雪崩以外にもCGやミニチュアワークが多用されている。でも、基本となっているのは、やっぱり現実に裏付けされたリアルで「凄い」アクションだ。だから、マンガチック過ぎる最近のアクション映画に失望しちゃってる人にこそ、観てほしい。
ヒーローはいらない。悪者もいらない。銃もいらない。それでも、全然退屈じゃない。ちゃんと戦えるし、ドキドキやワクワクはずっと消えない。どういうわけか、そう信じている。これは映画だけの話じゃない。
| いつもご愛読ありがとうございます。アクション映画については、また機会があったら書いてみたいです。どんな感想でもかまわないので「ここ」まで送ってください。それでは、また。来週の水曜日に。 |
週刊ファミ通編集部:国領雄二郎
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