小林ゆう『ゆうのお部屋』
【音響監督、亀山俊樹さん・その4】じつはお姫様を演じてみたい!
ゆうさんが会いたい人に会いに行く! “ゆうのお部屋”5人目のお客様、亀山音響監督との対談も今回が最後。亀山さんが、今後のゆうさんに期待することとは? そして、ゆうさんの将来の夢とは?
●自分の道を信じてがんばるべし!
――亀山さんが、今後の小林さんに期待したいことは?
亀山 それは言いづらいなあ。小林さんは言うと本当にやってしまいそうなので、迂闊なことは言えない(笑)。
ゆう そんな! ぜひお願いします!!
亀山 そうだねえ……。いまのままの熱心さで続けてほしいってことくらいかな。そのうちお姫様みたいな役も演じてみるといいかもしれないね。
ゆう ああ! そんなことを言っていただけるだけで、私は幸せです! 私も「お姫様を演じたい」という気持ちはすごくあるのですが、いままでなかなかご縁がなかったんですね。でも、「ほかの誰が諦めても自分だけは諦めちゃいけない!」という気持ちでいたのですが、亀山さんにそう言っていただいて、泣きだしそうなくらいうれしいです。
亀山 世の中ちゃんと見ている人がいるし、どこにチャンスが転がっているかわからない。自分の道を信じてがんばってほしいなあ。
ゆう 綺麗な女性の役は、密かに練習だけは続けているのですが、「演じてみたい!」って、あまり人に話したことはなかったんですね。でも、こうして亀山さんにエールを送っていただいて、改めて「本当にがんばらなくっちゃ!」という気持ちになりました。男の子の役はもちろん、女の子の役も演じられるようにがんばっていきたいです!
――演技に関しては本当に貪欲ですね!
ゆう はい! お姫様にまで挑戦しようと思っているなんて、欲深いですね(笑)。でも、“演じること”に関してだけは、諦めたくないと思っています。
亀山 逆に、直近ではどんな目標を立てているの?
ゆう 私には“できないこと”がいっぱいあるので、それをひとつひとつできるようにしていきたいと思っています。“お姫様”はその筆頭なのですが、“できないこと”をひとつひとつ“できること”にしていったら、夢に近づけるのではないかと思っているんです。いまは、それをひとつずつ克服している最中です。でも、克服すべきことがたくさんあり過ぎて困っているんですよ(笑)。まだまだ足りないことだらけです。たまに、「私にはここが足りないなあ」とか、克服すべきことをブツブツしゃべりながら歩いているときもあります。
亀山 (笑)。小林さんだったら、休みで南国のリゾートに行っても、一生懸命何かやっているんだろうなあ。「このミドリムシが!」とか練習していたりして(笑)。
ゆう さすがは亀山さん。何でもお見通しです。でも、それは「そうしよう」と決めているわけではなくて、そうなってしまうんです。
亀山 今後も小林さんのご活躍に期待しています。
ゆう ありがとうございます! 本日は“ゆうのお部屋”にお越しいただきありがとうございました。
ゆうさんの飽くことなき“役者魂”を知ることができた、亀山音響監督との対談。今後もさらなる素敵な作品を生み出してくれることを期待しつつ……。
今回は、音響監督の亀山俊樹さんに「ゆうのお部屋」にお越しいただきました。お忙しい中お時間を作っていただきまして、心から感謝しております。長時間に渡って対談にお付き合いいただいたのですが、あたたかい笑顔で素敵なお話をたくさんしてくださいました!
ここでしか聞くことのできない貴重なお話の数々に、驚きや感動でいっぱいになりました。ワクワクやドキドキ、感動や発見をたくさんいただくことができました。
亀山さんには数々の素晴らしい作品でお世話になっています。お仕事の時はこういった色々なお話をさせていただいたりする機会がありませんので、とても貴重なお時間でした。『まりあ†ほりっく』の世界についても色々なお話をたくさんすることができて、とても嬉しかったです。アフレコを振り返ってみてのお話をして、改めて大切なことを感じることができました。そして亀山さんとお話をさせていただくことで、改めて自分自身をみつめることもできました。
素晴らしいお話をお聞かせていただいてとても幸せです。これからも一生懸命頑張っていきたいと思いました。
本当にありがとうございました。
小林ゆう
【DVD&CD情報】 |
『まりあ†ほりっく』DVD第3巻 |
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【小林ゆうさん出演作情報】 |
銀魂 猿飛あやめ役 |
【音響監督、亀山俊樹さん・その3】“演じること”に対する飽くことなき姿勢
小林ゆうさんと亀山さんとの対談3回目は、引き続き『まりあ†ほりっく』を話題に進行。ゆうさんの鞠也に対するとんでもないこだわりの数々が明らかになります。
●ドSの鞠也の魅力に鷲掴みにされたゆうさん
――ゆうさんにとって、鞠也はどんなキャラでした?
ゆう まず出会ったときに、とっても素敵な方だと思いました。誰もが憧れるような美貌でありながら、(言葉にすると恥ずかしいのですが)サディスティックな性格をなさっています。しかも“ド”がつくほどの。とくに、かなこさんに対する態度は辛辣で、両極端な部分を自由に行き来されているのが魅力的で、私も心を鷲掴みにされました。
亀山 ドSでありながら、客観的に状況を認識したりと、幅のある目線が行き届いた奴でもありますよね。
ゆう すごい方なんです! だから、私なんかが演じるさせていただくのも恐れ多くて、「あそこまで行けるのでしょうか?」って心配だったのですが、亀山さんや共演者の皆様に支えられて、何とか演じることができました。私は誰よりも鞠也さんが大好きだという自信があり……あ! でも、鞠也さんのファンの方もたくさんいらっしゃいますので、ファンの方に負けないくらい、鞠也さんを愛しております。
亀山 (笑)。女性である小林さんが、鞠也を“男”として演じているというのがスゴイことだと思いますよ。だから鞠也が多くの女性ファンに支持されたんですね。
ゆう とんでもないです。
亀山 原作者の遠藤海成先生も、「(小林さんが鞠也を)男の子として演じてくださったからより人気が出た」って絶賛でしたね。鞠也には、ひとつのセンテンスの中にも“男らしいセリフ”や“女らしいセリフ”、“中性的なセリフ”が混在していて、演じ分けるのがたいへんなんです。小林さんはそれを迷うことなくシャープに演じている。それが本当に見事なんですよ。もしかして、台本を色分けしてない?
ゆう しています! よくお分かりになりましたね。“女性らしいセリフ”はピンクで、“男らしいセリフ”は黄色に……といったふうに色分けしています。亀山さんがそんなふうに感じてくださっていたなんて光栄です。
亀山 すごい努力をしているね。
ゆう とんでもないです。むしろ私は不器用なので、お芝居をしているときに自分の中で認識できなくなってしまうことがあるんです。なので、とにかく自分なりにお芝居に100パーセント集中して楽しみたい、一生懸命やりたいという思いがありまして、少しでも集中できるようにということで、セリフを色分けしているんです。
亀山 グラデーションを付けたり?
ゆう 付けていますよ! ときに、緑とピンクが混ざったような怖い色になっているときもあります(笑)。「ゆうちゃんの台本って、すごいね!」って言われたりします。自分でもわけがわからなくなるくらい、汚くなるときがあります(笑)。でも、それくらいやらないと安心できないんです。
亀山 (笑)。
ゆう あと、お風呂の中でも台本を見ているので、台本がガサガサになってしまうんですね。アフレコ現場で台本をめくっていると、ガサガサととんでもない音がして、皆さんに申し訳がなくて……。
亀山 また、練習熱心だなあ。
ゆう とにかく不器用なので、安心できないんです。鞠也さんの場合はサディスティックなセリフ、たとえば「おい、汚物!」とか「あのミドリムシ!」といったセリフがあるのですが、そういったセリフも板につけたくて、ふだんお家にいるときでも口にしたりしていましたし……。自然にしゃべっていると思っていただきたくて。電車の中でブツブツしゃべっていて、知り合いの方に発見されたこともあるんです! 「電車の中で、ぶつぶつニヤニヤしていたよ」って暴露されてしまったこともありました。
亀山 1歩間違えるとアブナイ人だね(笑)。そんなに熱心に練習していると睡眠時間とかないんじゃないの? まえから聞いて見たかったんだけど……。
ゆう 3〜4時間くらいでしょうか。そこまで取れない日もありますが……。でも、アフレコのことを考えていると、本当に楽しくて楽しくて、時間が過ぎるのを忘れてしまうんですね。アフレコで鞠也さんを演じられるのは、本当にほんの少しの時間なので、とにかくできるだけのことをしたいって思っていたんです。だから、そのぶん『まりあ†ほりっく』の収録が終わってしまって悲しかったです。共演者の皆さんと、もっといろんなことを経験したいと思っていましたので、ある意味でとても悔しかったりもしました。
亀山 『まりあ†ほりっく』に関しては、ひとまず区切りがついているのですが、「いずれどこかでやるでしょう?」って僕は思っています。
ゆう 私もまだ終わったとは思えなくて。勝手な妄想になってしまうのですが、つぎがあるとしたら、ぜひ私も参加させていただきたいです!
本当に頭が下がる、ゆうさんの演技に対する思い。そんなゆうさんが心血を注いだ『まりあ†ほりっく』の鞠也は、そんなゆうさんの熱意が結実したキャラクター。「さらにゆう×鞠也の活躍が見たい」というファンも多いのでは? 次回はいよいよ小林ゆうさんと亀山音響監督の対談もラスト。
▲小林ゆうさん演じる鞠也の魅力が炸裂する『まりあ†ほりっく』。 |
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【音響監督、亀山俊樹さん・その2】声優と音響監督の信頼関係によりできあがる絶妙なる空間
小林ゆうさんと、ゆうさんが日頃お世話になっている音響監督、亀山俊樹さんによる対談の2回目。今回は、ふたりの最新作アニメ『まりあ†ほりっく』をテーマにお話が進みます。
●役者の演技のいちばんいい部分を“刈り取る”という作業
――『まりあ†ほりっく』では、どのような感じで鞠也ができあがっていったのですか?
亀山 いきなりテストですね。役柄に関する打ち合わせを事前にする……ということはあまりないです。
――役作りは声優さんにお任せということですか?
亀山 僕は、役者さんたちに基本任せたいんです。だから、「ここのセリフの語尾を変えて」といった言葉尻を役者さんに説明するのは最悪だと思っています。演技というのは芝居の流れの中で演じるものなのであって、言葉尻だけを捉えて断片的にやるような役者さんはいないですからね。皆さんお芝居をしに来ているわけであって、ひと言いくらの仕事をしているわけではないですから。ですので、「こうしないといけない」ではなくて、「こうするためには何をすればいいのか」ということをアドバイスするようにしています。もちろん、作品に意図がある場合は、それを伝えるのは必須です。作品全体のコンセンサス(意志統一)を取らないといけないので。そういった意味では、小林さんは、こちらの狙いというものをすぐにわかってくださる。カンもいいんですね。
ゆう それは、亀山さんが私をうまくいいほうに引っ張ってくださるからです。私はお芝居をさせていただいているときに、それこそいろいろと無駄みたいなことも考えていることが多いのですが、亀山さんは、私が思ったことを伸び伸びと自由に表現させてくださるんです。“亀山さんワールド”とでも言うべき、大きなもので私たちを包んでくださるんですね。
亀山 やっぱり役者さんって、「ああしちゃいけない」、「こうしちゃいけない」と言うと、みんなスーッと、後ろに引いていっちゃいますよね。それが、「あれもやっていいかもしれない」、「これもやっていいかもしれない」となれば、前のめりになってくれたりもする。それが大事なんじゃないかなと思います。
ゆう 私はまさにそれをすごく感じていて、いろんなことにチャレンジさせていただけるのも、そういった空間を亀山さんが作ってくださっているからなんです。亀山さんには「こんな自分がいたんですね?」とビックリするような自分を、いつも引き出していただいています。自分でも出会ったことがない演技をすることができて、“生まれて初めての神秘”みたいな経験をいつもさせていただいております。
亀山 “生まれて初めての神秘”ですか?(笑)
ゆう 本当にいろいろと勉強させていただいております。口ではうまく言えないのですが、アフレコで得た経験は、お金ではけっして買うことのできないキラキラ光る宝物です。
亀山 たしかに、“場”というのは、1回限りの経験だし、かけがえのないものだよね。短い時間で生き生きとしたセリフを録らないといけないので、アフレコのときは“勝負”なわけです。ただ、いくらこだわっているからといって、がんばり過ぎてしまって、取ってつけたようなセリフや死んだようなセリフにしてしまってはいけないわけで、新鮮なうちにパッと掴んじゃうのがいいと思うんです。だから、ものすごく苦しんで苦しんでやっと「オーケー」というのは、僕の場合あまり多くないです。むしろ、苦しんで苦しんで「やっぱり駄目」ということのほうが多いですね。それよりは、フレッシュなうちに早摘みをしたい(笑)。いつまでもダラダラやっていても突き抜けることができないから、役者さんには「流れの中で生まれた演技をできるだけ早く刈り取るから!」と言っています。ひとつのセリフをあとで抜き録りするということはあまりしたくない。もちろん、人間なので間違いはありますから、ちょっとした言い間違いなどはあとで抜き録りするケースもありますけどね。
ゆう 本当にいい部分で刈り取っていただいています。私なんかだと演技に夢中で制御不能になってしまうのですが、亀山さんが素敵に刈り取ってくださったり、軌道修正をしてくださるんです。あとでオンエアを見ると「すごい!」って思います。
亀山 役者さんからふわっと出てきた演技を刈り取って「よし!」って感じですね(笑)。「とったどー」みたいな(笑)。
ゆう でも、亀山さんには本当に助けられています。一度『まりあ†ほりっく』の収録で、鞠也さんがいつもの感じにならないときがあったんですね。声を必死で落とそうとしてもうまくいかなくて、「どうしよう!」という感じで頭の中がパニックになってしまったんです。「落ち着かなくっちゃ」と思うほど、逆に焦ってしまう。そんなとき亀山さんが「あまり声の高低は意識しなくていいから、自分の出しやすいポジションで演じてみては?」ってアドバイスしてくださったんです。それで私も、「無理に声を出そうとしなくていいんだ」ということで、落ち着きを取り戻しまして、安心して演じることができました。
亀山 ということからもわかるとおり、じつは音響監督というのは、あまり難しくないんだよね。
ゆう そんなことありませんよ! あのときのお言葉がどれだけ私を救ってくださったことか。私はいろいろなお言葉で救っていただいて、伸び伸びさせていただいているばかりです。「私はいまパニックなんです!」なんて申し上げることはできないのですが、そんなときは亀山さんが決まって、ポンっという形で背中を押してくださる。それで、「そういうふうに演じればよかったんだ!」ということがわかるんですね。亀山さんには、本当に助けられっぱなしです。
亀山 ありがとう。
ゆう 本当に、亀山さんのご配慮もあり、『まりあ†ほりっく』のアフレコ現場はひときわ温かいものでした。出演されている方も、以前から共演させていただいている先輩の方ばかりだったので、休憩時間も本当に和やかにお話をしていましたね。『まりあ†ほりっく』は女子校のお話なのですが、アフレコ現場も女子校そのものの雰囲気でした。お菓子を食べながら雑談をしたりして、本当に楽しかったです(笑)。
おふたりの話を聞いていると、声優と音響監督の信頼関係が“演技”というものでいかに重要かがわかる。次回も『まりあ†ほりっく』の話は続きます。
▲ドSの美少年鞠也(左)と、美少女大好き少女のかなこ(右)を中心に物語が展開される『まりあ†ほりっく』。 |
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【音響監督、亀山俊樹さん・その1】小林ゆうさんは、いまの声優では突出した存在
声優の小林ゆうさんが、会いたい人に会いに行く、おなじみの“ゆうのお部屋”も第5回。今回のゲストは、アニメの音響監督を務めるオムニバスプロモーションの制作部
ディレクター 亀山俊樹氏です。小林さんとは数多くのアニメ作品でいっしょに仕事をしている亀山氏は、小林さんにとってはなくてはならない存在。ふたりが手がけた最新作『まりあ†ほりっく』の話題などを中心に、“声優”というお仕事に対する内実に鋭く迫ります。ほかでは聞けないレアな話題もいっぱい!
亀山俊樹氏。オムニバスプロモーションの制作部 ディレクター。数多くのアニメの音響監督を担当する。小林ゆうさんが出演する数多くの作品を担当している。 |
●小林ゆうさんの魅力は、役柄に対する真摯さ
ゆう 本日の“ゆうのお部屋”には、音響監督の亀山俊樹さんをお招きしました。亀山さん、“ゆうのお部屋”にお越しいただきまして、どうもありがとうございます!
亀山 いえいえ、どういたしまして(笑)。
――まずは、ご存じでない方のために、音響監督の役割からお教えいただけますか?
亀山 はい。音響監督というのは、アニメ独自の存在で、音回りで監督を補佐する係ですね。アニメにおける音回りの素材というと、“セリフを撮ること”、“SE(効果音)を揃えること”、そして“BGMをはじめとする音楽を揃えること”、この3つです。洋画の吹き替えにも音響監督は存在するのですが、セリフだけをこちらで用意して、SEと音楽はオリジナルをミックスする。その点、アニメは何もないところから素材を揃えないといけないわけです。たとえば、“音楽を揃えること”では、必要になりそうな音楽に関して、「こういう曲が欲しいですね」という感じでレコード会社の方に提案をするんです。どういうアーティストさんを使って、どんな内容になって……となると僕の手を離れるわけですが、上がって来たものを「いいですね〜」とか判断して、アニメの中で使わせていただくわけです。
――声優さんのキャスティングなども担当する?
亀山 キャスティングに関しては、監督さんも意見があるでしょうし、プロデューサーさんにもこだわりがある。オーディションなども含め、そのへんを取り仕切るのが音響監督の役割になります。むしろ、役者さんのチョイスということに関しては、音響監督はいろんな選択肢を持っていないといけないです。たとえば、僕が「この人で行きましょう!」と提案しても、監督から「ほかに誰かいないの?」と言われたりするケースもある。そういうときに、違う役者さんを提案するというオプションを持っていないといけないわけです。
――幅広い選択肢を持っていないといけないわけですね。ちなみに、今回ごいっしょに仕事をされた『まりあ†ほりっく』の祇堂鞠也役はどうだったのですか?
亀山 鞠也は、最初から「小林さんで行こう!」ということであっさり決まりました。プロデューサーさんによっては、「この役者さんを軸にして行きたい」というのがあるのですが、小林さんはまさにその軸になる人だったみたいですね。僕にしても、小林さんとはここのところずっとレギュラーをごいっしょさせていただいていたので、「きたっ!」っていう感じでした(笑)。
ゆう うれしいです。そのことは初めて伺いました。
――ずばり、小林ゆうさんの魅力って何ですか?
ゆう い、いきなりですか? 緊張します〜。
亀山 何よりも役に対する真摯さです。とにかく役のことをすごくよく考えていますね。かつて、宇宙人と交信する女の子の役を担当してもらったこことがあるのですが、本当に交信し過ぎてしまって、マイクからぜんぜん離れなくなってしまったなんてことがありました(笑)。アフレコ中は、マイクの前でずっとシャウトし続けていましたね。
(一同爆笑)
亀山 これは皮肉でも何でもなくて、小林さんはそれくらい役に没入しているんです。これはすごいです。ベテランの役者さんが、「この人大丈夫かしら?」って心配するくらい(笑)。
ゆう いつもご迷惑をおかけしてしまって……。
亀山 しかも、忙しいのにもかかわらず、とにかくしっかりと台本を読み込んでくる。どれくらいこのアフレコの下準備のために時間を割いたのか、わからないくらい。アフレコのまえには、役者さんにリハーサルビデオとかをお配りするのですが、それをしっかりと見て勉強してくださるんです。そして、「このキャラクターが、ここでこんな表情をするけどいいのかしら?」という疑問を持ったときは、ちゃんと質問してきてくれる。そんなときは、リハーサルビデオが間違っていることが多いんです。
ゆう ありがとうございます。
亀山 僕が小林さんで感服しているところは、他人の仕事を尊重しているところ。目の前にある作品が、シナリオや絵コンテ、作画といった作業が積み重なって、いまここにある、ということをわかっているわけです。だから、できあがった台本が「誤植じゃないかな……」って思っても、ほかの人の仕事に対するリスペクトがあるので、そこから判断しようとするんです。そのスタンスが見事だと思うんです。若いのに見上げたところです。
――しっかりしているなあ。
亀山 もちろんまだまだ若手だし、実力どうこうの話になったら、まだまだこれからの部分も多いのですが、とにかく爆発的なものを持っている。着々と石を積み重ねていくわけではなくて、爆発的なことをしてくださるので、すばらしいですね。
――ほかの声優さんにはないものがある?
亀山 突出力があるので、輝くものがありますね。これは芝居というものが持つ性格もあると思うのですが、アニメはある意味数十年の歴史によって培われた“伝統芸能”といった側面もある。日本のアニメーションの文化として、「こういうときはこういうリアクションをする」、「アドリブはこういうふうに入れる」という、ある種伝統芸能的な“約束事”が視聴者や作り手の中に積み上がっているんです。役者はそれに則って演技をするわけですが、その約束事をうち破るかのように、ときどきポコポコって突出した役者が出てくる。小林ゆうというのはそういう存在のひとりですね。
――それはすごい!
亀山 うまい下手のレベルではなくて、煌めいているという話です。
――とは言え、小林ゆうさんは意識して突出しようと思っているわけではないような気も……。
亀山 もちろん、違うと思いますよ。だから、他人が小林さんと同じことをしようと思って真似をしても、ぜんぜん違うことになってしまうでしょう。やりたいことが内側から出てきてしまうのが役者なんですね。制作サイドにしても、「この絵にはこういうアドリブが欲しいよね」と期待しているわけではなくて、それを上回る“何か”が、欲しくてキャスティングしているわけじゃないですか。ずっと練り続けてきたオリジナルキャラを、どこかと同じ演技ではやって欲しくないと思っているハズです。オリジナルのものを作ってきたので、オリジナルの演技をして欲しいと期待している。小林さんはそれに見事に応えているのではないかと思いますね。
――最大限の褒め言葉ですねえ。
亀山 一方で、小林さんは相当な努力家なのかな……といまは思う部分もあるんですけどね。
ゆう はい。私は人と同じことが同じ時間でできないタイプなんです。だから、人よりたくさんやらないと同じにならないんですよ。
――役作りもけっこう気合いが入っていますものね。
ゆう 担当させていただくことになったキャラが、スポーツに取り組んでいると、そのスポーツを始めたりしますね。あと、少年の役を演じるときは、小さいお子さんといっしょに遊んでもらったりしています。『まりあ†ほりっく』では、男性が女性になっていらっしゃる方を研究させていただいたりもしました。とにかく考えられることは全部取り組んで臨もうと思っています。
亀山 ロバート・デ=ニーロみたいな取り組みかただね! これは、役者どうしの相性もあるので一概には言えないのですが、ほかの誰かが鞠也を担当しても、あるいはソツなくこなしたかもしれません。でもいま言えるのは、「やっぱり小林さんでよかったね」ということだけ。
ゆう ありがとうございます! 感激です。
いわば、“恩師”とでも言うべき存在の亀山氏の最大限の褒め言葉に、小林ゆうさんも感激の様子。次回は、ふたりが関わったアニメ『まりあ†ほりっく』を話題に語り合います。
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【NAOKIサウンドプロデューサー・その4】音楽シミュレーションゲームのパイオニアとして時代のさきを読んでいく
『BEMANI』シリーズのNAOKIサウンドプロデューサーを迎えてお送りしている小林ゆうさんの“ゆうのお部屋”。最後のトークテーマは、小林ゆうさんもゲームファンも気になる『BEMANI』シリーズの今後の方向性について!
▲今回の対談を記念して、『beatmania IIDX 16 EMPRESS』の筐体の前で記念撮影するNAOKIサウンドプロデューサーと小林ゆうさん。画面にはもちろん『翼』を流しています。 |
●時代が求めるさまざまなプラットフォームでワールドワイドに展開したい(NAOKI)
ゆう 『BEMANI』シリーズは、今後どのような展開をお見せになられるのでしょうか?
NAOKI 我々の商品は多くの熱烈なファンの皆様に支えられていると思います。本当感謝してます。
ゆう 大きく変わる可能性もあるのでしょうか?
NAOKI 時代の変化を読み、的を得た変革をしていくべきという意識があります。コアなプレイヤーをターゲットにしたビジネスは確実なんやけど、よくも悪くもクローズドな世界が生まれてしまう。やはり大衆向けのゾーンも積極的に開拓していき、新たな『BEMANI』ワールドを皆さんに届けたいと思っとります。
ゆう 私は『BEMANI』さんに、おしゃれなイメージを持っていますよ。ダンサブル、ロック、ポップ、いろいろな魅力溢れた楽曲を、独特な世界観があるアミューズメントマシンやゲームソフトでプレイできるところが、ほかのゲームにはない魅力だと思うのですが。
NAOKI すごくありがとう(笑)。『BEMANI』は、音楽カルチャーが全面に押し出されていて、DJであったり、ダンス、ロックをテーマに置いてるんやけど、音楽カルチャーも時流に沿って変化しているので、いつまでも昔のままじゃダメやろね。いまの時代に合った見せかたを追求して、新たな要素を入れて発展させていきたいね、マジで。
ゆう 『BEMANI』さんはやはり音楽シミュレーションゲームのパイオニアだと思います!
NAOKI パイオニアとして、移り変わる時代に順応するだけじゃなく、さらにさきを読んで対応していかんとなぁ……。声優の世界もそうやろ? 5年さきを見込んで、ゆうさんの才能、センスでうまく自分をハンドリングしていけば、ずっと第一線で活躍する声優さんになれると思うで。
ゆう すごくいいアドバイスをいただきまして、ありがとうございます。勉強になります。
NAOKI 我々もより多くの皆さんに楽しんでもらえるような、音楽シミュレーションゲームを創ることに情熱を傾けていきまっせ!
ゆう それはアーケードゲームになるんでしょうか?
NAOKI それは秘密です(笑)。ただ、多くの人々が気軽に楽しめることが重要かなと。時代が求めているプラットフォームでね。
ゆう じつはもう形にはなっていらっしゃるのでは?
NAOKI まぁ……ビジョンはありますよ。これも企業秘密、言えへんなぁ……(苦笑)。「何だ、これは!?」と驚きと楽しみを感じてもらえるような作品を創り、世に問いたいね。
ゆう その作品が世に出るのは、2〜3年さきぐらいでしょうか?
NAOKI 2〜3年さきじゃ遅いでしょ。もっと早く出して時流に乗り続けたいね。どこで流れがひっくり返るかわからんからね。そして、その新しい音楽シミュレーションゲームはワールドワイドで展開したいと思っています。その際はメディアの方々に、多大なるご協力をいただけますと幸いです! これからも、『BEMANI』シリーズをよろしくお願いいたします!
ゆう NAOKIさん、このたびは貴重なお話をたくさんお聞かせくださってありがとうございました!
【作品情報】 |
ジャンル:リズムアクション 稼動日:稼動中(2008年11月19日より) -------------------------------------------------------
『beatmania IIDX 16 EMPRESS ORIGINAL SOUNDTRACK』 メーカー:KONAMI ジャンル:音楽シミュレーションゲームミュージック 仕様:2枚組音楽CD 価格:3000円[税込] 発売予定日:2009年4月24日 ※コナミスタイル先行販売
ファン待望のサントラCD『beatmania IIDX 16 EMPRESS ORIGINAL SOUNDTRACK』が発売決定! ゆうちゃんの歌う『翼』はもちろん、ゲームで流れる曲が多数収録されている。 |
【小林ゆうさん出演作情報】 |
銀魂 猿飛あやめ役 |
小林ゆう
2月5日生まれ。東京都出身。以前はモデルを務めていたほどの抜群のスタイルとルックスで人気を集める声優。代表作はアニメ『DAN DOH!!』の青葉弾道役、『魔法先生ネギま!』の桜咲刹那役、『さよなら絶望先生』の木村カエレ役など多数。
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