『タクトオブマジック』BLOG 〜つくりびと〜
第4回:本作り・第一次修羅場
お久しぶりです。
コダマックスです!
『タクトオブマジック』が発売されてから約2週間が経ちました。
はたして「全部クリアーした!」というプレイヤーはどれくらいいるんでしょうか。
本作のストーリーは、大まかな流れは典型的な王道パターン。
“主人公が王家の血筋”とか“光と闇の戦い”とか、表面だけ見ると取り立てて珍しくない内容です。
しかしながら、クライマックスに近づくにつれて、王道をなぞりつつもプレイヤーの価値観を揺さぶるような深いストーリー展開がくり広げられてきます。
ゲームを購入したけれど詰まって進めないという人は、ぜひストーリー後半に触れてほしいので、弊社制作の攻略ムックをご一読ください!(宣伝)
それでは、本ブログのメインコンテンツであるムックの制作日記の続きです。
前回はムック本を正式プロジェクトとして会社から承認を得るまでの紆余曲折をお伝えしました。
めでたく承認が得られたので、今回はページを作る作業の模様をお伝えしたいと思います。
2009年4月下旬
まずはアートディレクター(AD)と相談して本のフォーマットを決めます。
ちなみにADとはデザインの責任者で、雑誌のデザインの方向性を決定する人のことです。
ここでいうフォーマットとは、文字の大きさなど本全体の決まりのこと。
これを考えずに作ると、ページをめくるたびにバラバラな誌面が目に入り、読んでいて疲れる本ができ上がってしまうので最初に決めておく必要があるんです。
そしてライターさんと打ち合わせを行います。
ライターとは、説明するまでもないかもしれませんが、読んで字のごとく原稿執筆を生業としている人たちです。が、ラフ(後述)を書いたり、アイデア出しをしたり、雑務を引き受けたりと、執筆以外の仕事もこなすのがふつうです。大量に仕事を請ければ、会社勤めの人間がビビるくらいの収入を得られますが、その逆もしかりのハイリスクハイリターンな職業です。
ライターさんには編集部でみっちりとゲームをプレイしてもらっているので、オレと同レベル、下手するとそれ以上にゲーム内容に精通しています。
話し合いの主旨は“読者を喜ばせるには、どんな誌面にするのがいいか”。これは攻略記事だろうが紹介記事だろうが変わらない、基本かつ最重要テーマであります。
打ち合わせでは、お互いからさまざまな意見が出ます。
ライターさんに仕事を頼むのは、単純に作業の手が足らないという理由がいちばんなんですが、意見を交換してアイデアを磨くという狙いもあるんですよね。
もちろん、デキる編集者はひとりでもいいアイデアを出すんですが、あいにくオレは凡夫なので優秀なライターさんの存在は非常に頼もしいわけです。
打ち合わせが滞りなく済んだら、ラフの作成に入ります。
ラフとはラフレイアウトの略で、読んで字のごとくラフ(大雑把)なレイアウトの指示。ページのどこそこに写真が入ってどこそこに文章が入るなどを、紙(ゲーム誌では作る本の同サイズの大きさであることが多い)に記していきます。
大概は定規など使わずにフリーハンドで感覚的に描きます。そこが“ラフ”の由縁なのではないかと(自信なし)。
台割(日記第2回参照)が本全体の設計図だとしたら、ラフはページの設計図にあたります。
デザイナーさんは、ラフにしたがって写真や文章などを配置していき、ラフを大きく逸脱することは基本的にありません。
なので、ラフの良し悪しが、そのままページの良し悪しに直結します。
オレの大好きな野球に例えるなら、ラフをバントの指示だとすると、ふつうの選手(デザイナー)ならキッチリ走者を送り、非凡な選手(デザイナー)なら自らも生きるバントを魅せてくれます。
が、2アウトでバントの指示を出しても選手(デザイナー)は困っちゃいますよね。
そんな感じです。
この例えで、ラフの大事具合は伝わったかな?(笑)
左がラフで、左がページの完成形。ほぼ指示どおりに仕上がっているのがおわかりだろう。ラフはバカ丁寧に描く必要はない(そんな暇があればそのぶん早く仕上げたほうがいい)が、テキトーすぎてもデザイナーに意図が伝わらない危険性がある。要はバランスが大事ってことです。 |
そんなわけでラフ作成週間の始まり。
なぜ“週間”かというと、100ページ以上のラフが1日2日でできるわけがないからです。
これから約1週間、ライターさんには食事&睡眠時以外はラフを描くマシーンと化してもらいます。
その間のオレ(編集者)の仕事は、できあがったラフをチェックしつつ、同時進行でいろいろとやらなければいけないことが……。
それについては次回の日記で!
ちなみにこの期間が、本作りでいうところの第一次修羅場にあたります(第三次まである)。
プロフィール
コダマックス
2年間のヒモ生活を経て、現在ファミ通DS編集部に在籍している編集者。190センチの恵まれた体躯を持ちながら趣味はとことんインドアという、もったいない人生を歩む。ふだんは任天堂系の専門誌『ファミ通DS+Wii』制作を担当。