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ROCKSTAR HISTORIA Vol.18 『THE WARRIORS』―真に映画を楽しめるR★流の“シネマゲーム”
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Text by Mask de UH

 最初に断言させてもらうなら、『THE WARRIORS』は映画原作ゲームとしては究極の完成度を誇っている作品だ。映画原作のビデオゲーム=所謂“シネマゲーム”は、洋ゲー市場において重要な位置を占めるジャンルだ。だからまず本題に入る前に、予備知識としてこのジャンルを補習しておきたい。いつものことながら長い前置きになるが、お付き合いいただくとしよう。
 シネマゲームというジャンルはビデオゲーム黎明期からあり、ゲームの理想の完成形態のひとつとして「映画の主人公に成りきれる」ことを目標に掲げていた。にも関わらず、技術的な問題から映画の主人公とは程遠い仕上りのタイトルが大半だったという、ある意味悲しい歴史があった。シネマゲームはいずれの時代のハードでも開発されていたが、その実力が本気で表面化してきたのは、やはりプレイステーション2以降だろう。
 表現力が向上し、映画と同じCGデータを共有開発できるなど新技術も生まれた一方で、やはり映画とは物語を楽しむ時間が倍以上違うゲームソフトとでは差異が生まれるのは致し方がない。真に映画の中の主人公に成りきれるようなタイトルが非常に少ないどころか、様々な問題から映画の設定をそのままゲームに反映できなかったタイトルも多かったという、映画大国でありながら古参と新参のエンターティメント同士の融合が果たせない苦節の時期が長かったのが歴史的な事実なのである。
 ゲームに映画のストーリーをうまく落とし込めず、完全オリジナルの物語になってしまったり、後日談や映画と映画をつなぐ中間の設定だったりして萎えたり、キャスティングが何らかの不可抗力によって強引に変更させられていたりと、まぁとかくガッカリさせられがちな仕上りが多かったのが洋ゲーのシネマゲーム=シネゲーと呼ばれるジャンルだった。それでもなお、ハードの表現力や様々な版権問題を乗り越えた傑作もある。それらは筆者が個人的に基準とする面白いシネゲーの条件を満たしているタイトルでもある。その条件とは、ズバリ3つ。

1. 映画原作の物語に忠実である
2. 登場人物や主人公の設定も忠実である
3. それでいてゲームならではの追加要素がある

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▲一見「子供だまし」と思われることが多いLEGOシリーズだが、見た目に騙されてはいけない。その完成度は実に高く、欧米のうるさ型のファンや批評家からも一目置かれる存在なのだ。

 我ながら難易度の高い条件だと思うが、数は少ないながらもこれらの条件をクリアした傑作といえば、PS oneの『ダイハード・トリロジー』や、N64の『007ゴールデンアイ』、意外な路線としては『LEGO:STAR WARS』や『LEGO:INDIANA JONES』などのLEGOシリーズが、原作映画の再現度では1、2を争う完成度を誇っている。その中でも全ての条件を満たし、なおかつ比類なき完成度を誇るのが、今回のテーマ『THE WARRIORS』である。

 そもそも『THE WARRIORS』は、時系列的には次回に本ブログで大トリとして取り上げる予定の『GTA:SAN ANDREAS』よりも約1年後の、2005年の秋に発売されたタイトルなのだが、製作発表自体は『SAN ANDREAS』よりも早かったこと(『MANHUNT』と同じ2003年のE3にて発表)、そして日本未発売タイトルであることも考慮し、敢えて先に取り上げさせていただく。
 ここまで長い前説にお付き合いいただき誠に感謝する次第だが、本題はここからだ。まずは原作となった映画について解説しつつ、本作が如何にゲームと映画の融合を模索し、それに成功しているかを考察していこう。




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 映画『ウォリアーズ』は、1979年に公開されたウォルター・ヒル監督による青春アクション映画である。ニューヨークに巣食うギャングチームによる、初めての総決起集会の夜に発生したリーダー暗殺事件に巻き込まれ、濡れ衣の汚名を着せられた弱小ギャングチーム“ウォリアーズ”の面々が、惨劇の起きたブルックリンの公園から地元のコニーアイランドに逃げ帰るまでの一夜を描いた作品だ。主演はマイケル・ベックだが、ほとんどの登場人物は無名のキャストで構成されており、それがまた妙なリアリティを緊迫感を作品にもたらしている。
 ウォリアーズは対立するチーム“ローグス”の策略に嵌められ、NYギャングにとってのカリスマであり、団結の証しでもあるサイラスを射殺したという汚名を着せられる。そしてサイラスが率いていた“リフス”に賞金を賭けられ、ウォリアーズは様々なチームから命を狙われるハメになるのだが、注目なのはここで登場する凶暴で個性豊かなチームたち。
 NYヤンキースのユニフォームにピエロペイントの“ベースボール・フューリーズ”や、シルクハット姿の“ハイ・ハッツ”、女番連合の“レジース”とローラスケートにオーバーオール姿で警棒を振り回す暴走光GENJIこと“ザ・パンクス”、メキシコ人チームの“ザ・ハリケーンズ”や下町の貧乏チーム“オルファンズ”などなど、それぞれ見た目も縄張りも得意技もわかりやすい連中が、こぞってウォリアーズに襲いかかるのだからタマラない。
 それぞれの縄張りにはスプレーでタギングされた目印があり、地下鉄を乗り継いでコニーアイランドに戻るには、複数の縄張りを抜けなければならないうえに、ラジオでは女性DJがウォリアーズの移動状況を生実況中。敵の中にはチームだけでなく警官もいるので、まさに絶対絶命のサバイバルというわけだ。



 映画『ザ・ウォリアーズ』は日本でも公開され、80年代日本における不良文化の形成にも、かなり影響を与えている。いわゆるチーマーのハシリであり、影響を受けたと公言する芸能人も多いが、有名なのがマーシーこと田代まさし。ウォリアーズの暴れっぷりやNYの生々しい暴力描写に、ガソリンスタンドの店員だった不良チームという過去の出自が被ったらしく「自分の一番好きな映画」として本作を挙げており(情報ソースはギンティ小林)、なかなか違いの解る男だなと一目置いた次第。
 それはともかく映画は公開当時アメリカで一大センセーションを巻き起こし、サウスブロンクスでは映画に触発されて本当に抗争事件が発生するなど、良くも悪くもアメリカらしいリアクションで熱狂的に迎えられた。特に主演のマイケル・ベックは、フットボール選手なのにロンドンの名門校で演劇を学ぶという変わった経歴が注目され、本作以降『ザナドゥ』や『メガフォース』といった80年代のトラッシュカルトを代表する作品に出演しているあたりが筆者的には素晴らしいと思う次第。学んだ成果は出ていないような印象もあるが……。


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▲オラァ! ビール瓶をドタマ目掛けてフルスイング。それでも僕は(サイラスを)やってない。

 ともあれ、経緯には事欠かない映画『ザ・ウォリアーズ』を、ニューヨークという街に最も愛着を持っていると断言できるゲームメーカー、ロックスターがゲーム化するというのは、ある意味運命的なものすら感じる。オープンワールドの枠に捕われず、ベルトスクロール型のアクションにミニゲームを組み合わせたゲームデザインも映画の魅力を損なっていないのも特徴だ。

 ゲームは映画で描かれた部分の他に、原作小説『夜の戦士たち』から抜粋されたチーム結成前のエピソードや、映画では描かれなかったサイラス暗殺の真の目的などが加えられ、内容的には1.7倍増しのボリュームとなっているが、映画ではチラッとしか登場しなかったチームの隠れた活躍などが見られて、映画原作ファンには嬉しい内容。
 ゲームは主人公であるウォリアーズ二代目リーダー、スワンを中心に、ステージによって複数のキャラクターを交代で操作しながら進むのだが、ゲームシステムはチーム戦をメインにした『MANHUNT』のような感じで、ステルスによるやりすごしや待ち伏せ、敵にオブジェクトを投げつけて気を逸らしたスキに逃走など、映画の緊迫感をうまくゲームに置き換えることに成功している。
 アクションも多彩で、回復には危ないXXXを一服決めつつ、車上荒らし(カーステを盗むミニゲーム)や強盗(宝石店を狙うと一気に儲かる)、カツアゲに破壊行為、何をやっても警察に逮捕されない限り問題ないフリーダムすぎるゲームデザインとなっており、警察に捕縛されても手錠抜けで回避して逆襲可能など、単純ながらも奥深いステージデザインには感心するばかり。特にエンディング後のオマケにはニヤリとさせられてしまう。細かいぜR★!!!

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 また、ゲームのオリジナル要素として注目なのが“タギング”である。タギングとは、要するに縄張りを主張する落書きなのだが、本作ではこの行為自体が電流イライラ棒風のミニゲームとなっており、ミッションの中には、大乱闘の中で制限時間内に複雑な模様を書き終えなければならないという男塾な勝負になったりと非常に熱い。ちなみにゲームに登場する建物や壁などに描かれたタギングは、映画公開当時に活躍したグラフィティアーティストたちの作品が使われており、1970年代末期におけるNYのリアルな雰囲気を見事に再現している。

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 また、ゲームにはスポーツシューズメーカーのADDIASも協賛として参加しており、ゲーム内に登場する広告ポスターは全て当時のメーカー公認ポスターというこだわりっぷり。もう、尋常ではないのである(ステージの中には今は亡き老舗ライブハウスCBGBが登場する場面もあるので見逃すな!)。
 こだわりは細部に渡って貫かれている。声優のキャスティングには極力当時のキャストを再集結させることにこだわり、結果的にマイケル・ベックを初めとする主要キャストの招集に成功。ゲーム内の台詞のほとんどは、新たにレコーディングされたものである(残念なことに映画で大きなインパクトを残した女性DJだけは、演じたリン・シグベンが2003年に死去していたため、オリジナル音声と声帯模写ができる声優による吹き替えの組み合わせとなっている。

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 ここで映画の話に一旦戻そう。クランクアップ後、最初はお互いにツッパリ合っていた若きウォリァーズを演じた面々も打ち解けはじめ、最後は親友同士になっていたという。そしてこう誓った。

「いつかもう一度必ずこのメンバーで集まろう」と。

 その誓いは、R★の手引きによって25年後に実現することとなった。実にイイ話である。更にもう1つエピソードがある。映画の舞台となったニューヨークに実在する遊園地“コニーアイランド”が、2004年に老朽化のために閉園が決定したのだ。華やかな場所ではないが、ニューヨーカーたちにとっては思い入れの深い遊園地であり、例えるなら江戸っ子にとっての浅草花やしきのような存在だ。その閉園に向けてのR★からの餞がゲーム版『THE WARRRIORS』なんだから、なんともオツな話ではないか。  遊園地は無くなってもゲームの中で永遠に営業をし続けるし、若き戦士たちは縄張りを守り続ける。ゲーム発売と同時期には映画もリマスター版DVDが発売され、現在は未公開シーンを追加したブルーレイ版もリリースされている。こういった再評価もゲームが無ければ難しかったかもしれない。

 『THE WARRRIORS』は、プレイステーション2、XBOX版の2種類がリリースされたが、喧嘩がメインのアクションゲームにも関わらず、過剰な暴力シーンが見られたために日本版の発売は実現しなかったのは残念な限り(映画版権作品であることも関係していただろう)。だが、後に発売されたPSP版だけはリージョンに関係なく起動するので、プレイするならPSP版をオススメしたい。
 映画本編も忠実に再現しつつ、映画には無かったエピソードも加えて細部まで作り込んだR★版『THE WARRRIORS』。シネマゲームとして、これ以上に完成されたゲームも、なかなか無い。本当に面白い。面白いのだが、映画を観てないでプレイするのはオススメできない。PSP版が入手できたら、次は近所のレンタルビデオ屋に走るんだ! まずは映画をドップリと観賞し、それからゲームを起動させよう。そのオープニングから感動モンなので!

 さて次回はいよいよ、約半年間続いた連載の最終章を飾る因縁深きビッグタイトル『GRAND THEFT AUTO:SAN ANDREAS』の登場である。余りに語るべきエピソードが多い本作は、前後篇の二回に分けてお届けする予定。次週更新をご期待ください!

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▲これはパラマウントからダウンロードタイトルとして出た『The Warriors: Street Brawl』。たまーに海外でもR★版『The WARRIORS』と混同する人がいるが、別物なので気をつけよう。
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