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【MH4G】第43回 誰のせい?

上位★7のクエストには3つの壁があると俺は言った。なんだか覚えているかね?」

 いつものように集会所で、同僚の美人ドSゲーマー・Tさんと合流してチャットをしていたときのこと。難度の高い★7のクエストに打って出るにあたり、俺はTさんに上記の質問をした。するとTさんは「もちろん!!!」と元気に応えてベラベラとしゃべり出す。

「アレだろ!? 人類の存亡がその壁にどーたらこーたら……ってやつ。えーっと、確か壁の名前はウォールロー……」

 俺は「わかったわかった!!」と言って、慌ててTさんを制した。

「ちゃんと覚えてはいるようだな。そう、ウォールクシャル、ウォールテオ、ウォールアカムがソレだ。でもこいつらは本気で屈強なので、その前に肩慣らしをしておきたいと思う」

「ほうほう」と頷くTさんを一瞥してから、俺は話を続けた。

「とりあえず、もっとも組し易しと思われる“イビルジョー”の討伐にでもいきますか」

 Tさん、コクンと頷く。

「その、いびるじょーってのがナニモノかは知らんが、簡単なら行こうではないか。ギッタギタにしてやんよ!!!

 というわけで、イビルジョー討伐に出向くことになりました。

 さてここで多くの読者の皆さんが、「簡単と騙してジョーのクエに連れていくなんて、ヒドい!」とフンガーフンガーと憤慨されたかもしれない。でも、いきなりSっ気を出してTさんにイジワルをしたわけではなく、俺はホントの本気で“イビルジョー=組し易し”と思っているのである。

 ではなぜ、自他共に認めるヘッポコハンターの俺が“最凶”の一角でもあるイビルジョーを相手に「余裕!!」なんて思っているのか? その理由はおそらく、イビルジョーが初登場した『モンスターハンター3(トライ)』の時代に見出すことができると思う。

 当時、俺は『逆鱗日和』の担当編集・江野本ぎずもとともに狩りをしていたのだが、拙著『本日もただいま! 逆鱗日和』に書き下ろしで“イビルジョー狩猟物語”を書くと計画し、毎晩ふたりであーだこーだと言いながら狩りにくり出していたのである。最初こそ、「これ、ふたりじゃ無理じゃね……?」なんて言っていたのだがじきにイビルジョーの動きに慣れ、締め切りのギリギリになってついに討伐に成功。その瞬間、この屈強なモンスターに対する恐怖や苦手意識といったネガティブな感情がいっさい消え、「イビルジョー、なんぼのもんじゃい!!!」と言えるようになったのである。これにより、

 余裕な俺+初見のTさん=イビルジョー討伐

 という確固たる方程式ができあがるので、なんの危機意識もなくイビルジョー狩猟のクエストを貼り付けたというわけだ。

 それでも、なるべくハンター側に有利になるような戦術を組み込んでおくのは、モンスターに対するリスペクトの証である。出発の準備を進めながら、俺はTさんに告げた。

「お嬢、今回の狩りでは“眠り生肉”ってものを使ってモンスターを寝かせるからな。ピコーンピコーンて合図をしたら、攻撃の手を止めろよ。んで、爆弾がボカーンって爆発してから攻撃を再開するように!」

 Tさんが元気に応じた。

わかった!!! ピコーンとボカーンだな!!!!」

 ホントにダイジョブかな……。

 でまあ、氷海を舞台にしたクエストが始まったわけだが、イビルジョーと遭遇するなり、Tさんがギャアギャアとわめき出した。

こここ、こいつ!!!!! この恐竜!!!! 確かなんかのクエでいきなり目の前に現れて、“!!!!!!!???”と驚いているうちに喰われたヤツやん!!!!!」

 あ、そういえば……w

 なんのクエストか忘れたけど、大型モンスターがいないと思っていたエリアでTさんがいきなり昇天し、クエストに失敗したことがあった。で、集会所に戻るや俺が、「なにしてんだよ!!ww モンスターがいないところでオチるなよ!!w」と罵ると、Tさんは珍しく必死な口調で、「ち、違うよ!!!! なんかデッカい恐竜みたいなのが現れて!!! ホントだよ!! ホントにいたんだよお!!!!><」と泣き喚いたのである。いまわかったのだが、どうやらそれがイビルジョーだったらしい(笑)。笑いを堪えながら、俺は言った。

「よし!! そのときの恨みを晴らしてやれ!! なあに、意外とヤツの攻撃は当たらないから、懐に飛び込んで斬りまくれ!!!」

 するとTさん、「うおおおおおおし!!!!」と叫ぶや双剣を構え、イビルジョーに張り付いて攻撃を始めた。その姿を確認してから、俺もガンランスを構えた。

 そしてしばらくすると、イビルジョーがデコボコのアゴからヨダレを垂らし始めた。これは……そう!! 眠り生肉のチャーンス!!! 嬉々として、Skypeで俺は叫ぶ。

「あ! お嬢!! ぼちぼちヤツを眠らせるからな!! 合図したら攻撃を止めろよ!!」
 
 するとSkypeから短い返事が。「ラジャー!」。

 しかし……。

 眼前のイビルジョーは、いつまでも寝ることがなかった。最初の“ヨダレタイム”を終えてエリアチェンジをしてからも、幾度となくチャンスがあったはずなのに……。そのうち、Skypeががなり始める。

「ねえねえ! まだ眠ってないよね!? 合図、見逃してないよね!?」

 Tさんである。俺は簡潔に返事を返した。「見逃してない」

 そして、狩猟開始から15分。奮闘していたTさんが1オチを計上。さらに、「余裕余裕www」と半笑いで狩りをしていた俺が、イビルジョーのカーソルが点滅(捕獲の見極めを付けていたので)しだしたところでまんまと2オチ目を記録してしまった。

 でも、あとはもう捕獲するだけだ。2オチはしちゃったけど、やっぱりイビルジョーは俺のライバルたりえないモンスターだなあ。はははははー。

 ……と、支給品ボックスから目ぼしいものを物色していたとき、思いもかけない事態が起こる。

「きゃああああああ!!!!www」

 断末魔の悲鳴が聞こえたかと思ったら、なんと復帰したTさんが速攻で3オチ……w 余裕と思われたイビルジョー討伐で、まさかの“クエスト失敗”となってしまった。

 そして、集会所−−。

「ちょっと!!! もう捕獲できたのに!!! なんでオチんだよ!!!

 怒る俺にTさんは「逃げ切れんかった!!!><」とうなだれるも、すぐに「あ、そうだ」と顔を上げて俺に質問してきた。

「そういえばヤツを眠らせる……とかなんとか言ってたと思うけど、けっきょく寝たの? そんな姿、見た覚えがないんだけど」

 俺、「バウン!!」と心臓が跳ねたのを感じた。仕方なく、質問に答える。

「あ、あー、アレ^^; 眠らせるって話ね^^; ……いやじつは、なんか知らんけど眠り生肉が見当たらなくてサ^^;; どこに落としちゃったのかなーなんて^^;;; ホント、モンハンって不思議なことがあるよねー^^;;;」

 しばらくポカンとしていたTさん、いきなり我に返ってギャンギャンと吠え出した。

テメー、それ忘れただけじゃねえか!!!! 眠らせるのが成功していたら、3オチしなかったろ!!!! 人のせいにすんな!!!(怒)

 けっきょくこの日は、「角満が悪い!!」「いやお嬢のせいだ!!」の応酬となり、イビルジョーへのリベンジに向かうことはなかった(苦笑)。

 こんなことで、3つの壁を越えられるのだろうか……?

★お知らせ★

 何度かお伝えしてきましたが、9月26日に3年ぶりの刊行となる『逆鱗日和』シリーズの新作、その名も『本日もやっぱり! 逆鱗日和』が発売となりました!! 過去7作の『逆鱗日和』から選りすぐりのプレイ日記78編(!)を抽出した傑作選となっておりますが、もちろん! 書き下ろしもたっぷり収録!! モンハンショートショートあり、藤岡要ディレクターとのロング対談ありと、過去作を持っておられる方も楽しめる造りとなりました! シリーズ初の文庫サイズとなり、持ち歩きも楽チンになりましたので、興味のある方はぜひとも手に取ってみてください!

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投稿者 大塚角満 : 17:15

大塚角満

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週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。


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