大塚角満の ゲームを“読む!”
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デーモン遺跡に陣取るデーモン“爛れ続けるもの”は、その巨体が発する迫力だけで人が殺せるんじゃないかと思えるほど、圧倒的な存在感を放つ。前回、“爛れ続けるものと比べたら人間なんてカナブン程度のもの”と書いたが、より間近でその威容を見ると、「カナブンなんて……おこがましすぎる!!」と思ってしまうから恐ろしい。それくらい、爛れ続けるものには威厳がある。彼(彼女かもしれんが)と比べたら俺なんて……打ち損じて「クシャ」ってなっちまったホチキスの失敗針みたいなものですわ>< ……って、どこまで卑屈になってんだって感じですがね。
まあとにかく、それほど大きくて存在感のある爛れ続けるものと戦闘になったわけです。こいつはエラいことだ。
しかし、強力な遠距離攻撃を持たない俺にできるのは、相手に接近して黒騎士の斧槍を突き立てること。これしかない。なのでどれほどビビっていようが、懐に飛び込まない限り勝機はないのである。
そこで俺はがっちりと盾でガードをしながら、爛れ続けるものに接近を試みた。体力は満タンだったし、盾の受け能力もなかなかのものだったので、予期せぬ攻撃が振ってきたところでしばらくは持ちこたえられるだろうと思っていたのだ。そんな俺に向かって爛れ続けるものは、右肩あたりからワシャワシャと生えている触手の1本をグイと持ち上げ、思いっきりそいつを叩き付けてきたではないか! 俺、盾でしっかりとその攻撃を受け止めて……と思ったところで、画面に意外なメッセージが表示された。
「YOU DIED」
ちょ…………。この叩き付け攻撃、一撃死かよっ!!! このゲームをプレイし始めてから何度目になるのかわからないが、またもやドス黒い暗雲が俺の空(かっこいいな)に広がった。
死にはしたがそれでも、俺には収穫があった。それは例の、爛れ続けるものが動き出すきっかけとなった宝箱のブツ、黒金糸シリーズの装備である。これ、ステータスを見て驚いたのだがとんでもなく優秀な防具で、物理防御力はもちろん、各種耐性(とくに火)も、それまで着ていた防具が安宿の浴衣に思えるほど抜きん出ていたのだ。見た目こそ好みの分かれるところだろうが、これほどの才能を「ルックスがちょっと……」などというつまらぬ理由で切り捨てるわけにはいかぬ。俺は才能至上主義なのだ。強ければそれでいいのだ。
俺は「ナノダナノダ♪」とゴキゲンに歌を歌いながら、全身を黒金糸装備で覆った。火耐性に優れる防具なので、これで爛れ続けるものに少しは対抗できるだろう。しかし、黒金糸装備に身を包んだ我が分身の姿を見て、Hが不満の声を上げる。
「ちょっとー。やめなよ、黒金糸を着るのは」
ん? なんでなんで? これほど優秀な黒金糸装備に、何か弱点でも? 不思議に思って、俺は聞いた。「なんで黒金糸はダメなの?」と。これに、Hは不機嫌そうに答える。
「私とS君のキャラも、全身黒金糸なのよ! 3人とも同じになったらつまらないでしょ!! だから、あんた脱ぎなよww」
なんで現在進行形で炎の怪物に手こずっている俺が脱がなきゃならんねん!!! 俺はHの発言を「ハイハイ」と聞き流し、2度目の挑戦に向かった。
しかし、黒金糸に身を包んだ2回目の挑戦でも、触手の叩き付けが直撃した我が分身は天に召されてしまった。さすがにあれだけの巨体からくり出されるパワーを前にしたら、ちょっとくらい物理防御力と火耐性が上がったくらいではウデムシの小便ほどの効果もないらしい。
ここから俺は、余裕で10連敗くらいした。何度か、叩き付けられた触手が地面にめり込んでいるうちに攻撃をし、ほんのちょっとだけ爛れ続けるものの体力を削り取ることができたが、その程度ではヤツは、指にトゲが刺さった程度にも痛みを感じていないことだろう。この微々たるダメージも、ずーっと続けて蓄積できればいずれ勝てるのだろうが、それまで触手の攻撃を避け続けられる自信がまるでない。1発でも当たったら死ぬ弾丸をかわしながら、100回以上素手で殴らなければいけないようなものなのだ。これは、ちょっとキツすぎる。
そんな、苦闘する俺に向かって、S君がこんなことを言った。
「俺も、メチャメチャ苦労したんだよねコイツ……。呪術師の炎なんてまったく効かなかったし……。どうやって倒したのかよく覚えていないんだけど、思い切ってヤツに密着しちゃうのってどうなんだろう? 意外と、触手攻撃の死角になってるんじゃないかな?」
俺は、天啓を得たかのように顔を輝かせた。「そうだっ!!! それしかないっ!!!!」。
S君の助言を胸に抱いた俺は、10数回目の挑戦に出発した。大男は手足が長いので、密着されてしまうと急に戦いづらくなるものだ。かつて横綱の曙が、幕内最小・最軽量の舞の海に懐に潜り込まれ、何度も苦杯を舐めていたことを俺はよく知っている(相撲好きなだけ)。
「キーワードは舞の海だっ!!」
と俺は吠えた。
爛れ続けるものの前に立った俺は、脇目も振らずに巨体目掛けて走り出した。触手が当たらない懐に入り、好きなだけ斬り刻んでやる。そんな野望に突き動かされて。しかしつぎの瞬間、野望はただの儚い夢だったということをオノレの死をもって理解する。
ぴゅるるるるるぅぅぅ〜〜〜〜〜…………。
「YOU DIED」
あ…………。
大地と爛れ続けるもののあいだ、崖になってたのね……。ハ、ハハハハハ……。
こんな体たらくで、俺はどうやって爛れ続けるものをクリアーしたのか?
次回に続く。
大塚角満
週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。
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