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【MHP 3rd】第20回 蒼き名刀、月夜に閃いて(その3)

 ジンオウガの攻撃は、想像していた以上に重く、そして速かった。あの巨体からするに、1発1発は強烈でも動きは鈍重で避けやすいのでは……と淡い期待を抱いていたのだが、それは手前勝手で能天気なゆとりオヤジの早とちり(そこまで言わんでも)だとすぐに気づいた。

 ジンオウガとの初対決(厳密には初じゃないけど)は、苦戦を極めた。しなやかさと力強さを兼ね備えた立ち回りに翻弄されて、俺の口から出てくる言葉は「あの、その、えっと……」という狩場にはまったくそぐわないものばかり。超苦手な数学の時間に大嫌いな教師に「おい大塚、この問題を前に出て解けや(ニヤニヤ)」と指名され、問題の意味すらまったくわからずに無言で5分間立ち尽くしてしまった高校1年の夏を思い出してしまったほどだ。

 柔と剛が同居するジンオウガのフットワークの基点となっているのは、とにもかくにもあのぶっとい前脚であろう。突進してきたと思ったら横にヒラリ、攻撃をぶちかましてやろうと間を詰めたら背後にクルリ……。フワリとした軽さとは違う「キュンキュンッ!」と切れるようなフットワークは、ストロー級のスピードを手にしたヘビー級のボクサーを想像させるものだった。ナルガクルガのそれとは違う“柔”を持ち、ティガレックスのそれとは違う“剛”を持つモンスター−−。

「こいつはやっぱり、一筋縄じゃいかねえぞ……」

 攻撃をガードしていいのか避けていいのかわからず、やたらと狩場をウロつくだけになってしまった老境のガンランサーは冷や汗を流しながらそんなことをつぶやいた。

 それでも、超頭がよくなったオトモアイルー、オリガミとレウスの活躍により、どうにかこうにかジンオウガに食らいつく。モンスターの注意を引き付けながら巧みに爆弾とブーメランを使って攻撃するレウス君と、ダンナが体力を減らしたとみるやすかさず回復笛を吹いてくれるオリガミちゃんがいなかったら、俺は開始5分で3オチして自室のベッドに転がされていたことだろう。

「この相棒たちがいれば、なんとかなりそうだ!」

 クエスト開始から7分ほどが経過したところで、俺はようやく手応えを得た。

 しかし、好事魔多し。

 クエスト開始から10分、ついにジンオウガが持てる力をすべて解放する。そう−−。“超帯電”状態になってしまったのだ。

 情報をシャットアウトしていたとはいえ、ジンオウガが動きを止めて雷光虫を集めて電気を溜め込み、恐るべき超帯電という状態になることくらいは知っていた。なのでジンオウガが雷光虫を集めようとするたびに「わーーーーっ!! 虫集めんな集めんな!! 漏電してますよ! 危ないですよ!!」と騒ぎ立てて必死の引き止めを図っていたのだが、ついに超帯電を“完成”させてしまったのである。「やばい!!」と思ったときにはもう遅い。俺は超帯電になった瞬間の雷撃を浴びて吹っ飛び、間髪入れずに襲いきた前腕の剛拳をモロに浴びて瞬時の昇天。開始10分で早くも2オチを喫してしまった。

 しかし、真剣勝負の狩場においてまことに不謹慎だとは思うが、俺は超帯電状態になったライバルの姿に思わず見入ってしまった。「見惚れていた」と言ってもいいかもしれない。蒼白い雷光をその身にまとい、幽鬼のような揺らめきとともにより斬れ味の増した動きで獲物を仕留めんと侵略してくる。月明かりの下で閃く蒼い光の躍動を見ながら、俺はこんなことをつぶやいていた。

「名刀……」

 雷光をまとったジンオウガの動きは、鍛え抜かれた刀そのものだった。光とともに獲物を斬り、光とともに駆け抜ける−−。その峻烈なきらめきは、獲物を仕留める道具でありながら、そのたたずまいだけで人を感動させてしまう名刀と同じものに見えた。

 やっぱり、“象徴”と呼ばれるモンスターは違う。

 かつて俺の前に立ち塞がった“ライバル”と呼べるモンスターと同じような、独特の“何か”をジンオウガは持っている。「これからこいつと、どれだけの名勝負をくり広げることになるんだろう」。名刀からくり出される痛撃が、俺の心に天邪鬼な喜びを生んだ。「俺ってホントにマゾなんかな^^;」。そんなことも思った。

 クエスト開始15分で、俺はすべての回復系アイテムを飲み干した。でも同時に、屈強なジンオウガも苦しそうに脚を引きずり始める。もう、いっさいのハンデなし。人間とモンスター、ふたりの狩人が残る力をぶつけ合って決着をつけるだけだ!

 俺はキャンプのベッドに戻るのももどかしく、エリアチェンジしたジンオウガの後を追った。これでねじ伏せられたとしても、まったく後悔はしない。この段階でどちらが上なのか、とにかくはっきりさせたかった。

 唸るガンランスの切っ先が、ジンオウガの長い尻尾を捉える。そして、切断。この勢いで、ジンオウガが脚をもつれさせる。

「いまだ!!!」

 俺は深く腰を落とし、その日初めての竜撃砲の体勢を作った。フルバーストも狙えるけど、ここはやっぱり竜撃砲しかない。『2(ドス)』の時代からともに歩んできたこの必殺技を、最後にジンオウガにお見舞いしたいんだ。

「いけえええええ!!!!」

 チリチリと迸る種火に導かれるように、討伐隊正式銃槍の切っ先から相手を食い尽くすかのような巨大な火炎が飛び出した。視界を埋め尽くす凶暴な火のカタマリ。そのすべてが、ジンオウガに叩きつけられた。そして−−。

「グァオォォオオオオ……!!」

 生命力に溢れていたジンオウガの悲鳴が、渓流にこだました。狩った……。すべてを出し尽くした結果、どうにかライバルとの最初の対決を制することができたぞ!!

「よっしゃああああ!!!」

 クエスト開始から19分32秒。俺はようやく、ジンオウガを討伐することに成功する。持てるアイテムをすべて使い、オトモアイルーの活躍に再三助けられた、文字通りの“死闘”であった−−。

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投稿者 大塚角満 : 12:56

大塚角満

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週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。


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