大塚角満の ゲームを“読む!”

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【MHP 3rd】 『3rd』のアレコレを語る! 辻本プロデューサー、一瀬ディレクターインタビュー・前編

 3月16日に電撃発表されたPSP(プレイステーション・ポータブル)用ソフト『モンスターハンターポータブル 3rd』。早くも公開されたプロモーション映像には気になる要素が満載で、夜な夜なコレをくり返し見て布団の上でのた打ち回っているハンターが全国に400万人くらいいると見た。

 そこで今回、『3rd』の中枢である辻本良三プロデューサーと一瀬泰範ディレクターにインタビューするために、江野本ぎずもとともに大阪に乱入! 『3rd』の開発で忙しいさなかに、じっくりと話を聞いた。いつものとおり、ざっくばらんなヨタ話も若干ながら混入しているが、じつに興味深くもおもしろいインタビューになったので(って自分で言う)、噛み締めるように読んでみてくださいな。とても長いので、前編・後編の2回となります。

ゲームの“基礎能力”が上がった

大塚 さて、こうして取材にやって参りましたが、いま話してもらえることってすごく限界があると思うんです。
一瀬 いや、そんなことないですよ(キッパリ)。
大塚 え。ホントっすか!!?
一瀬 ええ。(辻本良三プロデューサーの席をチラチラ見ながら)……ここに来るはずの人が来なければ。
大塚 ……じゃあ良三さんが来るまえにいろいろ聞かないとだな。
一瀬 何が知りたいですか?
大塚 『モンスターハンターポータブル 3rd』のすべてが知りたい。
一瀬 どんだけざっくりした質問なんですか(笑)。もっとこう、「ガンランスの突きのフレーム数はいくらで……」とか聞かないんですか?
大塚 いや、あまりにも細かいところはちょっと……(苦笑)。もうちょっと大枠でいいです。
一瀬 ええ? いまの、どこにも聞かれてないし、どこにも話していない情報ですよ?
大塚 この段階でフレーム数までは、なかなか聞かないでしょうよ(笑)。
一瀬 そうですかあ。残念ですねえ。
大塚 でもPV(プロモーションビデオ)にあったガンランスのモーションには奮えましたよ。
一瀬 ああ、そうですか。
大塚 相当違うでしょう? いままでのガンランスのモーションと。
一瀬 ええ、違いますね。
大塚 なんか、横に銃身を振りながら弾丸を装填しているように見えたし。
一瀬 さすが!! 見るところが違う!

※ここで、辻本良三プロデューサーが登場。


●辻本良三プロデューサー

辻本 ご無沙汰です〜!
一瀬 良三さん、いま大塚さんに「プロデューサーが来るまでだったら何でも話しますよ」って言ってしゃべりだしたんですけど、ガンランスって単語が出たところで終わっちゃいましたわ。
辻本 まあしゃべったところであとでカットするけどね!
一瀬 じゃあ次回ってことで(笑)。
大塚 まだ何も聞いてないのに……(苦笑)。まあいいや。でね……
辻本 (大塚の発言を遮るように)コレ、何に載るんですか??
大塚 なんでそうやって話の腰を折るんスか!!(激怒)
一瀬 いま大塚さんが説明しようとしてはったのに(笑)。
大塚 僕のブログっすよ、ブログ!
辻本 あー。ファミ通.comのね。りょーかい!(笑)
大塚 第一報でかなーり詳しい情報が出ていたのでそのおさらいをする感じになるかもしれませんが、よろしくお願いします。
辻本 ハイ、ドウゾ。
大塚 『3rd』の開発コンセプトは?
辻本 ファミ通を読んでください。
大塚以外 (爆笑)
大塚 ホントにこのとおりに書きますよ!!!(激怒)
辻本 あははは!! 大塚さんたち、来た意味がないね(笑)。
一瀬 でも僕たちは大塚さんたちに会えたことで元気をもらえたので、『3rd』の開発スピードが2倍、3倍にハネ上がりましたよ。そういう意味で、来てもらってよかったです!
大塚 ホントっすか?(苦笑) でも、一瀬さんが思いのほか元気そうなんで安心しましたよ。もっと疲弊しているかと思った。
辻本 まだ、大丈夫です。
大塚 “まだ”なんだ(笑)。
一瀬 ……でも、最近ちょっと忙しいですよ?
辻本 ……うん、最近はちょっとね(苦笑)。
一瀬 ホントは今日、お休みをいただこうかと思っていたんですけど、「あ、そうや。今日は大塚さんのインタビューがあるんやった」ってことで出てきたんですよ。
大塚 そうやってプレッシャーかけるのやめてください(笑)。でも『3rd』って、いつごろから開発が始まったんですか?
一瀬 『2nd G』の開発が終わってからすぐ、ですね。
辻本 “構想を含めて”ってことだとそうなりますよ。いきなりガツガツと動けるわけもないので、まずは構想から。
一瀬 はじめは少人数でスタートしました。だから最初のうちは、隅っこのミカン箱を机にして細々と構想を練る……って感じでしたねえ。企画書を書いたりとか。
大塚 じゃあ、始まりは2年以上まえなのかあ。
一瀬 そうなりますね。
大塚 当初は、一瀬さんほか数人で作業を?
一瀬 はい、そうですね。
辻本 『3rd』ってだいぶ造りを変えているんです。ゲームの基礎の部分を。なので新たに検証しなければならないものも多いですね。もうね、メモリーの配分を割り直したりもしていますし。
一瀬 “新しい『モンスターハンターポータブル』”だと思っていただければ。
大塚 インタビューにありましたよね。“『2nd G』とも『3(トライ)』とも手触りが違う”って。
一瀬 ……なんのインタビューですか??
大塚 週刊ファミ通の第一報ですよ!! 一瀬さんが言ってたでしょう!!(怒)
一同 (爆笑)


●一瀬泰範ディレクター

大塚 でも僕らからすると、『2nd G』か『3(トライ)』を土台にして作っているんだろうな……って思うじゃないですか。
辻本 毎回、そんなつもりはないんですけどね。『2nd』のときも「『2(ドス)』でも『ポータブル』でもないですよ」って言ってましたし。
一瀬 今回も「『3(トライ)』のモンスターが出ますね!」って言われますけど、「うーん、出るんですけどね……」ってちょっと言い澱んじゃいます。「『3(トライ)』と同じなんですよね?」と言われても(うーん、違うんだけどな……)って思いながらも、なんとも答えにくいところがあって。
辻本 『3(トライ)』は『3(トライ)』の遊び心地で作られた『モンスターハンター』で、『3rd』は『3rd』のコンセプトで作られた『モンスターハンター』なんですよね。切り分けて考えているので、同じモンスターが出てきても違うテンポの遊び心地になるように作ってあるんです。
一瀬 簡単に言えば「楽しめますよ!」ってことですね。
大塚 でも、新しいモンスターの“アオアシラ”がPVに頻繁に出てきますけど、すごく滑らかというか、柔らかい動きをしていますよね。
辻本 さきほども言ったシステムから作り直している……っていうあたりとつながっていて、ゲーム的な“基本能力”がアップしている部分がけっこうあるんです。それによって、クオリティーアップの出所がモーションだったり、ゲーム画面の色味だったりする。PVを見て「グラフィックがキレイになったなあ」と思われたとしたら、まさにそういう部分が表現されているからですね。
大塚 へー!! でも、そんなに変わるものなんですね。
辻本 正直、『2nd G』のときに「限界やろ」と思ったんですよ、みんな。「これ以上は無理や」って。でも、いろいろと作り直す過程でプログラマーもすごくがんばってくれたし……って、まだ完成してないですけど(笑)。
大塚 あはは!
辻本 最終的にどうなるのかは、まだわからんもんな(苦笑)。
一瀬 ええ。ちゃぶだいをひっくり返すかもしれませんしね。
一同 (爆笑)
辻本 まあそういうことが、基礎の部分のクオリティーアップにつながっているわけですね。
一瀬 これまでのノウハウありきでイチから作ると、伸びしろの幅も大きいんです。
大塚 おお、なるほど。
一瀬 ものすごくわかりやすく言うと、『2nd G』のときは『2nd』に増築する感じだったんですね。なので、本当はオトモアイルーを村の中でも連れまわしたかったんですけど、増築だったのでできませんでした。でも今回、イチから作り直したことによって村の中でもオトモアイルーを連れまわせます。これはすごくわかりやすいところですけど、こういった変化がいろいろとあるんです。
大塚 へぇ〜!
辻本 『3(トライ)』もそういう作りかたをしているんですけど、今回は『ポータブル』シリーズでも土台の作り直し……というか、イチから作り上げている。村の中をオトモアイルーといっしょに歩くというのは細かい部分ですけど、以前できなかったことのひとつができるようになっている証拠ですね。グラフィックの色数もそう。
大塚 『3(トライ)』の最初のころのインタビューを聞いているみたいだなあ。
辻本 そうですね。ポジション的には違うんですけどね。『3rd』はハードが変わっていない中でそれをしなければいけないので。
一瀬 特殊なことはできないんです。PSPという土台は変わっていないですから。なので素直に、『モンスターハンター』の根幹の部分はそのままに、携帯ゲーム機ならではのところを突き詰めていこうと思っています。それが、コンセプトですね。『2(ドス)』から『3(トライ)』に変わったように、『ポータブル』シリーズも『2nd』、『2nd G』があったうえで新しい『3rd』に変わる。その過程で『3(トライ)』や『2nd G』の要素も入りますが、「今回作るとしたらこうなる」ということを考えて入れ込んでいるんです。アイテムもイチから、「これは本当にいるのか?」という部分も考えて作っていますよ。
辻本 『ポータブル』シリーズで何をしないといけないのか? ってことだけですよ。究極は。
大塚 『ポータブル』シリーズでもっとも大事にしなければならないこととは? 手軽さとか?
辻本 そうですね。手軽さは、大事ですね。
大塚 じゃあ、一瀬さんが考える『ポータブル』シリーズでもっとも大事にしなければならない要素は?
一瀬 手軽さです!!(きっぱり)
大塚 なんで合わせるのよ(笑)。
一瀬 携帯ゲーム機でいままで培ってきた部分、つまり“広げる『モンスターハンター』”という魅力を、今回の『3rd』でどれだけ引き出せるかな? と考えています。なので、いろいろと試してみることができればと思っています。
大塚 さらに広げるための施策を『3rd』に仕込む、と。
一瀬 さすが!! よくわかりましたね!
大塚 ……いままさにそう言ったじゃないすか(苦笑)。
辻本 大人数での遊びは、『2nd G』までである程度確立できたと思うんです。でもじつは、マルチプレイをよくやる人でもひとりで黙々と遊ぶシチュエーションってけっこうあるんですよね。そのときの楽しみとか遊びをもっと広げられる要素ってあるかな? って考たときに出てきたのが、2匹のオトモアイルー。オトモアイルーを2匹連れて行くことによって当然クエスト時の戦略の幅は広がりますし、それ以前に「どうやってオトモを育てよう」、「どのコンビにしよう」という考えの幅自体も広がると思うんです。ひとりプレイのときの楽しみを、いままで以上に提供してくれると思いますよ。そしてもちろん、協力プレイを否定するつもりはなくて。ただシチュエーションとしてひとりで遊ぶことも多いわけだから、そこにもしっかりとアプローチしようよ、ということですね。
一瀬 ふつうのゲームだったら、ピンポイントでターゲットを絞って作ると思うんです。中高生に合わせるとか、女性をメインに据えるとか。じゃないと、コンセプトがブレるので。でも『ポータブル』シリーズって、『2nd G』でユーザーの幅がすごく広がり、性別や年齢を超えて楽しんでおられる。なので“みんなが楽しい”と思える要素を入れていきたいんですよね。でもだからと言って、『モンスターハンター』の根底を崩すものを入れてしまうのは論外なので、だからこそいままでの人がついてきてくれた要素というのは大事に残してあります。“王道部分は残してある”ということですね。それ以外の、たとえばテイストとして“和”の雰囲気が入っているとか新しいモンスターについては、僕らとしても「コレ、どうですか!? おもしろそうじゃないですか!?」ってアピールしたい部分なんです。それらをひっくるめて『3rd』というものが成り立っているんですよ。
大塚 和テイストには驚きましたよ。まったく想像していなかったので。
一瀬 過去のシリーズを横並びにしたときに、「これが『3rd』だ」ってすぐにわかってもらえるものを用意したかったんですよね。……ていうかそもそも、和よりも“お風呂”を入れたいっていう思いがありました(笑)。
大塚 あ、そうなんですか。
一瀬 じつは『ポータブル』の『1』のときから構想はあったんです。「お風呂をなんとか導入したい!!」って。でも『ポータブル』のときはあまりにも忙しすぎて実現できず、アイルーキッチンに落ち着いたんですね。で、『2nd』の企画を練っているときも「お風呂でけへんかなぁ〜」って思っていたんですけど……。
大塚 そこまでお風呂押しだったんすか!?
一瀬 ええ(笑)。
辻本 だから『2nd G』の集会所の入口前には湯気が上がっている温泉の場所があるんです。※みんな見てみよう!
大塚 あ、そうだったんだ!!
一瀬 名残、なんです。「せめて湯気だけは……」ってことで。
大塚 あははは! かわいい理由っすね!!
辻本 『2nd G』が出始めのころ、質問されたことがありましたよ。「村の温泉に入れないんですか?」って。
一瀬 いつか実現したい要素だったので、「うーん……無理ですね」と答えていましたけど(笑)。やっと念願叶いますよ。
大塚 よかったですねえ(笑)。
一瀬 いい歳こいたオトナが延々と「どうやったらお風呂に入れるんだろう?」って相談してましたからねえ(苦笑)。
大塚 あははは!!

※後編に続く!

投稿者 大塚角満 : 11:45

大塚角満

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週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。


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